漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「間カン」 <門の扉のすきま>

2015年06月30日 | 漢字の音符
[閒] カン・ケン・あいだ・ま  門部       

解字 金文・篆文・旧字まで、門のとびらの隙間から月の光がさしこんでいる形の象形。ほそい隙間を表わす。新字体で門の内側が日に変化した。
意味 (1)あいだ(間)。ま(間)。物と物とのあいだ。すきま。短い時間。「間隔カンカク」「間隙カンゲキ」「瞬間シュンカン」 (2)すきをねらう。うかがう。「間者カンジャ」「間諜カンチョウ」(スパイ) (3)部屋。「居間いま」 (4)ケン。長さの単位。

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 「すきま・あいだ」
(間・簡・澗)
 「あいだ(時間)」(癇)
 「同音代替」(燗)
音の変化  カン:間・簡・澗・癇  ラン:燗

すきま
 カン・ふだ  竹部
解字 「竹+間(すきま)」の会意形声。文字を書いた竹の札を一枚一枚紐で綴じたもの。竹と竹の間に隙間があるので簡と書く。また、竹簡の一枚を簡単といい、手軽な意となる。
意味 (1)ふだ(簡)。文字をしるした木や竹のふだ。「木簡モッカン」「竹簡チッカン」 (2)書物・手紙・文書。「書簡ショカン」 (2)手軽な。おおまかな。「簡単カンタン」「簡易カンイ」「簡素カンソ」 (3)えらぶ。よりわける。「簡閲カンエツ」(えらび調べる)
 カン・ケン・たに   氵部
解字 「氵(みず)+間(すきま・あいだ)」の会意形声。山と山の間に流れる川の意で、たにやたにがわを表す。
意味 たに(澗)。たにみず。たにがわ。「澗水カンスイ」(谷川の流れ)「澗谷カンコク」(澗も谷も、たにの意)

あいだ(時間) 
 カン・ひきつけ  疒部
解字 「疒(やまい)+閒(あいだをあける)」の会意形声。筋肉のひきつけが反復して起きる間欠性ケイレンの症状。
意味 (1)ひきつけ。発作的に筋肉がひきつる病気。(2)感情がはげしく、すぐかっとなる気質。「癇癪カンシャク」(怒りやすい性質。また、その発作)「癇癪玉カンシャクダマ」(火薬を砂にまぜて紙に包んだおもちゃ。地面に投げると大きな音をたてる)

同音代替
 ラン・かん  火部
解字 「火(ひ)+閒(ラン)」の形声。ランは爛ラン(煮る)に通じ、火で煮ること。閒カンにはランの発音はなく、爛ランを書き誤った異体字とされる。日本ではカンと発音し、お酒をあたためる意で使われる。
意味 (1)煮る。くずれるほど煮込む。 (2)[国]かん(燗)。酒をほどよくあたためること。「燗酒かんざけ」(温めた日本酒)「熱燗あつかん
覚え方 ひ()で、すこしのあいだ()、酒をあたため燗酒にする。
<紫色は常用漢字>


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音符 「采サイ」<つみとる> と「採サイ」「菜サイ」「彩サイ」

2015年06月26日 | 漢字の音符
 サイ・とる  爪部または木部 

解字 甲骨文は実のなっている木の上に手先を描いた形で、木の実をとる意。金文以降は「手先+木」の形になった。木の実を指でつかんでとること。採の原字である。手先は現代字で「ノ+ツ」の形になっている。
意味 (1)とる(采る)(=採)。つみとる。えらびとる。(=採)(2)いろどり。あや。もよう。(=彩)(3)すがた。かたち。ようす。「喝采カッサイ」(やんやとほめそやす)「風采フウサイ」(人のみかけの姿)(4)[国]さい。大将が軍を指揮するとき使う道具。「采配サイハイ
意味の(1)と(2)は、のちに手へんや彡(模様)をつけた字に代替えされ、現在は本来の意味と少し異なる(3)と(4)になっている。

イメージ 
 木の実を「つみとる」(采・採・菜)
 良い実を「えらびとる」(彩・綵)
音の変化  サイ:采・採・菜・彩・綵

つみとる
 サイ・とる  扌部
解字 「扌(手)+采(つみとる)」の会意形声。手でつみとる意。
意味 (1)とる(採る)。つみとる。とり入れる。「採光サイコウ」「伐採バッサイ」(2)集める。「採集サイシュウ」「採取サイシュ」(3)選び取る。「採択サイタク」「採用サイヨウ
 サイ・な  艸部
解字 「艸(くさ)+采(つみとる)」の会意形声。つみとった野草や野菜。
意味(1)な(菜)。つみな。なっぱ。「野菜ヤサイ」「菜園サイエン」(2)あぶらな。「菜種油なたねあぶら」(3)おかず。料理。「菜料サイリョウ」「菜館サイカン

えらびとる
 サイ・いろどる  彡部
解字 「彡(模様)+采(えらびとる)」の会意形声。色を選んで模様をつける。
意味 いろどる(彩る)。いろどり。「彩色サイシキ」「色彩シキサイ」「彩雲サイウン」(ふちなどが美しく色づいた雲)
 サイ・あや・あやぎぬ  糸部
解字 「糸(いと)+采(えらびとる)」の会意形声。色糸を選んで模様のある絹を織ること。常用漢字でないため、采の上部が古形を残している。
意味 (1)あやぎぬ。模様のある絹。五色の色どりのある織物。また、その衣服。「綵衣サイイ」「綵帳サイチョウ」(美しい色絹のとばり・カーテン)。 (2)あや。色どり。模様。=彩。「綵房サイボウ」(美しく色どった部屋)「綵絵サイエ」(彩色絵)「動植綵絵ドウショクサイエ」(江戸時代の画家・伊藤若冲の代表作の一つ。30幅からなる動物と植物を描いた絹本著色チャクショク画)
<紫色は常用漢字>

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漢字音符とは何か ~右文説を超えて~

2015年06月18日 | 漢字の音符
音符は漢字の発音記号
 漢字の音符(声符とも言います)とは、漢字の中に含まれている発音をあらわす部分をいいます。別の言葉でいえば漢字の発音記号といえるでしょう。漢字はその中に発音を表す部分を潜在的に持っています。
 もっとも分かり易い音符の例を挙げましょう。「喬キョウ」です。喬を含む字は、喬キョウ・橋キョウ・僑キョウ・嬌キョウ・蕎キョウ・驕キョウ・轎キョウ・矯キョウ、のように発音がすべてキョウです。したがって喬は漢字の一部になるとき、キョウという発音をつかさどる発音記号であることが分かります。

 同じような例に、次のような音符があります。
化カ:花カ・貨カ・靴カ・訛カ・囮カ。
可カ:呵カ・哥カ・歌カ・苛カ・河カ・舸カ・柯カ・何カ・荷カ
我ガ:餓ガ・峨ガ・娥ガ・蛾ガ・俄ガ・鵝ガ
中チュウ:仲チュウ・衷チュウ・狆チュウ・沖チュウ・忠チュウ
帝テイ:締テイ・蹄テイ・諦テイ・啼テイ

 しかし、このように音符がすべて同じ発音になる例はそれほど多くありません。ほとんどの音符はある種の変化をします。例えば、
ホウは、ホウ:倣・彷・舫・芳・放・訪、ボウ:房・防・紡・妨・坊・肪
ハンは、ハン:反・販・叛・坂・阪・板・版・飯、ヘン:返
は、カ:伽・跏・嘉・架・茄・迦・珈、ガ:賀・駕、ケ:袈
となり、清音と濁音への分化(方ホウ)、ハ行内での変化(反ハン)、清音と濁音+カ行内の変化(加)となります。

 さらに、もっと複雑な変化もあります。例えば、
ショウは、ショウ:嘗・賞・償・掌・裳、ジョウ:常、トウ:当・党・蟷、ドウ:堂・瞠、となりサ行のほかタ行へも変化しています。
カクは、カク:各・格・閣・喀、ガク:額、キャク:客、キュウ:咎、ラク:落・絡・烙・珞・駱・酪・洛、リャク:略、ロ:賂、となり、カ行とラ行にわたり広範に変化しています。

 山本康喬氏は、約6500字を収録する『漢字音符字典』(東京堂出版)で音符の発音変化を、①すべて同じ場合を純粋家族、②一字のみ異なる発音がある場合を紅一点家族、③二音から五音がまじる場合を、二音~五音家族、④六音以上を大家族、⑤会意文字を含むなど、まとまりを欠く場合を雑居家族、とそれぞれ命名し各音符ごとに表示しています。
 その内訳は全体927音符のうち、①の純粋家族が一番多く256字で全体の28%、②の紅一点が141字で15%、また、純粋と紅一点、それに二音・三音までの合計は723字となって全体の78%に達し、音符変化は三音までが大部分を占めていることが分かります。このように音符の変化は一様ではありませんが、もととなる発音を核にしてその周辺で複数の音に変化し、その漢字の発音を司っています。

音符になるのはどんな漢字? 
 では、音符となるのは、いったいどんな漢字なのでしょうか? 『漢字音符字典』に収録されている音符を分析すると、音符になるのは次の二種類の漢字であることが分かります。
 一つは象形文字です。象形文字は物のかたちを絵のように描いた一種の絵文字で、漢字のもっとも原初的な形態です。人体やその部分を表す、人・大・手・目・耳・足、動物を表す、犬・牛・羊・虎・馬など、多くの象形文字がありますが、ほとんど音符になります。なお、指示文字(未・末・本など)も音符になりますが、数が少ないのでここでは象形文字に含めておきます。

 二つめは会意文字です。会意文字というのは象形文字の字形が組み合わさって、さらに複雑な意味を表す文字のうち、その発音がいずれの象形文字の発音も受け継いでいない文字をいいます。例えば、付フは「イ(人)ジン+寸スン」の組み合わせ字で、人に寸(て)を「付ける」意味ですが、付の発音はイジンと寸スンのいずれの発音も受け継いでおらず新しい発音になっています。「会意」というのは、二つの漢字の味が出ってが新しい意味ができるという主旨ですが、意味だけでなく発音も新しくなることが特徴といえるでしょう。(のち、象形文字と会意文字がむすびついて、さらに新しい会意文字ができる場合もあります)。
 因みに、象形文字同士(または、象形文字と会意文字)がむすびついて一方の文字の発音が引き継がれている字を形声文字といいます。形声文字はその中に発音を表す音符が含まれています。

音符の主役は個性のある会意文字
 上記で、音符になれる漢字として象形文字と会意文字を挙げました。象形文字は実在する物をかたどっていますから、存在感があり強烈な個性をもつ字です。しかし、主要な象形文字は造字能力が高く、たくさんの文字をつくるため部首として働くことが主になります。先に挙げた象形文字の、人体を表す、人・大・手・目・耳・足、動物を表す、犬・牛・羊・虎(虍)・馬は、すべて部首になっています。部首になった象形文字もその発音を生かして音符になります。約220の部首のうち166字が音符にもなります(音符となった字は、別の部首を持ちます)。しかし、音符としての働きは限定的です。
 一方、象形文字同士が結びついた会意文字は、新しい意味と発音をもちますので個性の強い文字です。象形文字だけでは表現できない多くの概念をあらわすことが可能になります。こうした会意文字のすべてが音符になるのではありませんが、強いメッセージをもち拡張性のある会意文字は音符となって活躍します。

音符は意味も持つ
 音符は組み合わせ漢字となったとき、その発音を受け持ちますので、一般には発音を分担しているだけと考えられていますが、その多くは意味も持っており、発音だけの音符は少数派です。それは音符の成り立ちから見ると当然と思われます。音符になるのは象形文字と会意文字であり、両者は強烈な個性をもつ文字です。この個性をもつ音符が他の文字と組み合わさったとき、新しい概念が生まれます。この過程は会意文字の成り立ちと同じです。しかし、音符は新しくできた組み合わせ漢字の発音にも影響を与えているのです。

 私はこの考え方をもとに、音符となる漢字を古代文字まで遡ってその成り立ちを調べたところ、音符には明確なメッセージをもつものが多数存在することが分かりました。

例えば、最初に例をあげた喬キョウは、金文では高い建物の屋根に曲がったポール状の飾りがついた形で、「たかい・たかくまがる・まがる」メッセージを持ちます。また、音符「化」は、左は立った人、右は逆さになった人を合わせた会意で、立った形から逆さへと姿を変えることを示し、「かわる・かえる」メッセージを持ちます。これらの音符が表すメッセージを部首が示す意味と結びつけることにより、多くの組み合わせ漢字の意味が導かれてきます。このように発音と意味の両方が生かされた音符を会意形声文字といいます。

右文説
 私のこのような考え方は、中国で「右文説(うぶんせつ)」と言うのだそうです。(以下、「右文説」についてはネットなどからの引用です)。右文説とは、形声文字で同一の音符をもつ文字群には共通する基本的な意味が想定できるとする考え方で、最も古くは宋の沈括(シンカツ)が著した『夢渓筆談ムケイヒツダン』に引用されている王聖美という人が唱えた説とされます。その例えとして挙げられているのが「戔セン」で、「浅セン(淺)」(水量がすくない)「銭セン(錢)」(額面の小さなおかね)「賤セン」(財貨のすくない者)「残ザン(殘)」(わずかに残った骨)の音符「戔セン」には、「すくない・わずか」という共通の意味が見て取れるという考えです。音符は通常、文字の右側に配置されることが多いので、この理論を「右文説」といいます。

 同時代の文学者・王安石も、この説を支持していましたが、あるとき高名な詩人である蘇東坡に「波とは水の皮である」と語ったところ、蘇東坡から「それなら滑は水の骨か」とからかわれたという話があります。このエピソードはのちに「何でも右文(音符)に意味をもたせると王安石のように恥をかくよ」という警句となって後世に伝わっているように思います。だから「音符に意味がある」と主張すると、「ああ右文説か」と、一蹴されることになります。

 しかし、王安石が揶揄された「滑は水の骨か」は本当におかしいのでしょうか? そのためには音符「骨コツ」を分析し、この文字が発するメッセージを読み取る必要があります。骨は、冎と月(にく)からできています。は手足の関節の骨が連結したかたちです。そこに月(きんにく)がついた骨は、筋肉によって関節の骨が自由に動くさまを表す字なのです。意味は人や動物のホネになっていますが、その陰には骨が筋肉によって自由に動くイメージがあります。ですから水がついた滑カツは、表面が水にぬれた上を自由にうごく⇒すべる・なめらか、となるのです。ちなみに犭(犬)がついた猾カツは、犬が自由に動いて逃げ回るさまを人に例えて、ずるい・わるがしこい意となります。

右文説を超えて
 右文説はその後、清代になって考証学が起こり、その学者たちが「声に因りて義を求む」(因聲求義)といったテーマで右文説を研究深化させ、さらに音符(形声符)にこだわらず、音符のもつ純粋な発音そのものが意味をあらわすという方向に進んだそうです。日本では藤堂明保氏が字体にかかわらず、音声に共通語源を求める説を展開しました。

 私は音符とそれを表す字体は一体のものと考えており、字体を離れて発音だけを考察する理論には賛成しません。しかし、音符の組み合わせ字の中には、音符のメッセージだけでは解けない文字があることも事実です。例えば、音符「旦タン」は太陽が地平線から現れるかたちで「あらわれる」イメージを持ちますが、担タン(かつぐ・になう)や、胆タン(きも)は、「あらわれる」イメージでは説明できません。
 しかし、担・胆を調べると旧字は、擔タン・膽タンであることが分かります。音符「詹タン(=儋)」は、かめ・にないがめを表します。ですから、担は扌(手)でかめをになう、胆は月(からだ)の中にあって胆汁をためておく器官(かめ)の意となります。つまり、旦は同じ音である詹タンの代わりをしているわけです。これを同音代替といいます。この例のように音符は他の画数の多い音符などの代替(かわり)として使われることがしばしばあります。旦の場合は、もとの字が旧字の中に残っていますが、無意識のうちに同音の文字を使用する同音代替も多いと思います。

 最後に音符の音だけを用いる純粋な形声文字があります。外国語の音訳や外国地名などに用いられます。仏陀ブッダ(Buddhaの音訳。ほとけ)の陀。刹那セツナ(きわめて短い時間。梵語)の刹セツ。耶蘇ヤソ(キリスト)の耶などです。また、鳩ク・はと(九ク・クとなく鳥)、鵯ヒ・ひよどり(卑ヒーとなく鳥)のように鳴き声を表すこともあります。

 このように音符を、(1)意味をもってメッセージ(イメージ)を発する場合。(2)他の同じ音の代わりをする同音代替。(3)純粋に音だけを表す場合。の三つを想定して考察すると、ほとんどの音符についてその役割を理解することができます。

音符の見分け方
 では、漢字のなかの音符を見分けるにはどうしたらいいでしょうか。一番簡単な方法は、部首の反対側に注目することです。部首の相方はほとんど音符です。例えば、源の原、理の里、社の土などで、音符が偏(左辺)と組み合わさる文字が一番多くあります。また、旁(右辺)や冠(上辺)、脚(下辺)などになる部首の相方もほとんど音符です。顧の雇、郵の垂、宙の由、烈の列などです。

 部首というのは字典を編集するとき、漢字を配列する方法のひとつとして考案されたものです。漢字の大多数を占める組合せ漢字を配列する際、共通部分に注目し、それらを集め「部」として一括りにしたものが出発でした。その一括りにした部のトップ(首)にくるものが部首ですから、部首とは部のなかをつらぬく共通字のことです。この共通字は、(1)意味をもつ文字。(2)漢字の一部を抜き出した記号のような文字、の二種類があります。部首には(1)のタイプが非常に多いですから、ほとんどが意符となります。この意符(部首)と組み合わさる文字は必然的に発音を司る音符が多くなるわけです。

 しかし、部首の相方が必ず音符になるわけではありません。宿は部首が宀で、相方は「人+百」ですが音符にならず、宿だけで音符になります。また、家は相方の豕シは音符になりますが、家カだけでも音符になるので注意が必要です。私のブログ「漢字の音符」では、検索サイトで「漢字の音符」と入れてから検索する漢字を一字入力すると、その漢字の音符が上位で表示されます。

常に音符を意識する
 漢字を覚えるコツのひとつは、常に音符を意識することです。新聞や雑誌を読んで気になった漢字や、テレビの漢字クイズ番組で書けなかった漢字などをメモしておきます。受験勉強している人なら問題集で間違えた漢字は絶好のチェック候補です。
 次はチェックした漢字を字書(電子辞書、ケータイ、スマホなど何でも結構)で引いて正しい漢字を確認します。次に、この漢字の音符は何かを考えます。この作業は漢字を分解することです。漢字はいろいろの部品から成り立っていますから、どの部品の集まりがまとまりとして有益なのか判断する作業になります。

 一度、自分で漢字を分解してみてから、このブログ「漢字の音符」で調べてみてください。何が音符なのかすぐ分かります。すると音符がこの文字で果たしている役割を確認することができ、その文字全体の理解が深まります。
 また、音符を意識して漢字を調べるメリットは、音符を仲立ちにして漢字を芋づる式に理解できることです。例えば、ひとつの漢字「橋」を音符で調べると、喬・僑・嬌・蕎・驕・轎・矯という思いがけない漢字のつながりが現われます。これらは「高い・高くまがる・まがる」イメージでつながりを持って覚えられます。まさに一石二鳥どころか一石七鳥となるのです。

 私のブログ「漢字の音符」は、音符には意味もある、という考え方で始めた実験的試みです。2013年3月に開始し、2年後の2015年4月に4000字余りを収録し、ひとくぎりをつけました。音符のもつメッセージを「イメージ」として類型化し、それを部首などの意符と突き合わせて漢字の成り立ちを探るのが私の方法です。

 しかし、私の類型化した音符イメージが適当かどうかは証明できません。こればかりは漢字を作った人に聞いてみないと分からないからです。また多くの音符の中には解釈に苦しむものがあることも事実です。(どうしても分からないものは語呂合わせを使いましたが)。

 漢字学者のなかには、正しいと証明されたもの以外は使うべきでない、という人がいます。でも音符イメージを用いて漢字の意味がよく理解できるなら、漢字を覚える方法のひとつとして許されるのではないかと思っております。そのためには、もっとわかりやすい音符イメージがないか、さらに同音代替についてももっと適当な文字がないか、常に意識してよりよくしてゆく必要があり、今後、追加訂正をかさねてさらなる高みをめざしたい考えています。(石沢誠司)

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音符 「喬キョウ」  <高くまがる>

2015年06月11日 | 漢字の音符
 キョウ・たかい  口部         

解字 金文は、高い建物の屋根に曲がったポール状の飾りがついたかたち。上部が曲線をなして高いこと。篆文は、「夭(しなやかに曲がる)+高の略体」の会意に変化し、現代字に続いている。たかい意のほか、同音の驕キョウに通じ、おごる意がある。なお、音符として用いられるとき、「高くまがる」「高い」「まがる」イメージがある。
意味 (1)たかい(喬い)。そびえる。「喬木キョウボク」 (2)おごる。たかぶる。(=驕)

イメージ  「高く曲がる」 (橋・僑・嬌・蕎) 
       「高い」 (喬・驕・轎) 
       「曲がる」 (矯)
音の変化  キョウ:喬・橋・僑・嬌・蕎・驕・轎・矯

高く曲がる
 キョウ・はし  木部
 かめゐど天神たいこはし
解字 「木(き)+喬(高く曲がる)」 の会意形声。川にかかる木製のアーチ型の橋。水路に架かる橋は、船の通行に支障がないよう中央が高く曲がるアーチ型をしていた。
意味 はし(橋)。「橋梁キョウリョウ」(大きな橋。架け橋)「橋桁はしげた」(橋の杭の上に渡して架ける柱)「舟橋ふなはし」「浮橋うきはし
 キョウ  イ部
解字「イ(人)+喬(=橋。はし)」の会意形声。橋を渡って諸国を巡ったり、旅先にある人をいう。
意味 (1)かりずまい。たびずまい。「僑居キョウキョ」 (2)故郷を離れて外国に住む人。「華僑カキョウ
 キョウ・なまめかしい  女部
解字 「女(おんな)+喬(高くしなやか)」の会意形声。背が高くなよなよとした女性。
意味 (1)なまめかしい(嬌かしい)。あでやかで美しい。「嬌艶キョウエン」(嬌も艶も、なまめかしい意)「嬌声キョウセイ」(女のなまめかしい声) (2)かわいらしい。「愛嬌アイキョウ
 キョウ・そば  艸部
解字 「艸(くさ)+喬(高くしなやか)」の会意形声。丈が高くしなやかな草。
意味 「蕎麦キョウバク・そば」に使われる字。 (1)蕎麦とはタデ科の一年生作物。草丈は60〜130cmで茎はほそくしなやか、荒れ地にもよく育つ。実からそば粉をつくる。 (2)「そばきり(蕎麦切り)」の略。蕎麦粉に小麦粉をつなぎに入れて水でこねて細かく線状に切った食品。ゆでて食べる。「蕎麦屋そばや」「生蕎麦きそば」(蕎麦粉だけで他に混ぜ物のないそば)

高い
 キョウ・おごる  馬部
解字 「馬(うま)+喬(高い)」の会意形声。馬に乗り高い所から下を見下ろすこと。
意味 (1)おごる(驕る)。いばる。「驕慢キョウマン」「驕児キョウジ」(わがままな子) (2)つよい・さかん。「悍驕カンキョウ
 キョウ・かご  車部
解字 「車(のりもの)+喬(高い)」の会意形声。高く担ぎあげて人を運ぶ乗り物。
意味 かご。肩に担いで行くかご。「轎夫キョウフ」(かごをかつぐ人)

まがる
 キョウ・ためる  矢部
解字 「矢(や)+喬(まがる)」 の会意形声。竹の矢柄をいろんな方向から曲げて、まっすぐにすること。また、まっすぐなものをわざと曲げていつわる意もある。
意味 (1)ためる(矯める)。ただす。まがっているものをまっすぐにする。「矯正キョウセイ」(欠点をなおし正しくする)「角を矯めて牛を殺す」(少しの欠点を直そうとして、却って全体をだめにする)(2)ためる(矯める)。まっすぐなものをまげる。いつわる(矯る)。だます。おかしな。「矯命キョウメイ」(君の命令だといつわる)「矯飾キョウショク」(いつわり飾ること)「奇矯キキョウ」(言動が普通と違うこと)(3)いさましい。はげしい。「矯激キョウゲキ
<紫色は常用漢字>

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音符 「玄ゲン」 <黒い糸たば>

2015年06月04日 | 漢字の音符
 ゲン・くろ  玄部      

解字 金文は幺ヨウと同じで糸たばのかたち。金文からすでに「黒い」意味があるので、ゲンの発音で黒い糸たばを表したものと思われる。春秋戦国時代の古文は、糸たばに点があるので黒く染めていることを示しているのかも知れない。篆文は糸たばの上に横線が入り、この形が現代字の玄になった。この横線は糸たばに通した棒と思われ、黒い液に漬けたあと、ねじって絞る形と考えられる。意味は、黒く染めた糸たばから、くろい色、転じて、奥深い意を表す。音符になるとき、黒い意は消え、糸たばの形から「太いより糸」のイメージがある。
意味 (1)くろ。くろい色。「玄米ゲンマイ」「玄鳥ゲンチョウ」(ツバメの別称)(2)ふかい。奥深い道理。「玄妙ゲンミョウ」「幽玄ユウゲン」(3)はるか。とおい。「玄孫やしゃご・ゲンソン」(孫の孫。ひまごの子)(4)すぐれた。「玄人クロウト」(専門家。対語は素人)

イメージ 
 黒い糸たばから「くろい」(玄)
 糸たばの形から「太いより糸」(弦・舷・絃・牽)
 「同音代替」(眩・衒・呟)
音の変化  ゲン:玄・弦・舷・絃・眩・衒・呟  ケン:牽

太いより糸
 ゲン・つる  弓部
解字 「弓(ゆみ)+玄(太いより糸)」の会意形声。弓に張る縒りをかけたつよい糸。
意味 (1)つる(弦)。弓に張る糸。「鳴弦メイゲン」(弓の弦を鳴らすこと) (2)楽器に張る糸。「弦楽ゲンガク」「管弦楽カンゲンガク」 (3)弓を張ったような半円形。弓張り月。「弦月ゲンゲツ」(上弦または下弦の月)
 ゲン・ふなばた  舟部
解字 「舟(ふね)+玄(=弦。弓張り月)」の会意形声。弓張り月のように反っている舟べり。
意味 ふなばた。ふなべり。「舷窓ゲンソウ」「舷灯ゲントウ」「右舷ウゲン
 ゲン・いと・つる  糸部
解字 「糸(いと)+玄(太いより糸)」の会意形声。縒りをかけた糸や、つる。
意味 いと。つる。楽器に張る糸(=弦)
 ケン・ひく  牛部            

解字 篆文は、「玄(つな)+冖(鼻輪の半分が見える形)+牛」の形。玄ゲンは、ここでは牛をひく綱。次の冖は牛の鼻輪で鼻の外に出ている半分を表す。一番下が牛。牽は、牛の鼻輪につけた綱を引っぱるかたちで、意味は牛を「牽く」。
意味 (1)ひく(牽く)。ひっぱる。ひきつける。「牽引ケンイン」「牽牛ケンギュウ」(牛飼い)「牽牛花ケンギュウカ」(あさがお)「牽強付会ケンキョウフカイ」(牽強はむりにひく、付会はくっつける、あわせて無理にこじつける意)「牽制ケンセイ」(相手の注意をひきつけ、自由に行動できないようにする) (2)つらなる。つづく。「牽連ケンレン」(ひかれつながる。ひきつづく)

同音代替
 ゲン・くらむ・まぶしい・まばゆい  目部
解字 「目(め)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、目がまどわされること。
意味 (1)くらむ(眩む)。めまい。「眩暈ゲンウン」(めまい) (2)まどわす。「眩惑ゲンワク」 (3)まぶしい(眩しい)。まばゆい(眩い)。「眩耀ゲンヨウ」(まばゆいほどかがやく)
 ゲン・てらう  行部
解字 「行(おこなう)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、世間をまどわす行ないをいう。
意味 てらう(衒う)。たぶらかす。「衒学ゲンガク」(学問や知識を必要以上にひけらかす)
 ゲン・つぶやく  口部
解字 「口(くち)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、まどわすような言葉で言うこと。
意味 (1)あいまいな言葉でさそう。たぶらかす。(2)[国]つぶやく(呟く)。小さな声でひとりごとを言う。
<紫色は常用漢字>

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