漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「小ショウ」 <ちいさい> と 「肖ショウ」

2019年06月28日 | 漢字の音符
  筲ソウ・ショウを追加しました。
 ショウ・ちいさい・こ・お  小部

解字 甲骨文・金文は、ちいさい物を表す点を三つ並べて、ちいさい意をあらわす。篆文から点が線になって現代字に至っている。小は部首になる。
意味 (1)ちいさい(小さい)。「小型こがた」「弱小ジャクショウ」「小川おがわ」 (2)すくない。すこし。「小量ショウリョウ」 (3)とるに足りない。「小事ショウジ」 (4)わかい。おさない。「小児ショウニ」 (5)自分を謙遜していう。「小生ショウセイ

イメージ  「ちいさい」(小・雀・尖)
音の変化  ショウ:小  ジャク:雀  セン:尖
  
ちいさい
 ジャク・すずめ  隹部
解字 「小(ちいさい)+隹(とり)」の会意。小さい鳥で、スズメの意。※「少+隹」ではない。これだと「ノ」が二重になる。
意味 すずめ(雀)。「雲雀ウンジャク・ひばり」「孔雀クジャク」(広げたオスの尾羽に孔あなのような美しい模様があるとり)「燕雀エンジャク」(つばめとすずめ)「欣喜雀躍キンキジャクヤク」(雀がおどるように、うれしくてとびはねる)
 セン・とがる  小部  
解字 「小(ちいさい)+大(おおきい)」の会意。大きいものの上に小さいものがある形で、先がとがっていることを示す。
意味 とがる(尖る)。さき(尖)。「尖鋭センエイ」(先がとがる。急進的なこと。=先鋭)「尖塔セントウ」(上が尖った塔)



     ショウ <小さいからだつき>
ショウ・にる・あやかる  月部にく

解字 金文の夕は肉の意であり、金文・篆文・旧字とも、「月(からだ)+小(小さい)」 の会意形声。体つきが小さいこと。親から生まれた小さい体の子を意味し、親と似ている意となる。新字体は上部の小が変化した肖になった。音符になるとき「小さい」イメージとなる。
意味 (1)にる(肖る)。にている。あやかる(肖る)。「肖似ショウジ」(よく似ていること)「不肖フショウ」(父に似ていないで愚かなこと)「不肖の息子」(①自分の子供をへりくだっていう。②バカ息子) (2)にせる。かたどる。「肖像画ショウゾウガ」 (3)小さい。

イメージ 
 「似ている」
(肖)
 小さい体から「小さい」(削・消・蛸・宵・哨・梢・悄・屑・逍・筲・鞘) 
 「その他」(硝・稍・趙)
音の変化  ショウ:肖・蛸・消・宵・哨・梢・悄・逍・鞘・硝・稍  サク:削  セツ:屑  ソウ:筲  チョウ:趙

小さい
 サク・けずる  刂部
解字 「刂(刀)+肖(小さい肉)」の会意形声。刀で小さい肉片を切りとることから、けずりとること。
意味 けずる(削る)。けずりとる。そぐ(削ぐ)。はつる(削る)。「削除サクジョ」「削減サクゲン」「添削テンサク」(書き加えたり削ったりする)
 ショウ・きえる・けす  氵部
解字 「氵(水)+肖(小さい)」の会意形声。水をかけて火を小さくして、消す。よわめる意とけす意がある。
意味 (1)きえる(消える)。けす(消す)。「消火ショウカ」 (2)つきる。なくなる。「消息ショウソク」(消は死ぬ、息は生きる、生死・安否のこと。また動静・様子)「解消カイショウ」「抹消マッショウ」(塗り消す。消して除く) (3)よわる。おとろえる。「消極的ショウキョクテキ
 ショウ・たこ  虫部
解字 「虫(小動物)+肖の旧字(=消の略体。消える)」の会意形声。敵に襲われたときスミを吐いて姿を消すタコ。
意味 (1)たこ(蛸)。鮹ショウ・章魚とも書く。頭足類タコ目の軟体動物。長い脚(実際は腕)が8本ある。墨を噴いて煙幕のようにひろげ敵から逃げる。「蛸足たこあし」(一か所からいくつも分かれでること)「蛸足配線たこあしハイセン」 (2)蜘蛛くもの一種。あしたかぐも。
 ショウ・よい  宀部
解字 「宀(いえ)+肖(小さくなる)」の会意形声。日が暮れて家の中にさしこむ光が弱くなる頃を言う。
意味 よい(宵)。よる。夜のまだふけない間。「宵闇よいやみ」「元宵ゲンショウ」(旧暦1月15日の夜)
 ショウ・みはり  口部
解字 「口(くち)+肖の旧字(小さくする)」の会意形声。口を小さくして口笛を吹く。口笛を吹いて急を知らせること。
意味 (1)口笛を吹いて急を知らせる。呼子の笛を吹く。 (2)みはり(哨)。ものみ。「哨戒ショウカイ」(警戒してみはる)「歩哨ホショウ」(要所に立って警戒にあたること)「哨兵ショウヘイ
 ショウ・こずえ  木部
解字 「木(き)+肖(ちいさい)」の会意形声。木の上の小さくなってゆく所。こずえ。
意味 (1)こずえ(梢)。木のさき。 (2)すえ。はし。物の末端。「末梢マッショウ」(はし。先端。末端)「末梢神経マッショウシンケイ」(身体の先端各部と連絡する神経)
 ショウ・けわしい 山部
解字 「山(やま)+肖(=梢。こずえ)」の会意形声。木の梢のように先がとがり険しい山。
意味 (1)けわしい(峭しい)。山の細くとがったさま。「孤峭コショウ」「峭壁ショウヘキ」(けわしい山の壁。絶壁) (2)性質がきびしい。するどい。「奇峭キショウ」(①山が険しくそびえたつ。②性格などが際立ってするどい)「峭刻ショウコク」(きびしくむごい)「峭直ショウチョク」(性質がきびしく一途なこと)「峭厲ショウレイ」(研ぎすましたようにきびしい)
 ショウ・うれえる  忄部
解字 「忄(こころ)+肖の旧字(小さい)」の会意形声。心が小さくなること。心細くなり、しょんぼりすること。
意味 (1)うれえる(悄える)「悄然ショウゼン」(①元気なくしょんぼりする。②しずかでものさびしい)(2)しずかな。ひっそりしてさびしい。「悄静ショウセイ」(しずかなこと)
 セツ・くず  尸部
解字 「尸(人が座ったかたち)+肖の旧字(小さい)」の会意。小さい人の意で、こせこせした小心者をいう。否定形にもちいると、「いさぎよくない」となる。転じて、役に立たない、くずの意となる。
意味 (1)人がこせこせする。「屑屑セツセツ」(こせこせと小事にこだわるさま)「不屑フセツ」(いさぎよしとせず) (2)くず(屑)。きれはし。役に立たないもの。「人間の屑くず」「屑米くずマイ」「屑糸くずいと
 ショウ  辶部
解字 「辶(ゆく)+肖の旧字(小さい)」の会意形声。小またでうろうろと歩くこと。
意味 さまよう。ぶらつく。「逍遥ショウヨウ」(気ままに歩く)「逍遊ショウユウ」(ぶらついて遊ぶ)
 ソウ・ショウ・めしびつ  竹部
解字 「竹(たけ)+肖の旧字(小さい)」 の会意形声。竹製の小さいかごの意。ご飯を盛るめしびつを言った。また、容量の小さい器であることから、わずかの量の意となる。
意味 (1)めしびつ。ふご。かご。「竹筲チクソウ・チクショウ」(めしびつ) (2)わずかの量。広辞苑は、1斗2升の竹器とする。なお、日本の一斗は18リットルだが、中国周代の一斗は約1.94 リットルで日本の1升にちかい。「斗筲トソウ・トショウ」(①量目の僅かなこと。②人物の器量のちいさいこと)「斗筲之人トソウ(トショウ)のひと」(器量の小さい人物のたとえ。=斗筲之材) (3)おけ。「筲箍ソウコ・ショウコ」(おけのたが)
 ショウ・さや  革部
解字 「革(かわ)+肖の旧字(ちいさい)」の会意形声。中にひとまわり小さい刀をいれる革製のさや。以前、刀のさやは革で作った。
意味 (1)さや(鞘)。刀をおさめる筒。「鞘当(さやあ)て」(すれ違ったとき鞘がふれ、互いにとがめ立てること)「毛根鞘モウコンショウ」(毛根をおおっている鞘のような細胞) (2)革のひも。ムチの先。 (3)買値と売値の差額。「利鞘りざや

その他
 ショウ  石部
解字 「石(鉱物)+肖(ショウ)」の形声。ショウという名の鉱物。
意味 「硝石ショウセキ」に用いる字。無色のガラス状の結晶体で火をつければ紫の炎を出して燃える。ガラス・火薬などの原料。「硝酸ショウサン」(空中で発煙する無色刺激臭の液体)「硝煙ショウエン」(火薬の爆発によって起こる煙り)「硝子ガラス」(建築材料や器具につかう透明で硬い材料)
 ショウ・やや  禾部
解字 「禾(こくもつ)+肖(ショウ)」の形声。ショウは少ショウ(すこし)に通じ、穀物の量が少ないこと。転じて、分量・程度がわずかの意で使う。
意味 (1)分量・程度がわずか。すくない。やや(稍)。すこしばかり。「稍(やや)大きめ」 (2)しばらくのあいだ。「稍(やや)あって」(しばらくして)(3)時間や程度がすすむさま。次第に。ようやく。「稍稍ショウショウ」(だんだん。すこしずつ)
 チョウ  走部
解字 「走(足の動作)+肖の旧字(チョウ)」の形声。チョウは超チョウ(こえる)に通じ、こえる意。しかし、この意で実際に使われることなく、中国の国名や人名に用いられる。
意味 (1)こえる。超える。 (2)中国の戦国時代の国の名。戦国七雄のひとつ。「趙女チョウジョ」(趙の国の女) (3)姓。
<紫色は常用漢字>

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音符 「呂リ ョ・ロ」 <つらなる>

2019年06月24日 | 漢字の音符
   絽ロを追加しました。
 リョ・ロ 口部

解字 ある物がかさなったり、つらなる形の象形。甲骨文は金の延べ棒を積んだ形の象形字(金の原字)と同じ形だという[甲骨文字辞典]。金文は国名・地名・人名に使われている。後漢の[説文解字]は、背骨の連なる形とする。宮の字では建物が連なる意であり、同じものが連なるイメージがある。つらなる意から音楽の音階に仮借カシャ(当て字)され、中国・日本の音楽の十二律(音階)のうち偶数番目に当る六つの音をいう。
意味 (1)音楽の音階で陰の音律をいう。「律呂リツリョ」(律の音と呂の音。楽律) (2)言葉の調子。「呂律ロレツ」(言葉の調子)「呂律ロレツがまわらない」(舌の動きが悪くなること)「語呂ゴロ」(言葉を発したときの続きぐあい) (3)外国地名の表記。「呂宋ルソン」(フィリピンの主要島。Luzonの当て字)

イメージ  「つらなる」(呂・侶・宮・閭・櫚・筥・絽)
音の変化  リョ:呂・侶・閭  ロ:櫚・絽  キュウ:宮  キョ:筥 
 
つらなる
 リョ・とも イ部
解字 「人(ひと)+呂(つらなる)」 の会意形声。同列につらなる人。
意味 とも(侶)。ともがら。つれ。「伴侶ハンリョ」(なかま・つれ)「僧侶ソウリョ」(出家して僧門に帰した人、またその集団)
 キュウ・グウ・ク・みや  宀部
解字 「宀(やね)+呂(つらなる)」 の会意形声。屋根がつらなる大きな建物。
意味 (1)みや(宮)。神を祭るところ。「神宮ジングウ」「宮司グウジ」 (2)天子・天皇や皇族の住むところ。「王宮オウキュウ」「宮殿キュウデン」 (3)皇族。皇室。皇居。「中宮チュウグウ」「宮内クナイ
 リョ  門部
解字 「門(もん)+呂(家がつらなる)」 の会意形声。家がつらなる村里の門。転じて、村里を表す。「周代の制度で25家を里とし、里の入口には必ず門があり、その門を閭リョといった」(大修館漢語新辞典)
意味 (1)さと。むらざと。「閭巷リョコウ」(村里の通り。村里)「閭里リョリ」(村里) (2)村里の門。「閭門リョモン」(村里の門)
 ロ・リョ  木部
解字 「木(き)+閭(=呂。つらなる)」 の会意形声。上へ上へと積み重なるように(つらなって)成長する木。
意味 (1)「棕櫚シュロ」に使われる字。棕櫚シュロとは、ヤシ科の常緑高木。幹は太く直立し,上方に多数の葉をつけ、上へ上へと積み重なるように(つらなって)成長する木。  (2)「花櫚カリン」に使われる字。花櫚とは、マメ科の高木。東南アジアに分布し材は花櫚材として細工物・建具などに使用する。 
 キョ・はこ  竹部
 『五経図匯』に描かれた筥
解字 「竹(たけ)+呂(つらなる)」 の会意形声。縦につらなるように重なる竹の籠。
意味 はこ(筥)。(1)竹製のかさねばこが原義。まるい竹製のかご。「筐筥キョウキョ」(竹製のはこ。筐は四角いはこ、筥はまるいはこ) (2)ふたのあるはこ。「犬筥いぬばこ」(犬のかたちをした雌雄一対のはこ)
 ロ・リョ  糸部
解字 「糸(いと)+呂(つらなる)」 の会意形声。原義は糸で縫って布をつらねること。すなわち縫い綴(つづ)る・縫合する意。日本ではこの意で使われることなく、織り目の透いた薄い絹織物をいう。
から絽 
 羅の意味は鳥網だが、日本では目の粗い絹織物の意で用いた。『日本国語大辞典』によると、「羅衣 ロノコロモ」(文明本節用集・室町中)「羅 ロ」(撮壌集1454年)「羅ロ 羅ノ衣」(運歩色集1548年)の表記があり、中世の日本では羅を「ロ」と発音してこの絹織物を表現していた。羅ラの発音は中古音(隋・唐)であり、中国ではその後「lo(ろ)」に変化しており(現在はluóるお)、中世の日本では羅を「ロ」と発音する中国音が使われたと考えられる。その後、「綸子もあり絽(ロ)もあり」(浮世風呂1809-13年)のように羅に代わり同音の絽が使われるようになった。
意味 (1)ぬいつづる。つくろう。 (2)からみ織りの一種。織り目の透いた薄い絹織物。通気性が高いので、夏物の着物などに使われる。「生絽きろ」(生糸の絽織り)「練り絽ねりろ」(練り糸の絽織り)「絽縮緬ろちりめん」(縮緬糸の絽織り)「絽刺ろざし」(絽織りの布地に絹糸で刺繍をする。また、その刺繍をしたもの)「絽羽織ろばおり」(絽織りの短い上着) (3)縞織物の布。
<紫色は常用漢字>

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音符 「㒼マン」 <みちる> と 「満マン」

2019年06月23日 | 漢字の音符
  マンを追加しました。
 マン・バン  入部

解字 帯紐から、文様のついた膝掛けの巾(布)が垂れさがっている形の象形[字統を参考]。上部の廿は帯の上部の省略形、下部は巾(たれ布)の表面に文様がいっぱいに描かれたさま。「みちる」イメージを持つ。新字体の音符になる時、㒼 ⇒満の右辺に変化する。

イメージ  
 たれ布の文様が全体に「みちる」(満・懣)
 たれ布が前を「おおう」(瞞・蹣)
音の変化  マン:満・懣・瞞・蹣

みちる
マン・バン・みちる・みたす  氵部
解字 旧字は滿で、「氵(水)+㒼(みちる)」 の会意形声。水がいっぱい満ちること。新字体は、滿⇒満に変化。
意味 (1)みちる(満ちる)。みたす。いっぱいになる。「満水マンスイ」「満員マンイン」「充満ジュウマン」 (2)ゆきわたる。すべて。「満座マンザ」「満身マンシン」 (3)ちょうど。「満十歳」
 マン・モン・もだえる  心部
解字 「心(こころ)+滿(みちる)」 の会意形声。心に気持ちのたかぶりが満ちること。
意味 もだえる(懣える)。なやみ苦しむ。いきどおる。「憤懣フンマン」(いきどおりもだえる=忿懣)「懣然モンゼン」(もだえるさま)「懣怨モンエン」(うらみもだえる)

おおう
 マン・バン・だます  目部
解字 「目(め)+㒼(おおう)」 の会意形声。目をおおって真実をかくすこと。
意味 だます(瞞す)。本当のことをかくす。あざむく。「瞞着マンチャク」(人の目をごまかすこと。着は、その状態が続く意)「欺瞞ギマン」(あざむき、だます)
 マン・ハン・バン・よろめく
解字 「足(あし)+㒼(=瞞。目をおおう)」 の会意形声。目をおおわれて足の歩行がよろけること。
意味 よろめく(蹣く)。「蹣跚マンサン」(よろめいてあるく)「蹣跚(よろけ)る」「酔歩蹣跚スイホマンサン」(酔ってよろめきあるく)「蹣跚縞よろけじま」(経たて、または緯よこ糸を湾曲させて波状の縞模様を出した織物)
<紫色は常用漢字>

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音符 「散サン」 <葉がちる>

2019年06月21日 | 漢字の音符
 私はこれまで散を「月(雑肉)を打って細かくばらばらにする」という解釈をしてきたが、[甲骨文字小字典]を見て、その斬新な解釈に魅かれ、本稿ではこの考えを基にして解字させていただく。端的に言うと、「散のなかの月は落ち葉である」という解字です。<2015.9.19>
  繖サンを追加しました。
 サン・ちる・ちらす・ちらかす・ちらかる  攵部

解字 甲骨文は手にもった棒で木々をたたく形。木の葉を表す点を加えて、葉が散る意となる[甲骨文字小字典を参考]。金文は木々が竹になり、木の葉の点⇒月になった。篆文は、木木⇒𣏟(木木の変形)になり、現代字はさらに、𣏟⇒龷に、攴⇒攵に変化した散になった。意味は甲骨文にあり、木々を棒でたたいて、葉が「散る」意。葉が散る意から、ちる・ちらかる。散った葉が、あてもない・とりとめない意となる。
意味 (1)ちる(散る)。ちらす(散らす)。ちらかす(散らかす)。「散乱サンラン」「解散カイサン」 (2)こなぐすり。「散薬サンヤク」 (3)自由な。とりとめない。「散文サンブン」「散歩サンポ」 (4)ひまな。「閑散カンサン」 (5)ばら(散)。ばらまく(散蒔く)。「散銭ばらせん」(こぜに。はした銭)

イメージ 
 「ちる・ちらす」
(散・撒・霰)
 「同音代替」(繖)
音の変化  サン:散・霰・繖  サツ:撒

ちる・ちらす
 サツ・サン・まく  扌部
解字 「扌(手)+散(ちらす)」 の会意形声。手で撒くこと。サンの発音は慣用音。
意味 まく(撒く)。まきちらす。「撒布サツフ・サンプ」(=散布)「撒水サツスイ・サンスイ」(=散水)「撒き餌まきえ
 サン・セン・あられ  雨部
解字 「雨(あめ)+散(ちる)」 の会意形声。雨が雲の中で冷やされて氷粒となり、ぱらぱらと散って降るもの。
意味 (1)あられ(霰)。雲から降る直径5mm未満の氷粒。5mm以上のものは雹(ひょう)として区別される。「雪霰ゆきあられ」(雪の周りに水滴がついたもの)「氷霰こおりあられ」(霰の外側に氷の層ができたもの) (2)霰のかたちをしたもの。「霰餅あられもち」(賽の目に切って干した餅。小さく切って煎った餅に味付けした焼菓子)

同音代替
 サン・きぬがさ  糸部
解字 「糸(=絹・きぬ)+散(サン)」 の形声。サンは傘サン(かさ)に通じ、絹を張った傘の意。日傘をいう。
意味 (1)きぬがさ(繖)。かさ。衣笠。絹張りの長柄の傘。貴人の行列にさしかざす。「蓋繖ガイサン」(蓋も繖も、傘の意。=繖蓋サンガイ)「繖幄サンアク」(きぬがさ。きぬがさ状のとばり)「紫繖シサン」(紫色のきぬがさ) (2)あまがさ。
<紫色は常用漢字>

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音符 「叕テツ」 <つながる> と 「綴テイ」

2019年06月19日 | 漢字の音符
   セツを追加しました。
 テツ  又部

解字 組みひもの編み方を描いた象形。組みひもは、よりをかけた糸束を3条以上用い、互い違いに組み合わせて編み上げ、紐をつくる。糸同士がからみあってつながるので、つづる・つながる意となる。篆文の形は手がつながっているように見えるので、現代字は又(て)四つに変化した。綴の原字。
意味 つづる。継ぎあわす。つらなる。

イメージ 
 「つながる」
(綴・錣・畷・啜・掇・
 「つぎあわす」(輟)
音の変化  テイ:綴  テツ:綴・錣・畷・啜・掇・輟  セツ:

つながる    
  テイ・テツ・つづる  糸部
解字 「糸(いと)+叕(つながる)」 の会意形声。糸をつなぎあわせること。転じて、言葉をつないで文章をつくる意となり、これが主流となった。
意味 (1)つづる(綴る)。つなぐ。つなぎ合わせる。「点綴テンテイ」(点をひとつひとつ結びつける) 「綴合テツゴウ」(竹簡の一つ一つをつなぎ合わせる)「合綴ガッテツ」(冊子などをとじ合わせて一つにする) (2)詩や文章をつくる。「綴文テイブン」(文章をつづる。作文)「綴(つづ)り方」(文章の作り方。作文)「綴字テイジ」(言語の音声を表音文字でつづり表すこと。また、そのつづった字) (3)つくろう。「補綴ホテイ・ホテツ」(①破れた所を補ってつづる。②詩文を作るのに古句を補ってつくる)
 テツ・しころ  金部
 
解字 「金(金属)+叕(つながる)」 の会意形声。鉄の札(さね)を組み紐でつなぎあわせたもので、かぶとの鉢に垂らして首を保護する。
意味 しころ(錣)。かぶとの鉢に垂らして首をおおうもの。革または鉄のさね(札)を組み紐でつなぎあわせる。「錣山しころやま」(大相撲の部屋のひとつ)
 テツ・なわて  田部
解字 「田(耕作地)+叕(つながる)」 の会意形声。耕作地をつないで走るあぜみち。
意味 (1)なわて(畷)。縄手とも書く。あぜみち。たんぼ道。 (2)まっすぐで細長い道。 (3)地名。「四條畷市シジョウなわてシ」(大阪府東部の市)
 テツ・セツ・すする  口部
解字 「口(くち)+叕(つながる)」 の会意形声。液状のものやソバなどを、つながるように口へ入れること。
意味 (1)すする(啜る)。液状のものをすこしずつ口に吸いこむ。ソバやうどんを口に吸いこむ。「蕎麦を啜る」「啜汁セツジュウ」(あまい汁をすう。他人の力で利益をえる)「餔啜ホセツ」(食らいすする) (2)すすり泣く。啜り泣く。小刻みに啜りあげるようにして泣く。「啜泣テツキュウ」(すすり泣く)
 テツ・ひろう  扌部
解字 「扌(て)+叕(つながる)」 の会意形声。下にあるものを手でつなげてひろうこと。
意味 ひろう(掇う)。ひろいとる。「掇拾テツシュウ」(掇も拾も、ひろう意)。「掇遺テツイ」(先人の遺業をひろいあつめる)
 セツ・のむ・すする  欠部
解字 「欠ケン(口をあける)+叕(つながる)+酉(酒壺)」 の会意形声。「欠(口をあける)+叕」は「口+叕」の啜(すする)と同じかたちで、すする意。これに酉(酒壺)がついたセツは酒(濁り酒か)をすすり飲むかたちだが、酒にかぎらず、のむ・すする意となる。
意味 (1)のむ。すする。すすりのむ。「歠菽セツシュク」(菽[まめ]の粥をすする)「菽飲水セツシュクインスイ」(菽粥をすすり水を飲む。まずしく清廉な生活)「流歠リュウセツ」(粥などを流し込むようにすする。無作法な食べ方)「歠醨セツリ」(薄酒・濁り酒をのむ) (2)のみもの。

つぎあわす
 テツ・やめる  車部
解字 「車(くるま)+叕(つぎあわす)」 の会意形声。車の欠けたところを、継ぎあわせて補修すること。そのため車の使用を休む意となり、転じてやめる意ともなる。
意味 (1)やすむ。「輟耕テツコウ」(耕す手をやすめる)「作輟サクテツ」(作業をやすむ。やったりやらなかったりする) (2)やめる(輟める)。「輟業テツギョウ」(業務をやめる)「輟食テツショク」(食事を途中でやめる)「輟筆テツヒツ」(筆をとめる)

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