漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「高コウ」<たかい>と「稿コウ」「膏コウ」「嵩スウ」「塙はなわ」「縞しま」

2023年06月15日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 コウ・たかい・たか・たかまる・たかめる  高部

解字 甲骨文・金文は、屋根のある2階ないし3階建ての建物の象形。下部の口は入り口か窓を表すと思われる。高い建物なので、たかい意を表わす。高は部首となるが、音符ともなる。
意味 (1)たかい(高い)。たかさ。「高所コウショ」「標高ヒョウコウ」 (2)程度がたかい。「高級コウキュウ」 (3)けだかい。すぐれている。「高貴コウキ」「高潔コウケツ」 (4)思い上がる。「高慢コウマン」 (5)敬う気持ち。「高説コウセツ

イメージ 原義の「たかい」意のほか、「かわく」イメージがある。これは高いところは乾く意からと思われる。 
 原義の「たかい」(高・嵩・鎬・蒿・嚆・毫) 
 高い所は「かわく」(稿・槁・藁)
 「形声字」(膏・縞・敲・塙)
音の変化  コウ:高・鎬・蒿・嚆・稿・槁・藁・敲・膏・縞  ゴウ:毫  カク:塙  スウ:嵩

たかい
 スウ・たかい・かさ・かさむ  山部
解字 「山(やま)+高(たかい)」の会意。山の高いこと。日本では、かさばる意で使う。
意味 (1)たかい(嵩い)。山の高いさま。「嵩高スウコウ」(①山が高い。②嵩山のこと) (2)山の名。「嵩山スウザン」(中国五岳のひとつ。河南省登封市にある山岳群。少林寺や中岳廟がある。=崇山)「嵩峰スウホウ」(嵩山の峰) (3)[国]かさ(嵩)。分量。かさむ(嵩む)。かさばる(嵩張る)。「水嵩みずかさ」「嵩上(かさあ)げ」
 コウ・よもぎ  艸部
解字 「艸(くさ)+高(たかい)」の会意形声。背の高い草で、よもぎを表す。
意味 よもぎ(蒿)。キク科の多年草。山野に自生し高さ約1メートル余になる。蓬・艾とも書く。「蓬蒿ホウコウ」(蓬も蒿も、よもぎの意)「蒿艾コウガイ」(蒿も艾も、よもぎの意)「蒿里コウリ」(墓地。また、挽歌)
 コウ  口部
解字 「口(こえがでる)+蒿(コウ)」の形声。コウは哮コウ(うなる)と同じく、うなる音の擬声語で、特にかぶら矢のうなる音をいう。
意味 (1)高く鳴る。「嚆矢コウシ」(①かぶら矢。鳴り響く矢。②昔、中国で戦いを始めるとき、敵陣にかぶら矢を射たことから、物事の始まり)「嚆矢濫觴コウシランショウ」(嚆矢も濫觴も、物事の始まりの意)(2)さけぶ。
 ゴウ  毛部
解字 「毛(細い毛)+高の略体(たかい⇒長い)」の会意形声。長くて細い毛をいう。
意味 (1)細くて長い毛。「白毫ビャクゴウ」(仏の眉間にある白い毛)「毫毛ゴウモウ」(毛先の細いところ) (2)筆の先。「揮毫キゴウ」(筆をふるう意で書画を書くこと。特に知名人が頼まれて書をかくこと) (3)わずか。すこし。「毫末ゴウマツ」(わずか)「毫もない」(すこしもない)

かわく
稿 コウ・したがき  禾部
解字 「禾(いね)+高(かわく)」の会意形声。かわいた稲わら。下書きの意は、稲わらを材料にした粗末な紙に書くことから。
意味 (1)わら(稿)。(2)したがき(稿)。詩や文章の原案。「稿本コウホン」「草稿ソウコウ」「原稿ゲンコウ
 コウ・かれる  木部
解字 「木(き)+高(かわく)」の会意形声。木が乾いて枯れること。
意味 かれる(槁れる)。草木がかれる。「槁木コウボク」(枯れた木)「枯槁ココウ」(①草木がかれる。②やせ衰える)「形容枯槁ケイヨウココウ」(その顔かたちはやせ衰えている)
 コウ・わら  艸部
解字 「艸(草)+槁(かれる)」の会意形声。枯れた草でわらの意(=稿)。この字で木は下につく。
意味 (1)わら(藁)。「藁葺(わらぶ)き」(屋根を藁で葺く)「藁半紙わらばんし」(藁の繊維を中心に漉いた安価な紙。ざら紙)(2)下書き。(=稿)。

形声字 
 コウ・しのぎ  金部
解字 「金(金属)+高(コウ)」の形声。[説文解字]は「鎬は温器」とし金属製のストーブのようなものとする。日本の字典は「なべ」と訳しているが、中国・日本とも熟語はなく詳細は不明。中国では主に地名に用いられており西周初年の首都をいう。日本では「金(金属の刀)+高(たかい)」と解釈し、刀剣の刃と峰(背)との間を走り稜線状に高くなったところを言う。
意味 (1)なべ(鎬)。 (2)地名。「鎬京コウケイ」(陝西省西安市の西南。周の武王の都) (3)[国]しのぎ(鎬)。刀の刃と峰との間の稜線状の盛りあがり。「鎬しのぎを削る」(はげしく争う。鎬が削りとられるほど激しく刀を合わせるから)

鎬(しのぎ)(「刀剣ワールド」より)
 コウ・あぶら・こえる  月部にく
解字 「月(にく)+高(コウ)」の会意形声。[説文解字]は「肥(こえ)る也」とし、[同注]は「按ずるに肥は脂に作るに当たる」とし、肥の字は脂に当たるとする。人が肥(ふと)るのは食べすぎたエネルギーが消費されず脂肪のかたちで体内でたまり肥満となるからである。意味は(1)あぶら。(2)あぶらぐすり。(3)こえる。肥える。(4)あぶらさす。(5)その他、となる。なお肥える意味は、「月(にく)+高(たかい)」で、人の月(にく)が高く盛り上がり肥える、と解釈することも可能。
意味 (1)あぶら()。脂肪。「あぶらあせ」「コウケツ」(①人のあぶらと血。②苦労して得た利益、また財産)「血を絞る」(人民から重税を絞り取る)「膏粱コウリョウ」(あぶらののったうまい肉と、味のよい穀物。美食をいう) (2)あぶらぐすり。「コウヤク」「軟ナンコウ」「絆創バンソウコウ」 (3)こえる(膏える)。ふとる。うるおす。「コウヨク」(土地が肥えている)「コウデン」(地味の肥えた田) (4)あぶらさす。「コウシャ」(車の軸受けに膏をぬって動きをなめらかにする) (5)むなもと。心臓の下の部分。「コウコウ」(膏と肓コウの間は薬も針も届かず治りにくい。膏肓コウモウは慣用よみ))「病(やまい)膏肓に入る」(病が重くなって医者の手の下しようがない) (5)「石セッコウ」とは、いしあぶら。白色原料や陶器の型、彫刻の材料等に使う、硫酸カルシュウムから成る鉱物。
 コウ・しま  糸部
解字 「糸(いと)+高(コウ)」の会意形声。糸は絹糸を表しコウの発音で、染めていない絹糸または絹織物をいう。日本では縞(しま)がらの布の意に使われる。
意味 (1)しろぎぬ(縞)。白い絹。ねりぎぬ。「縞衣コウイ」(白絹の着物) (2)[国]しま(縞)。しまがら。縦または横に織り出したすじ。また、その布。「縞柄しまがら」「縞馬しまうま
 コウ・たたく  攴部ぼく
解字 「攴ボク(たたく・うつ)+高(コウ)」の形声。攴ボクは甲骨文字からある字で、手に棒や木の小枝を持って、たたくさまの象形。たたく・うつ意を表す。攴が正字だが、楷書では「攵ボク」に変わることが多い。したがって攴と攵は同字である。音符「攵(攴)ボク]を参照。敲コウは、たたく・うつ意の発音がコウ(高)であることを示した字。
意味 (1)たたく(敲く)。うつ。「敲門コウモン」(門をたたく)「推敲スイコウ」(唐の詩人が、「僧は推(お)す月下の門」の句を作ったが、「推す」を改めて「敲(たた)く」にしようか迷って先輩に問い、助言を受けて「敲く」に決めた故事に由来し、詩文を作るのに字句をさまざまに考え練ること) (2)たたき(敲き)。たたくこと。たたいたもの。「カツオの敲き」
 カク・コウ・かたい・はなわ  土部
解字 「土(つち)+高(カク・コウ)」の形声。宋代の[集韵]は「音は埆カク。土高き也。一に曰く土堅く拔(抜き出すこと)不可也。磽コウ(石の多いやせ地)也。」とし、堅く高い土地で掘り起こすこと不可な石の多いやせ地とする。
意味 (1)かたい(塙い)。土がかたい。 (2)確カクと通用する。「塙切カクセツ」(的確で切実=確切)「塙然カクゼン」(明確) (3)[国]はなわ(塙)。山の突き出た所。山の小高い所。語源については、①山の岬のさし出た所を人の鼻になずらえたもの(菅江真澄)。②山の鼻を廻る所の意で鼻廻(はなわ)の義か(東雅)③アイヌ語で上の平らな丘の意のパナワから(柳田国男)などがある。(日本国語大辞典による) (4)地名。①福島県「塙はなわ町」(福島県東白川郡にある町)②茨城県の大字「稲敷郡阿見町塙・塙城跡」「久慈郡大子町塙」 (4)姓のひとつ。「塙保己一はなわほきいち」(江戸時代後期の国学者)
(5)関連地形「岩鼻いわばな」

長野県上田市の岩鼻(「上田 道と川の駅・おとぎの里」より)
<紫色は常用漢字>

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