漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「発ハツ」<出発する> と「廃ハイ」

2016年05月09日 | 漢字の音符
 ハツ・ハチ  癶部はつがしら    

解字 甲骨文字は左右の両足(止)をそろえた形。両足をそろえて出発する意となる。金文・篆文は原型を残しているが、隷書(漢代の役人が主に使用)から大きく変化し、現代字は癶の形になった。癶は部首の「はつがしら」となり、発・登などの字で用いられる。
意味 ゆく。

     ハツ <弓矢を放ってでかける>
[發] ハツ・ホツ・たつ  癶部はつがしら 

解字 篆文・旧字は發で、「癶(でかける)+弓(ゆみ)+殳(うつ動作)」 の会意。癶の初形は両足をそろえて出発する形。「弓+殳」は弓を射る形。両者を合わせた發は、弓で矢を放って出発する形で、攻撃に先だってまず矢を放って開戦を告げる意[字統]。
新字体は旧字の發⇒発に変化する。
意味 (1)(矢を)はなつ。「発射ハッシャ」「発砲ハッポウ」 (2)たつ(発つ)。でかける。「出発シュッパツ」「発車ハッシャ」 (3)出る。生じる。「発生ハッセイ」「発想ハッソウ」 (4)ひらく。あける。「発見ハッケン」「開発カイハツ」 (5)あらわれる。あばく。「発露ハツロ」「発覚ハッカク

イメージ 
 「弓矢を放ってでかける」
(発・廃・癈) 
 矢が「とびでる」(溌・撥・醗)
音の変化  ハツ:発・溌・撥・醗  ハイ:廃・癈

弓矢を放ってでかける
 ハイ・すたれる・すたる  广部
解字 旧字は廢で、「广(やね)+發(弓矢を放ってでかける)」 の会意形声。弓矢の攻撃を受けた家。攻撃を受けてだめになること。新字体は廃に変化。
意味 (1)だめになる。すたれる(廃れる)。すたる(廃る)。「廃屋ハイオク」「廃墟ハイキョ」「廃人ハイジン=癈人」 (2)すてる。やめる。「廃止ハイシ」「廃刊ハイカン
 ハイ  疒部
解字 「疒(やまい)+發(=廃。だめになる)」 の会意形声。治る見込みのない重いやまいをいう。常用漢字でないため、廃に置き換えることが多い。
意味 不治のやまい。「癈疾ハイシツ」(治らない病気。=廃疾)「癈人ハイジン」(疾病や傷害で通常の生活を営めなくなった人=廃人)

とびでる
 ハツ   氵部
解字 旧字は潑で、「氵(水)+發(とびでる)」 の会意形声。水が勢いよくあちこちへとび出ること。
意味 (1)水がとびちる。水をまき散らす。 (2)勢いのよいさま。「溌溂ハツラツ」(生き生きとして元気のよいさま=溌剌)「活溌カッパツ」(=活発)
 ハツ・ハチ・バチ・はねる  扌部
解字 「扌(手)+發(とびでる)」の会意形声。手の指ではじいて物がとびでること。また、指や手の動きで物をはじくこと。古くは、「扌(手)+發(弓矢をはなつ)」 で、弓矢をはなって乱世を治める意があった。
意味 (1)はねる(撥ねる)。はじく。はねかえす。「撥条ハツジョウ・ぜんまい」(はねかえる力を利用する板状や線状のもの)「撥バチ」(琵琶や三味線の弦をはじく道具)「撥音ハツオン」(日本語の「ん」の発音をいう。「ん」の字は書く時、最後に撥ねるので、ついたといわれる)「撥鏤バチル」(撥は、はねる。鏤は、ちりばめる。象牙の表面を緑や紅色などに染め、上から撥ねるように彫って模様を鏤(ちりば)め、象牙の地色を模様として浮き上がらせる技法。象牙の彫細工のひとつ) (2)治める。「撥乱ハツラン」(乱を治める)
 ハツ・かもす  酉部
解字 旧字は醱で「酉(さけつぼ)+發(とびでる⇒生じる)」 の会意形声。さけつぼの中で発酵がはじまること。
意味 かもす(醗す)。酒をかもす。「醗酵ハッコウ」(=発酵。酒がかもされること)
<紫色は常用漢字>

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音符「隼シュン」<はやぶさ>と「準ジュン」「准ジュン」

2016年05月02日 | 漢字の音符
 シュン・ジュン はやぶさ  隹部                 

解字 「隹スイ(とり)+ 一(まっすぐに)」の会意。隹の足に一を加えて、足をまっすぐ横にして飛ぶ鳥を示す。ハヤブサは極めて速くとぶので、その飛ぶ姿を表わした。現代字は「隹+十」の形になっている。

意味 (1)はやぶさ(隼)。ハヤブサ科の鳥。速く飛ぶので古来鷹狩りに用いられた。 (2)勇猛な人のたとえ。「隼人はやと」(古代九州南部にいた勇猛な民族)

イメージ
 「はやぶさ」
(隼)
 「同音代替」(準・准)
音の変化  シュン:隼  ジュン:準・准

同音代替
 ジュン・みずもり  氵部
 
              中国古代の水準器
解字 「氵(みず)+隼(ジュン)」 の形声。ジュンは順ジュン(したがう)に通じる。溝を掘った細長い材に水を注ぎ、中の水が水平にしたがうことを利用して水平面を測量する器具をいう。
意味 (1)みずもり(準)。水平をはかる器具。「水準器スイジュンキ」「準縄ジュンジョウ」(準は水準器、縄は墨縄。二つをあわせ、のり・てほんの意となる) (2)めやす。のり。法則。「準則ジュンソク」「基準キジュン」「標準ヒョウジュン」 (3)標準にする。よりどころ。なぞらえる(準える)。「準拠ジュンキョ」(よりどころ。標準としてそれにしたがう) (4)そなえる。「準備ジュンビ
 ジュン・なぞらえる  冫部
解字 準の略字。準の意味(3)の「なぞらえる」意から、ある役職になぞらえる地位となり、その役職と同等であるが実質的にはその下になる地位をいう。おなじく「標準にする」意から、規定に準拠して処置することをいい、転じて「ゆるす・認める」意となる。いずれも官庁用語・法律用語として用いられる。
意味 (1)なぞらえる(准える)。そのものに准ずる。「准将ジュンショウ」(将に准ずる=副将)「准教授ジュンキョウジュ」(教授に准ずる地位) (2)ゆるす。認める。「批准ヒジュン」(条約を国家として認め、最終的に確定すること)「准許ジュンキョ」(認めて許す)
<紫色は常用漢字>

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