漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「容ヨウ」<とりいれる> と「溶ヨウ」「熔ヨウ」「鎔ヨウ」「榕ヨウ」「蓉ヨウ」

2025年04月08日 | 漢字の音符

    改訂しました。
 ヨウ・ユウ・いれる・かたち  宀部 róng上は容、下は公                       解字 金文は「Λ(屋根)+公の古形(コウ⇒ヨウ)」で、屋根のある建物に収容することをヨウと言う。公の古形は発音のみを表す。楚簡は「宀の初形(建物)+公の古形(ヨウ)」で建物に収容する形。篆文で「宀(建物)+ハハ口」に変化した。[説文解字注]は「盛(も)り入れる(いろんな物を一緒に入れる)也(なり)、亦(また)通す。(発音は)余封切(ヨウ)」とする。現在の楷書は、「宀(たてもの)+谷」の形になったが、この谷は「たに」の意味はなく、発音のヨウを表している。容の意味は、建物の内側にとりいれる意、とりいれた中味、このほか転じて、かたち・すがたの意味で用いられる。                              意味 (1)いれる(容れる)。とりこむ。「収容シュウヨウ」「包容ホウヨウ」(①包み入れる。②人を寛大に受け入れる) (2)いれるのを許す。「許容キョヨウ」 (3)いれた中身。中に入っているもの。「内容ナイヨウ」 (4)かたち(容)。すがた。「容姿ヨウシ」「陣容ジンヨウ」(5)たやすい。「容易ヨウイ

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 「とりいれる」
(容・溶・熔・鎔・榕)
 容の意味(4)の「すがた」(蓉)
音の変化  ヨウ:容・溶・熔・鎔・榕・蓉

とりいれる
 ヨウ・とける・とかす・とく  氵部 róng
解字  「氵(みず)+容(とりいれる)」 の会意形声。水のなかに物がとけること。
意味 (1)とける(溶ける)。水にとける。とかす(溶かす)。とく(溶く)。「溶液ヨウエキ」「溶解ヨウカイ」(①とけること。②とけて均一な液体となる)「水溶性スイヨウセイ」 (2)熱で固体が液状になる。「溶岩ヨウガン」(=熔岩)「溶接ヨウセツ」(=熔接)「溶融ヨウユウ」(熱せられて融ける。=熔融) (3)水の流れのさかんなさま。「溶溢ヨウイツ」(あふれること)
 ヨウ・とける  火部 róng
解字 「火(ひ)+容(=溶。とける)」 の会意形声。火で熱せられて金属などが溶けること。常用漢字でないため、溶に書き換えることが多い。
意味 とける(熔ける)。とかす(熔かす)。「熔解ヨウカイ」(=溶解)「熔接ヨウセツ」(=溶接。二つの金属の接合部を加熱溶融して結合する)
 ヨウ・とかす・とける   金部 róng
解字 「金(金属)+容(=溶。とける)」の会意形声。金属が溶けること。
意味 (1)とかす(鎔かす)。とける(鎔ける)。金属を熱してとかす。金属がとける。「鎔鋳ヨウチュウ」(金属を鎔かして鋳造する)(2)いがた(鎔)。「鎔型ヨウケイ」(いがた)「鎔範ヨウハン」(①金属を鎔かして鋳型にいれる。②いがた)
 ヨウ・あこう  木部 róng

              

 ①アコウの実、②アコウ果実の内部(現在はネットになし)
解字 「木(き)+容(とりいれる⇒とりこむ)」 の会意形声。イチジクのように実の中に花をつけるので、花を実の中にとりいれている木のこと。また、実は鳥やサルの餌となり、糞にまざった種子は木の上で発芽して繁茂し、気根を垂らして元の樹木にまつわりつく。気根が地面に達するとどんどん太くなり、元になった木は気根に囲まれて(とりこまれて)枯れてゆく。そこで、元の樹木をとりこんでしまう木の意で、絞め殺しの木ともいわれる。巨大ガジュマル(喜界島薬草農園より)

意味 あこう(榕)。あこぎ。新芽が成長するにつれ、色が赤などに変化するので赤榕あこうとも書く。クワ科イチジク属の常緑高木。「榕樹ヨウジュ・ガジュマル」(クワ科の常緑高木。熱帯・亜熱帯に生え、幹・枝はよく分枝して多数の気根をたれて地面に達すると幹になり成長する)

すがた
 ヨウ  艸部 róng
解字 「艸(草木)+容(すがた)」 の会意形声。すがた(容姿)の美しい花をつける草木。 芙蓉(ウィキペディアより)
意味 「芙蓉フヨウ」に使われる字。芙蓉とは、大きく美しい花をつける草の意で、(1)ハスの花の別称。美人のたとえ。(2)アオイ科の落葉低木。大形の一日花を開く。鑑賞用。「木芙蓉モクフヨウ」(3)「芙蓉峰フヨウホウ」とは、富士山の雅称。(4)地名。「蓉城ヨウジョウ」(四川省成都のこと。唐末、成都は木芙蓉があまねく植えられ「芙蓉城」と称された。
<紫色は常用漢字>

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音符「召ショウ」<めす・まねく> と「招ショウ」「沼ショウ」「昭ショウ」「紹ショウ」「詔ショウ」「照ショウ」「韶ショウ」「超チョウ」「貂チョウ」

2025年04月07日 | 漢字の音符

    召  ショウ <めす・まねく> 

 ショウ・めす  口部 zhào・shào

解字 甲骨文第1字は「人(ひと)+口(口でよぶ)」の会意。人を言葉(口)で呼び出すこと。甲骨文第2字は、人が形の似ている刀に置き換わった字。甲骨・金文は、人と刀が似た字形で混同されることがある。金文から刀の字形が残り、現代字に続いている。意味は、甲骨文第1字の人を「めしだす」こと。「めしだす」ことは「まねく」ことでもあり、招ショウの原字。音符イメージは「めしだす」「まねく」となる。
意味 (1)めす(召す)。よぶ。よびよせる。「召喚ショウカン」(よび出す)「召還ショウカン」(よび戻す)「召集ショウシュウ」 (2)まねく(=招) (3)[国]尊敬語。「思し召す」「召しあがれ」(4)人名。「召公ショウコウ」(周の武王の弟。=召伯ショウハク

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 「めす」(召・詔) 
 「まねく」(招・沼・昭・照・紹)
 「形声字」(超・韶・貂)

音の変化  ショウ:召・詔・招・沼・昭・照・紹・韶  チョウ:超・貂

めす
 ショウ・みことのり  言部 zhào・shào
解字 「言(言葉)+召(めす)」の会意形声。人を召し出して告げる言葉。
意味 (1)つげる(詔げる)。つげしらせる。(2)みことのり(詔)。天皇の言葉。秦の始皇帝の時から天子に限って使うことに定めた。「詔勅ショウチョク」(天皇が発する公文書)「詔冊ショウサク」(みことのりの文書=詔書)「詔令ショウレイ」(天子の命令)

まねく
 ショウ・まねく  扌部 zhāo・
qiáo                                  解字 「扌(手)+召(まねく)」の会意形声。手まねきすること。
意味 (1)まねく(招く)。「招致ショウチ」(まねきよせる)「招待ショウタイ」「招聘ショウヘイ」(人を招き呼ぶ)(2)まねく。もたらす。「招災ショウサイ」(災いを招く)
 ショウ・ぬま  氵部 zhǎo                                 解字 「氵(みず)+召(まねく)」の会意形声。まわりより低い土地に招かれたように水がたまった浅い池を沼ショウという。 
意味 ぬま(沼)。自然に水をたたえたところ。小さくて浅い天然の池。「沼池ショウチ」(沼や池)「沼浜ショウヒン」(沼のほとり)「沼沢ショウタク」(沼とさわ)「沼気ショウキ」(沼から立ち上る気体。メタンガス)「湖沼コショウ(
みずうみ・ぬま・いけの総称) 

 ショウ  糸部 shào・chāo
解字 「糸(いと)+召(まねく)」の会意形声。まねき寄せて糸でつなぐこと。
意味 (1)つぐ。うけつぐ。「紹述ショウジュツ」(前人の後を受けついで述べ行なう) (2)とりもつ。引き合わせる。「紹介ショウカイ」 (3)地名。「紹興ショウコウ」(中国浙江省の都市)「紹興酒ショウコウシュ」(紹興で作られる醸造酒の一種。もち米を原料とし長期熟成させたもの)

 形声字  

 ショウ・あきらか  日部 zhāo・zhào
解字 「日(日光)+召(ショウ)」の形声。日がかがやいて明るいことを昭ショウという。後漢の[説文解字]は「日が明るい也(なり)。日に従い召ショウの聲(声)。(発音は)止遙切(ショウ)」とする。
意味 (1)あかるい。あきらか(昭か)。「昭光ショウコウ」(かがやく光)「昭然ショウゼン」(あきらかなようす)(2)世の中がよくおさまる。「昭代ショウダイ」(よく治まっている世)「昭和ショウワ」(日本の年号。1926.12.25~1989.1.7)(3)人名。「昭王ショウオウ」(①春秋時代の楚の王、②春秋時代の秦の王)
 ショウ・てる・てらす・てれる  灬部れっか zhào
解字 「灬(火)+昭(あきらか)」の会意形声。火の光で明らかにすること。照らすこと。
意味 (1)てらす(照らす)。てる(照る)。「照明ショウメイ」「照射ショウシャ」 (2)てり。ひかり。日の光。「残照ザンショウ」「日照ニッショウ」 (3)てらしあわせる。見比べる。「照合ショウゴウ」「照会ショウカイ」(問い合わせる) 

 チョウ・こえる・こす  走部 chāo
解字 
「走(はしる)+召(ショウ⇒チョウ)」の形声。走って跳ぶことを超チョウという。[説文解字]は「跳ぶ也(なり)。走ソウに従い召の声。(発音は)敕宵切(チョウ)」とする。          意味 (1)こえる(超える)。こす。度をこす。「超越チョウエツ」「超過チョウカ」「超満員チョウマンイン」 (2)ぬきんでる。「超人チョウジン」「超卓チョウタク」(ぬきんでる)(3)とびはねる。「超騰チョウコウ」(とびあがる)「超乗チョウジョウ」(車にとび乗る)

 ショウ  音部 sháo
解字 「音(音のひびき)+召(ショウ)」の形声。ひびきのよい音を韶ショウという。中国の伝説上の天子「舜シュン」が作ったといわれる舞楽の名をいう。転じて、うつくしい・あきらかの意で用いられる。
意味 (1)舞楽の名。「韶舞ショウブ」(舜の舞楽の名)「韶武ショウブ(舜の楽と周・武王の楽) (2)うつくしい。うららか。「韶景ショウケイ」(うつくしくうららかな春の景色)「韶艶ショウエン」(うつくしく艶やか)「韶麗ショウレイ」(うつくしくうるわしい)「韶曼ショウマン」(韶も曼も、うつくしい意) (3)あきらか。「韶暉ショウキ」(明らかに輝く) (4)地名。「仰韶ギョウショウ」(中国の河南省北西部、洛陽西方にある新石器時代の彩陶文化遺跡名。中国読みではヤンシャオ)

 チョウ・てん  豸部 diāo
解字 「豸(けもの)+召(ショウ⇒チョウ)」の形声。「てん」という名のイタチ科の哺乳類を貂チョウ・てんという。大槻文彦著の[大言海]は「貂テウ」の朝鮮音は貂トン。和字に「犭典」(これで一字。発音はテン)の字を用いる」としており、貂の古い発音に「テウ」⇒「テン」がある。したがって「てん」は和訓(和語)でなく、貂の古い発音が和語化したもの。

てん(本土貂(GOOブログより)
意味 てん(貂)。イタチ科の哺乳類。山林で単独生活し雑食性。黄鼬(てん)とも書く。毛皮をとり、尾は冠飾りに用いた。「貂裘チョウキュウ」(てんの毛皮の衣)「貂冠チョウカン」(てんの尾飾りの冠)
<紫色は常用漢字>

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音符「足ソク」< あ し > と「促ソク」「捉ソク」「齪セク」

2025年04月04日 | 漢字の音符

 ソク・あし・たりる・たる・たす  足部 zú・jù    上は足、下は止  
解字 足の甲骨文第1字は「ひざから足首までの形+ あし先)」の象形。第2字は「口(ひざの関節部分)+あし先(=止の甲骨文)」の形。いずれも、ひざから足先までの形を表す。金文は「口+金文の止の変形」になり、篆文はその形がほぼ続いたが、現代字は「口+ 」の足になった。あし、あるく意の他、足は本体から出ているので、本体に「たす」意となり、さらに、たすと「たりる」意となる。
意味 (1)あし(足)。人間や動物のあし。また、人の足首から下の部分。「足下あしもと」「足袋たび
 (2)あるく。「遠足エンソク」「足早あしばや」(早くあるく) (3)たす(足す)。たりる(足りる)。「補足ホソク」「満足マンゾク」 (4)はきものを数えることば。「二足の草鞋わらじ」(5)地名。姓。「足柄あしがら」(①神奈川県の地名。②姓のひとつ)「足利あしかが」(①栃木県の市。②姓のひとつ)
参考 ソクは、部首「足あし・あしへん」になる。漢字の左辺や下部に付き、足の意味を表す。常用漢字は11字、約14,600字を収録する『新漢語林』では166字が含まれる。                      <足部の常用漢字は以下のとおり>                                                           
ソク・あるく(部首)・キョ・へだてる(足+音符「巨キョ」)・シュウ・ける(足+音符「就シュウ」)・セキ・あと(足+音符「亦エキ」)・セン ・ふむ(足+音符「戔セン」)・ソウ・あと(足+音符「宗シュウ」)・チョウ・はねる(足+音符「兆チョウ」)・トウ・ふむ(足+音符「沓トウ」)・ヤク・おどる(足+音符「翟テキ」)・ヨウ・おどる(足+音符「甬ヨウ」)・ロ・みち(足+音符「各カク」)


イメージ 
 「あし」(足)
 「あるく」(促・捉・齪)
音の変化  ソク:足・促・捉  セク:齪

あるく
 ソク・うながす  イ部 cù
解字  「人(ひと)+足(あるく)」の会意形声。人のうしろから人のあるく足が迫る意。
意味 (1)うながす(促す)。せきたてる。「催促サイソク」(せっつく)「督促トクソク」(せきたてる)「促進ソクシン」(うながし進める)「促成ソクセイ」(野菜や草花を早く生育させる)「促成栽培」(2)間をつめる。せまる。「促音ソクオン」(つめて発音する音。例:もっぱら・さっき)
 ソク・とらえる  扌部 zhuō  
解字 「扌(手)+足(=促。間をつめる)」の会意形声。あるいて人に追いつき手でつかむこと。
意味 (1)とらえる(捉える)。つかまえる(捉まえる)。「捕捉ホソク」(2)とる。つかむ。にぎる。「把捉ハソク」(しっかりとつかまえる)(3)地名。「択捉島エトロフトウ」(北方領土の一つ。発音はアイヌ語に由来する)
 サク・セク  歯部 chuò
解字 「齒(は)+足(=促。間をつめる)」の会意形声。歯ならびが詰まるさま。
意味 齷齪アクセクに使われる字。齷齪とは、本来、歯と歯の間が詰まっている意だが、歯に限らず、詰まる・切迫する意で使われる。もと、アクサクの発音であったが、転音したアクセクが広く使われる。これはセクの発音が、せく(急く)に通じることから。「齷齪アクセク」(休む間もなくせかせかと仕事などをする)「齷齪アクセクと働く」
<紫色は常用漢字>

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音符 「聶ショウ」 <耳をよせあう> と 「囁ショウ」「懾ショウ」「鑷ジョウ」「摂セツ」

2025年04月03日 | 漢字の音符

  ショウ・ジョウ <耳をよせあう>
 ショウ・ジョウ  耳部 niè・zhé 

解字 篆文は「耳+耳+耳」の会意。多くの耳を寄せ合うこと。楷書は聶の形だが、新字体になるとき摂の右辺に簡略化される。 
意味 (1)ささやく。(=囁)。 (2)姓。「聶政ジョウセイ」(戦国時代の韓の武人)

イメージ 
 「多くの耳を寄せる」
(聶・囁・摂)  
 「形声文字」(鑷・懾)

音の変化  ショウ:聶・囁・懾  ジョウ:鑷  セツ:摂

多くの耳を寄せる
 ショウ・ジョウ・ささやく  口部 niè  
解字 「口(くち)+聶(多くの耳を寄せる)」の会意形声。多くの耳を寄せて、口でささやくこと。
意味 (1)ささやく(囁く)。耳もとでそっと話す。「囁き千里」(小声で囁いたことが、瞬く間に千里も離れた所に伝わる)「囁(ささや)き言(ごと)」(私語)
 セツ・とる  扌部 shè・zhé  
解字 旧字はで「扌(手で行なう)+聶(=囁き)」の会意形声。多くの人々のあいだで囁かれている民の声を聞き、その内容を取り入れて政務を執行すること。とりいれる・とる意、および、とりおこなう・統べる・つかさどる意味となる。また、本来統べる人が幼少のとき、経験のある者が代わりに行なう意となる。新字体は、攝⇒摂に変化する。
意味 (1)とる(摂る)。とりいれる。「摂取セッシュ」(取り入れて自分のものにする)「摂受セツジュ」(受け入れる) (2)(栄養を摂り入れることから)やしなう。「摂生セッセイ」(生をやしなう。養生する) (3)とりおこなう・統べる・つかさどる。「摂理セツリ」(①統べ治める。②自然界を支配している理法) (4)代わって執り行う。「摂政セッショウ」(天子や天皇に代わって政治を執ること)「摂関家セッカンケ」(摂政と関白に任ぜられる家柄)「摂行セッコウ」(他人に代わって事を処理する) (5)かねる。「摂兼セッケン」(摂も兼も、かねる意) (6)地名。「摂津セッツ」(大阪府北部および兵庫県の一部にまたがる地域の旧国名。現在は、その一部が大阪府摂津市となっている。由来は、難波津なにわづ(大阪港)を摂セツ(管掌する・統べる)する役所の摂津職セッツシキが置かれた国の意。難波津は難波宮(飛鳥・奈良時代の皇居・今の大阪城付近)のすぐ近くにあった。

                 中央左の難波宮(今の大阪城辺り)の海側(左)に難波津があった。南(下)に住吉大社と住吉津がある。     (日下雅義『地形からみた歴史』表紙カバーより)

形声字
 ジョウ・けぬき・ぬく  金部 niè
解字 「金(金属)+聶(ジョウ)」の形声。ジョウはジョウ(毛抜き・ピンセット)に通じる。同じ発音のジョウも毛抜きの意に用いる。              清代の銅製鑷子・毛抜き(中国ネットから)
意味 (1)けぬき。「ジョウシ」(毛抜き)(2)ぬく(く)「ジョウハク」(白髪をぬく)
 ショウ・おそれる  忄部 shè
解字 「忄(こころ)+聶(ショウ)」の形声。忄(こころ)からおそれることをショウという。後漢の[説文解字]は「気を失う也(な)り」とし、非常に懾(おそ)れることをいう。
意味 おそれる(れる)。「ショウイ」(懾も畏も、おそれる意)「懾竄ショウザン」(おそれてかくれる)「懾伏ショウフク」(おそれてひれふす)「震懾シンショウ」(ふるえおそれる)
<紫色は常用漢字>

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音符「阿ア」<まがる・おくまる> と 「痾ア」「婀ア」

2025年04月01日 | 漢字の音符

  阿 ア・くま(まがる・おくまる)                                     阿   ア・くま・おもねる  阝部こざと  ā・ē

   上は阿、下は可           石斧をつけた曲がった木の枝(レプリカ)                                   解字 「阝(おか)+可(カ⇒ア)」の形声。可は石斧をつけた曲がった木の枝の形で、まがるイメージがある。それに阝(おか)がついた阿は、おかの曲がったところ。「くま(まがる・おくまる)」の意をあらわす。転じて、自分をまげておもねる意ともなる。[説文解字]は「大陵(大きな陵(おか)也(なり)。一に曰(いわ)く曲る阝(おか)也(なり)」とする。その他、接頭語や梵語や外国語の音訳字などに用いる。
意味 (1)くま(阿)。山や川の曲がったところ。奥まってかくれた所。「山阿サンア」(山のくま。山の入りくんだ所)「水阿スイア」(川の曲がって奥まったところ)「四阿シア」(屋根に四つの曲がりがある[あずまや]。亭ちん)             
四阿シア(あずまや)(ウィキペディアより)                     (2)おもねる(阿る)。へつらう。自分の気持ちを曲げて従う。「阿諛アユ」(おもねり、へつらう)「曲学阿世キョクガクアセイ」(学説を曲げて世におもねる) (3)人を親しみ呼ぶときに、つける接頭語。「阿母アボ」(おかあさん)「阿国おくに」(歌舞伎の祖)「阿呆アホウ」(おろか。たわけ)(4)梵語や外国語の音訳字。「阿弥陀アミダ」(人々を極楽に導く仏)「阿吽アウン」(吐く息と吸う息)「阿闍梨アジャリ」(徳の高い僧)(5)地名・国名など。「阿波あわ」(旧国名。今の徳島県)「阿蘇山アソサン」(熊本県東北部にある活火山)「阿蘭陀オランダ」(和蘭・和蘭陀とも書く)(6)姓。人名。「阿部あべ」「阿倍あべ」「阿倍仲麻呂あべのなかまろ」(奈良時代の入唐留学生)

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 「くま」
(阿・痾)
 「形声字」(婀)
音の変化   ア:阿・痾・婀

くま
 ア・やまい  疒部 kē
解字 「疒(やまい)+阿(くま。まがって奧まったところ)」の会意形声。病気が奧まったところに入りこんだように治らないこと。
意味 やまい(痾)。こじれて長びく病気。「宿痾シュクア」(長い間治らないやまい)

形声字
 ア・たおやか  女部 ē                                
解字 「女(おんな)+阿(ア)」の形声。女性の姿がしなやかで美しいさまを婀という。 江戸の婀娜アダな女たち 『守貞漫稿 』より 

意味 たおやか(婀やか)。なまめかしく美しい。「婀娜アダ」(美しくしとやか。女性の色っぽいさま。娜もしなやかなさま)「婀娜アダな姿の洗い髪」(風呂上がりの女の、色っぽい姿の洗い髪)「婀嬌アキョウ」(①なよなよしてなまめかしい。美人。②漢・武帝の妻の幼名)

<関連音符>
 カ  口部 kě・kè
解字 「口(くち)+丁(斧の柄にするまがった木)」の形声。仮借カシャ(当て字)して、許可、可能の意になるが、丁(曲がった木の柄)から「まがる」イメージがある。音符「可カ」を参照。 

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音符「臧 ゾウ」 <おさめる> と 「蔵ゾウ」「臓ゾウ」「贓ゾウ」

2025年03月28日 | 漢字の音符

        臧  ゾウ  <収容する・おさめる>                          

 ゾウ ・ソウ   臣部 zāng・cáng                    


解字 篆文は「爿(ショウ)+臣(捕虜)+戈(ほこ)」 の会意形声。シンは、下を向いた目の形で、相手に対し下を向く意から臣下(家来)の意味があるが、また戦争で捕獲した捕虜(=臣虜シンリョ)の意がある。ゾウは、武器の戈(ほこ)を用いて臣(捕虜)にすること。発音をあらわす爿ショウが、ゾウ・ソウに転音した。捕虜、及び捕虜を獲得したので、「よい」意となる。音符になるとき、捕虜を「収容する・おさめる」イメージを持つ。
意味 (1)(捕虜を獲得したので)よい。「ゾウヒ」(よしあし)(2)捕虜。召使い。奴僕(しもべ)。「ゾウカク」(戦争などの捕虜。また、召使い)(3)おさめる。かくす。(=蔵)。「ゾウトク」(人知れずかくす=蔵匿)

イメージ 
 「捕虜にする」
(臧)
  捕虜を収容する意から「おさめる」(蔵・臓・贓)
音の変化  ゾウ:臧・蔵・臓・贓

おさめる
  ゾウ・くら・おさめる  艸部 cáng・zāng
解字 旧字はで「艸(作物)+臧(おさめる)」の会意形声。臧のおさめる意を、草かんむり(作物)をつけて表した字。作物などをおさめる意味のほか、物をおさめるくら(蔵)をいう。新字体は、藏⇒蔵に簡略化される。

「前田家土蔵」「四国村案内」より)
意味 (1)くら(蔵)。「土蔵ドゾウ」(建物の四面を白土で塗った倉庫)「米蔵こめぐら」(2)おさめる(蔵める)。しまう。「貯蔵チョゾウ」「蔵書ゾウショ」(3)かくす。「埋蔵マイゾウ」「秘蔵ヒゾウ」「蔵匿ゾウトク」(人知れずかくす)
 ゾウ・はらわた  月部にく  zàng
解字 旧字はで「月(からだ)+藏(おさめる)」の会意形声。身体の中におさまっている諸器官をいう。新字体は「月+蔵」の臓になった。
意味 はらわた(臓)。内臓。特に、心臓(しんぞう)・肺臓(はいぞう)・肝臓(かんぞう)・腎臓(じんぞう)・脾臓(ひぞう)を五臓という。「臓器ゾウキ」(内臓の器官)「臓物ゾウモツ」(はらわた)
 ゾウ  貝部 zāng
解字 「貝(財貨)+臧(おさめる)」の会意形声。財貨をおさめる意味であるが、盗みやワイロなど不正な手段でおさめることをいう。
意味 不正な手段で金品を手にいれる。わいろ。「ゾウザイ」(不正に金品を入手した罪)「ゾウヒン」(わいろの品物)「ゾウリ」(わいろを受け取る役人)
<紫色は常用漢字>


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音符「网モウ」<あみ>と「罔モウ」「網モウ」「魍モウ」「惘ボウ」

2025年03月26日 | 漢字の音符

  网・罔  モウ・ボウ <あみ>

 モウ・ボウ・あみ  网部 wǎng


解字 甲骨文字は二本の支柱に網を張ったかたちの象形でいろんな形がある。篆文は支柱と上部が冂に変化し内側にメメで網を表す。現代字は篆文のかたちを受け継いだ网になった。罔モウ・網モウの原字。
意味 あみ(网)。                                          
 モウ・ボウ・あみ  网部 wǎng

解字 「网(あみ)+亡ボウ・モウ」の会意形声。网は、あみの象形で発音はモウ・ボウであるが、そこにさらに発音を示す亡ボウ・モウを付けて网の発音をはっきりと示した字。現代字は网の中のメメ⇒「ソ+一」に変化した罔になった。網の原字。あみの意味のほか、あみでおおう。また、亡ボウ・モウ(ない)に通じて「ない」の意味を表す。
意味 (1)あみ(罔)。網あみする。「罔羅モウラ」(=網羅モウラへ)「罔罟モウコ」(罔も罟も、あみの意) (2)おおう。くらい。道理にくらい。おろか。「学びて思わざれば即ち罔(くら)し[論語]」(3)ない。なし。否定の語。「罔極モウキョク」(はてがない)「罔極之恩モウキョクのオン」(はてがない恩で、父母の恩のこと) 

イメージ 
 「あみ」
(网・
罔・網)
 おおわれて「みえない・ない」(魍・惘)                       

音の変化  モウ:网・罔・網・魍  ボウ:惘

あみ
 モウ・あみ  糸部 wǎng 
解字 「糸(いと)+罔(あみ)」の会意形声。糸でできたあみ。罔あみの意味を糸をつけて明確にした字。
意味 (1)あみ(網)。「魚網ギョモウ」「投網とあみ」「網代あじろ」(①川の瀬に設ける網の代わりのような魚とりの装置。②薄くした竹や檜皮などを交差させて編んだもの)(2)あみする。網で捕らえる。「一網打尽イチモウダジン」「網羅モウラ」(魚をとる網と鳥をとる羅。残らず集める)(3)あみのような。「網膜モウマク」(眼球壁の視覚細胞が面状に並んだ部分)「通信網ツウシンモウ
網代①(石山寺縁起絵巻・日本国語大辞典より) 網代②(竹皮ハダ極細網代

みえない・ない
 モウ・ボウ  鬼部 wǎng 
解字 「鬼(おに)+罔(みえない)」の会意形声。鬼は身体から離れてただよう死者の魂(たましい)の意。それに罔のついた魍モウは姿のみえない魂で、人の魂だけでなく山水・木石の精気から生じる霊気や精をいう。
意味 すだま。もののけ。山水や木石の精。「魍魎モウリョウ」(山の霊気や木石の精)「魑魅魍魎チミモウリョウ」(山や川の怪物。さまざまのばけもの)
 ボウ・モウ・あきれる  忄部 wǎng
解字 「忄(こころ)」+罔(ない)」の会意形声。心を失った状態をいい、気がぬける・ぼんやりする意となる。日本では、あきれると読む。
意味 (1)ぼんやりする。気がぬける。「惘然ボウゼン」「惘惘モウモウ・ボウボウ」(ぼんやりするさま。とまどう)(2)[国]あきれる(惘れる)。「惘れ果てる」
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音符「区ク」<くぎり>「駆ク」「軀ク」「枢スウ」「欧オウ」「殴オウ」「謳オウ」「嘔オウ」「鷗オウ」

2025年03月24日 | 漢字の音符

       区 ク(くぎり・くぎる)

[區]ク・オウ  匚部はこがまえ 


解字 甲骨文は「並んでいる三つの器物(品)+形の囲い」で、器物をならべ、さらに区分けした状態を表している。区切ること。区切る・仕切る意。金文から口の上の横線を形にむすび、漢代の篆文で匸の形になり、旧字は區で「匚(かこい)+品(多くの器物)」の会意。意味は、くぎる・くぎられた部分をいう。新字体は、旧字の區⇒区に簡略化される。
意味 (1)分ける。くぎる。仕切りをする。「区画クカク」「区別クベツ」(2)分けられた部分。「区域クイキ」「学区ガック」「選挙区センキョク」(3)行政上のくぎり。「市区シク

イメージ 
 「くぎる・くぎり」
(区・枢・軀・殴・駆・謳)
 「オウの音」(欧・嘔・鷗)
音の変化  ク:区・軀・駆  スウ:枢  オウ:殴・欧・謳・嘔・鷗

くぎり・くぎる
 スウ・くるる・とぼそ  木部 shū・ōu
解字 旧字は樞で「木(き)+區(くぎり)」の会意。開き戸のタテの区切りである回転軸となる木。また、その軸受穴をいう。回転軸と穴は開き戸のなかで最も重要なところであるので、かなめの意となる。新字体は、樞⇒枢となる。

togetter 15(「枢戸」より)

意味 (1)くるる(枢)。ドアの回転軸。とぼそ(枢)。ドアの軸受穴。とまら(枢)。回転軸として差し入れる突起部。「枢戸くるるど」(くるるにより開閉する戸)(2)かなめ。物事の大切な所。「中枢チュウスウ」「枢軸スウジク」(ドアのくるると、車の軸。いずれも回転して本体を支える重要な部分)「枢要スウヨウ」(肝心な所)「枢密スウミツ」(枢要の機密)「枢密院スウミツイン」(明治時代、天皇の諮問に応える合議機関)
軀(躯)ク・からだ・むくろ  身部 
qū                                          解字 「身(からだ)+區(くぎり)」の会意形声。頭・腕・脚などの区切りからなる身体。折り曲げることのできる身。
意味 からだ(軀)。み。むくろ(軀)。「体軀タイク」(体つき)「軀体クタイ」(建造物の骨組み)
 オウ・ク・なぐる  殳部 ōu
解字 旧字は毆で「殳(なぐる・うつ)+區(=軀。からだ)」の会意。軀は身体の意。毆は身体をなぐること。新字体は、毆⇒殴となる。
意味 なぐる(殴る)。うつ(殴つ)。たたく。「殴打オウダ」(たたきうつ)「殴殺オウサツ」(打ち殺す)「殴辱オウジョク」(なぐって、はずかしめる)
 ク・かける・かる  馬部 qū
解字 旧字は驅で「馬(うま)+區(=毆オウ・ク。打つ)」の会意形声。馬をむち打って走らせること。新字体は、驅⇒駆となる。
意味 (1)かける(駆ける)。馬が走る。「先駆センク」「疾駆シック」「駆動クドウ」(動力を与えて動かす)(2)かる(駆る)。かりたてる。追い払う。「駆使クシ」(①追い使う。②自由に使いこなす)「駆逐クチク」(駆り立てて追い払う)「駆除クジョ
 オウ・うたう・うた  言部 
ōu                                解字 「言(ことば)+區(くぎる)」の会意形声。言葉に間をおき(くぎりをつけ)、ふしをつけてうたうこと。伴奏なしで声だけでうたうことをいう。
意味 うたう(謳う)。うた(謳)。「謳歌オウカ」(①もと君主の徳を皆で褒めたたえる歌から、声をそろえて褒めたたえる。②平和・繁栄などを喜びうたう)「青春を謳歌オウカする」「謳詠オウエイ」(謳も詠も、ふしをつけてうたうこと)

形声字
 オウ  欠部 ōu・ǒu
解字 旧字は歐で「欠(口をあける)+區(オウ)」 の形声。オウと口から声を出して吐くこと。しかし、本来の意味でなく、外国地名の表記に使われる。新字体は欧に変化する。
意味 (1)外国地名「欧羅巴ヨーロッパ」に使われ、欧でヨーロッパの意を指す。「欧州オウシュウ」「欧米オウベイ」「欧化オウカ」(2)はく・もどす。
 オウ・はく  口部 ōu・ǒu
解字 「口(くち)+區(オウ)」 の形声。オウと口をあけて声を出して胃の内容物を吐き出すこと。
意味 (1)はく(嘔く)。もどす。「嘔吐オウト」(嘔も吐も、はく意)「嘔血オウケツ」(血を吐くこと)(2)うたう。(=謳オウ)。やかましい声。「嘔啞オウア」(やかましい音や声の形容)
鷗(鴎) オウ・かもめ  鳥部 ōu
解字 「鳥(とり)+區(オウ)」の形声。オウオウと鳴く鳥。カモメ。新字体に準じた鴎は俗字。

カモメ(「gooブログ」より)

意味 かもめ(鷗)。沿岸海域にすむカモメ亜科の鳥の総称。鳩に似て少し大きい海鳥。「海鷗カイオウ」(カモメ)「鷗盟オウメイ」(①カモメを友とする意。隠居する。②世俗を脱した風流な交際)
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音符「川セン」「圳セン」「釧セン」「巡ジュン」「順ジュン」「馴ジュン」「訓クン」「災サイ」と「州 シュウ」「洲シュウ」「酬シュウ」

2025年03月22日 | 漢字の音符

         川 セン <川の流れ>

 セン・かわ  川部 chuān 

                                              解字 甲骨文字は、外側に水の流れる形の曲線、内側に点線をいれた川の象形。金文以降、三本の水流曲線で「かわ」を表わした。現代字は「川」となった。川は部首となり、また音符ともなる。
意味 (1)かわ(川)。流れる水。「川上かわかみ」「小川おがわ」「川面かわも」「河川カセン」「川岸かわぎし」(2)地名。「川越かわごえ」(埼玉県の市)(3)姓。「川端かわばた」「川瀬かわせ

イメージ  
 「かわ・川の流れ」(川・巡・圳・順・馴)  
 「形声字」(訓・釧)    
 川が
溢(あふ)れる意から「わざわい」(災)

音の変化   セン:川・釧・圳  ジュン:巡・順・馴  クン:訓  サイ:災

かわ・川の流れ
巡 ジュン・めぐる  辶部 xún
                                                              解字 篆文は「辵チャク(ゆく)+川(セン⇒ジュン)」の会意形声。川に沿ってゆく意で、転じて、めぐる。見てまわるさまをいう。後漢の[説文解字]は「延行エンコウ(うねうねと行く)皃(さま)」とし、[同注]は「視(み)て行く也(なり)」とする。現代字は、川⇒巛に変化した巡ジュンになった。
意味 めぐる(巡る)。めぐり。まわる。(1)みてまわる。「巡視ジュンシ」「巡回ジュンカイ」(2)めぐり歩く。「巡業ジュンギョウ」「巡礼ジュンレイ」「巡幸ジュンコウ」(天子が諸国をめぐる)
 セン  土部 zhèn
解字 「土(耕作地:田)+川(かわ・セン)」の会意形声。耕作地(田)の中の水路の意。また、水路の走る田を意味する地名。中国南部の新興都市・広東省深圳市が名高い。                 深圳市(「ウィキペディア」より)
意味 (1)田の水路。(2)地名。「深圳シンセン」(田に深い水路のある地を表した地名。広東省南部、香港の北に隣接する都市。当初は文字通り水路の走る田園がひろがる農村だったが、香港と隣接するため国境の町として栄えるようになり、さらに改革開放が始まると真っ先に経済特別区になり(1980年)、外国資本の進出によって商工業が発展した新興都市) 

 ジュン・シュン・したがう  頁部 shùn
解字 「頁(頭部を強調した人の姿)+川(川の流れ。セン⇒ジュン)」の会意形声。人が(川の)流れてゆく方向に頭をむけ素直に進む意から転じて、順(したが)う意となった。
意味 (1)したがう(順う)。すなお。「順応ジュンノウ」「従順ジュウジュン」(2)都合がよい。「順調ジュンチョウ」「順当ジュントウ」(3)道筋や次第。「順序ジュンジョ」     

 ジュン・なれる・ならす  馬部 xùn                                                      解字 「馬(うま)+川(=順。したがう)」の会意形声。馬が人にしたがうこと。
意味 (1)なれる(馴れる)。ならす(馴らす)。「馴化ジュンカ」(なれてゆくこと)「馴致ジュンチ」(なれさせる)「馴鹿ジュンロク」(①馴れた鹿、②トナカイ。北方の寒地に生息し、雄雌ともに大きな角をもつ)「馴染(なじ)む」(馴れて親しくなる)              トナカイ(維基百科「馴鹿」より)          https://zh.wikipedia.org//zh-tw/驯鹿

形声字
 クン・おしえる・よむ  言部 xùn 
解字 「言(いう)+川(セン⇒クン)」の会意形声。後漢の[説文解字]は「說教也。言に従い川の聲(声)(発音は)許運切(クン)」とし、おしえ・さとすことを訓クンという。転じて、習熟させる(訓練)意味ともなる。日本では漢字に当てた日本語のよみ(訓読み)の意味でも用いる。                                             
意味 (1)おしえる(訓える)。おしえ。さとす。「訓育クンイク」「家訓カクン」(家長が子孫に伝えた訓え)「訓戒クンカイ」(教えさとし、いましめる)(2)習わせる。習熟させる。「訓練クンレン」(3)よむ(訓む)。古典の文をおしえる(訓える)とき、現在の言葉で解釈すること。「訓釈クンシャク」(字義をときあかす)(4)[日本]くんよみ(訓読み)。漢字に当てた日本語のよみ。「訓読クンドク」(①漢字の日本語読み。②漢文を日本語の語順で解釈して読む)「字訓ジクン」(漢字のくんよみ)                     

 セン・くしろ  金部 chuàn
解字 「金(金属)+川(セン)」の形声。センは穿セン(穴をあける)に通じ、穴があいた金属の輪の意で、腕輪のこと。
意味 (1)うでわ。くしろ(釧)。腕にはめる飾りの輪。「釧くしろ着く」(枕言葉。手節たふし[手の関節の意から手首・腕の意]にかかる)(2)地名。「釧路くしろ」(北海道東部の太平洋沿岸にある地名。現在は釧路市と釧路町がある。釧路は腕輪の意でなく、アイヌ語の発音に漢字を当てた地名)

川が溢れる
 サイ・わざわい  火部 zāi                                
解字 「火(ひ)+巛サイ」の会意形声。巛サイは、古い篆文(籀チュウ文)では「巛(水流)+一」で、巛に一線を引いた字。水流がふさがれて溢れる水害を表わし「わざわい」の意。これに火のついた災は、火のわざわいの意だが、ひろく「わざわい」の意となる。  
意味 わざわい(災い)。よくない出来事。「災害サイガイ」「震災シンサイ」(地震の災害)「災禍サイカ」(災も禍も、わざわいの意)
<参考> 災は、ほのおが燃える形ではない。ほのおは炎エンであらわす。


   シュウ <川のなかす>
 シュウ・す  川部 zhōu          

解字 甲骨と金文は、川の中に中州なかす(川の中にできた島のようになった所)が一つできたさまを描いた象形。篆文は三つの中州らしき形を描き、現代字は川に点を三つくわえた「州」になった。水流によって自然に区画されている地域をいう。                  

広島湾にそそぐ太田川の三角州国土地理院「三角州」より)                                       意味(1)す(州)。川のなかす。「中州ナカス」「三角州サンカクス」(川の流れが運んできた土砂が河口に溜まってできた三角形の土地。デルタ)(2)大きなしま。「本州ホンシュウ」「神州シンシュウ」(自国の美称)(3)昔の行政区画。「九州キュウシュウ」「信州シンシュウ(長野県の昔の呼び名)「州司シュウシ」(州の役人)(3)大陸。「欧州オウシュウ

イメージ  
 「なかす」
(州・洲)   
 「形声字(シュウ)」(酬)

音の変化   シュウ:州・洲・酬

なかす
 シュウ・す・しま  氵部 zhōu
解字 「氵(水)+州(なかす)」の会意形声。水に取り囲まれた中州。州が行政区画の意味に使われたので、水を付けて本来の意味を強調した字。しかし、現代表記では州に書きかえるので、ほとんど使われない。
意味 (1)す(洲)。しま(洲)。「中洲なかす=中州」(2)大陸。「五大洲ゴダイシュウ=五大州」

形声字
 シュウ・ジュ・むくいる・むくい  酉部 chóu
解字 「酉(さけ)+州(シュウ)」の形声。シュウは壽シュウ・ジュ(寿の旧字)に通じる。壽シュウ・ジュは、長生きをする意から、長くつづく意味があり、酉(さけ)のついた酬シュウは、客との酒杯のやりとりが長く続くこと。また、相手に酒盃を返す(むくいる)意となる。「酉(さけ)+」のシュウ・ジュは酬の異体字で同字。
意味 (1)酒杯をやりとりする。受けた杯をかえす。「献酬ケンシュウ」「応酬オウシュウ」(2)むくいる(酬いる)。こたえる。返事する。「唱酬ショウシュウ」(唱は吟じる。詩歌や文章を作って、互いにやりとりする)(2)むくい(酬い)。お返し。「報酬ホウシュウ」(労働の対価として払われる金品)
<紫色は常用漢字>

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音符「冒ボウ」<目だけ出して頭におおいをかぶせる> と「帽ボウ」「瑁マイ」

2025年03月20日 | 漢字の音符

 <眼だけ出して頭におおいかぶせる>               ボウ・おかす  曰部 mào・mò

目出し帽(販売広告から)                                              解字 金文から旧字まで「目(め)+冃ボウ(ずきん)」の会意形声。冃は頭衣(かぶりもの)で、冒ボウは、かぶりものから目だけ出している形。目だけ出したカブト(甲冑)をかぶって進む意から、周囲がみえず無頓着に行動する意となる[字統]。新字体は旧字の冃 ⇒ 日に変化した冒になった。
意味 (1)おかす(冒す)。無理にする。「冒険ボウケン」「感冒カンボウ」(冒(おか)されるのを感ずる。呼吸器系の炎症性疾患。かぜ。風邪)「流行性感冒リュウコウセイカンボウ」(インフルエンザ)(2)けがす。「冒涜ボウトク」(おかしてけがす)「冒名ボウメイ」(他人の姓名を偽ってなのる)(3)(一番上の頭にかぶることから)はじまり。「冒頭ボウトウ」(文章や言葉の初めの部分)

イメージ 
 目だけ出して頭に「かぶせる」(冒・帽・瑁)
音の変化  ボウ:冒・帽・瑁  

かぶせる
 ボウ  巾部 mào
解字 「巾(ぬの)+冒(かぶせる)」の会意形声。頭をおおいかくす布で、かぶりものをいう。
意味 かぶりもの。ぼうし。「帽子ボウシ」「脱帽ダツボウ」「角帽カクボウ」(上部が角形の帽子。大学生の帽子とされることから大学生の俗称。

 角帽(販売広告から)       

 ボウ・マイ  玉部 mào
解字 「王(玉)+冒の旧字(おおいかぶせる)」の会意形声。天子が諸侯を封じる時に、諸侯に授けた圭ケイという玉にぴったり符合するように作られ、天子の手許に残しておく玉の意。圭にかぶせる帽子のような玉の意を表す。
意味 (1)「瑁ボウ」。天子の持つ、しるしの玉。「珪瑁ケイボウ」(珪は天子が与える玉、瑁は天子が手元に残しておく玉で、有用な人材の意)(2)「玳瑁タイマイ」に使われる字。玳瑁とはウミガメ科のカメ。背中の甲(こうら)は黄色と黒褐色の斑紋が入り鼈甲ベッコウといい、装飾品の材料として珍重される。(3)人名。「蔡瑁サイボウ」(中国後漢末期の武将)     

                    

玳瑁タイマイ (「百度百科・玳瑁属」より)                       <紫色は常用漢字>     

                                            

<関連音符>
 マン  日部 màn         

解字 篆文は「冃ボウ(かぶりもの)+罒(横に描かれた目)+又(手)」の会意。ずきんを手でひいてかぶり、目(金文は目とマユを描く)だけ出している形。「かぶる(おおう)」が原義。現代字は、冃ボウ⇒日に変化した。字の構造は冒に又をつけた形である。
意味 本来の意味でなく、主に梵語の音訳語として使われる。「曼荼羅マンダラ」(多くの仏を模様のように描いた絵)「曼珠沙華マンジュシャゲ」(天上に咲くという花)
イメージ 
 「おおう」
(曼・蔓・鰻・幔・鏝・鬘・饅・漫)
 かぶりものをして目だけ出すことから「まわりが見えない」(慢)
音の変化  マン:曼・蔓・鰻・幔・鏝・鬘・饅・漫・慢
音符「曼マン」

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