漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「象ショウ・ゾウ」<ぞう>「像ゾウ」「橡ゾウ」と「為イ」<象にさせる>「偽ギ」「譌カ」

2024年11月06日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ショウ・ゾウ・かたち・かたどる  豕部 xiàng  

解字 長い鼻をもつゾウの姿を描いた象形。甲骨文字と金文は、象の長い鼻を描いている。篆文は鼻が人の前屈かがみ姿に似た形になり、現代字はその部分がクに変化した象になった。後漢の[説文解字]は「南越(中国南部)の大獣なり。長鼻、牙あり」と説明している。また、本来の意味と関係なく発音だけを借りる借音シャクオンの用法で、象ショウの発音が「かたち」や「かたどる」意味で用いられる。
意味 (1)ぞう(象)。ゾウ科の哺乳動物。「象牙ゾウゲ」「象箸ゾウチョ」(象牙の箸はし)(2)かたち(象)。かたどる(象る)。すがた。ようす。なぞらえる。「象形文字ショウケイモジ」(物の形から生まれた文字)「現象ゲンショウ」(現れるすがた)「対象タイショウ」(①人の意識が向けられるもの。②目標となるもの)「象徴ショウチョウ」(シンボル)

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 「ぞう」
(象・橡)
  意味②の「すがた・かたち」(像)
音の変化  ショウ・ゾウ:象・像・橡

ぞう
 ショウ・ゾウ・くぬぎ・とち  木部 xiàng
解字 「木(き)+象(ぞう)」の会意形声。樹皮が象の皮のような木。クヌギやトチの木をいう。

クヌギの樹皮(「庭園図鑑」より) 

トチの樹皮(「庭園図鑑」より)
意味 (1)くぬぎ(橡)。写真上はその樹皮。櫟レキとも書く。(2)つるばみ(橡)。くぬぎ(橡)の実(どんぐり)を原料とする植物染料の一種。黒染め色。(3)[国]とち(橡)の木。写真下はその樹皮。栃(とち)は国字。

すがた・かたち
 ゾウ・かたち・かたどる  イ部 xiàng
解字 「イ(人)+象(すがた・かたち)」の会意形声。人や物のすがた・かたち。また転じて、かたどる・似る意味になる。
意味 (1)人や物のすがた・かたち(像)。「映像エイゾウ」(映した人や物の像)「想像ゾウゾウ」(思い浮かべた人や物の像)「肖像ショウゾウ」(人物の絵・写真・彫刻など)(2)本物の人物や事物になぞらえて作ったもの。かたどる(像る)。「銅像ドウゾウ」「石像セキゾウ」「仏像ブツゾウ」「偶像グウゾウ」(神仏の像。崇拝の対象物)(3)にる。形が似ている。「像似ゾウジ」(似る)



     イ <象にさせる>
[爲] イ・なす・する・ため・なる  灬部れっか wéi・wèi

解字 甲骨文から旧字体まで、「手のかたち+象(ぞう)」の会意。甲骨文は手が左につき、金文は向きが変わった手がつき篆文以降は上につく。像の鼻先に人の手をくわえ象を使役する形で、土木工事などの工作をすることをいう。旧字で爲、新字体で為に変化した。
意味 (1)なす(為す)。する。行なう。「行為コウイ」「人為ジンイ」「無為ムイ」(自然のままで作為がないこと)「有為ウイ」([仏]因縁によって生じたこの世の一切の現象)「為替かわせ」(ひきかえ。交換)(2)ため(為)。ために。(3)なる(為る)。~となる。

イメージ  
 「象にさせる」
(為・偽・譌)
音の変化  イ:為  カ:譌  ギ:偽

象にさせる
 ギ・いつわる・にせ  イ部 wěi
解字 旧字は僞で「イ(人)+爲(象にさせる)」の会意形声。象にさせたことを人がしたようにいつわること。新字体は偽に変化。後漢の[説文解字]は「詐(いつわ)る也(なり)。人に従い爲の聲(声)」とする。発音はイ⇒ギに変化した。
意味 (1)いつわる(偽る)。だます。「偽造ギゾウ」「偽名ギメイ」「偽証ギショウ」「虚偽キョギ」 (2)にせ(偽)。にせもの。「偽書ギショ」「真偽シンギ
譌[訛] カ・いつわる・なまる  言部 é
解字 「言(ことば)+爲(=偽(僞)の略体。いつわる)」の会意形声。いつわる言葉。訛(あやまる。いつわる。なまる)の異体字。従って発音はカ。
意味 (1)いつわる(譌る)。いつわり。うそをつく。「譌言カゲン」(いつわりごと)(2)あやまる。まちがえる。「譌字カジ」(誤った字)「譌雑カザツ」(あやまりみだれる)(3)なまる(譌る)。なまり。(=訛)「譌音カオン
<紫色は常用漢字>

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音符「旁ボウ」<かたわら・ひろがる>と「傍ボウ」「榜ボウ」「謗ボウ」「牓ボウ」「膀ボウ」「蒡ボウ」「磅ボウ」「滂ボウ」

2024年11月04日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ボウ・ホウ・かたわら・つくり  方部 páng・bàng

解字 甲骨文と金文は「凡ボン・ハン+方(方向)」の会意形声。凡は舟などの形であるが、ここでの意味は不明。方は方角・方向の意で発音も兼ねる。旁はこの他にも多様な字体があるが、甲骨文字の意味は、①地名またはその長。殷に敵対した「旁方」と呼ばれる地名、②祭祀名、となっている[甲骨文字辞典]。金文は[簡明金文詞典]が、①方向、方位、②人名、とする。篆文は方以外の部分が大きく変化した。[説文解字]は「溥(あまねし・ひろい・おおきい)也(なり)。方の聲(声)」とし、意味が変化した。その後の隷書(漢代)以降では、隋の訓詁書の[博雅]は「旁、大也。廣(ひろい)也」とし説文解字と同じ意味だが、543年の[玉篇]は「猶(なお)側ソク(そば・かたわら)也(なり)。一方に非(あら)ず也(なり)」とし、「かたわら」の意味があるとする。しかし、その字体から意味の変化を知るのはむずかしい。
 現代字は旁となったが、意味は篆文以降の、あまねく・ひろい意、および、かたわらの意味があるが、「かたわら・そば」の意は、日本では人をつけた傍ボウが受け持っており、現在、旁の字は、漢字の「つくり(旁)」の意がポピュラーである。
 なお、旁の音符字を点検してみると、「かたわら」の意味で解字できるものと、それ以外のものがある。そこで、イメージは「かたわら」とし、それ以外の字は「形声字」として解字した。
意味 (1)あまねく。ひろい。「旁引ボウイン」(広く調べ出す。広く考証する。博引)「博引旁証ハクインボウショウ」(広く引用し広く証拠を示して説明する)(2)かたわら(旁ら)。(=傍ら)(3)つくり(旁)。漢字の右辺の部分。
覚え方 傍の字を参照。傍を、ごろ合わせで覚えておくと、旁も書けて便利。

イメージ 
 「かたわら」
(旁・傍・榜・牓・膀)
 「形声字」(謗・蒡・滂・磅)
音の変化  
  ボウ:旁・傍・榜・牓・膀・謗・蒡・磅  ボウ・ホウ:滂

かたわら
 ボウ・かたわら・はた  イ部 bàng
解字 「イ(人)+旁(かたわら)」の会意形声。かたわらにいる人。転じて「かたわら」の意となる。旁が、あまねく・かたわら両方の意があるので、人をつけて、かたわらの意を明確にした字。
意味 (1)かたわら(傍ら)。はた(傍)。そば(傍)。わき(傍)。「傍線ボウセン」(文字や文章のわきに引く線)「路傍ロボウ」(みちばた)「傍観ボウカン」(かたわらで見る)「傍若無人ボウジャクブジン」(傍らに人無きが若(ごと)し)(2)分かれた。派生した。「傍系ボウケイ」「傍流ボウリュウ」「傍証ボウショウ」(証拠となる傍系の資料。間接の証拠)(3)つくり(傍=旁)  
覚え方 ひと()たつわ(立ワ=冖)ほう()ぼうに観者 (※立の下とワの上は重なる)
 ボウ  木部 bǎng・bàng
解字 「木(いた)+旁(かたわら)」の会意形声。道や建物のかたわらに立てた木製の掲示板。
意味 (1)たてふだ。掲示板。「榜札ボウサツ」(たてふだ)。(2)官吏登用試験の合格者を発表する掲示板。「金榜キンボウ」(金色の紙に書いた合格者の掲示板。金牓とも)「榜元ボウゲン」(官吏登用試験の首席合格者)(2)かかげしめす。「標榜ヒョウボウ」(かかげあらわす)

金榜キンボウ。金色の紙に書いた官吏登用試験合格者の掲示板(「北京孔子廟・国子監博物館の展示」)
 ボウ  片部 bǎng
解字 「片(木の板)+旁(かたわら)」の会意形声。土地の境界(かたわら)に立てた目印の木札。
 牓示石
意味 (1)たてふだ。「牓札ボウサツ」(たてふだ=榜札)(2)境界の表示札。「牓示ボウジ」(木の杙くいや石などで領地の境界を標示したもの)「牓示杙ボウジぐい」(荘園などのさかいぐい)「牓示石ボウジいし」(荘園などの境界石)
 ボウ  月部にく bǎng・páng・pāng
解字 「月(からだ)+旁(かたわら)」の会意形声。月(からだ)の旁(かたわら)にある部分で、片腹、片腕、昆虫などの羽をいう。なお、膀胱ボウコウ(ゆばりぶくろ)には、かたわらの意味はなく形声字である。
意味 (1)わき。わきばら。(2)かたうで。「膀臂ボウヒ」(片腕。助っ人。臂は、うでの意)(3)かたわらに付く羽。「翅膀シボウ」(昆虫などの羽)(4)「膀胱ボウコウ」とは、尿を一時的に溜める袋状の器官(ゆばりぶくろ)に使われる字。下腹部中央に位置する。膀ボウも胱コウも形声字。

形声字
 ボウ・そしる  言部 bàng
解字 「言(いう)+旁(ボウ)」の形声。相手の欠点をあげつらって言うことを謗ボウという。後漢の[説文解字]は「毀(そしる)也(なり)。言に従い旁ボウの聲(声)」とする。
意味 そしる(謗る)。悪口をいう。「謗言ボウゲン」「誹謗ヒボウ」(誹も謗も、そしる意)「誹謗中傷ヒボウチュウショウ」(悪口を言いふらして他人を傷つける)「毀謗キボウ」(人を非難する。毀はこぼつ意)「ザンボウ」(あしざまに言ってそしる)「分謗ブンボウ」(同僚が謗りを受けるのを自分も分かち合う)
 ボウ  艸部 bàng

葉付きの牛蒡
解字 「艸(草)+旁(ボウ)」の形声。ボウという名の草。「牛蒡ゴボウ」に用いる字。
意味 「牛蒡ゴボウ」とは、キク科の二年草。古くは薬草として中国から伝来。日本では根菜として栽培される。牛は草木の大きいものに冠され、蒡ボウのなかでも大きいものを指して言った言葉。「牛蒡子ゴボウシ」(ゴボウの種子を乾燥したもの。民間薬として消炎、解毒、解熱効果がある)
 ボウ・ホウ  氵部 pāng
解字 「氵(みず)+旁(ボウ・ホウ)」の形声。水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさまを滂ボウ・ホウという。[説文解字]は「沛ハイ(雨や水の勢いがよいさま)也(なり)。水に従い旁の聲(声)」とする。
意味 (1)水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさま。「滂湃ホウハイ」(水勢の盛んなさま)「滂沛ホウハイ」(①水の豊かで広い。②雨が盛んに降る。③恩沢が豊か) (2)涙の盛んに流れるさま。「滂沱ボウダの涙」(涙が盛んに流れる)(3)豊かで広い。「滂洋ホウヨウ
 ホウ・ポンド  石部 bàng・páng
解字 「石(いし)+旁(ホウ)」の形声。石が落ちる音を磅ホウという。六朝時代の梁の[玉篇]は「石の聲(声)なり」とし石の崩落する音の形容。また、イギリスの重さの単位であるポンド(pound)をいう。
意味(1)石が落ちる音の形容。また落ちる音が広がる意。「磅磅ホウホウ」(石がぶつかって飛び散る音)「磅唐ホウトウ」(①ひろくはびこる。②音が四方に響きわたる)(2)ポンド(磅)。イギリスの重量の単位(pound)。1ポンドは、453.592グラム。また、貨幣の単位(pound)。
<紫色は常用漢字>

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音符「兎ト」 <うさぎ> と 「菟ト」「逸イツ」「冤エン」

2024年11月02日 | 漢字の音符
[兔] ト・うさぎ  儿部 


 上は兎、下は免メン
解字 甲骨文はうさぎの形の象形。金文からかなり変形した。篆文第1字は春秋期の字で金文とのつながりがある、篆文第2字は[説文解字]だが、子を分娩する形の免に尻尾をつけた形。旧字は兔となったが、上が刀のうさぎ(ネットででない)もあるのは免の旧字に対応している。新字体は兎となった。旧字と新字体のうさぎの点は尻尾を表している。
意味 (1)うさぎ(兎)。「脱兎ダットの如く」(逃げ出す兎のように)(2)月の異称。月に兎がすむという伝説から。「玉兎ギョクト」(中国古代の伝説で月にすむウサギ。玉は満月の意。臼と杵で餅をつくという。転じて、月のたとえ)「金烏玉兎キンウギョクト」(太陽と月。また、日月のたとえ。金烏は太陽にすむ三本足のカラス。転じて太陽のたとえ)

玉兎(兎の餅つき
うさぎの字三種 現代字は、ノが上に着くので「野(ノ)兎」と覚える。兎を含む字は、旧字のクうさぎ(兔)刀(かたな)うさぎ(冤エンに含まれる)がある。

イメージ 
 「うさぎ」
(兎・逸・冤)
 「形声字」(菟)
音の変化  ト:兎・菟  イツ:逸  エン:冤

うさぎ
 イツ・はしる・それる  辶部

解字 篆文は「辵チャク(すすむ)+兔(クうさぎ)」の会意。はしる・のがれる・かくれる・足がはやい等、兎の動くさまをいう。旧字は「辶+兔」となり、新字体で逸となった。新字体では、兔の丶(点)がない。
意味 (1)はしる(逸る)。のがれる。にがす。「逸機イッキ」(機会をのがす)「後逸コウイツ」(後ろにそらす)(2)かくれる。うしなう。「逸史イッシ」(書きもらされた歴史上の事実)(3)それる(逸れる)。そらす(逸らす)。はずれる。「逸脱イツダツ」「見逸(みそ)れる」(うっかり見落とす)「御見逸(おみそ)れしました」(①気付かなかった。②相手を見直した)(4)足がはやい。抜きんでる。「逸材イツザイ」(5)気楽に楽しむ。「逸楽イツラク」「安逸アンイツ」(6)[国]はやる(逸る)。はぐれる(逸れる)。
 エン  冖部
解字 「冖(おおい)+刀うさぎ」の会意。覆いをかぶせられ外にでることができない兎。動き回ってのがれた兎の「逸イツ」に対して、不幸にしてつかまった兎を「冤エン」という。ウ冠の寃エンは異体字。
意味 (1)ぬれぎぬ。無実の罪をうける。「冤罪エンザイ」「冤獄エンゴク」(無実の罪で牢獄につながれる)(2)うらみ。「讐冤シュウエン」(うらみをはらす)
覚え方 ワ(ナ(わな)にはまった刀うさぎエンザイ。なお、スマホでは「ノうさぎ」で表示されている。

形声字
 ト  艸部
解字 「艸(くさ)+兔(ト)」の形声。トという名のつる草の一種である「菟糸トシ」に用いられる。

菟糸トシ(中国ネットから)
意味 (1)「菟糸トシ」は、ねなしかずら。寄生するつる草で、種子は「菟糸子トシシ」という。「菟糸燕麦トシエンバク」(菟糸は糸がついていても織ることができず、燕麦は麦がついていても食べることができない。有名無実の例え。燕麦は主に馬の飼料だった)(2)「菟糸子トシシ」(菟糸トシの成熟した種子を乾燥した漢方薬。用途は強精や強壮薬で、茯菟丸ブクトガンという漢方に配合されている)(3)兔に通じうさぎ。菟[=兎](4)「於菟オト」(虎。楚の方言)「木菟ずく」とはミミズクの古名。古くは「ツク」。フクロウ科の鳥のうち、頭に耳のような羽毛をもつものの総称。 
<紫色は常用漢字>


参考音符
 ザン <ずるくはしこいウサギ>



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音符「吉キチ」<よい>と「詰キツ」「拮キツ」「桔キツ」「髻ケイ」「結ケツ」「纈ケツ」「頡ケツ」「黠カツ」

2024年10月31日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 キチ・キツ・よい  口部  jí

解字 甲骨文は「建物のような形+口サイ(祭祀儀礼の器うつわ)」であるが成り立ちは不明。この文字の意味は甲骨文字を刻んだ骨を焼いて占うとき、文字の部分にタテに裂けたひび割れが出現すると吉キチとされ、幸運の意味となる[甲骨文字辞典]。金文は上部が士の形になり意味は、①善・美しい、②月の最初の日、などに用いられた[簡明金文詞典]。篆文以後は吉の形になり、よい・めでたい意味となった。
意味 (1)占いのよいしるし。「吉兆キッチョウ」(よいきざし)「吉凶キッキョウ」(良い事と悪い事)(2)よい(吉い)。めでたい。さいわい。「吉事キチジ」「吉報キッポウ」「不吉フキツ」(3)「吉月キツゲツ」(月の最初の日)

イメージ 
 「よい・めでたい」
(吉)
 「形声字」(結・髻・纈・詰・拮・桔・頡・黠)
音の変化  キチ:吉  キツ:詰・拮・桔  ケイ:髻  ケツ:結・纈・頡  カツ:黠

形声字
 ケツ・むすぶ・ゆう・ゆわえる  糸部 jié・jiē
解字 「糸(ひも)+吉(ケツ)」の形声。紐でむすぶことを結ケツという。[説文解字]は「締(しめ)る也(なり)。糸に従い吉ケツの聲(声)」とする。結ぶ意のほか、しめくくる・まとまる・こりかたまる意に用いる。
意味 (1)むすぶ(結ぶ)。ゆわえる(結わえる)。ゆう(結う)。「結合ケツゴウ」「結束ケッソク」(2)しめくくる。実をむすぶ。「結実ケツジツ」「結果ケッカ」「結願ケチガン」([仏]願かけの日数が満ちること)(3)まとめる。まとまる。「結集ケッシュウ」「結成ケッセイ」(4)こりかたまる。「結晶ケッショウ」「結氷ケッヒョウ
 ケイ・もとどり  髟部 jì
解字 「髟(かみのけ)+吉(=結。むすぶ)」の会意形声。髪の毛をまとめ上げて結ぶことを髻ケイという。

①男性の髻もとどり、②女性の頭上一髻ケイと二髻ケイ(「髪型の歴史・奈良時代」より)
『貞丈雑記』より髻の図①(「日本中世庶民の世界」より)
意味 もとどり(髻)。たぶさ(髻)。髪を頂きに集め束ねること。また、その髪型。ふつうは、その上から冠をつけた。「髻もとどりを切る」(出家する)「髻華うず」(古代、草木の枝葉や華を冠やもとどり(髻)に挿して飾りとしたもの。かざし)
 ケチ・ケツ・ゆはた  糸部 xiè
解字 「頁(=頭。あたま)+結(むすぶ)」の会意形声。布や薄い革の表面を、小さな頭を出すように糸で結んで染め、模様を出す方法。
意味 ゆはた(纈)。くくり染め。しぼり染め。「纈革ゆはたがわ」(くくり染めした革)「纐纈コウケツ・コウケチ」(奈良時代に行なわれた絞り染めの名。纐も纈も、しぼり染めの意)「夾纈キョウケチ」(文様を彫った2枚の板の間に布を挟んで多色に染め上げる技法。板の裏側にそれぞれの模様に対応する箇所に小さな穴をあけ、そこから染料を流し込む。奈良時代に流行した)

夾纈の技法(読売新聞「2024.10.29夕刊」より)
 キツ・なじる・つめる・つまる・つむ  言部 jié  
解字 「言(いう)+吉(キチ⇒キツ)」 の形声。相手を言葉で問いつめることを詰キツという。なじる・せめる意となる。日本では、物をつめこむ、つまる(ふさがる)、つむ(おわる)意でも用いる。
意味 (1)なじる(詰る)。せめる。問い詰める。「詰問キツモン」「詰責キッセキ」(とがめて責める)(2)[国]つめる(詰める)。つまる(詰まる)。つむ(詰む)。「缶詰かんづめ」「詰腹つめばら」(腹をつめる。切腹する)「詰襟つめえり」(えりがつまる。学生服などえりが立つものをいう)「王手を打たれて詰む」(負ける)
 キツ   扌部 jié・jiá
解字 「扌(手)+吉(キツ)」の形声。手で物をつめこむことを拮キツという。つめこむ・おしこむ意となる。おしこむ力に対抗する「抗コウ」とともに用いられる。
意味 つめこむ。おしこむ。「拮抗キッコウ」(勢力がほぼ等しく相対抗して互いに屈しないこと。拮は押しこむ意、抗は押し返す意。)「拮抗筋キッコウキン」(一方が収縮するとき他方が伸びる一対の筋肉)
 キツ  木部 jú・jié
はねつるべ「和泉名所図会」
解字 「木(き)+吉(=拮)」の形声。拮抗キッコウ(勢力がほぼ等しい)に木へんをつけ、拮抗する木の意で、はねつるべの桔槹キッコウに当てた字。はねつるべは、支点と重りで力を拮抗させており、小さな力で水を汲み上げることができる。また、秋の七草の「桔梗キキョウ」に当てる。
意味 (1)はねつるべ。「桔槹キッコウ・ケッコウ」(はねつるべ)。(2)秋の七草の「ききょう」に使われる字。「桔梗キキョウ」(多年生の草本植物。夏秋のころ青紫または白色の美しい花を開く。根は桔梗根といい生薬となり鎮咳・去痰などの効用がある)
桔梗(「暦生活・桔梗」より)
 ケツ・キツ  頁部 jié
解字 「頁(あたま)+吉(=拮)」の形声。拮抗キッコウ(勢力がほぼ等しい)に頁をつけ、「頡頏ケッコウ」という語に用いる。
意味 (1)「頡頏ケッコウ」とは、①勢力に優劣がなく互いにはりあうこと。=拮抗。②鳥が飛びあがり、また舞い降りること。「燕燕エンエン(ここ)に飛び、之を頡ケツし之を頏コウす」(詩経・燕燕)(2)「頡滑ケッコツ・ケツカツ」(入り乱れるさま)(3)人名。「倉頡ソウケツ」(鳥の足跡を見て文字を発明したという伝説上の人物)
 カツ・わるがしこい  黒部 xiá
解字 「黑(くろ⇒悪い)+吉(キチ⇒カツ)」の形声。黒に悪のイメージがあることから、わるがしこいことを黠カツという。また、我が子の聡明なることを逆説的にわるがしこいということがある。
意味 (1)わるがしこい(黠い)「黠獪カツカイ」(悪がしこい)「カツチ」(悪智恵)「カツド」(悪がしこい奴)(2)「カツジ」(賢い子供)
<紫色は常用漢字>
 
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音符「免メン」と「娩ベン」「勉ベン」「冕ベン」「鮸ベン」「挽バン」「輓バン」「晩バン」

2024年10月29日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 メン・ベン・まぬかれる  儿部 miǎn            


 上が免メン、下が娩ベン
解字 上の免メン・ベンの金文は、第一字が冑かぶとをかぶった人の正面形、第二字が側面形。金文は免氏の器に刻されており姓を表している。[字統]は「免冑メンチュウ(冑をぬぐ)」の意味があるとし、「左右、冑を免(ぬ)ぎて下る」(国語・周語中)「冑を免(ぬ)ぐこと毋(なか)れ」(礼記・曲礼上)の例文を挙げている。篆文になると同音の免メン・ベンに置き換えられた。免は女性が股間をひらいて出産する形だが、ここでは発音だけ表す形声字で免(ぬ)ぐ意となり、さらに意味が転じて、のがれる・まぬがれる・ゆるす意が加わった。旧字は上に刀がついた形になり、現在はクがついた免になっている。
意味 (1)ぬぐ(免ぐ)。「免冠メンカン」(冠をぬぐ。退官する)(2)まぬかれる(免れる)。のがれる。「免責メンセキ」(責任をのがれる)「免疫メンエキ」(疫病をまぬがれる。体内に病原菌が入っても発病しないだけの抵抗力をもっている)(3)ゆるす。「免(メン)じる」「免罪メンザイ」(罪を免ずる)「免許メンキョ」(免も許も、ゆるす意。特定の事をすることを許す)(4)やめさせる。「免職メンショク」「罷免ヒメン

イメージ 
 「形声字」(免・娩・挽・輓・晩・勉・冕・鮸) 
音の変化  メン:免  ベン:娩・勉・冕・鮸  バン:挽・輓・晩  

形声字
 ベン・うむ  女部 miǎn

解字 甲骨文は女性の胎内から形の胎児を両手で取り出すさま。出産の意味を表す。金文は体内と子供だけが描かれている。篆文は「子+免(ベン)」の形声で子供が生まれる意。現代字は「女+免(ベン)」で女性が出産する形となった。
意味 うむ(娩む)。出産する。「分娩ブンベン」「娩痛ベンツウ」(出産時の痛み)
 ベン・つとめる・しいる  力部 miǎn
解字 「力(ちから)+免(ベン)」 の形声。力をこめて、つとめることを勉ベンという。[説文解字]は「强(しいる)也(なり)。力に従い免ベン聲(声)」とする。
意味 (1)つとめる(勉める)。はげむ。「勉学ベンガク」「勉励ベンレイ」(つとめはげむ)「勤勉キンベン」(熱心にはげむ) (2)しいる(強いる)。「勉強ベンキョウ」(日本語では強くはげむ意。現代中国語では「無理強いする」意)
 バン・ひく  扌部 wǎn
解字 「扌(手)+免(ベン⇒バン)」の形声。手でものを引くことを挽バンという。宋代の発音字典[集韻]は「引く也。音は晚バン」とする。
意味 (1)ひく(挽く)。ひっぱる。「挽回バンカイ」(ひきもどす。取り戻す) (2)人の死を悼む。「挽歌バンカ」(柩を乗せた車を挽くときうたう歌。死者を悲しみ悼む詩歌)(3)[国]ひく(挽く)。カンナやノコギリで削ったり切る。すりつぶす。「挽物ひきもの」(轆轤ロクロで挽いて作った器具)「挽肉ひきにく
 バン・ひく  車部 wǎn
解字 「車(くるま)+免(バン=挽)」の形声。車を挽くことを輓バンという。
意味 (1)ひく(輓く)。車や舟をひく。「輓馬バンバ」(ソリや車をひかせる馬)「推輓スイバン」(車を後ろから推したり前から引くこと。転じて、人を推挙する)(2)人の死を悼む。「輓歌バンカ」(=挽歌)
 バン・おそい  日部 wǎn 
解字 「日(ひ)+免(バン=挽)」の会意形声。太陽(日)を引っぱりおろすと日が暮れる意。
意味 (1)くれ。日暮れ。夕方。よる。「今晩コンバン」「晩鐘バンショウ」(くれに鳴る鐘)「晩照バンショウ」(夕日の影。夕日)(2)おそい(晩い)。あと。「晩学バンガク」「晩婚バンコン」「晩生おくて」(おそく成長・成熟する)「晩稲おくて」(稲がおそく成長・成熟する)
 ベン・かんむり  冂部けい miǎn 

蜀の劉備の冕冠ベンカン(ウィキペデアより)

解字 金文は大の字の人が被り物をかぶっている形で、この発音をベンと言った。篆文で、「冃ボウ(かぶりもの)+免(ベン)」の形声となり、ベンというかぶりものを表す。現代字は篆文を受け継いだ冕となった。
意味 かんむり(冕)。天子から大夫まで礼式に用いる冠。「冕冠ベンカン」(皇帝や天皇・国王が着用した冠)「冕服ベンプク」(貴人がつけている冠と衣服)「軒冕ケンベン」(①大夫 (たいふ)以上の人の乗る車と、かぶる冠。②高位高官。また、その人)
 ベン・にべ  魚部 miǎn
解字 「魚(さかな)+免(ベン)」の形声。ベンという名の魚で「にべ」をいう。

にべ(イシモチ)(「沼津港の季節の魚図鑑 」より)
意味 にべ(鮸)。スズキ目ニベ科の海水魚。「イシモチ」や「グチ」とも呼ばれる。「鮸膠にべにかわ」(ニベ科の魚の鰾(うきぶくろ)を原料とする膠(にかわ)。粘着力が強い)「鮸膠(にべ)もしゃしゃりもない」(粘り気もなければ、しやりしゃりしたところもない。味もそっけもない)「鮸膠(にべ)も無い」(愛想がない・とりつきようがない)
<紫色は常用漢字>

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音符「農ノウ」<石製の農具でたがやす> と「儂ノウ」「濃ノウ」「膿ノウ」

2024年10月27日 | 漢字の音符
 ノウ  辰部 nóng

 
  上は農、下は辰シン
解字 甲骨文第一字は「草が2本生える形+辰シン(石製の農具)」で、草を石製農具で刈るかたち。第二字は「林+辰(石製の農具)」で、木々を石製農具で刈るかたち。辰の甲骨文の三角形が石の部分[甲骨文字辞典]。意味は地名や祭祀名であり、このかたちは農業の前段階となる開墾のさまと思われる。金文から「田(耕作地)+草二つ+辰(石製の農具)」で、耕作地の草を石製農具で刈りつつ、たがやす形となった。(草(屮屮)の代わりに「木木」の形もある)。[簡明金文詞典]は農を、①農耕、②厚い・勤勉、の意味で用い、さらに「農穡ノウショク」という語で播種・収穫・農事という意味で用いている。篆文で上部が、「草または木二つ⇒上からの両手、田⇒囟」に誤った形になり、現代字では上部⇒曲に変化した農になった。意味は農具で耕作地をたがやすこと。現代字は上が曲に変化したが、下は甲骨から続く石製農具の辰が残った「曲+辰」になっている。
参考音符「辰シン」へ
意味 (1)たがやす。作物を作る。「農業ノウギョウ」「農耕ノウコウ」「農稼ノウカ」(耕して作物を植える)(2)たがやす人。「農民ノウミン」「農家ノウカ」「農奴ノウド」(3)勤勉なさま。つとめる。「力農リョクノウ」(農(つと)め耕す。力は耜スキの意)「農(つと)めて嘉穀カコク(よい穀物)を植える」「耕者は農農に用力」(耕す者は農農ノウノウ(勤勉)に力(すき)を用いる。《管子·大匡》戦国・漢代の書)

イメージ  
 「たがやす」
(農・儂)
 「形声字」(濃・膿)
音の変化  ノウ:儂・農・濃・膿

たがやす
 ノウ・ドウ・わし  イ部 nóng
解字 「イ(人)+農(たがやす)」の会意形声。たがやす人で農民の意だが、中国・中世の俗語で自分を指す言葉として使われた。また、相手をよぶ意でも使われた。
意味 (1)われ。あなた。 (2)[国]わし(儂)。おれ。自称のことば。年配の男性が使う。

形声字
 ノウ・こい  氵部 nóng
解字 「 氵(水)+農(ノウ)」の形声。後漢の[説文解字]は「露(つゆ)多き也(なり)。水に従い農ノウの聲(声)」とし、「詩経」曰(いわ)くとして「蓼蕭リョウショウ」(小雅)の「蓼リョウ(長く大きな)彼の蕭ショウ(よもぎ)零露レイロ(落ちる露)は濃濃ノウノウ(しっとり)たり」を挙げていることから、当初は地面がしっとり濡れる意味であった。のちに転じて、色や味が濃い意味となった。
意味 (1)こい(濃い)。色や味が濃い。「濃紺ノウコン」(濃い紺色。ダークブルー)「濃淡ノウタン」(色彩や味の濃いうすい)(2)液体の濃度が高い。ねっとりとする。「濃厚ノウコウ」(こってりしている)「濃縮ノウシュク」(煮詰める等して濃度をたかめる)「濃茶こいちゃ」(とろっとした濃厚で芳醇な味わいのお茶)(3)こまやか。「濃密ノウミツ」(濃くてこまやか)(4)[国]だむ(濃む)。だみ(濃み)。金銀泥や岩絵の具などの極彩色を用いて絵を描くこと。「濃絵だみえ」(5)地名。「美濃みの」(①旧国名。岐阜県南部。②美濃市。岐阜県南部の市)。
 ノウ・うみ・うむ  月部にく nóng
解字 「月(からだ)+農(=濃。ねっとりした)」の会意形声。はれものや傷などにより、皮膚にできるねっとりしたうみ(膿)。
意味 うみ(膿)。うむ(膿む)。炎症を起こした部位で生じる不透明な粘液。ただれる。「化膿カノウ」「膿瘍ノウヨウ」(膿がたまる病気)「膿汁ノウジュウ」(化膿した傷口などから出る液)「歯槽膿漏シソウノウロウ」(歯周病が最も進行した状態で、歯槽骨(歯茎の骨)から膿が漏れる症状」
<紫色は常用漢字>

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音符「束ソク」 <たばねる> と 「速ソク」「漱ソウ」「嗽ソウ」「竦ショウ「悚ショウ」「勅チョク」「嫩ドン」 

2024年10月25日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ソク・たば  木部

解字 甲骨文第一字(上)は糸をひも状に束ねた形。第二字(下)は、木を縄でくくった形で、糸束と木の束の二種がある。金文の第一字(上)は糸束ととれる字。第二字は木の回りを縄でくくった形で、木を束ねた形。金文は[簡明金文詞典]に、①「束矢ソクシ一百矢と為す」とあり、たばねる矢の単位数となり、②「束帛ソクハク五匹と為す」とあり、帛(絹布)の単位数となっている。③「糸束」の記述もあり、糸の束の意となっている。篆文にいたり、これまであった糸束と木の束の二種の系統が一つに統一された束の字になり、この形が現在にまで続いている。
意味 (1)たばねる(束ねる)。たば(束)。つかねる。ひとまとめに括ったもの。「糸束いとたば」「束髪ソクハツ」(髪を束ねてむすぶ)「束矢ソクシ」(矢たば)「束子たわし」(シュロの毛などを束ねたもの。こすり洗うのに用いる)「束脩ソクシュウ」(進物に用いた干(ほ)し肉の束)(2)動きがとれないようにする。つなぎとめる。「束縛ソクバク」「拘束コウソク」(自由に行動させない)(3)[国]つか(束)。①指4本を握った幅。②短い時間。「束の間」③短い木材。「束柱つかばしら」(床の下などに立てる短い柱)

イメージ 
 「たばねる」(束)
 「形声字」(速)
 木を束ねるとき縄で「引き締める」(勅・竦・悚・漱・嗽)
 「その他」(嫩)
音の変化  ソク:束・速  ソウ:漱・嗽  ショウ:竦・悚  チョク:勅  ドン:嫩   

形声字
 ソク・はやい・すみやか  辶部
解字 「辶(ゆく)+束(ソク)」の形声。後漢の[説文解字]は「疾シツ(はやい)也(なり)。辵チャク(=辶)に従い束ソクの聲(声)」とし、はやく進むことを速ソクという。
意味 (1)はやい(速い)。すみやか(速やか)。「速記ソッキ」「速達ソクタツ」「速断ソクダン」「速成ソクセイ」(すみやかになしとげる)(2)はやさ「速度ソクド」「速力ソクリョク」「高速コウソク

引き締める
[敕] チョク・みことのり  力部
解字 旧字は「攵ボク・うつ(=攴)+束(ひきしめる)」の会意形声。打って引き締めること、転じて、いましめる意となる。また、天子の仰せの意味で用いる。新字体は攵を力に変えた勅になった。「勅チョク」は、もと「敕」の俗字として用いられていた。
意味 (1)いましめる。「勅戒チョッカイ」(いましめ)「勅励チョクレイ」(いましめてはげます)(2)みことのり(勅)。天皇のおおせ。「勅命チョクメイ」「勅語チョクゴ」(3)天皇に関係する物事に添える語。「勅撰チョクセン」(①天子自らが詩歌などを撰ぶこと。②勅命で詩歌などを撰ぶこと)「勅使チョクシ
 ショウ・すくむ  立部
解字 「立(たつ)+束(ひきしめる)」の会意形声。身を引き締めて立つこと。
意味 (1)かしこまる。つつしむ。「竦動ショウドウ」(つつしみかしこまる)(2)すくむ(竦む)。おそれる。恐ろしさや緊張で体が動かなくなる。「身が竦む」「竦然ショウゼン」(おそれてこわがるさま)
 ショウ・おそれる  忄部
解字 「忄(こころ)+束(=竦の略体。すくむ)」の会意形声。身をすくめたときの心でおそれる意。
意味 おそれる(悚れる)。「悚然ショウゼン」(おそれてぞっとするさま)「悚慄ショウリツ」(ぞっとして震え上がる)
 ソウ・すすぐ・うがい  氵部
解字 「氵(水)+束(ひきしめる)+欠(口をあける)」の会意形声。口をあけて(欠)、 氵(水)を含み、口を引き締めて(束)、うがいをすること。
意味 (1)すすぐ(漱ぐ)。くちすすぐ(漱ぐ)。「含漱ガンソウ」(うがい。口をすすぐ)「枕石漱流チンセキソウリュウ」(石を枕にして流れに口を漱ぐ。自然の中で生きる)「漱石枕流ソウセキチンリュウ」(枕石漱流と言うべきところを漱石枕流と言い誤り、「石に漱ぐ」とは歯を磨くこと、「流れに枕す」とは、「耳を洗うこと」と強弁した故事から、負け惜しみの強い意)(2)すすぎ洗う。(3)(嗽ソウに通じて)せき。せきをする。(4)人名。「漱石ソウセキ」(夏目漱石。漱石枕流の故事から名付けた)
 ソウ・ソク・すすぐ・うがい・せき  口部
解字 「口(くち)+欶ソウ(=漱)」の会意形声。欶ソウは漱ソウに通じ漱(すす)ぐ意。この意を口をつけて表した。また、せきこむ意にも用いる。
意味 (1)すすぐ(嗽ぐ)。うがい(嗽い)。うがいをする。「含嗽ガンソウ」(うがい)「嗽薬ソウヤク」(うがい薬)(2)せき(嗽)。せきをすること。「咳嗽ガイソウ」(せきをする。しわぶき) 

その他
 ドン・ノン・わかい・やわらかい  女部 nèn

解字 篆文は「女(おんな)+耎ゼン⇒ドン・ノン(やわらかい)」のドン・ノン。耎ゼンは「大(ひと)+而(やわらかい)」の会意。やわらかい意に人をつけた形で、人に限らず、やわらかい、よわい意となる。そこに女がついたドン・ノンは、女性が若くしなやかの意となる。現代字は、篆文の媆の耎⇒敕に変化した嫩ドンとなった変則的な字。北宋時代の文学者・徐鉉ジョゲンは、この字を「今、俗に嫩ドンに作るのは是(正しい)に非(あら)ず」と評している(「字通」による)。こうした変則的な字は漢検試験問題の絶好の候補、と考えると覚える気になる。
意味 (1)わかい(嫩い)。やわらかい。若くしなやか。「嫩芽ドンガ」(草や木のわかい芽)「嫩色ドンショク」(浅く淡い色)「嫩緑ドンリョク」(わか葉の緑)「嫩碧ドンペキ」(わかばの緑)(2)なまめかしい。みめよい。「嬌嫩キョウドン」(嬌も嫩も、なまめかしい意)「嫩語ドンゴ」(なまめかしい声)(3)かすかに。わずかに。「嫩寒ドンカン」(うすら寒い)「嫩涼ドンリョウ」(すこし涼しい)
<紫色は常用漢字>

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音符「中チュウ」<真ん中・内側>と「仲チュウ」「忠チュウ」「衷チュウ」「沖おき」「狆チン」「迚とても」

2024年10月23日 | 漢字の音符
 チュウ・なか  l部たてぼう zhōng・zhòng

解字 甲骨文字第1字は、吹き流しのつく旗を四角な土地の真ん中に挿して立てた形。挿したことを示すため旗棹の下先が四角を貫いている。第2字は突き出た先にも旗の吹き流しを描いた形。金文は甲骨第2字を引きつぐが土地が楕円形になった形をへて、吹き流しがない第2字の形になった。篆文および現代字はこの形を継承して出来ている。意味は、土地の「真ん中」「うち」「なか」の意を表す。そのほか、真ん中で「かたよらない」、的の中に入ることから「あたる」意味も加わった。部首はl部(たてぼう)。
意味 (1)なか(中)。まんなか。中心。「中央チュウオウ」(2)あいだ。物と物との真ん中にある。「中間チュウカン」(3)うち。なか。「夜中ヨナカ」「懐中カイチュウ」(4)かたよらない。「中正チュウセイ」「中立チュウリツ」(5)あたる。あてる。「的中テキチュウ」「命中メイチュウ」「中毒チュウドク」(毒にあたる)「中傷チュウショウ」(傷にあたる=傷つけられる)

イメージ  
 「なか・あいだ」
(中・仲・衷・忠・狆)
 「まんなか」(沖・迚)
音の変化  チュウ:中・仲・衷・忠・狆・沖  とても:迚

なか・あいだ
 チュウ・なか  人部 zhòng
解字 「イ(ひと)+中(あいだ)」の会意形声。人と人とのあいだにいること。
意味 (1)兄弟の序列で、あいだにあたる人。上から、伯ハク・仲チュウ・叔シュク・季、また、孟モウ・仲チュウ・季という。(2)春夏秋冬のそれぞれの期間を三分したとき、孟・仲・季という。「仲春チュウシュン」(春の真ん中の月で、陰暦2月のこと)(3)なかだち。「仲人なこうど」(4)[国]なか(仲)。なかまどうしの間がら。「仲間なかま
 チュウ・うち  衣部 zhōng

解字 「衣(ころも)+中(なか・内側)」の会意形声。衣で包まれた内側の意で、①衣の内側に着る肌着などの意。②衣の内側から人の心のうちをいう。字形は隷書まで衣+中になっていたが、現代字は、中の下部が突き出ない。
意味 (1)うちにする。中に着る。肌着。「衷甲チュウコウ」(衣服の下によろいを着る) (2)うち(衷)。なか。心のうち「衷心チュウシン」(まごころ)「苦衷クチュウ」(苦しい心のなか)(3)なかほど。かたよらない。「折衷セッチュウ」(取捨して適当なところをとる)
 チュウ   心部 zhōng
解字 「心(こころ)+中(なか・うちがわ)」の会意形声。うわべでなく、こころの内から相手にむきあうこと。相手に尽くす意で、まごころ・まことをいう。のち、主君のためにつくす意味もできた。
意味 (1)まこと。まごころ。まじめ。「忠心チュウシン」(まごころ)「忠誠チュウセイ」「忠実チュウジツ」(2)君主に対して誠実なこと。「忠臣チュウシン」「忠義チュウギ」「忠犬チュウケン
 チュウ・ちん  犭部 zhòng
解字 「犭(いぬ)+中(なか・内側)」の会意形声。日本では室内で飼う犬の意。なお、中国では少数民族の名に用いていた。

狆(チン)(「みんなの犬図鑑・狆」より)
意味 (1)[国]ちん(狆)。日本で改良された愛玩用の小型犬。日本名のちんは珍チン(めずらしい・だいじな)から来たのではないかと思われる。(2)中国、貴州省南部などに住むプイ(布依)族の旧称。

まんなか
 チュウ・おき  氵部 chōng
解字 「氵(海・湖)+中(まんなか)」の会意形声。日本では海や湖のまん中の意から、岸から遠く離れた所の意で使う。中国では、意味が多様で「しずか・おだやか」「むなしい」意で使う。また、チュウ(注)に通じ、水がそそぐ意ともなる。
意味 (1)[国]おき(沖)。岸から遠くはなれた所。「沖釣り」(2)しずか・おだやか。「沖和チュウワ」(おだやか。やわらぐ)(3)むなしい。「沖虚チュウキョ」(むなしい。何もない)(3)流れがそそぐ。「沖積チュウセキ」(流水のために土砂が積み重なる)(4)「沖天チュウテン」とは、空高くのぼること。
[国字] とても  辶部
解字 「辶(ゆく)+中(なかほど)」の会意。なかほどまで行った状態をいい、①到着できないことから、否定の語をともない、「とても~ない」となる。②否定をともなわず、とても・すこぶる・非常に、の意味となる。
意味 (1)「迚(とて)も出来ない」「迚(とて)もじゃないが無理だよ」(2)「迚(とて)も楽しい」
<紫色は常用漢字>  

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音符「滕トウ」< 上にあがる > と「藤トウ」「騰トウ」「謄トウ」「謄トウ」「鰧トウ」「縢トウ」「勝ショウ」「媵ヨウ」

2024年10月21日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 トウ・わく・あがる  水部 téng      


上段が滕トウ、下段が朕チン
解字 朕チンの甲骨文は「舟形(いれもの)+両手で棒状のものを捧(ささ)げるかたち)」である。意味は仮借カシャ(当て字)で一人称(われ)であるが、本来の意味は貴重なものを舟(容器)にいれて両手でさしあげる形である。金文で棒の中ほどに肥点がはいり上にハがついた形になり、これが篆文で火に変化した。この形は滕の篆文の水を除いた部分と同じ形である。したがって滕は「水+朕チンの篆文(両手でさしあげる)」の形で、水があがる意味となる。朕は後に天子の自称の意となったが、本来は容器に入れた貴重な物をささげる形なので、上にあげる・あがる意味がある。すなわち滕は、水がわく意となる。
意味 (1)わく。水がわきあがる。(2)あがる。(3)地名。山東省滕県。湧き出る泉水がある。

イメージ 
 「水があがる」
(滕・藤・籐)
 「上にあがる」(勝・騰・謄・鰧)
 「その他」(縢・媵)

音の変化  トウ:滕・藤・籐・騰・謄・鰧・縢  ショウ:勝  ヨウ:媵

水があがる
 トウ・ふじ  艸部 téng
解字 「艸(草木)+滕(水があがる)」の会意形声。水がつるの中を上ってくるつる性の草木。

藤のつる(「庭木図鑑・藤/フジ/ふじ」より)
意味 (1)ふじ(藤)。マメ科フジ属の蔓性落葉木本の総称。「藤棚ふじだな」「藤蔭トウイン」(藤棚の木陰)「藤色ふじいろ」(薄い紫色)「藤袴ふじばかま」(キク科の多年草。秋の七草。花の色が藤色で花弁が袴の形から)「藤布ふじぬの」(藤づるの皮を剥いで糸とし、それを織りあげた布)(2)つる状に生える木の総称。かずら。つる。「葛藤カットウ」(葛やつる性の木(藤)がもつれからむ。いざこざ)(3)姓。藤原氏のこと。源・平・藤・橘の4大貴種名族のひとつ。
 トウ  竹部 téng
解字 「竹(たけ)+滕(水があがる)」の会意形声。水がつるを上がってくる竹に似たつる性の木。
意味 (1)とう(籐)。とうづる。ヤシ科トウ属植物の総称。熱帯アジアに自生するつる性の木本。茎は強靭で竹に似て自由に曲げて細工ができる。ラタン。「籐本トウホン」(蔓性植物のこと)(2)籐で編(あ)んだ器具。「籐椅子トウイス」「籐細工トウザイク」「籐枕トウまくら

籐椅子籐家具店のHPから)

上にあがる
 ショウ・かつ・まさる  力部 shèng
解字 「力(ちから)+滕の略体(上にあげる)」 の会意形声。力を入れて物を持ちあげてたえること。長く持ちこたえた人は他の人よりすぐれており(勝れる)、相手をしのぐ(勝つ)意となる。
意味 (1)たえる(勝える)。もちこたえる。(2)まさる(勝る)。すぐれる。「健勝ケンショウ」(健康がすぐれる)「景勝ケイショウ」(景色がすぐれる)(3)かつ(勝つ)。かち(勝)。力を入れて相手をしのぐ。「勝利ショウリ」「勝算ショウサン
 トウ・あがる  馬部 téng  
解字 「馬(うま)+滕の略体(上にあがる)」の会意形声。馬に乗る意。転じて、高くあがる意となる。
意味 あがる(騰がる)。のぼる。たかくあがる。「騰貴トウキ」(物価や相場のあがること)「沸騰フットウ」(沸き上がる)「高騰コウトウ」「騰勢トウセイ」(物価や相場などが騰がる勢い)
 トウ・うつす  言部 téng
解字 「言(文字)+滕の略体(上にのせる)」の会意形声。言(文字)の上に紙をのせて写しとること。
解字 うつす(謄す)。原本をしきうつす。原本通りに書き写す。「謄写トウシャ」(①そのままを書き写す。②謄写版で印刷する)「謄写版トウシャバン」(蝋引原紙をやすり板にのせ鉄筆で文字を書いたものをローラーインクで印刷する)「謄本トウホン」(原本の内容を全部そのまま写し取った文書。また、戸籍謄本の略。対語は、抄本ショウホン
 トウ・おこぜ  魚部 téng

おこぜ(GOOブログ「鰧・虎魚(おこぜ)」より)
解字 「魚(さかな)+滕の略体(上にのせる⇒お供えする)」の会意形声。山の神にお供えする魚である「おこぜ」をいう。おこぜは醜い顔の魚であるため、女神である山の神は顔が不器量なうえ嫉妬深いので、醜いオコゼの顔を見ると、安心して静まるのだといわれる。
意味 おこぜ(鰧)。虎魚とも書く。カサゴ目の海魚のうちオコゼ類の総称。特に食用となるオニオコゼ(鬼鰧・鬼虎魚)をさすことが多い。頭は凹凸が激しく、背びれのとげが強大で奇異な姿をしている。本州中部以南の海底に分布し、山の神の供物にするなど山の神と関係のある伝承が多い。

その他
 トウ・かがる・からげる  糸部 téng
解字 「糸(ひも)+滕の略体(トウ)」の形声。貴重なものを入れた凾(はこ)を糸(ひも)でかがることを縢トウという。かがる・からげる・とじる意となる。
意味 (1)かがる(縢る)。からげる(縢げる)。とじる。「金縢キントウ」(縢った金庫。文書保管用)「縢書トウショ」(金縢の中の書)「緘縢カントウ」(緘も縢も、紐でとじる意。また、封をする意)「封縢フウトウ」(かがって封をする)  
 ヨウ・おくる  女部 yìng
解字 「女+滕の略体=朕チン(篆文で同じ形。貴重なものを月(舟=いれもの)に入れて両手でささげもつ)」の会意形声。貴重な自分の娘を嫁ぎ先に送りだすとき、婚家に贈る品物をいう。また、嫁ぎ先に娘と一緒につきそう同姓の親族(姪めいや甥おい)をいう。
意味 (1)おくる(媵る)。嫁入りの器をおくる。「媵爵ヨウシャク」(爵を贈る。爵は酒器) (2)(嫁入りの)つきそいの姪(めい)や甥(おい)「媵侍ヨウジ」(入嫁のときのつきそい)「媵臣ヨウシン」(入嫁した女のつきそい男)「媵婢ヨウヒ」(つきそいの侍女)
<紫色は常用漢字>

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音符「弁 [辡] ベン」<分かれる・分ける> と「辯ベン」「辨ベン」「瓣ベン」「辦ベン」「辮ベン」

2024年10月19日 | 漢字の音符
 弁護士の「弁」、弁償の「弁」、花弁の「弁」、さらに弁髪の「弁」、これらは異なる4つの漢字が、かんむりの意である「弁」で代用されている。安易に代用したため熟語になって初めて「弁」の意味がわかる。では、「弁」の元の字は、それぞれどんな意味をもつのか解字してみました。 

 ベン  辛部 biàn   

解字 「辛(刃物)+辛(刃物)」の会意。辛シンは先の尖った刃物の意。これが二つならんだ辡ベンは、二つの刃物が対立して並んでいる形。意味は中に入る字によって変化する。大きく、①対立する二つの側、②並んでいる双方、③裂き分ける、に区分される。辡ベンが音符となる新字体のほとんどが、弁ベンで代用される。
意味 ①対立する二つの側。②並んでいる双方。③裂き分ける。

イメージ 
 弁の元の意味である「かんむり」(弁)
 二つの辛が「分かれる」(辯・辨・辦)
 「分ける(=辨)」(瓣・辮)
音の変化  ベン:弁・辨・辦・辯・瓣・辮

かんむり
 べん・かんむり  廾部にじゅうあし biàn            

解字 篆文は「人印(かぶる冠のかたち)+両手」の会意。両手で冠をかぶる形で、冠の意を表わす。現代字は上部がムに変化し、両手が廾に変化した弁になった。発音の同じ「辨・辯・瓣」が、新字体ですべて弁となる。
意味 (1)かんむり(弁)。頭にかぶる頭巾型のかんむり。「武弁ブベン」(武士の冠)(2)冠をつける。元服する。「弁髦ベンボウ」(元服式に用いるたれ髪付の冠)(3)「辨・辯・瓣」が表わす意味を代用する。

分かれる
[辯] ベン  廾部 biàn
解字 旧字は「言(ことば)+辡(分かれる)」の会意形声で、①分かれた双方が話す。②話す言葉が巧み、の意味がある。
意味 (1)分れた双方が話す。べんじる。説く。語る。「弁論(辯論)ベンロン」(①意見を述べて論ずる、②言い争う)「弁護(辯護)ベンゴ」(その人のために言って助ける)「弁護士ベンゴシ」(分かれた一方の側からの依頼により弁護する者)(2)巧みに言う。言葉で明らかにする。「弁舌(辯舌)ベンゼツ」(巧みな言い回し)「弁士(辯士)ベンシ」(弁舌の巧みな人。演説する人)(3)「弁(辯)才天ベンザイテン」とは、もとインドの女神。弁舌・才知・音楽に長け福徳を授ける。また、財福の神となったので「弁(辯)財天」とも書く。また、「辨財天」とも書く。(4)「辯天宗ベンテンシュウ」とは日本の仏教の宗派。1934年(昭和9年)に奈良県の大森智辯が大辯才天女尊より天啓を受け、信者や訪問者への相談や行(ぎょう)を行ったことに始まる。1952年(昭和27年)に辯天宗となる。大阪府茨木市に本部を置く。(ウィキペディアより)「智辯チベン」(智辯学園の略称。辯天宗が経営する学校法人)
竹生島・宝厳寺の弁財天(「弁財天⑧より」)
[辨(辧)] ベン・(わきまえる)・(わける)  廾部 biàn
解字 旧字は「刂(=刀。切り分ける)+辡(分かれる)」の会意形声。分かれて争う当事者の言い分をうまく切り分ける(判断する・見分ける)こと。また、言い分をわきまえて処理すること。日本では、弁済・弁償など返す意でも使う。
意味 (1)わける。見分ける。識別する。「弁別(辨別)ベンベツ」(見分ける。識別する)「弁理(辨理)ベンリ」(弁別して処理する)「智弁(智辨)チベン」(智恵があって物を見分ける能力がある)「辨似ベンジ」(類似したものを見分ける)(3)わきまえる。処理する。かえしてあてる。「弁償(辨償)ベンショウ」「弁済(辨済)ベンサイ」(債務を弁償すること)
 ベン・つとめる  力部 bàn
解字 「力(ちから)+辡(=辨。処理する)」の会意形声。力を入れて処理すること。この字は中国で主に使われている。
意味 (1)つとめる(辦める)。物事に力をつくす。「辦貨ベンカ」(仕入れ)(2)あつかう。さばく。処理する。「辦事処ベンシショ」(事務所)「辦公室ベンコウシツ」(①執務室。②管理運営の統括的な仕事をする部門)「買辦バイベン」(中国で清朝末期から外国の貿易業者との仲立ちをした業者。転じて、外国資本を儲けさせ自国の利益を損なうような行為や人物。=買弁とも書く)

わける
[瓣] ベン・(たね)・(はなびら)  廾部 bàn
切り分けた瓜
解字 旧字は「瓜(うり)+辡(=辨。切りわける)」の会意形声。輪に切り分けた瓜の中子が花びらのようにきれいに並んださま。花びらと種・なかごの意味がある。
意味 (1)花びら。「花弁カベン=花瓣」「弁(瓣)香ベンコウ」(①花びら形の香炉、②仏を崇敬する心)「安全弁アンゼンベン=安全瓣」(圧力が高くなると花弁のように開いて烝気を放出する装置)(2)瓜類のたね。「瓜瓣カベン」(トウガンの成熟種子。漢方薬の清熱化痰薬)(3)なかご(①瓜類の中心の種のある部分。 ②みかん類の果肉の部分)「橘瓣キツベン」(橘のみかん状の実の果肉)
辮[弁] ベン・(あむ)  廾部 biàn

辮髪(中国ネットから・「辮髪清代」)
解字  「糸+辡(分ける)」の会意形声。糸を分けてから編むこと。「弁」も代用字となる。
意味 あむ。くむ。ひもをあむ。「辮髪(弁髪)ベンパツ」(髪を分けてから編むこと。頭の周辺部分をそり、残った中央部分を分けて編み、長く後ろに垂らした男子の頭髪。北方の満州人の風俗であったが、満州族の征服王朝・清が漢民族にこの髪型を強要した。)
<紫色は常用漢字>

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