漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「尋ジン」<左右の手をひろげて長さをはかる>「蕁ジン」「潯ジン」「鱘ジン」

2018年01月26日 | 漢字の音符
 ジン・たずねる・ひろ  寸部

解字 甲骨文字は両手をひろげて、線であらわされた長さを計っている形。たずねる意で、地方や敵対勢力に赴く際に用いられており、地形や敵情を測りながら進むことであろう[甲骨文字辞典]。篆文第一字(六書通)は、右手と左手を合わせた形(上と下が手で、右の口と左の工は真ん中にまとめている)、右手と左手を拡げて長さを計る形を示す。篆文第二字で、計る動作をくりかえす意の彡がつき、下の手⇒寸に変化した形ができて、現代字へとつながる。新字体の尋ジンは、右手(ヨ+口)と左手(工+寸)からなる。(旧字体はヨの右が出る)
 意味は、人が両手をひろげて長さを計ること。また、その長さをいう。物の長さや距離を計ることは、対象をさぐることであるから、さぐる・たずねる・さがす意となる。
意味 (1)たずねる(尋ねる)。さぐる。問いただす。「尋究ジンキュウ」(たずねさぐる)「尋問ジンモン」(たずね問う)「尋花問柳ジンカモンリュウ」(花や柳を尋ねて春の景色を楽しむ) (2)ひろ(尋)。両手を左右に広げた長さ。1尋は8尺(周・春秋・戦国)でメートル換算で1.8m。「千尋ちひろ」(非常に長いこと。また、深いこと) (3)ふつう。なみ。(大人が両手を広げた長さがほぼ同じことから)「尋常ジンジョウ」(ふつう。人並み)「尋常小学校」(明治19年から昭和15年までの日本の初等教育機関の名称) (4)地名。「東尋坊トウジンボウ」(福井県北部海岸の険しい海食崖で知られる景勝地)

イメージ <左右の手をひろげて長さをはかる> 
 「長さを計る・両手を拡げた長さ」
(尋・蕁・潯・
音の変化  ジン:尋・蕁・潯・鱘
 
長さを計る・両手を拡げた長さ
 ジン  艸部
解字 「艸(草)+尋の旧字(長さを計る)」の会意形声。長さを計るのに用いる縄の材料となる草のイラクサ。本来はジンという名の草の形声字だが、外皮から縄を作るので、この意味を解字に使用した。
 
イラクサ繊維の縄(「実はすごいぞイラクサ」より)
意味 (1)いらくさ。イラクサ科の多年草。茎と葉に細かい刺毛があり、皮膚に当るとチクチクして痛くなる。刺草ともいう。秋に、枯れた茎を刈り取り、外皮をとりだし、裂いてから縒って縄を作る。また、布を織る繊維の材料となる。「蕁麻ジンマ・いらくさ」(イラクサ)「蕁麻疹ジンマシン」(皮膚がかゆくなり赤くはれる急性皮膚病。イラクサのトゲに刺されたような皮疹ができることから) (2)はなすげ。
 ジン・ふち  氵部
解字 「氵(みず)+尋の旧字(深さを計る)」の会意形声。尋は、ここで水の深さをはかる意で、深さをはかるほど水をたたえたふちをいう。
意味 (1)ふち(潯)。水を深くたたえたふち。ふちの水際。 (2)川の名。地名。「潯陽ジンヨウ」(潯という川の北(陽)にある地の意。江西省九江市の古称)
 ジン  魚部
解字 「魚(さかな)+尋の旧字(両手を拡げた長さ)」の会意形声。両手を拡げて測るほどの長さがある大きな魚のチョウザメ。
 
チョウザメ(「大紀元新聞網」(Joe Weisner, Jones Sport Fishing)より)
意味 ちょうざめ。「ちょうざめ」。チョウザメ科の硬骨魚の総称。体長は1~2メートル。川を遡上して産卵 し稚魚は海や湖に戻って成長する。卵はキャビアとして珍重される。蝶鮫とも書く。
<紫色は常用漢字>

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紛らわしい漢字 「矢シ」 と 「失シツ」

2018年01月21日 | 紛らわしい漢字 
  の上が突き抜けたかたちが失シツだが、この両字の関連はまったく無い。偶然似てしまったのである。矢は甲骨文字を見れば一目瞭然で矢のかたち。一方、失は、手から骨ベラがするりと落ちるかたちで、失う意。日本人は、この2字を間違えることはないが、非漢字圏の日本語学習者にとっては、矢の上が突き出ただけで何故意味がちがうのか首をかしげるだろう。そのときは、失の上が出ているのは、古代文字の5本指の変化したかたちなので、出ているのは中指だと説明したらどうだろう。

               シ <や>
 シ・や  矢部          

解字 甲骨文字は矢の象形で、上部は矢じり(矢の先端のとがった部分)、下部は矢羽を表している。金文は矢羽の上部に肥点がついた形。篆文はかなり変形し、現代字はさらに変化した矢になった。この字形は甲骨文字のおもかげを留めていないが、しいて言えば、上部の𠂉が矢じり、下部の𠆢が矢羽になる。矢は誓いをするときに用いるので、ちかう意もある。
意味 (1)や(矢)。「矢立やたて」「矢面やおもて」「矢鏃やじり」 (2)ちかう。「矢言シゲン
参考 矢は部首「矢や」となる。漢字の左辺について矢の意味を表す。常用漢字では、矢・知(「矢+口」の会意)・短タン(矢+音符「豆トウ」)・矯キョウ(矢+音符「喬キョウ」)の4字。その他に、矩(「矢+音符「巨キョ」)、矮ワイ(女+音符「委イ」)、などがある。

イメージ  「矢」 (矢・疾・嫉)  
音の変化  シ:矢  シツ:疾・嫉

 シツ・やまい・はやい  疒部          

解字 甲骨文字と金文は、大の形の人の脇に矢が刺さっている形で、矢の攻撃で傷を負う意。篆文は、「疒(やまい)+矢(や)」の会意形声で、矢傷のほか、矢のように速く進む急性や流行性の病気の意。また、矢の意から、はやい意味もある。
意味 (1)やまい(疾)。急性・流行性の病。「疾病シッペイ」(疾も病も、やまいの意)「疾疫シツエキ」(はやりやまい) (2)はやい(疾い)。「疾走シッソウ」「疾雨シツウ」(激しくふる雨)「疾風シップウ
 シツ・ねたむ・そねむ  女部
解字 「女(おんな)+疾(急性の病)」の会意形声。急にでる短気や短慮からくる感情をいう。女性に多いわけでないが、男性が漢字を作ったので女性に多いと感じたのだろう。
意味 ねたむ(嫉む)。そねむ(嫉む)。にくむ。「嫉妬シット」(うらやみねたむ)「嫉視シッシ」(ねたましく思って見る)


               シツ <うしなう>
 シツ・シチ・イツ・うしなう  大部         

解字 篆文は、「手(て)+乙オツ・イツ(骨べら)」の会意形声。乙は十干(甲・乙・丙・丁など10字からなる順序を表す字)の第二位に仮借カシャ(当て字)されているが、実際は骨べらと推定されている。失は手から骨べらが滑り落ちて、手にあったものを「うしなう」こと。転じて、忘れる・誤る・その場を去る意ともなる。現代字は失に変化した。この字の㇏(右はらい)が骨べらに当たり、残りの部分が古代文字の五本指の手が変化したかたち。
意味 (1)うしなう(失う)。なくす(失くす)。「失望シツボウ」「紛失フンシツ」 (2)忘れる。「失念シツネン」「忘失ボウシツ」 (3)誤る。しくじる。「失敗シッパイ」「過失カシツ」 (4)にげる。にがす。その場を去る。「失跡シッセキ」「失踪シッソウ

イメージ  
 「うしなう」 
(失・迭)
 「同音代替」(秩・鉄)
音の変化  シツ:失  チツ:秩  テツ:迭・鉄
うしなう
 テツ・かわる  之部
解字 「之(ゆく)+失(うしなう)」の会意形声。人が現在いる場所をうしない、その場を去り、別の人がくること。入れ替わる意。
意味 かわる(迭る)。かわるがわる。入れ替わる。「更迭コウテツ」(人がかわる、また、かえること)「迭立テツリツ」(かわるがわる立つ)
同音代替
 チツ  禾部
解字 「禾(こくもつ)+失(シツ)」の形声。シツは室シツ(むろ)に通じ、収穫した穀物を室(むろ)に積むこと。順序よく積むことから、重なった物事の順序を表わす。発音はシツ⇒チツに転音した。
意味 (1)物事の順序。次第。「秩序チツジョ」(①順序・次第。②社会のきちんとした状態) (2)くらい。官職。役人の俸給。扶持ふち。「秩禄チツロク」(官職によって支給される俸給)「俸秩ホウチツ
 テツ  金部
解字 「金(きんぞく)+失(テツ)」 の形声。旧字はテツで、「金+の右辺テツ(黒い)」の会意形声で黒い金属の意。鉄は、同じ発音の失テツに当てた文字。失に迭テツの音がある。
意味 (1)てつ(鉄)。くろがね。「鉄鉱テッコウ」「鉄器テッキ」 (2)刃物。兵器。「鉄血テッケツ」(兵器と兵隊)「寸鉄スンテツ」(小さい刃物) (3)鉄のようにかたい。「鉄人テツジン」「鉄腕テツワン
<紫色は常用漢字>

参考 音符「矢シ」
   音符「失シツ」

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音符「賛 サン」<財貨を差し出して助ける>と「讃サン」「鑽サン」

2018年01月13日 | 漢字の音符
[贊]  サン・たすける  貝部

解字 旧字は贊で「貝(財貨)+兟シン」の会意。兟は先(進む足さき)を二つ並べ「そろって進む」意。それに貝(財貨)を加えた贊サンは、財貨を持ち大勢がそろって進み、相手に差し出すこと。相手を助けて賛成する意となる。転じて、相手をたたえる意ともなる。新字体は旧字の兟⇒夫夫に変化した。夫に変わっても「夫(おとこ)二人が貝(財貨)を差し出してたすける」と解釈することができる。
意味 (1)たすける(賛ける)。力を添える。「賛助サンジョ」「協賛キョウサン」 (2)同意する。「賛成サンセイ」「賛同サンドウ」 (3)ほめる。たたえる(賛える)。「賛美サンビ=讃美)」

イメージ 
 「たたえる」
賛・讃
 旧字のに含まれる兟シンの意である「先へ進む」
音の変化  サン:賛・讃・鑽

たたえる
讃[讚] サン・ほめる・たたえる  言部
解字 旧字は讚で「言(ことば)+贊(たたえる)」の会意形声。言葉で相手をたたえること。人名用漢字であり新字体に準じ、賛を用いた讃が通用する。また、現代表記では賛に置き換えるものが多い。
意味 (1)ほめる(讃める)。たたえる(讃える)。「讃美サンビ=賛美」「賞讃ショウサン=賞賛」「画讃ガサン=画賛」(絵などに書き添える詩や文) (2)仏の功徳をほめたたえる言葉。「和讃ワサン」(和語で讃える)「梵讃ボンサン」(梵語で讃える。仏教の声明ショウミョウのひとつ) (3)地名。「讃岐さぬき」(香川県の旧国名=讃州サンシュウ

先に進む
鑽(鑚) サン・きり・きる  金部
解字 「金(金属)+贊(先へ進む)」の会意形声。先へ進んで穴をあける金属の工具。鑚は新字体に準じた異体字。
意味 (1)きり()。錐スイとも書く。物に穴をあける工具。 (2)きる(る)。きりもみする。ほる。うがつ。「(き)り火」(きりもみした熱で起こした火)「鑽灼サンシャク」(鑽はうがつ、灼は焼く。穴をうがって焼くこと。占いのため亀甲に穴をうがって焼くこと) (3)物事を深くきわめる。「研鑽ケンサン」(研究。学問など深くきわめる)
<紫色は常用漢字>

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紛らわしい漢字「朿シ」「刺シ」と「束ソク」「剌ラツ」

2018年01月12日 | 紛らわしい漢字 
  「朿シ」と「束ソク」の違いは、木のあいだに「朿シ」は冂が入り、「束ソク」は口が入っていることである。冂と口の意味の違いが、この両字の違いになる。

        シ <とげ>
 シ・セキ  木部

解字 甲骨文は矢の形が含まれているもの(第一字)があり、武器の一種の象形。先が尖った武器であろう。[甲骨文字辞典]によると、意味は①武人、②軍事攻撃や狩猟、③軍事駐屯地など。金文もほぼ同じ形だが、篆文で木が含まれる形に変化したので、後漢の[説文解字]は、木のトゲと解釈した。武器の意味は、古代文字が「朿(武器の一種)+貝(財貨)」である責セキに含まれるが、音符「朿シ」のイメージは「とげ」で解釈できるので(同音代替をのぞく)、意味も「とげ」であることから、刺(さす・とげ)の原字としてさしつかえないと思う。部首は木部。
意味 とげ。草木のとげ。のぎ(芒)。
覚え方 の中にとげ()がはえた、(とげ)  朿の筆順
 ※冂ケイは、とげの意味はないが、朿では字源からみてトゲ(武器の尖った先)の一部を表している。

イメージ 
 「とげ」
(朿・刺) 
 「同音代替(サク)」(策)
音の変化  シ:朿・刺  サク:策
と げ
 シ・さす・ささる・とげ  刂部
解字 「刂(刀)+朿(とげ)」の会意形声。とげのようにとがった刀。この刀でさすこと。また、トゲの意味で用いられる。
意味 (1)さす(刺す)。つきさす。ささる(刺さる)「刺客シカク」(暗殺をおこなう人)「刺激シゲキ」「刺繍シシュウ」「刺青シセイ・いれずみ」 (2)相手の弱みをつく。そしる。なじる。「風刺フウシ」 (3)とげ(刺)。とがったもの。はり。「有刺鉄線ユウシテッセン」 (4)(刺して)様子をさぐる。「刺探シタン」(漢方で針を刺して病気の所在を探る)「名刺メイシ」(①名前や来訪目的を木竹簡に書いて玄関で渡し面会を探るもの。②姓名・住所・職業などを印刷した紙片)「刺を通ず」(名刺を渡して面会を求める)「刺謁シエツ」(名刺を渡して目上の人に会う)
同音代替
 サク ・むち・ふだ・はかりごと  竹部
解字 「竹(たけ)+朿(サク)」の形声。サクは、A :責(サク・セキ)、B: 冊(サク・サツ)に通じる。
A:「竹+サク(責サク・セキ:せめる)」で、竹で馬を責める。むちの意。また、竹のむちが転じて、つえの意ともなる。
B:「竹+サク(冊サク・サツ:ふだ)」で、竹のふだ、竹簡・文書の意。
意味 
A:(1)むち(策)。むちうつ。「策馬サクバ」(馬をむちうつ) (2)つえ。つえをつく。「散策サンサク」(杖をついて散歩するようにぶらぶら歩く) 
B:(3)ふだ(策)。ふみ。書きつけ。「簡策カンサク」(手紙)「対策タイサク」(相手の策(ふみ)に対応する。転じて、相手や事件の状況に応じてとる方法) (4)はかりごと(策)。「策略サクリャク

        ソク <木をたばねる>
 ソク・たば  木部

解字 甲骨文字から現代字まで、木の枝と根本のあいだに〇や口を描き、(複数の)木を縄などでたばねるさま。甲骨文字では2か所をたばねるものもある。木以外にも、糸や髪などを紐などでたばねる意となる。
意味 (1)たばねる(束ねる)。たば(束)。ひとまとめに括ったもの。「束髪ソクハツ」「束縛ソクバク」「束子たわし」 (2)つなぎとめる。「拘束コウソク」(自由に行動させない) (3)[国]つか(束)。①指4本を握った幅。②短い時間。「束の間」③短い木材。「束柱つかばしら」(床の下などに立てる短い柱)

イメージ 
 「たばねる」
(束)
 束ねるとき「引き締める・つめる」(速・勅)
音の変化  ソク:束・速  チョク:勅
引き締める・つめる
 ソク・はやい・はやめる・はやまる・すみやか  之部
解字 「之(ゆく)+束(引き締める・つめる)」 の会意形声。行く行程で、かかる時間を引き締める(つめる)こと。時間を短くすることから、はやく行く意となる。
意味 (1)はやい(速い)。すみやか(速やか)。「速達ソクタツ」「速断ソクダン」 (2)はやさ「速度ソクド」「速力ソクリョク
[敕] チョク・みことのり  力部
解字 「力(ちから)+束(引き締める)」 の会意。力を込めて引き締めること。旧字は敕で「攵(うつ)+束(引き締める)」 で、打って引き締める意。「勅」は、もと「敕」の俗字として用いられていた。
意味 (1)いましめる。「勅戒チョッカイ」(いましめ) (2)みことのり(勅)。天皇のおおせ。「勅命チョクメイ」「勅語チョクゴ」(3)天皇に関係する物事に添える語。「勅撰チョクセン」「勅使チョクシ

        ラツ <はげしい>
 ラツ  刂部          

解字 「束ソク+刂(刀)」の会意。束はものをしっかり束ねている形。そこに刀が付き、「まとまっていたものが切り離される」「統制がとれない・そむく」意となる。
意味 (1)もとる。たがう。そむく。 (2)勢いよくとびはねるさま。「溌剌ハツラツ
注意 「刺」(さす)と間違いやすいので注意。

イメージ 
 まとまっていたものが「とびちる」(剌・溂・喇)
 飛び散る様子から「はげしい」(辣)
音の変化  ラツ:剌・溂・喇・辣
とびちる
 ラツ  氵部
解字 「氵(水)+剌(とびちる)」の会意形声。水のしぶきがとびちるさま。勢いのよいさま。
意味 勢いのよいさま。「溌溂ハツラツ」(魚が勢いよくはねるさま。生き生きと元気なさま=溌剌)
 ラツ  口部
解字 「口(くち)+剌(とびちる)」の会意形声。口から勢いよく言葉が出ること。
意味 (1)おしゃべり。はやくち。 (2)外国語の音訳字。「喇叭ラッパ
はげしい
 ラツ  辛部
解字 「辛(はり・からい)+剌の略体(はげしい)」の会意形声。辛は針の形で、針が舌をさすような辛さの意。辣は、はげしいからさを表わす。また、物事がきびしい意。
意味 (1)からい。ぴりっとからい。「辣油ラーユ」(からい調味料。ラの発音は現代中国音) (2)きびしい。はげしい。むごい。「辣腕ラツワン」(うできき。すご腕)「辛辣シンラツ」(手厳しい)
覚え方 らばで向かおう、腕家ラツワンカには辛シンラツに (「漢字川柳」を参考)
<紫色は常用漢字>

参考 音符「朿シ」
    音符「束ソク」


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紛らわしい漢字 「旋セン」 と 「施シ」

2018年01月08日 | 紛らわしい漢字 
  「旋セン」と「施シ」に共通する部分は「方+𠂉」の部分。これは旗キ(はた)の略体で、旗の意である。違うのは旋センの「疋ひき」と、施シの「也」、この二字の意味がわかれば、両字の違いは簡単に分かる。

      ショ・ソ <あし>
 ショ・ソ・ヒキ・ヒツ・ひき  疋部ひき

解字 甲骨文と篆文は足と同形で、脚の下半部の象形。現代字は上部がフに変化した疋になった。中国で匹(ひき)の俗字として用いられたため、匹の意味で使われる。疋は部首となる。
意味 (1)ひき(疋)。匹(ひき)。布の長さの単位。動物を数える語。昔の金銭の単位。 (2)ひき(疋)。匹(ひき)。対になる。二つが並ぶ。 (3)あし(足)。

イメージ  
 匹の意の「ひき」(疋)
 本来の意味である「あし・あるく」(旋)
音の変化  ショ・ソ:疋  セン:旋  
 
あし・あるく
 セン・めぐる 方部
 
解字 甲骨文は吹き流しのついた旗と進行を意味する止(あし)が描かれ、軍旗を持って進む様子を表しており、原義は軍事進出の意[甲骨文字辞典]。金文は止が吹き流しの下にきた形となり、篆文は、旗竿⇒方、なびく吹き流し⇒𠆢、止⇒足に変化。現代字は「方𠂉(旗の略体)+疋」の旋になった。当初、軍旗を持ってすすむ意であったが、のち、(戦場を)めぐる・めぐってもどる意となった。
意味 (1)めぐる(旋る)。ぐるぐるまわる。「旋回センカイ」「旋転センテン」 (2)めぐってもどる。かえる。「凱旋ガイセン」(戦いに勝ってかえる) (3)相手との間を行き来する。とりもつ。「斡旋アッセン」(人と人のあいだをとりもつ)「周旋シュウセン」(①土地・家屋の売買、雇用などで人と人のあいだをとりもつ。②元の意は、ぐるぐるめぐる)


     ヤ <へび>
 ヤ・なり  乚部   

解字 この文字については、水器の形[字統]、平らにのびたサソリの形[学研漢和]などの説がある。しかし、金文の形が、它(へび)と同じであり、音符に現れるイメージも、ヘビと一致することから、ヘビを表した象形と考えられる。しかし、「也」は仮借カシャ(当て字)され、断定の助字「なり」や感嘆の助字「や」などとして用いられる。
意味 (1)なり(也)。~である。断定の助字。 (2)や。か。かな。感嘆・疑問・反語の助字。

イメージ 
 「へび」
(也) 
 ヘビの特徴である「うねる」(施)
音の変化  ヤ:也  シ:施
うねる
 シ・セ・ほどこす  方部
解字 「旗の略体(方+𠂉)+也(うねる)」の会意。吹き流しがうねりながらなびく旗のこと。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうこと。また、「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。
意味 (1)旗がなびく。(2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」「施政方針シセイホウシン」「施工セコウ・シコウ」(工事をおこなう)「施行シコウ」(①実施する。②法律の効力を発生させる)「施術セジュツ」(手術などを実施すること) (3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける) (4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)「施主セシュ」(①寺や僧に物を施す人。②法事や葬式の当主。③建築主)
<紫色は常用漢字>

参考 音符「疋 ショ・ソ」
   音符「也ヤ」


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紛らわしい漢字 「遣ケン」 と 「遺イ」

2018年01月02日 | 紛らわしい漢字 
  「遣ケン」と「遺イ」はよく似ている。違いは遣ケンに含まれる㠯(祭肉=軍隊)と、遺に含まれる貝(かい)の違いだけ。ポイントは㠯と貝の上にある「中+一」のかたち。これが何を意味するかが分かれば、これらの字は理解できる。

    ケン <軍隊をつかわす>
 ケン・つかわす・つかう・やる  辶部   

解字 甲骨文は祭肉(𠂤タイ)を両手で持つかたちで祭祀名として用いられている[甲骨文字辞典]。金文は、さらに彳(ゆく)と止(あし)が加わり、祭肉を持って行くかたち。この祭肉は軍を意味することが多く、金文で軍をさしむける(派遣する)意で使われる。篆文は「彳+止」が辵チャクになり、両手の間に逆Y字形が入り、祭肉は阜に変質した。現代字は、辵⇒辶(ゆく)になり、その横に「中+一」(両手で持つかたちの変化形)+㠯(祭肉)」がついた遣となった。意味は軍の派遣のほか、つかわす・さしむける意となる。祭肉は本来、𠂤タイで表される(例:追)が、遣の字では略体の㠯になっている。(この略体は官などでも使われている)
意味 (1)つかわす(遣わす)。やる(遣る)。さしむける。「派遣ハケン」「遣唐使ケントウシ」 (2)[国]つかう(遣う)。使用する。「金遣(かねづか)い」「小遣(づか)い」(=小遣い銭)「仮名遣(かなづか)い」 (3)~しむ。せしむ。使役の助字。


    キ <とうとい> 
 キ・たっとい・とうとい・たっとぶ  貝部 

解字 篆文の上部は、逆Y字形のものを両手で持つかたち。遣ケンの字では、下の㠯(𠂤タイの変化形=祭肉)を両手で持つ形であり、貴では、下の貝(財貨)を両手で持つ形となる。貴重なものを両手で持つことから、転じて、とうとい意となる。現代字は上部が「中+一」の形に変化した。つまり、「中+一」は、その下にあるものを両手でもつ形である。
意味 (1)とうとい(貴い)。たっとい。身分や価値が高い。「高貴コウキ」「貴金属キキンゾク」 (2)たっとぶ(貴ぶ)。とうとぶ。 (3)相手への敬意を表す語。「貴殿キデン

イメージ  
 「貴重なもの」
(貴・遺・潰)
音の変化  キ:貴  イ:遺  カイ:潰

貴重なもの
 イ・ユイ・のこす  辶部
解字 「辶(もってゆく)+貴(貴重なもの)」の会意形声。貴重なものを持って行き人に贈り、そこにのこす意。人に贈ると、相手の方にものが残り、自分のほうにはなくなるという二つの側面がある。
意味 (1)おくる。やる。 (2)のこす(遺す)。のこる。「遺産イサン」「遺書イショ」「遺言ユイゴン」「遺憾イカン」(遺はのこる、憾は失望する。失望がのこる。とても残念だ) (3)おとす。わすれる。「遺失物イシツブツ」 (4)すてる。「遺棄イキ
 カイ・つぶす・つぶれる  氵部
解字 「氵(みず)+貴(貴重なもの)」の会意形声。貴重なものが洪水で破壊されること。
意味 (1)つぶす(潰す)。つぶれる(潰れる)。ついえる。「潰滅カイメツ」(こわれてなくなる) (2)敗れる。「潰走カイソウ」(敗れて逃げる)
<紫色は常用漢字>

参考 音符「遣ケン」
   音符「貴キと遺イ」

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