漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「斬ザン」<車を作る加工作業> と 「鏨ザン」「塹ザン」「槧ザン」「暫ザン」「慙ザン」「嶄ザン」「漸ゼン」

2024年04月29日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 ザン・きる  斤部 zhǎn

解字 「車(くるま)+斤キン(おの)」 の会意。車を作るため斤(おの)で木材を斬(き)ること。転じて、人をきる意となった。[字統]によると、はなはだの意は唐代以後の俗語。 
意味 (1)きる(斬る)。刃物できる。「斬首ザンシュ」(首を斬る。また、その刑)「斬奸ザンカン」(悪人をきり殺す)「斬伐ザンバツ」(討ち滅ぼす) (2)斬ったままの喪服もふく。「斬衰ザンサイ」(縁(へり)を斬ったままで縫わない衰(喪服)。夫や君主が死んだときなど最も重い喪(も)の服。=斬縗ザンサイ) (3)はなはだ。「斬新ザンシン」(きわだって新しい)「斬新奇抜ザンシンキバツ

車造・車大工(「江戸職人尽絵詞」より)

車作(国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]』)

イメージ  
車を作るため斤(おの)で木材を加工することから
 「きる」(斬)
 「ほりこむ」(鏨・塹・槧)
 「きりとる」(暫・漸)
 「形声字」(慙・嶄)
音の変化  ザン:斬・鏨・塹・槧・暫・慙・嶄  ゼン:漸

ほりこむ
 ザン・サン・たがね  金部 zàn
解字 「金(金属)+斬(ほりこむ)」の会意形声。金工用の鋼鉄製のノミを鏨(たがね)という。後漢の[説文解字]は「小鑿サク(のみ)也(なり)。金に従い斬に従う。斬ザンは亦(また)聲(声)」とする。

鏨(たがね)彫りを伝承する匠(中国ネットから)
http://grassland.china.com.cn/2021-06/07/content_41584843.html
意味 (1)たがね(鏨)。金属を彫ったり削ったりるする鋼製のノミ。「彫金鏨チョウキンたがね」(金属を彫る鏨)「平鏨ひらたがね」(平面をはつるのに用いるたがね) (2)ほる(鏨る)。金属をほる。うがつ。「鏨刻ザンコク」(鏨で刻む)「鏨花ザンカ」(花のような模様をほる)「鏨字ザンジ」(字をほる)
 ザン・ほり  土部 qiàn・jiàn
解字 「土(つち)+斬(ほりこむ)」 の形声。敵の侵入を防ぐため周囲の土を深くほった堀を塹ザンという。後漢の[説文解字]は「坑(あな)也(なり)一に曰く大也(なり)」とする。
意味 (1)ほり(塹)。あな。城のまわりを深くほった堀。「塹壕ザンゴウ」(野戦で敵の攻撃から身を隠す堀)「塹塁ザンルイ」(ほりと、とりで)「塹柵ザンサク」(柵をめぐらした塹) 
 ザン・サン・セン・ふだ  木部
解字 「木(き)+斬(ほりこむ)」 の会意形声。木を彫りこむこと。彫る版および版木で刷った書物をいう。転じて、文字を書く木のふだの意味にもなる。
意味 (1)はんぎ。ほる板。「槧工ザンコウ」(刻字工)「槧本ザンボン」(版木を使って印刷した書物) (2)ふだ(槧)。文字を記すための木のふだ。「簡槧カンザン」(文字を書く竹の札と木のふだ) 

きりとる
 ザン・しばらく  日部 zàn
解字 「日(一日)+斬(きりとる)」 の会意形声。一日の時間から切り取ったわずかの時間をいう。[説文解字]は「久しから不(ず)也(なり)。日に従い斬ザンの聲(声)」とする。
意味 (1)しばらく(暫く)。しばし(暫し)。「暫時ザンジ」(すこしの間) (2)とりあえず。「暫定ザンテイ」 (3)歌舞伎の演目のひとつ。「暫(しばらく)」(歌舞伎十八番の一つ。時代物。荒事あらごと(荒々しく誇張した演出)の代表的な演目。)
 ゼン・ようやく  氵部 jiàn・jiān
解字 「氵(水)+斬(=暫。しばらく)」 の会意形声。水が急に出るのでなく、しばらくの時間をかけて出ること。少しづつの意となる。
意味 (1)ようやく(漸く)。少しずつ。やや(漸)。「漸次ゼンジ」(だんだん)「漸減ゼンゲン」(少しずつ減る) (2)すすむ。少しずつすすむ。「漸進ゼンシン」(少しずつ進む⇔急進)「東漸トウゼン」(しだいに東方へ進み移ること) (3)ひたす。しみる。

形声字
 ザン・サン  山部 zhǎn・chán
解字 「山(やま)+斬(ザン)」の形声。山が高く険しいさまを嶄ザンという。
意味 (1)たかい(嶄い)。山が斬りたつように高くそびえる。「嶄絶ザンゼツ」(山が切り立ち険しい)「嶄然ザンゼン」(①きわだかくそびえる。②ひときわ目立ってすぐれる)「嶄巌ザンガン」(山がきりたちけわしい)
慙[慚] ザン・はじる・はじ  心部 cán
解字 「心(こころ)+斬(ザン)」 の形声。後漢の[説文解字]は「羞愧シュウキ( 恥じる)也(なり)。慚に作る」とし、恥じる意で慚とも書くとする。
意味 はじる(慙じる)。はずかしく思う。はじ(慙)。「慙愧ザンキ」(恥じ入ること。愧もはじる意)「慙汗ザンカン」(恥ずかしくて汗がでる)
<紫色は常用漢字>

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音符「㸒」イン<過剰な・度をこす> と 「淫イン」「婬イン」「霪イン」

2024年04月27日 | 漢字の音符
 イン  爪部 yín


 上は㸒イン、下は𡈼テイ
解字 篆文は「爫 (上からの手)+𡈼テイ(抜きんでる人)」の会意。𡈼テイの甲骨文は土盛りの上に立つ人の形で、高くぬきんでる意。そこに上から手をさしのべた㸒インは、ぬきんでる人にさらに手をさしのべており、過剰な・度をこす意を表す。543年の〔玉篇〕には「濫りに貪(むさぼ)るなり」とある。字形は、𡈼テイが壬ジンに変化した㸒インになる。
意味 もとめる。みだれる。むさぼる。貪り求める。過度に求める。

イメージ 
 「過剰な・度をこす」
(淫・婬・霪)
音の変化  イン:淫・婬・霪

過剰な・度をこす 
 イン・みだら  氵部 yín
解字 「氵(水)+㸒(度をこす)」の会意形声。度をこした水が、あふれること。水があふれる・おぼれる意。本来は水があふれて、おぼれる意だが、転じて、女性との関係におぼれる・深入りする意となる。
意味 (1)ひたる。あふれる。おぼれる。「淫雨インウ」(何日も降り続く雨) (2)深入りする。みだら(淫ら)。ふしだら。男女関係が乱れる。「淫行インコウ」(淫らな行ない)「淫乱インラン」(色欲におぼれる)「淫蕩イントウ」(酒色にふけって淫らなこと)「淫靡インビ」(みだらのほうになびく。性的なだらしなさ)
 イン・みだら  女部 yín
解字 「女(おんな)+㸒(=淫。みだら)」の会意形声。淫の意味の一つである「みだら」の意を、女をつけて表した字。すべて淫におきかえが可能。
意味 みだら(婬ら)。たわむれる。おぼれる。「婬乱インラン」(色欲におぼれる。=淫乱)。「婬風インプウ」(みだらな風潮。=淫風)
 イン・ながあめ  雨部 yín
解字 「雨(あめ)+淫(水があふれる)」の会意形声。度をこした雨の意。ここでは一度に降る大量の雨でなく、長く続く雨をいう。543年の[玉篇]は「久雨(ながあめ)也(なり)」。元代の[韻會インカイ]は「雨十日を過ぎるを以って往(ゆ)く」と十日以上の長雨とする。
意味 ながあめ(霪)。「霪雨インウ」(ながあめ=淫雨インウ)「霪淋インリン」(ながあめ)
<紫色は常用漢字>

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音符「柬カン」<えらぶ> と 「揀カン」「諫カン」「練レン」「錬レン」「煉レン」「鰊いわし」

2024年04月25日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 カン・えらぶ  木部 jiǎn

解字 金文第一字は束(たばねたもの)の中の左右に点をいれた形。第二字は中が八に変化した形。[簡明金文詞典]は「象声詞(擬声語)として用い、鐘や鼓の声(音)の形容」としている。篆文になると中が八の字に統一され、後漢の[説文解字]は「簡を分別する之(これ)也(なり)。束に従い八に従う。八は分別也(なり)」とし、束(たばねたもの)を開き分けて選ぶ意とする。篆文以降は、えらぶ(柬ぶ)意味で用いられるようになった。また、簡カンに通じ、てがみ・なふだの意がある。
 なお、新字体(常用漢字)で用いられるとき、柬⇒東に変化する。
意味 (1)えらぶ(柬ぶ)。えりわける。 (2)てがみ。なふだ。「書柬ショカン」 (3)地名。「柬蒲塞カンボジア」(インドシナ半島南東の国)

イメージ 
 「えらぶ」
(柬・揀)
  悪い物をえらんで取り出し、中を「よくする」(練・錬・煉)
 「その他」(諫・鰊)
音の変化  カン:柬・揀・諫  レン:練・錬・煉・鰊

えらぶ
 カン・えらぶ  扌部 jiǎn
解字 「扌(手)+柬(えらぶ)」の会意形声。手でえらぶこと。
意味 えらぶ(揀ぶ)。よりわける。「揀選カンセン」(揀も選も、えらぶ意)「揀別カンベツ」(えらび別ける)
 カン・いさめる  言部 jiàn 
解字 「言(ことば)+闌(えらぶ)」の会意形声。相手の行動の良くない部分を選んで、言葉で告げて、その間違いを改めるよう忠告すること。特に、家来が主君に意見する意味に用いる。
意味 (1)いさめる(諫める)。いましめる。さとす。「諫言カンゲン」(目上の人の非をいさめる)「諫臣カンシン」(主君の過ちを諫める忠誠な臣下)「諫死カンシ」(死んでいさめる)「諫止カンシ」(いさめて思いとどまらせる)「切諫セッカン」(強くいさめる)
(2)地名。「諫早市いさはやシ」(長崎県中央部にある市。東部の諫早湾では古くから干拓が進められた)

よくする
 レン・ねる  糸部 liàn
解字 旧字は練で「糸(いと)+柬(よくする)」の会意形声。糸を水洗いしたり、煮たりして上質にすること。転じて体をきたえる意に用いる。新字体で、練⇒練に変化する。
意味 (1)ねる(練る)。ねりぎぬ。「練糸レンシ」(練ってやわらかく白くなった絹糸) (2)体や技をきたえる。「練習レンシュウ」「練磨レンマ」(練り磨くこと)「水練スイレン」(水泳の練習。古語では、水泳の達人)「鍛練タンレン」「熟練ジュクレン」(なれて上手)「未練ミレン」(①未だ熟練していないこと。②心の残ること。あきらめきれないこと)(3)(煉の書き換え字として)「練炭レンタン=煉炭」
 レン・ねる  金部 liàn
解字 旧字は鍊で「金(金属)+柬(よくする)」の会意形声。金属を焼いたり溶かしたりして質を良くすること。きたえる意は練と通用する。新字体で、鍊⇒錬に変化。
意味 (1)ねる(錬る)。金属をねりきたえる。「錬金術レンキンジュツ」「錬鉄レンテツ」(よくきたえた鉄)「精錬セイレン」(粗い金属の純度をたかめ精製する) (2)心身や技芸をきたえる。「鍛錬タンレン」(=鍛練)「錬成レンセイ」(技や心身をきたえる=練成)
 レン  火部 liàn
解字 「火(ひ)+柬(=錬。精製する)」の会意形声。火で金属などを精製すること。ねる、きたえる意だが、常用漢字である練・錬にほとんどがおき換えられ、材料を混ぜ合わせてこねる・ねりかためる意で用いられる。
意味 (1)ねる(煉る)。きたえる。 (2)こねる。ねりかためる。「煉瓦レンガ」(粘土などをねりかためて焼いた建築材料)「煉炭レンタン」(石炭などの粉末をねりかためた燃料)「煉丹レンタン」(昔、中国で丹(に。辰砂)を煉って作られた不老長寿の薬)  (3)(宗教)「煉獄レンゴク」とは、カトリック教で天国と地獄の間にあり死者の魂が天国に入る前に、火によって罪を浄化されるとされる場所)

その他
 レン・にしん  魚部 liàn
解字 「魚(さかな)+柬(レン)」の形声。レンという魚。レンのイメージは不明。中国では魚の一種とする。日本では、にしんに当てる。古くは鯡と書くことが多かった。柬レンをつけた鰊にしんは、三枚におろして身欠きニシンにするなど、加工して「よくする」意か。 
意味 (1)小魚の一種。 (2)[国]にしん(鰊)。鯡とも書く。ニシン科の海魚。かつては食用・肥料など用途が広かったが、現在は漁獲量が激減した。カズノコはその卵。「鰊曇(にしんぐも)り」(北海道の日本海側でニシンの漁期である4月前後に多い曇り空。<広辞苑>)「鰊粕にしんかす」(ニシンを煮て、圧搾して油をとったあと乾燥させたもの。 魚肥とした。)「鰊御殿にしんごてん」(第二次世界大戦前に北海道の日本海側に建てられた、網元や漁師たちが寝泊りした豪華な居宅兼漁業施設の俗称。小樽市に移築復元された小樽市鰊御殿がある)

小樽市鰊御殿(北海道有形文化財)
<紫色は常用漢字>>

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音符「奥オウ」<おく>と「襖オウ」「懊オウ」「燠おき」「澳イク」と「粤エツ」

2024年04月23日 | 漢字の音符
  エツを追加しました。
[奧] オウ・イク・おく  大部 ào・yù 

解字 篆文は「宀(たてもの)+釆ベン+両手」の会意。釆ベンは獣の爪(つめ)の分れている形の象形であるが、ここでは爪に続く足裏の肉の意で祭肉。奧は、祭肉を神聖な建物の隅に両手で供える形[字統]。[説文解字]は「宛(かがむ)也(なり)。室之(の)西南隅」とし、部屋の西南隅でかがんで祈るかたちとする。奥深い所で祈るので「おく(奥)」の意味になった。旧字体は、両手が大になり、新字体でさらに、釆⇒米に変化した奥となった。(供えるのは米と覚える)
意味 (1)おく(奥)。家屋の西南のすみの部屋。神を祭る所。家の奥まった部屋。「奥座敷おくザシキ」。 (2)奥深いところ。「奥義オウギ・おくギ」「深奥シンオウ」 (3)[国]おく(奧)。夫人。おくて。「奥方おくがた」「奥手おくて」(成長・成熟のおそいこと)

イメージ 
 「おく」
(奥・燠・襖・懊・澳)
 「その他」(粤)
音の変化  オウ:奥・襖・懊  イク:燠・澳  エツ:粤

おく
 イク・オウ・おき  火部 yù
解字 「火(ひ)+奧(おく)」の会意形声。建物の奥に火があり、あたたかいこと。日本では燃えた木が炭火になったものをいう。
意味 (1)あたたかい(燠かい)。あたためる。「燠燠イクイク」(あたたかいさま) (2)[国]おき(燠)。薪が燃えて炭火になったもの。赤くおこった炭火。
 オウ・ふすま  衣部 ǎo
解字 「衤(ころも)+奧(=燠。あたたかい)」の会意形声。あたたかい綿入れの衣服をいう。日本では部屋を仕切る建具の「ふすま」の意味に使う。
意味 (1)あわせ。あお(襖)。綿入れの衣服。「袍襖ホウオウ」(綿入れの衣服) (2)[国]ふすま(襖)。建具のひとつ。両面から紙や布を貼った障子。「襖絵ふすまえ」「襖紙ふすまがみ

襖ふすま(「畳店の襖見本」から)
 オウ・なやむ  忄部 ào
解字 「忄(心)+奧(おく)」の会意形声。心の奥深くに思う意で、なやみや、うらむ意に用いる。
意味 (1)なやむ(懊む)。「懊悩オウノウ」「懊嘆オウタン」(憂えなげく) (2)うらむ。「懊恨オウコン」(懊も恨も、うらむ意)
 イク・オウ・くま・おき  氵部 ào
解字 「氵(水)+奧(おくまる)」の会意形声。水が陸に奥深く入り込んだ所。日本では海や湖の奧すなわち沖をいう。
意味 (1)くま(澳)。川や湖が陸地に奥深く入りこんだ所。「澳港オウコウ」(奥まった港)「隈澳ワイイク」(湾曲してはいりこんだ水ぎわ。隈も澳も、くまの意) (2)[国]おき(澳)。海や湖の岸から遠く離れた所。 (3)地名。「澳門マカオ」(中国広東省南部の港湾都市)「澳太利亜オーストリア」(中央ヨーロッパのドイツ語圏の国。首都ウィーン)

その他
 エツ  米部 yuè

解字 篆文は「宀(たてもの)+釆ベン+于の変化した形」。このうち「宀(たてもの)+釆ベン」は奥の旧字()の上部となる形で建物の西南隅で奥まったところの意。そこに于の変化形がついて全体の発音がエツとなった。漢代の隷書では釆⇒米に変化し、さらに現代字は米が白の外周りで囲まれた形+丂の粤エツになった。エツの発音は曰エツ・越エツ、と同じであり、曰・越の両字には「ここに」という発語・助詞の用法があり、粤エツにも同じ用法がある。また、奥の上部の奥まったところの意は、中国大陸の南の奥まった所を表す広東省方面を古くは粤エツと言った。

広東省(「ウィキペディア」より)
意味 (1)[文頭に置く発語・助詞]ここに(粤に)。「粤若エツジャク」(=曰若(エツジャク)=ここに。発語の辞)  (2)歎息の声。「粤ああ」  (3)広東省の略称。広東省の車のナンバープレートの識別記号。粤人エツジン(越人)のいた地域。「粤語エツゴ」(広東語)「粤地エツチ」(広東省地方の古い呼び名)「粤犬エツケン吠雪ハイセツ」(粤の犬は、雪に吠える。粤の地方は暖かく雪が降らないので犬が雪を怪しんでほえる)  
<紫色は常用漢字>

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音符「林リン」 <つらなる> 「淋リン」「霖リン」「醂リン」「琳リン」「惏ラン」「婪ラン」「彬ヒン」「焚フン」「森シン」と「禁キン」 <ふさぐ>「襟キン」「襟キン」「噤キン」

2024年04月21日 | 漢字の音符
   増訂しました。    
  リン <つらなる>
 リン・はやし  木部 lín
 
解字 甲骨文から現代字まで「木+木」の会意。木を二つ並べて木がならんで生えているさまを表す。後漢の[説文解字]は「平らな土(土地)に有る叢木(集まった木)を林と曰(い)う」とする。また、同種のものが集まる意味をもつ。
意味 (1)はやし(林)。木が群がり生えているところ。「林野リンヤ」(林と原野)「林間リンカン」(林のあいだ。林のなか)「林衣リンイ」(林の木の葉) (2)同種のものが多く集まっている所。また集めたもの。「書林ショリン」(書物が多くあること。転じて書店)「林立リンリツ」(林のように多くのものが並び立つ) (3)郷里や隠遁イントンの地。「帰林キリン」(故郷に帰る。隠遁する) (4)姓。「林羅山はやしラザン」(江戸初期の朱子学派儒学者)

イメージ 
 「はやし」
(林・焚)
  木々が「つらなる」(彬・淋・霖・醂・惏・婪)
 「形声字」(琳)
 「その他」(森)
音の変化  リン:林・淋・霖・醂・琳・惏  ラン:婪  ヒン:彬  フン:焚  シン:森

はやし
 フン・やく・たく  火部 fén
解字 「火(ひ)+林(はやし)」の会意。林に火をつけて焼くことが原義。
意味 (1)山野を焼いて狩りをする。焼き狩り。 (2)やく(焚く)。たく(焚く)。もやす。火をつけて燃やす。「焚き火」「焚書フンショ」(書物を焼き捨てる)「焚草フンソウ」(①草を焼く。②原稿(草稿)を焼く)「焚掠フンリャク」(家を焼き財産をかすめ取る)(3)火あぶりにする。「焚刑フンケイ」 

つらなる
 ヒン  彡部 bīn
解字 「彡(模様)+林(つらなる)」の会意。模様が並びそろって美しいさま。
意味 (1)あきらか。調和して美しい。「彬彬ヒンピン」(文章の調和がとれている)「彬彧ヒンイク」(文彩のあるさま。ほどよく調和する。彧は、彩り豊かな美しい地域の意)「彬蔚ヒンウツ」(さかんであざやか。蔚は、しげる意) (2)人名。名乗り。あき・あきら・あや・しげし・ひで・もり・よし
 リン・さびしい  氵部 lín・lìn
解字 「氵(水)+林(つらなる)」の会意形声。あとからあとから水がしたたること。
意味 (1)そそぐ。したたる。「淋雨リンウ」(なが雨)「淋淋リンリン」(水のしたたり落ちるさま) (2)分泌液が出る病気。「淋病リンビョウ」  (3)[国]さびしい(淋しい)。さみしい(淋しい)。「寂しい」とも書く。
 リン・ながあめ  雨部 lín
解字 「雨(あめ)+林(つらなる)」の会意形声。雨が連続すること。
意味 ながあめ(霖)。三日以上降り続く雨。「霖雨リンウ」「梅霖バイリン」(梅雨。さみだれ)「霖潦リンロウ」(大雨が降り続く。ながあめで道が流れのようになる。潦ロウも、ながあめの意)
 リン・ラン・むさぼる  忄部 lán・lín
解字 「忄(こころ)+林(つらなる)」の会意形声。忄(心=欲の心)が連なり、きりがないこと。また、凛リン(きびしい・おそれる)に通じ、おそれおののくさまに用いる。
意味 Ⅰリンの音。(1)おそれおののく。「惏慄リンリツ」(おそれおののく) Ⅱランの音。(2)むさぼる(惏る)。「貪惏タンラン」(貪欲なこと)
 ラン・むさぼる  女部 lán
解字 「女(おんな)+林(=惏ラン。むさぼる)」の会意形声。惏ランの忄を女に替えた字で、むさぼる・ほしがる意。
意味 (1)むさぼる(婪る)。ほしがる。「貪婪ドンラン・タンラン」(欲が非常にふかいこと。貪も婪も、むさぼる意)

形声字
 リン  玉部 lín
解字 「王(たま)+林(リン)」の形声。リンリンと澄んだ音が鳴る玉。
意味 (1)美しい玉。「琳宇リンウ」(美しい玉で飾った邸宅。宮殿の美称) (2)玉がふれあって鳴る音の形容。「琳琅リンロウ」(①玉がふれあって鳴る音。②美しい玉。③美しい詩文) (3)人名。「光琳コウリン」(尾形光琳。江戸中期の京都の画家、大胆で華麗な画風を展開した)「琳派リンパ」(光琳の画風をうけた流派)
 リン  疒部 má・lìn
解字 「疒(やまい)+林(リン)」の形声。リンは淋リン(分泌液が出る病気。「淋病リンビョウ」)に通じ、性病の一つをいう。なお、後漢の「説文解字」は「疝セン病也。疒に従い林の聲(声)」とし疝病とする。
意味 (1)性病のひとつ。淋菌により尿道が侵され小便が出にくくなる病気。「痳病リンビョウ」「痳菌リンキン」(痳病の病原体である双球菌) (2)疝気センキ。腹や腰などが引きつって痛む病気。
 リン・さわす・あわす  酉部 lǎn
解字 「酉(さけ)+林(リン)」の形声。柿の果実の渋を抜くことを醂(さわ)すという。また、水に浸してさらすことをいう。
意味 (1)さわす(醂す)。あわす(醂す)。柿の渋をぬく。柿のヘタの部分をアルコールに浸し、樽などにいれて密閉する。「醂柿リンシ・さわしがき」(渋をぬいた柿の実) (2)水に浸してさらす。 (3)[国]「味醂ミリン」とは、アルコール度数が14%前後で糖分を比較的多く含んだ酒。日本料理の調味料や飲用に供される。

その他
 シン・もり  木部 sēn
解字 「木三つ」の会意。たくさんの木が生い茂った森。
意味 (1)もり(森)。「森林シンリン」 (2)物の多いさま。びっしり。「森羅万象シンラバンショウ」(天地の間に存在するすべてのもの) (3)ひっそりとしたさま。「森閑シンカン

    キン <ふさぐ>
 キン・とどめる 示部 jìn・jīn
解字 「示(祭壇)+林リン(つらなる)」の会意。神をまつる祭壇のまわりが林におおわれ、神域として立ち入りを禁止されていること。
意味 (1)きんじる(禁じる)。とどめる(禁める)。ふさぐ。「禁止キンシ」「禁足キンソク」「禁句キンク」「禁中キンチュウ」(天子が住む宮城) (2)おきて。いましめ。「禁令キンレイ」 (3)いみ(忌)。いみさける。「禁忌キンキ

イメージ  
 祭壇のまわりを林で「ふさぐ」(禁・襟・噤)
音の変化  キン:禁・襟・噤

ふさぐ
 キン・えり  衤部ころも jīn
解字 「衤(ころも・衣)+禁(ふさぐ)」の会意形声。首まわりをふさぐ衣の部分。えり。
意味 (1)えり(襟)。えりもと。「襟帯キンタイ」(えりとおび)「山河襟帯サンガキンタイ」(襟と帯が身体を取り巻くように周りを山と河にかこまれた地形。山と河が自然の要害をなしていること) (2)むね。こころ。おもい。「襟懐キンカイ」(胸のうち。思い。=胸襟キョウキン)「襟度キンド」(心の持ち方。度量)
 キン・つぐむ  口部 jìn
解字 「口(くち)+禁(ふさぐ)」の会意形声。口をふさぐこと。
意味 つぐむ(噤む)。口をとじる。「噤閉キンヘイ」(口をつぐんで黙すること)「噤口キンコウ」(口をつぐむ)
<紫色は常用漢字>

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音符 「寺ジ」 <下級役人>と「侍ジ」「持ジ」「時ジ」「詩シ」「蒔シ」「待タイ」「等トウ」「特トク」

2024年04月19日 | 漢字の音符
   増訂しました。   
   ジ <下級の事務役人>
 ジ・シ・てら  寸部 sì


 上は寺、下は之
解字 金文第一字は、「之(すすむ)+又(手)」の会意形声。下の之の甲骨文は足が一線から出て進む形で左右の足をかたどった2種があり、足が前に進むことを示すが、金文第一字は止に近い形に変化し、寺の金文第一字の上部と同じ形。
 寺の金文第一字の上部は、足が下の線から出る形で前に進むことを示す。下部の又は手で、手にものを持つ意。金文第二字は又⇒寸になっており、之と寸が合わさった寺は、手に文書などを持ち、足で前にすすむ「使い」を表し、宮中などで働く事務系の下級役人の意。転じて、役人が働く場所である役所や朝廷などを表す。現代字は上部が土に変化した寺になった。この字を見ると我々はすぐ寺(てら)を思い浮かべるが、この意味は仏教伝来以降、渡来した僧侶を外国使節の応接・対応を司る役所(鴻臚寺コウロジ)にしばらく住まわせたことから出た。
意味 (1)役所。朝廷。官庁。「寺人ジジン」(宮中の小臣)「鴻臚寺コウロジ」(上記参照) (2)てら(寺)。「寺院ジイン」「仏寺ブツジ」 (3)はべる(=侍)。 (4)もつ(=持つ)。

イメージ  
 「下級の役人」
(寺・侍・等・待・峙・痔・恃)
 寸の意味である「手にもつ」(持)
 之の意味である「すすむ」(時・蒔・詩)
 「形声字」(特・畤)
音の変化  ジ:寺・侍・峙・痔・恃・持・時・畤  シ:詩・蒔  タイ:待  トウ:等  トク:特

下級役人
 ジ・さむらい・はべる  イ部 shì
解字 「イ(人)+寺(下級役人)」の会意形声。下級役人が身分の高い人に付き添うこと。
意味 (1)はべる(侍る)。さぶらう。仕える。「近侍キンジ」「侍従ジジュウ」「侍医ジイ」 (2)さむらい(侍)。武士。武術をもって主君に仕えた人。「侍所さむらいどころ
 トウ・タイ・ひとしい・ら・など  竹部 děng
解字 「竹(竹簡)+寺(下級役人)」の会意形声。事務の下級役人が筆記の用具である竹簡の長さを揃えること。一つの文書を作るのに、竹簡の長さを測って同じ長さのものを揃えることから、長さがひとしい・同じたぐいの意となる。長さの揃わないものは、そのほかの意となる。
意味 (1)ひとしい(等しい)。「等分トウブン」「等閑トウカン」(閑に等しい。即ち、なおざりにする意) (2)たぐい。同じもの。「等級トウキュウ」(同じもののあつまる段階) (3)ら(等)。など(等)。ほかにも。「僕等ぼくら
 タイ・まつ  彳部 dài・dāi
解字 「彳(路上)+寺(下級役人)」の形声。下級役人が路上で上司の帰りを待つこと。彳は十字路(行)の左半分の字で、通常は「行く」意だが、ここでは路上の意。
意味 (1)まつ(待つ)。まちうける。「待機タイキ」(機会を待つ)「待望タイボウ」(望んで待つ)「期待キタイ」(当てにして待つ) (2)もてなす。あつかう。「待遇タイグウ」「接待セッタイ
 ジ・そばだつ  山部 zhì・shì
解字 「山(やま)+寺(=待。まつ)」の会意形声。山がじっと動かずに待っているように聳えていること。
意味 (1)そばだつ(峙つ)。そびえる。 (2)じっと動かずにいる。「対峙タイジ」(向き合って立つ)
 ジ  疒部 zhì
解字 「疒(やまい)+寺(=待。まつ)」の会意形声。肛門の近くがはれて痛くなり、便が待っている状態の病気。
意味 じ(痔)。肛門やその付近がはれたり、ただれる病気。便が出にくい。「痔疾ジシツ」「裂痔きれじ」(ひび割れで出血する痔)「疣痔いぼじ」(イボ状のものが出来る痔)
 ジ・たのむ  忄部 shì
解字 「忄(こころ)+寺(=待。まつ)」の会意形声。待は上位の者を待つ意。それに心がついた恃は上位の者を待って頼りにすること。人をたのみとする・たのむ意となる。
意味 (1)たのむ(恃む)。こころだのみ。よる。あてにする。「無母何恃ムボカジ」(母が無くば何を恃みにしたらいいのか。詩経・蓼莪リクガ)。「恃力ジリョク」(力を恃む。権力・勢力をあてにする)「恃頼ジライ」(こころだのみ。恃も頼も、たのむ意) (2)自分をたのみにする。「恃気ジキ」(自分の気持ちにたのむ。意気ごむ)「恃強ジキョウ」(自分が強いのをあてにする)「恃強凌弱ジキョウリョウジャク」(強いのをよいことに弱いものをいじめる)

手にもつ
 ジ・もつ  扌部 chí
解字 「扌(手)+寺(手にもつ)」の形声。寺には、寸(て)が含まれており、もともと文書などを持つ意がある。扌(手)をつけて、その意を明確にした。
意味 (1)もつ(持つ)。身につける。「所持ショジ」「持参ジサン」 (2)たもつ。まもる。「持久ジキュウ」「保持ホジ

すすむ
 シ・からうた  言部 shī
解字 「言(ことば)+寺(すすむ)」の会意形声。人々の心からすすみ出る言葉。元々は西周のころの古代中国の歌謡を編纂した詩経を言った。古代歌謡は文字の発明以前から存在したと言われ、一定のリズムを持ち、暗誦されるのに適しているため、古代からの生活習俗が謡われている。詩は、話し言葉が一定のリズムをもって表れる表現をいう。なお、日本では明治になるまでは「詩」といえば漢詩を指し、「歌」は日本古来の歌謡から発したものを指した。
意味 (1)し(詩)。からうた(詩)。一定のリズムで言葉に表わしたもの。「詩歌シイカ」(シカの慣用読み。詩と歌。漢詩と和歌)「詩吟シギン」「漢詩カンシ」「詩聖シセイ」(杜甫を指す)「詩仙シセン」(特に李白を指す)(2)「詩経シキョウ」のこと。中国最古の詩集。殷から春秋時代までの詩311編を収める。
 ジ・シ・とき  日部 shí

解字 金文は、「日(ひ)+之(足が前にすすむ)」の会意形声。日が進む意で、時間がたつこと。篆文から、之⇒寺に変わり、時となった。
意味 (1)とき(時)。月日の移り変わり。「時間ジカン」「時刻ジコク」 (2)そのとき。そのころ。「時事ジジ」「時流ジリュウ
 シ・ジ・まく  艸部 shì・shí
解字 「艸(野菜や穀物)+時(とき)」の会意形声。稲の苗などを植え替えるときの意。日本では野菜や穀物の種をまく意に用いる。
意味 (1)植える。移植する。「蒔植ジショク」(草木を移し植える。移植) (2)[国]まく(蒔く)。種をまく。ふりまく。「種蒔(たねま)き」「蒔絵まきえ」(漆の下絵に金粉を蒔いて模様をだす技法) 
 シ・ジ・ねぐら・とや  土部 shí
解字 「土(つち)+時(とき)」の会意形声。土の塀で囲った鶏舎。放し飼いの鶏が夕方になると、その時に寝にかえるところを言う。
意味 (1)ねぐら(塒)。鳥の寝る所。とや(鳥屋)。木の枝の鳥のねぐらにも言う。「塒鳥ねぐらどり」(ねぐらにいる鳥)「鶯(うぐいす)の塒(ねぐら)の枝に手なそ触れそも」(拾遺和歌集・雑春)「塒鶏シケイ」(ねぐらの鶏)「棲塒セイジ」(ねぐら) (2)自分の寝るところ。

形声字
 トク・ドク  牛部 tè
解字 「牛(うし)+寺(トク・ドク)」の形声。トク・ドクは独ドク・トク(はなれオス。独を参照)に通じ、これに牛のついた特は、牛のオスをいう。オスの牛は特に抜きんでて力がある意。
意味 (1)おす。特に牛のオスをいう。「特牛ことい・こってい・こって」(オスの牛)(2)とくに(特に)。ことに。とりわけ。抜きんでる。「特色トクショク」「特別トクベツ」「特権トッケン
 ジ・シ  田部 zhì・chóu・shì
解字 「田(区画された土地)+寺(ジ)」の形声。後漢の[説文解字]は「天地や五帝の基址(基礎の土台。もとい)の所、祭地。田に従い寺の聲(声)。[右扶風ゆうふふう古代中国の行政区域名]に五畤(=祭壇)有り。好畤コウジ、鄜畤フジ、皆(みな)黃帝の時に祭る。或いは曰(いわ)く、秦の文公が立つ(=建立)也(なり)」とあり、帝王が天地や五帝などを祭る祭壇をいう。
意味 (1)天地や五帝などを祭る祭壇。 (2)[日本]「霊畤レイジ」(①天地の神霊をまつるために築いた祭場。②新天皇が即位後最初に行われる新嘗祭を行う場所を霊畤という)「鳥見(とみ)の霊畤レイジ」(奈良県桜井市の鳥見山にある祭壇。神武天皇が即位した折、橿原の宮に於いて初代天皇として即位されたとき大嘗祭をおこなった場所とされる)

「鳥見(とみ)山の霊畤石碑
<紫色は常用漢字>

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音符「殳シュ」<つえぼこ> と「役エキ」「疫エキ」「股コ」「芟サン」「設セツ」「投トウ」「骰トウ」

2024年04月17日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 シュ  殳部るまた shū

解字 甲骨文字は先が大きくなった棒状のものを持っている形。会意文字では鑿のみや撥ばちなどの意味で用いられている[甲骨文字辞典]。棒はまっすぐもあれば曲がっているのもある。金文は曲がった形の先に短い縦線がつき、これを手でもつ形。[簡明金文詞典]は「兵器。刃の有るものと無いものと両種。刃の有る殳形は長い杆(さお)の上を镸(おお)う」とし槍のような武器と思われ、投トウ(なげる)・木殳(これで一字)シュ(たてぼこ)の原字。殳は部首になる。

曾侯乙墓出土の殳シュ https://tieba.baidu.com/p/3124070592
曾侯乙墓(そうこういつぼ)は中国の湖北省随州市曽都区で発見された戦国時代初期の諸侯の墓。
意味 ほこ(殳)。つえぼこ。やりに似た武器。先端に刃のあるものと、ないものがある。「殳杖シュジョウ」(つえぼこ)「殳書シュショ」(ほこ等の兵器に書きこむ書体)
参考 シュは漢字の右辺に置かれたとき部首「殳ほこづくり・るまた」になる。ただし、左辺にポピュラーな部首(扌・彳・言・月・骨・彳・疒など)が来たとき、その部首が優先される。意味は甲骨文字で用いられた「うつ・たたく・こわす」などになる。常用漢字で7字、約14,600字を収録する『新漢語林』では36字がある。
常用漢字
シュ・ほこ (部首)
オウ・なぐる
カク・から
キ・こわす
ダン・だん
サツ・ころす
殿デン・との
なお、段ダン・殻カク・毀・殿デンは音符にもなる。

イメージ
 「杖ぼこ(やりに似た武器)」(殳・投・骰・役・疫・設・芟) 
 「形声字」(股)
音の変化  シュ:殳  セツ:設  エキ:役・疫  コ:股  サン:芟  トウ:投・骰

杖ぼこ
 トウ・なげる  扌部 tóu
解字 「扌(手)+殳(杖ぼこ)」の会意。杖ぼこを手でなげること。
意味 (1)なげる(投げる)。なげつける。「投下トウカ」「投球トウキュウ」 (2)なげすてる。「投降トウコウ」「投棄トウキ」 (3)いれる。おくる。「投稿トウコウ」「投函トウカン
 トウ・さい  骨部 tóu

モンゴルの羊のくるぶしのさいころ
https://misfitsandheroes.wordpress.com/category/ancient-games/
解字 「骨(ほね)+殳(=投。なげる)」の会意。牛や羊のくるぶしの骨を投げる賭けごとや遊び。上に出た骨の形であらかじめ取り決めをしておいて遊ぶ。のち、立方体に点や数字を刻む形になった。
意味 さい。さいころ。「骰子トウシ・さいころ」(角や象牙などの小さな立方体に数字を記したもので、双六や賭けごとに用いる)「骰戯トウギ」(①サイコロ遊び。②博打ばくち。博奕バクエキ)「骰盤トウバン」(すごろく盤)
 ヤク・エキ  彳部 yì
解字 「彳(ゆく)+殳(杖ぼこ)」の会意。杖ぼこを持って辺地を守りに行く意で「いくさ・兵役」の意味となる。のち、しごと・つとめ・つかう意味にもちいる。
意味 (1)使う。使われる。「使役シエキ」「雑役ザツエキ」 (2)人民に課する労働。「服役フクエキ」「賦役フエキ」 (3)つとめ。仕事上の位置。「役職ヤクショク」「役員ヤクイン」 (4)いくさ。戦争。「戦役センエキ」「軍役グンエキ
 エキ・ヤク  疒部 yì
解字 「疒(やまい)+殳(=役。広範な人を苦しめる戦争)」の会意。広くすばやくひろがり多くの人々を苦しめる病気。後漢の[説文解字]は、「民(たみ)皆(みな)疾(やまい)也(なり)。疒に従い役の省(略す)聲(声)」とする。
意味 流行病。えやみ。「疫病エキビョウ」「検疫ケンエキ」「疫病神ヤクビョウがみ
 セツ・もうける  言部 shè
解字 「言(ことば)+殳(=役。人を使う)」の会意。言葉で人を使ってこしらえさせる。後漢の[説文解字]は「施(つら)ね陳(なら)べる也(なり)。言に従い殳に従う。殳は人を使う也(なり)」とする。
意味 もうける(設ける)。しつらえる。そなえる。「設営セツエイ」「設備セツビ」「設問セツモン
 サン・セン・かる  艸部 shān
解字 「艸(くさ)+殳(杖ぼこ)」の会意。杖ぼこの刃先で草を薙ぎ倒すように刈ること。後漢の[説文解字]は「艸を刈る也(なり)。艸に従い殳に従う」とする。
意味 (1)かる(芟る)。草をかる。「載(すなわ)ち芟(か)り載(すなわ)ち柞(き)る」(詩経「載芟サイサン」) (2)のぞく(芟く)。削除する。(「芟除サンジョ」(刈り除くこと。 比喩的に、悪人、悪弊などを除き去ること)「芟正サンセイ」(取り除いて正(ただ)す) (2)姓。「芟花かりはな・かりか

形声字
 コ・また・もも  月部にく gǔ
解字 「月(からだ)+殳(シュ⇒コ)」の形声。後漢の[説文解字]は「髀(ふともも)也(なり)。肉に従い殳の聲(声)」とし、ふともも(太腿)の意とする。股は、一方のふともも(太腿)の意であり、両ももの間は胯であり、またぐ意は跨で表す。日本では、股(また)と読んで両ももの間の意味でも用いる。  
意味 (1)もも(股)。脚の膝から上の部分。大腿。「太股ふともも」「両股リョウコ」(両もも)「股肱ココウ」(①ももと、うで(ひじ)。手足。②主君の手足となって働く家来。)「股引ももひき・またびき」(両股(もも)まで引きあげる、脚と腰をおおうズボン型下着) (2)[日本]また(股)。両もものあいだ。またぐら。「股間コカン」(またのあいだ。=胯間)「股旅またたび」(旅をしてあるくこと)「二股ふたまた」(もとが一つで末が二つに分かれたもの)
<紫色は常用漢字>

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音符「建ケン」<たつ・たてる>と「健ケン」「腱ケン」「鍵ケン」

2024年04月15日 | 漢字の音符
 ケン・コン・たてる・たつ  廴部 jiàn    


  上は建、下は聿イツ
解字 「聿イツ(ふでをたてる)+廴(のばす)」の会意。聿は筆を手に持つかたちで、筆の原字。廴は行の左半分の彳をさらに横にのばした形で、ながくのびる意。両者を合わせた建は、筆を立ててのばし設計図を引く形。国の設計図を引くときは建国(国をたてる)、建物の設計図の場合は、建築(建物を建てる)、将来の設計図の場合は、設計図を提出して建白(意見を言う)の意となる。
 音符になる場合は、建物をたてる意から「しっかりと立つ」「まっすぐ立てる」イメージとなる。
意味 (1)たてる(建てる)。たつ(建つ)。おこす。創立する。「建国ケンコク」「封建ホウケン」(封土を分けて諸侯を建てる意。天子が公領以外の土地を諸侯に分け与え、領有統治させること。<広辞苑>)「封建時代ホウケンジダイ」(封建制度が国家・社会のしくみである時代) (2)建物をつくる。たてる(建てる)。「建築ケンチク」「建立コンリュウ」 (3)意見を申し立てる。「建議ケンギ」「建白ケンパク」「建策ケンサク

イメージ 
 「しっかりと立つ」
(建・健・腱)
 「まっすぐ立てる」(鍵)
音の変化  ケン:建・健・腱・鍵

しっかりと立つ
 ケン・すこやか  イ部 jiàn
解字 「イ(人)+建(しっかりと立つ)」の会意形声。人が身体をしっかりと立てて動くこと。
意味 (2)すこやか(健やか)。身体が丈夫である。「健康ケンコウ」(心身が健やかで、康(やす)らかなこと)「健在ケンザイ」 (2)つよい。力がつよい。「剛健ゴウケン」(たくましいこと) (3)程度がはなはだしい。「健忘症ケンボウショウ」「健啖家ケンタンカ」(おお食いする人)
 ケン  月部にく jiàn
解字 「月(にく)+建(=健。つよい)」の会意。筋肉が骨と結びつくところの強靭な組織。

「関節と腱」(「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」より)
意味 筋肉のつけね。筋肉を骨と結びつける組織。「アキレス腱」(足の踵(かかと)の腱のこと。ギリシャ神話の英雄アキレスの唯一の弱点であったとされることから)「踵骨腱ショウコツケン」(アキレス腱)「腱鞘炎ケンショウエン」(腱を包んでいる腱鞘の炎症)

まっすぐ立てる
 ケン・かぎ  金部 jiàn

錠前と鍵(「民藝朋友」より)
解字 「金(金属)+建(まっすぐ立てる)」の会意形声。錠前につき立てる金具のかぎ(鍵)。
意味 (1)かぎ(鍵)。錠に挿しこむ金具。転じて、貴重な手掛かり。「鍵穴かぎあな」「鍵戸ケンコ」(戸締り)「鍵鑰ケンヤク」(鍵も鑰も、かぎの意)「関鍵カンケン」(①かんぬき(=閂)とかぎ。②物事の最も大事なところ) (2)[俗]けん(鍵)。ピアノなどの楽器で、指で押す小さな盤。「鍵盤ケンバン
<紫色は常用漢字>

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音符「䜌 ラン・レン」<つながる・みだれる>と「恋レン」「蛮バン」「変ヘン」「湾ワン」

2024年04月13日 | 漢字の音符
  改訂しました。
䜌[亦] ラン・レン・バン  言部 luán               

解字 金文から現代字まで「糸+言+糸」の会意。言(ことば)が糸に挟まれた形で、言葉が糸でつながる形。また、この字の発音ランは「乱ラン」に通じ、みだれる意味もある。新字体の一部になるとき、䜌⇒亦と変化する。※亦エキ(同じものが両方にある)とは別字。音符イメージは「つながる」「みだれる」
意味 つながる。みだれる。おさめる。

イメージ 
  言葉で「つながる」(恋・鸞・巒・孿・鑾
 「みだれる」(変・蛮)
 「形声字」・湾・
音の変化  ラン:鸞・鑾・欒・巒  レン:恋・孿  バン:蛮  ヘン:変  ワン:・湾

つながる
 レン・こう・こい・こいしい  心部 liàn
解字 旧字はで「心(こころ)+(つながる)」の会意形声。相手と心がつながること。新字体は⇒恋に変化。
意味 こい(恋)。こいしい(恋しい)。こう(恋う)。「初恋はつこい」「恋愛レンアイ」「悲恋ヒレン」「失恋シツレン
 ラン  鳥部 luán
解字 「鳥(とり)+(神とつながる)」の会意形声。神とつながる鳥。神格のある鳥。
 
鸞鳥ランチョウ(中国ネット「凤育九雏・个个雷同」より)
意味 (1)らん()。神鳥の名。ニワトリに似て羽の色は赤色に五色を交え、鳴く声は五音(低音から高音まで)を出すといわれる中国の想像上の鳥。「鸞鳥ランチョウ」 (2)すず。鸞鳥の鳴き声がよく響くことから。「鸞刀ラントウ」(柄頭の輪に鈴を付けた刀) (3)天子のものに関する語。「鸞殿ランデン」(天子の御殿) (4)人名。「親鸞シンラン」(鎌倉初期の僧。浄土真宗の開祖)
 ラン・すず  金部 luán
解字 「金(金属)+(ラン)」の形声。ランはランに通じる。鸞鳥の鳴き声がよく響くことからランに「すず」の意味があり、金をつけたは、すずの意を表す。
意味 (1)すず。天子の車馬や旗にもちいる。「鑾音ランオン鑾声ランセイ」(すずの音)「鑾刀ラントウ」(柄頭の輪に鈴を付けた刀) (2)天子の車駕。「鑾駕ランガ」(天子の車駕)「鑾輿ランヨ」(天子の輿こし。輿は人がかつぐ乗り物)
 ラン・やまなみ・みね  山部 luán
解字 「山(やま)+(つながる)」の会意形声。山がつながって続くこと。やまなみ。
意味 (1)やまなみ。みね。やま。「巒嶂ランショウ」(そそり立つ峰)「巒壑ランガク」(山と谷)「巒嵐ランラン」(山の嵐)
孿 レン・ふたご  子部 luán
解字 「子(こ)+(つながる)」の会意形声。子がつながって生まれる意で。ふたごをいう。
意味 ふたご。「孿子レンシ」(ふたご)「孿生レンセイ」(双生)

みだれる
 ヘン・かわる・かえる  夊部 biàn
解字 旧字はで「攵(うつ)+(みだれる)」の会意形声。乱れている状態を打ちすえて変えること。新字体では、攵⇒夂に変化し、⇒変になった。
意味 (1)かわる(変わる)。かえる(変える)。うつりかわる。「変化ヘンカ」「変更ヘンコウ」 (2)普通でない。「異変イヘン」「変則ヘンソク」「事変ジヘン」(天災その他の変わった事)
 バン・えびす  虫部 mán
解字 旧字はで「虫(へび)+(みだれる)」の会意形声。(みだれる)は、南方未開民族の意味に仮借カシャ(当て字)され使われていたが、のち、南方未開民を蛇種とする考えから、虫(へび)をつけたの字ができた。古代中国では周囲の未開民を、さげすんだ言葉で表現した。新字体は蛮に変化。
意味 (1)えびす(蛮)。中国南方の未開民族。「蛮習バンシュウ」「蛮夷バンイ」(蛮は南方、夷は東方の異民族)「南蛮ナンバン」(中国では南方の民族。日本では南の海から船で来た西欧人や品物を言った)(2)あらあらしい。「野蛮ヤバン」「蛮行バンコウ」「蛮勇バンユウ」(向う見ずの勇気)
 レン・つる  手部 luán
解字 「手(て)+(みだれる)」の会意形声。手がひきつってふるえること。
意味 (1)つる(る)。ひきつる。「痙攣ケイレン」(筋肉がひきつる)「攣縮レンシュク」(収縮して、すぐもどること) (2)かがまる。手足がのびない。「攣曲レンキョク」 (3)(恋レンに通じ)したう。ひく。「牽攣乖隔ケンレンカイカク」(牽攣はお互いに心が惹かれあうこと。乖隔は遠く離れていること。心はお互いに惹かれあっていても、遠くに離れていること。)

形声字
 ワン・まがる  弓部 wān
解字 「弓(ゆみ)+(ワン)」の形声。後漢の[説文解字]は「弓を持して矢をひく也(なり)」とし、弓をひく意。また、引いた弓が曲がるさまをいう。
意味 (1)まがる(る)。「彎曲ワンキョク」「ワンゲツ」(弓張り月)「彎蛾ワンガ」(弓なりの眉まゆ。蛾はここで眉の意) (2)弓をひく。「彎弓ワンキュウ」(弓をひく)
 ワン  氵部 wān  
解字 旧字はで「氵(みず)+(まがる)」の会意形声。は水辺が弓のように曲がった入り江をいう。新字体は湾に変化。
意味 (1)入り江。入り海。「湾岸ワンガン」「伊勢湾イセワン」(地名)「湾口ワンコウ」(湾の入り口) (2)まがる。「湾曲ワンキョク
 ラン・まどか  木部 luán
解字 「木(き)+(ラン)」の形声。ランはラン(さえぎる)に通じ、これに木のついたは、葉に虫をさえぎる防虫効果をもつオウチ()をいう。また、 ラン(まるい・まどか)に通じ、まどか・まるい意となる。
意味 (1)おうち()。センダン科の落葉高木で街路樹、庭木などに植樹される。葉は強い除虫効果をもつ。 (2)まどか。まるやか。人があつまる。「団欒ダンラン」(集まってなごやかに楽しむ) (3)「朱欒シュラン」は、ザボン。ミカン科の常緑樹。花は白色5弁。果実は大きく黄色、果皮を砂糖漬けにする。
<紫色は常用漢字>

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音符「孚フ」<幼い子を抱き上げる>と「浮フ」「孵フ」「郛フ」「艀フ」「桴フ」「蜉フ」「俘フ」「乳ニュウ」「殍ヒョウ」

2024年04月11日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 フ  子部 fú           

解字 甲骨文第一字は、両手で子を抱え上げている形。第二字は両手⇒片手になった。金文第一字は上からの手が横についた形。第二字は手が頭の上についた形になり、これが篆文に続いて現代字に受け継がれている。意味は、幼い子に手をさしのべ、抱え上げるさま。抱くようにして大切に育てること。はぐくむ、養い育てる意がある。また、子どもを手でつかまえる意もある。新字体に含まれるとき、孚⇒浮の右辺に変化する。 
意味 (1)はぐくむ。「孚育フイク」(大切に育てる) (2)とらえる。とりこ。(=俘) (3)[仮借カシャ(当て字)]まこと。「孚信フシン」(まこと。真実)

イメージ 
 手をさしのべ子を「だく・だきかかえる」(孚・乳・孵・殍・郛)
 抱き上げる意から「上にあがる・うく」(浮・艀・蜉・桴)
 子を「とらえる」(俘)
音の変化  フ:孚・孵・郛・浮・艀・桴・蜉・俘  ニュウ:乳  ヒョウ:殍

だく・たきかかえる
 ニュウ・ちち・ち  乚部おつ rǔ

解字 甲骨文は、赤子を抱いた女が授乳している形。篆文は、「乚(孔コウの略体:赤子が乳房を吸う)+孚(だきかかえる)」 の会意になった。子を抱きかかえ乳首を含ませると出てくるちち。
意味 (1)ちち(乳)。ちちしる。「牛乳ギュウニュウ」「母乳ボニュウ」 (2)ちちのように白い。「乳液ニュウエキ」「豆乳トウニュウ」 (3)ちぶさ(乳房)。 (4)幼い。小さい。「乳児ニュウジ
 フ・かえる・かえす  子部 fū
解字 「卵(たまご)+孚(だく)」の会意形声。卵をだいて、ひながかえること。卵という部首がないので、子が部首になっている。
意味 かえる(孵る)。卵がかえる。かえす(孵す)。「孵化フカ」「孵卵器フランキ
 ヒョウ・フ・うえじに  歹部 piǎo
解字 「歹(死ぬ)+孚(だきかかえる)」の会意形声。だきかかえた子が飢え死にすること。
意味 うえじに(殍)。飢え死にする。空腹のために死ぬ。「殍餓ヒョウガ・フガ」(うえじにする)「殍殣ヒョウキン」(殍も殣も、飢え死にの意) 
 フ・くるわ  阝部おおざと fú
解字 「阝(囲いをめぐらした、むら・まち)+孚(だきかかえる)」の会意形声。阝おおざとは邑ユウ(人が囲いの中に集まって住む)が変化した部首。そこに孚(だきかかえる)がついた郛は、囲いの中に集まって住む地区を抱きかかえるように囲んでいる外壁すなわち郭(くるわ)を表す。
意味 (1)くるわ(郛)。人が集住する地域の外囲い。「郛邑フユウ」(邑の外囲い。外城)「郛郭フカク」(郛も郭も、くるわの意) (2)防壁。防ぎ保つことのたとえ。「郛郭周匝フカクシュウソウ」(くるわが周囲を匝(めぐ)る。守りが固い) (3)書名。「説郛セップ」(元末明初の陶宗儀による漢籍叢書)

上にあがる
 フ・うく・うかぶ・うかべる・うかれる  氵部 fú
解字 「氵(水)+孚(上にあがる)」 の会意形声。水にうくこと。新字体は浮に変化。
意味 (1)うく(浮く)。うかぶ(浮かぶ)。「浮上フジョウ」「浮雲うきぐも」 (2)はかない。よりどころのない。うかれる(浮かれる)。「浮説フセツ」「浮世うきよ
 フ・はしけ  舟部 fú
解字 「舟(こぶね)+孚(=浮。うく)」 の会意形声。浮いて狭い範囲を行き来する小舟。河川や水深の浅い海で貨物を運ぶために作られた船。
意味 はしけ(艀)。波止場と本船のあいだを往来して荷物などを運ぶ小舟。「艀船はしけぶね
 フ・いかだ  木部 fú
解字 「木(き)+孚(=浮。うく)」の会意形声。木を組み縄で結んだイカダ。また、枹(鼓のばち)と通用して、ばちの意味に用いる。
意味 (1)いかだ(桴)。小さいものを桴といい、大きいものを筏という。「桴槎フサ」(桴も槎も、いかだの意)「桴筏フバツ」(桴も筏も、いかだの意)「編桴ヘンプ」(いかだを組む)「桴人フジン」(いかだ乗り。また、船夫) (2)ばち(桴)。「桴鼓フコ
 フ 虫部 fú

カゲロウ(ウィキペディアより)
解字 「虫(むし)+孚(=浮。うく)」 の会意形声。空中を浮いてただよう虫。
意味 「蜉蝣かげろう」に使われる字。蜻蛉とも書く。蜉蝣とは、トンボより小さく弱々しい虫。成虫の寿命は数時間と短い。「蜉蝣かげろうの一期イチゴ」(人生がカゲロウのように短くはかないこと)

とらえる
 フ・とりこ  イ部 fú
解字 「イ(ひと)+孚(とらえる)」 の会意形声。捕えられた人。
意味 とりこ(俘)。戦争でいけどりにした敵。「俘虜フリョ・とりこ」「俘囚フシュウ」(とりこ)
<紫色は常用漢字>

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