漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「章ショウ」<しるしをきざむ>と「彰ショウ」「障ショウ」

2020年03月28日 | 漢字の音符
 ショウ・あや・しるし  立部          

解字 金文第一・二字は刃物の形である辛シンの先に丸い田形のふくらみが付く。このふくらみについて[字統]は、入れ墨の針である辛の針先の部分に墨だまりのある形としている。しかし金文で章は、玉(貴石)に模様のついた礼器である璋ショウの意味で使っていることから、入れ墨の針でなく、貴石に模様をきざむ刃物であると考えられる。では、この田形のふくらみは何か。私は刃物を手で持つための柄のふくらみと考えたい。印章を彫る刀は現在でも使う人によって籐などを巻いて太くしていることが多い。田形の部分は刃物を手で握って扱いやすくするための「ふくらみ」と解釈したい。写真の印章用彫刻刀は刃の根もとに革を巻いて滑り止めにしている。
 印章の彫刻刀
 篆文(秦)第一字は金文をほぼ引き継ぐが田の下が十になった。第二字の[説文解字]は田⇒日に変化した。しかし、隷書(漢)は上が立になったが下は相変わらず田のままで、篆文の形を保っている。これは楷書になっても同じであるが、第二字で下部が「早」になって立と分離した章が使われるようになり現在に至っている。こうした字形史をみると章の字は刃先の田が最後までキーポイントとなっている。
 意味は、貴石(玉)に模様や文字を刻む刃物(すなわち章)が作りだす、「しるし」や「あや」。これらの模様があざやかで「あきらか」。刃物が刻んだ「ふみ」。ふみが集まって作る「まとまり」など広い意味となる。
覚え方 (た)つのが、(はや)い、(あきら)君。
意味 (1)しるし(章)。あや(章)。模様。「印章インショウ」(はんこ)「腕章ワンショウ」「紋章モンショウ」(家・団体などのマーク) (2)文字でつづった文。「文章ブンショウ」「玉章ギョクショウ」(②美しい文。②他人からきた手紙を敬っていう)「断章ダンショウ」(文章の断片) (3)文や音楽などのひとまとまり。「楽章ガクショウ」「終章シュウショウ」「章節ショウセツ」(論文などのひと区切り。章は節より大きい区切り) (4)あきらか(=彰)。あきらかにする。「表章ヒョウショウ」「勲章クンショウ」「徽章キショウ」(衣服・帽子などにつける象徴的なしるし) (4)きまり。法律。「憲章ケンショウ」 (5)「章魚たこ」(頭足類タコ目の軟体動物) (6)名乗り。「あき」「あきら」「あや」など。

イメージ 
 「しるしをきざむ」(章・彰・瘴・璋)
  意味(3)の、ひとまとまりの間「くぎり」(障・樟・嶂)
  「その他」(鱆)
音の変化  ショウ:章・彰・瘴・璋・障・樟・嶂・鱆

しるしをきざむ
 ショウ・あきらか  彡部さんづくり
解字 「彡(たくさん)+章(しるす)」 の会意形声。しるされた文様がたくさんあり美しいこと。また、その美しさが、あきらかとなり、あらわれること。
意味 (1)あや。模様。飾り。 (2)あきらか(彰か)。あらわれる。世間に知らせる。「表彰ヒョウショウ」「顕彰ケンショウ」(功績などを世間にしらせ表彰する)「彰義ショウギ」(正義を彰かにする)「彰義隊ショウギタイ」(慶応4年に結成。新政府に同年5月上野で敗れた)
 ショウ  疒部
解字 「疒(やまい)+章(=彰。あらわれる)」 の会意形声。南方の湿潤な地の気があらわれる病。「字統」によると、この字は後漢以後の文献にみえるという。この時期から南方との交渉がはじまり、それとともに軍の中にマラリアなどの風土病で死ぬ者が多く出たことから、「瘴疫」などの字が使われるようになった。
意味 山川の毒気。また、それによって起こるマラリアなどの熱病。「瘴気ショウキ」(熱病を起こす山川の悪気)「瘴疫ショウエキ」(瘴気によって起こる流行性の熱病)「霧瘴ムショウ」(毒気や悪気を含む霧)「瘴癘ショウレイ」(気候・風土が原因の熱病。風土病)
 ショウ  王部
 璋を持つ神人(三星堆文化時期の器物)
解字 「王(玉。貴石)+章(しるしをきざむ)」の会意形声。刀など実用の道具類を玉で模した祭祀具。また圭ケイ(長方形で上が△の玉)を半分に区切った形もある。いずれも表面に模様が刻されている。
意味 しるしの玉。「玉璋ギョクショウ」「奉璋ホウショウ」(璋を奉ずる)「圭璋ケイショウ」(圭と璋)

くぎり
 ショウ・さわる  阝部
解字 「阝(丘)+章(くぎり)」 の会意形声。丘が区切りとなり、さえぎられること。それにより、さしさわりがでること。
意味 (1)へだてる。さえぎる。しきり。ふせぐ。「障壁ショウヘキ」「障子ショウジ」「保障ホショウ」 (2)さわる(障る)。さしつかえる。「障害ショウガイ」「支障シショウ
 ショウ・くす・くすのき  木部
解字 「木(き)+章(=障。さえぎる)」 の形声。木からでる芳香が虫をさえぎる防虫効果のある成分を出すクスノキ。
意味 くす(樟)。くすのき(樟)。楠ナンとも書く。クスノキ科の常緑高木。木には芳香があり枝葉を蒸留して樟脳をとる。「樟脳ショウノウ」(樟の枝葉を蒸留して抽出した結晶。防虫剤・医薬品などとして使う)「樟蚕くすさん」(樟などの葉を食べるヤママユ科の蛾。幼虫の絹糸腺を取り出して「テグス」を作る)
 ショウ  山部
解字 「山(やま)+章(くぎり)」 の会意形声。高い山で区切られること。
意味 屏風のように連なる峰。「連嶂レンショウ

その他
 ショウ・たこ  魚部
解字 「魚(さかな)+章(ショウ)」の形声。章魚(たこ)を一字とした漢字。なお何故、「章魚」がタコの意味になるのかについては、章ショウ(呉音・漢音)の発音が「蛸たこ」の発音である、ショウ(呉音)・ソウ(漢音)と呉音が同一であるからと思われる。
意味 たこ(鱆)。「章魚ショウギョ・たこ」「蛸ショウ」「鮹ショウ・ソウ」とも書く。
<紫色は常用漢字>

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音符「西セイ」<ザル・カゴ>と「栖セイ」「茜セン」

2020年03月25日 | 漢字の音符
西 セイ・サイ・にし  西部

解字 甲骨文字はザル・カゴを描いた象形。第一字は口が開いた形。第二は口を閉じた形とされる。しかし本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)されて方角の西の意味で使われた。金文は口を閉じた形が少し変形した。篆文(秦)は第一字が金文を引き継いでいるが全体が角型になった。第二字は[説文解字]に掲載されている字で、第一字の上に鳥がいるさまを描いている。著者の許慎キョシンは、「鳥が巣の上に在るなり。日(太陽)が西に入ると鳥が西(鳥の巣)に入る。故に東西の西と為す」と書いている。つまり、これまでのザルを鳥の巣とし、その上に鳥をくっつけた字にして西を表した。西の意味を突き詰めた字といえる。第三字は第一字の変形で、長方形を六等分した形。この形が隷書レイショ(漢)で右辺の上部が欠けた形(第一字)となり、次いで左辺の上部も欠けたになった。この字形は楷書でも使われたが、現在は西となっている。(字形は落合淳思[漢字字形史小字典]を参照した)
意味 にし(西)。日の沈む方角。「西方セイホウ」「西洋セイヨウ」「西暦セイレキ」「東西トウザイ

イメージ 
 「にし・夕日」
(西・茜) 
 ザルの象形から「ザル」(栖・迺)
 ザルの目を「通る」(晒・洒)
音の変化  セイ:西・栖  セン:茜  サイ:晒・洒  ダイ:迺

にし・夕日
 セン・あかね  艸部
解字 「艸(草)+西(夕日)」の会意形声。根が夕焼け色の染料になる草。
意味 (1)あかね(茜)。あかねぐさ。根は赤黄色で染料や薬用となる。 (2)あかねいろ。赤色のやや沈んだ色。「茜色あかねいろ」「茜染あかねぞめ」

ザル
 セイ・すむ・すみか  木部
解字 「木(き)+西(ザル)」の会意形声。木の上にあるザル状の鳥の巣。
意味 (1)すみか(栖)。鳥の巣。棲セイとも書く。「栖鴉セイア」(巣にいるカラス)「栖遁セイトン」(隠居する) (2)すむ(栖む)。巣を作り、そこにすむ。「栖息セイソク」(=生息)「隠栖インセイ」(=隠棲) (3)地名。「国栖くず」(①古く大和国吉野郡の山奥にあったと伝えられる村落。②常陸国(今の茨城県)茨城郡に土着の先住民)「国栖舞くずまい」(奈良県吉野町南国栖の浄見原神社で、毎年旧暦1月14日に奉納される歌舞)
迺[廼]ダイ・ナイ・すなわち・なんじ  辶部
 ニガリふね(「しまねの民具」より)

解字 甲骨文第一字はかご状のものをくぼみに置いた形で、その周りや底に何かが出ている。第二字は鹵(かごに塩が入っている形)が皿状の器の中にあり、底に三点を描く。これは原塩からニガリが出ている形ではないかと思う。意味は、前後関係を表す助辞で「すなわち」の意だという[甲骨文字辞典]。これは仮借カシャ(当て字)の用法とされるが、私は、塩籠を器に入れておくと「すなわち」ニガリが下に出てくる、という前後関係を表すのではないかと思っている。因みに写真は、木をくりぬいた船に塩籠をいれてニガリをとる「苦汁ふね」(しまねの民具)である。
 字形は金文でかごの形と鹵(塩籠)の形の2種類が継続し、篆文(秦)で、皿状の上向き曲線⇒𠃊になった。次の隷書(漢)で覀が出現し、また下部の𠃊⇒辶の前段階になった形も出現し、最終的に、迺・廼の2種類に分離した。廼は現在、異体字となっている。意味は、「すなわち」の他、同音の乃ダイ(なんじ・すなわち)に通じ、「なんじ・おまえ」の意で用いる。日本では乃が「の」の意味でも使われるので「の」の意にもなる。
意味 (1)すなわち(迺ち)。乃ダイと同じ。「迺玉迺金ダイギョクダイキン」(玉はすなわち金) (2)なんじ(迺)「迺翁ダイオウ」(なんじがおきな)「迺公ダイコウ」(なんじの父。父が子に対する自称) (3)[国]「の」を表す。「曾我廼家そがのや」(俳優・役者の屋号)

通る
 サイ・さらす  日部
解字 「日(太陽)+西(通る)」の会意形声。太陽の光をよく通すこと。
意味 さらす(晒す)。①日にほす。「晒布さらし」(さらして白くした布) ②広く人々の目に触れる。「人目に晒す」
 サイ・シャ・すすぐ  氵部
解字 「氵(水)+西(通る)」の会意形声。水が通りよく流れること。また、水が通ってきれいになること。
意味 Ⅰ:サイの発音。すすぐ。そそぐ。あらう。「洒掃サイソウ」(水を撒きほうきで掃く)
Ⅱ:シャの発音。さっぱりとしているさま。「洒脱シャダツ」(あかぬけしてさっぱりしている)「洒落シャラク」(さっぱりして物事にこだわらないこと)「洒落しゃれ」(機知に富む。美しい装い)
<紫色は常用漢字>

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音符「乍サク・サ」<衣服をつくる形>と「作サク」「昨サク」「酢サク」「窄サク」「搾サク」「炸サク」「柞サク」「酢サク」「詐サ」「鮓サ」「祚ソ」

2020年03月22日 | 漢字の音符
 私はこれまで「乍」を、字統の「木の枝をたわめて垣根などを作る作業」説で解字してきましたが、今回、「甲骨文字小事典」「甲骨文字辞典」の衣服をつくる形説が、縫い目のある異体字も出して説明しているので共感し、この説をもとに音符「乍」を作り直しました。(2017.1.19)  
 祚ソ・胙ソ・柞サクを追加しました。(2020.3.22)

 サ・サク・ながら  ノ部

解字 甲骨文は衣の下部(襟もと)を含んでいるので、衣服を作る形と考えられる。異体字には縫い目の状態を表したものもある[甲骨文字小事典]。金文は甲骨文字を反転させた形に、上のエリの一方が伸びて下のエリ元とつながった。篆文からさらに変化を重ねて現代字は乍になった。作サク(つくる)の原字で、のち人を加えた作ができたため、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)で「たちまち」「ながら」の意となる。音符イメージは「つくる」である。
意味 (1)たちまち(乍ち)。「乍ち存し乍ち亡ぶ」(たちまち存し、たちまち亡ぶ。あるかと思えば、たちまち亡びる。物の存亡の急なこと) (2)[国]ながら(乍ら)。

イメージ 
 「仮借カシャ」
(乍)
 衣服を「つくる」(作・詐・窄・搾・炸・祚・胙・柞)
 「形声字」(昨・酢・鮓)
音の変化  サク:作・窄・搾・炸・柞・昨・酢  サ:乍・詐・鮓  ソ:祚・胙

つくる
 サク・サ・つくる  イ部
会意 「イ(人)+乍(つくる)」 の会意形声。人がものを作ること。
意味 (1)つくる(作る)。おこなう。はたらく。つくられたもの。「作文サクブン」「著作チョサク」「作為サクイ」 (2)耕す。実り。「耕作コウサク」「豊作ホウサク」 (3)ふるまい。うごき。「作法サホウ」「動作ドウサ
 サ・いつわる  言部
解字 「言(いう)+乍(つくりごと)」 の会意形声。つくりごとを言うこと。
意味 いつわる(詐る)。あざむく。だます。「詐取サシュ」(だまし取る)「詐欺サギ」(だまして利益を得る)「詐称サショウ」(偽って言う)
 サク・せまい・せばまる・すぼむ  穴部
解字 「穴(あな)+乍(つくる)」 の会意形声。衣服を作るとき、袖の穴をつくること。袖の穴は、①せまい、②布を縫い「せばめて」穴を作る意となる。
意味 (1)せまい(窄い)。心がせまい。「狭窄キョウサク」(すぼまって狭い。狭も窄も、せまい意)「幽門ユウモン~」(胃の末端部の狭窄)「脊柱管セキチュウカン~」(推骨が連なったトンネル状の穴の狭窄。神経が圧迫されてしびれや運動障害がおきる)「窄袖サクシュウ」(つつそで) (2)せばまる(窄まる)。すぼむ(窄む)。みすぼらしい(見窄らしい)。
 サク・しぼる  扌部
解字 「扌(手)+窄(せばめる)」 の会意形声。手でしめつけたり、しぼること。
意味 (1)しぼる(搾る)。「搾乳サクニュウ」「搾油サクユ」 (2)しめつける。「圧搾アッサク
 サク・サ  火部
解字 「火(ひ)+乍(つくる)」 の会意形声。火が急にできること。爆発などで火が飛び散る意となる。中国では、油で揚げる意にも用いる。
意味 (1)はじける。爆発する。「炸裂サクレツ」(爆弾などが爆発してはじけ散ること)「炸薬サクヤク」(火薬)「炸丸サクガン」(爆弾) (2)油であげる。また、あげもの。「炸魚サクギョ・zháyú」(魚を油で揚げる)
 ソ・さいわい  示部
解字 「示(神)+乍(つくる)」 の会意形声。神が作りたもうたもの。神からの賜りものの意で、しあわせ・福をいう。また、神の子である天子の位をいう。
意味 (1)さいわい(祚い)。神から受ける福禄。「祚胤ソイン」(子孫まで幸福を授かる。よい子孫) (2)天子の位。「天祚テンソ」(天子の位)「践祚センソ」(皇嗣が天皇の位をうけつぐこと)「祚立ソリツ」(天子の位につく)
 ソ・ひもろぎ  月部にく
解字 「月(にく)+乍(=祚。さいわい・福)」 の会意形声。福肉の意で、祭礼に供える肉、および祭礼の余り肉をたまう意。
意味 (1)ひもろぎ(胙)。神に供える肉。「祭胙サイソ」「胙肉ソニク」「胙余ソヨ」(供え物の余り肉) (2)(祭りの余り肉を)たまう。むくいる。「胙土ソド」(土田をたまう)「賜胙シソ」(胙を賜与する)
 サク・ははそ  木部
解字 「木(き)+乍(つくる)」 の会意形声。薪(たきぎ・まき)を作る木の意で、薪にする広葉樹のナラ・クヌギなどをいう。広葉樹の薪は火持ちがよい。また、薪をつくるために木を伐ること。

柞蚕(普通の蚕と違い緑色をしている。「百度百科」の柞蚕より)
意味 (1)ははそ(柞)。ナラ・クヌギなどの総称。「柞蚕サクサン」(ナラ・クヌギなどの葉を食べて成長する野蚕。褐色をおびた繭をつくる。また、繭から出た蛾をいう)「柞蚕糸サクサンシ」(柞蚕の繭から取った糸)「柞薪サクシン」(柞などの薪) (2)きる。切り払う。「載(すなわ)ち芟(か)り載(すなわ)ち柞(き)る」(詩経「載芟サイサン」)

形声字
 サク  日部
解字 「日(その日)+乍(サク)」 の形声。サクは昔サクに通じる(昔には、セキ・シャク・サクの音がある)。昔の字源は洪水の起きた数日前が原義で、むかし・いにしえ以外に、さきごろ・きのうの意味がある。昨サクは、きのうの日の意。転じて、前の年の意にも用いる。
意味 (1)きのう。前日。「昨日サクジツ」 (2)前の年。「昨年サクネン」 (3)むかし。以前。「昨今サッコン」(このごろ。近い過去から現在まで)
 サク・シャク・す  酉部
解字 「酉(さけ)+乍(サク)」 の形声。サクは醋サク(す)に通じ、す(酢)を表す。醋サクは「酉(さけ)+昔(時をかさねる)」で、酒が空気中の酢酸菌に触れてゆっくり起こる発酵でできる酸っぱい液体。現在は古い酢を種として少し入れ日をかさねて発酵させるとできる。
意味 (1)す(酢)。酸味のある調味料。解字で分かるように醋が本字。現代中国では醋を使う。「食酢ショクす」「酢酸サクサン」(食酢の酸味の主成分) (2)すい。すっぱい。「酢豚すぶた
 サ・すし  魚部
解字 「魚(さかな)+乍(=酢。発酵する)」 の形声。魚をご飯と塩で漬け、発酵させたなれずし。
意味 (1)つけうお。魚を塩とご飯(または糟)などで漬けたもの。なれずし。「鮓滓サシ」(かす漬けの魚。すし) (2)[国]すし(鮓)。鮨とも書く。酢をまぜたご飯に魚介類をのせたもの。
<紫色は常用漢字>

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音符「泉セン」と「原ゲン」<泉が取り持つ字>

2020年03月13日 | 漢字の音符
   泉がとりもつ二つの音符
「泉セン」と「原ゲン」、この二つの漢字の古代文字を見ると共通する要素が含まれている。それは岩の間から流れ出る泉である。 
         
    セン <岩の間から湧き出る水>
 セン・いずみ  水部

解字 甲骨文第一字は、岩の間にT字形の水の流れを描いた形。T印は上昇を意味し、水がわき出ることを示している。甲骨文第二字は、岩から水が流れ出る姿を示している。第一字のT字形はかたちを変えて篆文まで続き、現代字は「白+水」の形に変化した。
意味 (1)いずみ(泉)。「泉水センスイ」「泉井セイセン」 (2)温泉の略。「泉質センシツ」「鉱泉コウセン」(鉱物質を多量に含む温泉。また、冷泉)
覚え方 あの(いずみ)です。

イメージ
 「いずみ」
(泉・腺・楾)
 「形声字」(線)
音の変化  セン:泉・腺・線  はんぞう:楾

いずみ
<国字> セン  月部にく
解字 「月(からだ)+泉(いずみ)」の会意形声。体内から泉がわくように液汁を分泌するところ。もと国字であるが、今は中国でも使う。
意味 動物の体内から種々の液汁を分泌する器官。「乳腺ニュウセン」「汗腺カンセン
<国字> はんぞう  木部
 秋草蒔絵楾(東京国立博物館蔵)
解字 「木(木製)+泉(いずみ)」の会意でできた国字。いずみが湧くように注ぎ口から水やお湯を注ぐ木製の容器。
意味 はんぞう(楾)。「半挿」とも書く。湯や水を注ぐための木製の容器で、その注ぎ口部分が半分、器の中にさしこまれている。「はんぞう」の名は、注ぎ口部分が半分うつわの中に差し込まれているところから。

形声字
[綫] セン・すじ  糸部
解字 「糸(いと)+泉(セン)」の形声。センはセン(ほそい)に通じ、糸のように細いこと。転じて、「細長いもの」の意に用いられる。なお、同音の綫センは異体字。
意味 (1)糸のように細長いもの。糸すじ。「電線デンセン」「線香センコウ」 (2)すじ(線)。せん。「直線チョクセン」「曲線キョクセン」 (3)筋状をなすもの。「路線ロセン」「水平線スイヘイセン


    ゲン <ガケから出る泉>
 ゲン・もと・はら  厂部
  
解字 原は 「厂(がけ)+泉(いずみ)」の象形である。金文は崖の間から泉が流れ落ちているかたちで、崖のしたのイズミは泉の甲骨文字第二字と同じかたち。水源の意を表わし、ここから「もと」の意味となる。現代字は泉が「白+小」に変化した原となった。「はら」の意味は「字統」によると、「狩猟をおこなう所」の意味をもつゲンという発音の字が古代にあり、その音に当てて原野の意味になったという。
意味 (1)もと(原)。おおもと。はじめ。おこり。「原因ゲンイン」「原始ゲンシ」「原案ゲンアン」 (2)はら(原)。広くて平らな土地。「原野ゲンヤ」「草原ソウゲン
覚え方  (がけ)のさな流れが(もと)です。

イメージ 「崖から出る泉」(原・源・願)
音の変化  ゲン:原・源  ガン:願

崖から出る泉   
 ゲン・みなもと  氵部
解字 「氵(水)+原(崖から出る泉)」の会意形声。原のもとの意味を氵(水)を付けて強調した。
意味 (1)みなもと(源)。「水源スイゲン」「源流ゲンリュウ」「源泉ゲンセン」 (2)物事のおおもと。「起源キゲン」「資源シゲン
 ガン・ねがう  頁部
解字 「頁(あたま)+原(崖から出る泉)」の形声。崖から出る泉をみて水を飲みたいと頭で思うこと。ねがう意となる。願の解字は、「字統」をみても「学研漢和」をみてもしっくりこない。そこで二つの組み合わせ字の意味にそって私自身で解釈してみた。覚えるには、これで充分であると思う。
意味 ねがう(願う)。のぞむ。いのり。「願望ガンボウ」「祈願キガン」「願文ガンモン」「大願成就タイガンジョウジュ
<紫色は常用漢字>

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音符「成セイ」<城郭が成る>と「誠セイ」「盛セイ」「城ジョウ」>

2020年03月09日 | 漢字の音符
 セイ・ジョウ・なる・なす  戈部

解字 甲骨文第一字は「刃の大きなマサカリ(戌ジュツ)+囗(城壁)」の会意。城壁で囲まれた都市を武器のマサカリで守衛するかたちで、城郭(城壁で囲まれたまち。みやこ)の意。第二字は、囗(城壁)がタテ線に変化した異体字。しかし、両字とも意味は城郭でなく、①殷の建国者の名、②地名またはその長、となっている[甲骨文字辞典を参考]。
 金文は、甲骨文第二字が継承され、意味は、①周の第3代君主の称号(成王)、②成功・完成の意。②の意味は王が城郭を完成させ、国の統治を成功させたことから出たと思われる。戦国古文(秦)で、マサカリの刃の下線が離れて横線になり(戌)、篆文と旧字で、囗(城壁)が変化したタテ線が合わさり、丁になった。現代字は旧字の中の丁が簡略化された成。
意味 (1)なる(成る)。できあがる。「完成カンセイ」「落成ラクセイ」「大成タイセイ」 (2)なす(成す)。なしとげる。「成就ジョウジュ」「成功セイコウ」 (3)そだつ。そだてあげる。「成長セイチョウ」「育成イクセイ

イメージ 
 城郭が「なる・できあがる」(成・誠・盛・晟・筬)
 原義の「武器で守護された城郭」(城)

音の変化  セイ:成・誠・盛・晟・筬  ジョウ:城

なる・できあがる
 セイ・まこと  言部
解字 「言(ことば)+成(なる)」の会意形声。言葉でした約束が成ること。すなわち、信頼・まごころがあること。
意味 (1)まこと(誠)。まごころ。「誠意セイイ」「誠実セイジツ」 (2)まことに。本当に。
 セイ・ジョウ・もる・さかる・さかん  皿部
解字 「皿(さら)+成(できあがる)」の会意形声。皿の上に山のような食べ物のもりつけが出来上がること。盛りつける意と、盛りつけたものが豪華な意となり、食事以外にも移していう。
意味 (1)もる(盛る)。山盛りにする。 (2)さかん(盛ん)。さかる(盛る)。「盛会セイカイ」「盛大セイダイ」「盛者必衰ジョウシャヒッスイ」(勢いがさかんな者も必ず衰える)
 セイ・あきらか・さかん  日部
解字 「日(太陽)+成(=盛。さかん)」の会意形声。日が盛んに照り、明るいこと。人名用字として使われることが多い。
意味 (1)あきらか(晟らか)。明るい。 (2)さかん(晟ん)。 (3)人名。あきら・てる・まさ。
 セイ・おさ  竹部
 女性が左手を押さえているのが筬
解字 「竹(たけ)+成(できあがる)」の会意形声。機織りのとき、よこ糸を通してからトントンと打ちつけて織り目を整える、竹を細かく細工して出来上がった道具をいう。
意味 おさ(筬)。竹の薄片を櫛の歯のように並べ、枠をつけた機織りの道具。歯の間に縦糸が通っており、杼(ひ)で打ち込まれたよこ糸を打って織り目の密度を一定にする。「竹筬たけおさ」(竹製の筬)「筬通(おさとお)し」(筬の櫛の歯にたて糸を通すこと)

武器で守護された城壁
 ジョウ・しろ  土部
 河北省趙県の古代城郭模型

解字 金文は「上下(南北)に望楼(城門)のついた城郭+成(武器で守護された城壁)」の形。成が「成る」意となったので、もとの意を表すため左辺に城郭の形をつけた。篆文から「土(つち)+成(武器で守護された城壁)」になり、土製の城壁に囲まれた城邑の意。中国では城壁および城壁でかこまれた町を意味し、日本では天守閣を中心とするお城をいう。
 中国山西省平遥市の「平遥古城」
意味 (1)しろ(城)。都市を護る土塁。「城壁ジョウヘキ」「城塞ジョウサイ」(城ととりで) (2)城壁で囲まれた町。「城市ジョウシ」「城府ジョウフ」(①都市。②仕切り・へだて「一を設けず」 (3)[国]お城。「城下町ジョウカマチ」「城代ジョウダイ」(城主の代わりの家臣)
<紫色は常用漢字>

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音符「然ゼン」<犬のあぶら肉を焼く>と「類ルイ」

2020年03月07日 | 漢字の音符
 ゼン・ネン  灬部

解字 「月犬(犬の脂肪肉)+灬(火)」の会意。犬のあぶら肉を火で焼くことを示す。天神を祀るのに犬を犠牲とし、その肉を焼いて臭いを天に昇らせた[字統]。天の神がその臭いに反応し、「しかり・そのとおり」と肯定・同意する意となる。また、そのとおりの意から転じて、他の言葉の下について、ものの様子を表わす語となる。然を音符に含む字は原義を残し、「もやす」意味を持つ。
意味 (1)しかり(然り)。そのとおり。「然諾ゼンダク」(よしとして引き受ける)「当然トウゼン」(あたりまえ) (2)そうなっている。状況を表す語のあとに添えて、そのようすを表わす。「天然テンネン」(天のとおり。人工の加わらない)「暗然アンゼン」「整然セイゼン」「雑然ザツゼン」「突然トツゼン」 (3)接続の助詞。しかるに。しかし(然し)。しかも(然も)。しかして。

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 「そのとおり」
(然)
  犬の肉を「もやす」(燃)
 「同音代替」(撚)
音の変化  ゼン:然  ネン:燃・撚

もやす
 ネン・もえる・もやす・もす  火部
解字 「火(ひ)+然(もやす)」の会意形声。然にもともと「もやす」意があったが、「そのとおり」という意味に使われたので、火をつけて元の意味を表わした。その証拠にこの字は火が二つ含まれている。
意味 もえる(燃える)。もやす(燃やす)。もす(燃す)。「燃料ネンリョウ」「燃焼ネンショウ」「燃費ネンピ」「内燃機関ナイネンキカン

同音代替
 ネン・よる  扌部
解字 「扌(手)+然(ネン)」の形声。ネンは捻ネン(ねじる・ひねる)に通じ、手でひねること。
意味 よる(撚る)。ひねる(撚る)。「撚糸ネンシ・よりいと」(撚りをかけた糸)


    ルイ <同じたぐいのもの三つ>
[類] ルイ・たぐい  頁部

解字 篆文・旧字は、「米(こめ)+犬(いぬ)+頁(あたま)」の会意。米は米粒(籾米もみごめ)、犬は動物の「いぬ」、頁ケツはひざまずいた人の頭を強調した字で、人の頭を表す。植物の1種類からコメを、動物の1種類から「イヌ」を、人類を「あたま」で代表させ、この三つを合わせた字。三つの異なった種類を合わせて、それぞれが同じたぐい(なかま)であるという概念を表す字とした。新字体は旧字の、犬⇒大に変化した。
意味 (1)たぐい(類)。同族。なかま。「親類シンルイ」「同類ドウルイ」 (2)同じ種類の。「衣類イルイ」「魚類ギョルイ」「分類ブンルイ」 (3)似ている。似たもの。「類人猿ルイジンエン」「類語ルイゴ」「類型ルイケイ」 (4)いっしょに。つづいて。「類焼ルイショウ」 
<紫色は常用漢字>

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音符「以イ」<もって>と「似ジ」(にる)

2020年03月05日 | 漢字の音符
 イ・もって  人部

解字 甲骨文第一字は人が物を携えた形。第二字は人を略した形。意味は、①もたらす。物を持ってくる。②人や集団を「ひきいる」、③もって・そこで(接続の助辞)、などの意味で使われている[甲骨文字辞典]。金文は第二字の形が引き継がれ、篆文(秦)で人がついた形に戻り、隷書(漢)で大きく形が変わった。現代字の以は「レ+ヽ(点)」が甲骨文字第2字および金文の携えた物を表しており、そこに人がついた以になった。現在の意味は、①~から。~より。②もって(以て)。③もちいる(=用)。④ひきいる(率いる)などになる。
意味 (1)~から。~より。時間・範囲・方向の起点を示す。「以来イライ」「以後イゴ」「以内イナイ」「以上イジョウ」 (2)もって(以て)。目的・手段・方法を示す語。「以心伝心イシンデンシン」(思うことが言葉でなく心から心へ伝わる)「以毒制毒イドクセイドク」(毒をもって毒を制する」 (3)もちいる(=用)。(4)ひきいる(率いる)。

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 「助辞」(以)
 「形声字」(苡・似・姒)
音の変化  イ:以・苡  ジ・シ:似・姒

形声字
 イ  艸部
解字 「艸(くさ)+以(イ)」 の形声。イという名の草。
意味 (1)「薏苡ヨクイ」に用いられる字。薏苡ヨクイとは、イネ科ジュズダマ属の一年草。ハトムギ。「薏苡仁ヨクイニン」(ハトムギの種子。引き割って粥・スープなどに作り、また生薬として利尿剤・鎮痛・消炎などに用いる) (2)「芣苡フイ」とは、オオバコ科の多年草。オオバコ。
 ジ・シ・にる  イ部
解字 「イ(ひと)+以(ジ・シ)」 の形声。[字統]によれば似ジ・シと嗣(つぐ・よつぎ)の中古音はziəで同音。したがって、似ジ・シの本義は、「イ(ひと)+以(つぐ・よつぎ)」で人がうけつぐ意(似続ジゾク)が古い用法で、のちに、うけついだ人が前の者に「にかよう・にる」意となったとする。
意味 (1)にる(似る)。にせる。まねる。「疑似ギジ」(似るを疑う。本物とよく似ている)「相似ソウジ」(相互に似る)「似非えせ」(似ているが違う)「酷似コクジ」(きわめてよく似ている)「似類ジルイ」(にている)「真似まね」(真に似る。まねること。模倣) (2)つぐ(継ぐ)。「似続ジゾク」(うけつぐ)
 ジ・シ・あね  女部
解字 「女(おんな)+以(シ)」の形声。シは嗣(つぐ・よつぎ)に通じ女のよつぎで、最初に生まれた女の子。長女・姉の意。もと始の異体字。
意味 (1)あね(姒)。女性の兄弟のうちの年長者。 (2)兄弟の妻たちのうちの年長者。また、あによめ。「姒婦シフ」(あによめ) (3)姓のひとつ。
<紫色は常用漢字>

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