今、忖度という言葉がマスコミをにぎわせています。「他人の心中をおしはかること」という意味ですが、この漢字はどのような原理でできているのでしょうか? 解字してみました。
忖度の忖ソンは「忄(こころ)+寸」からできており、発音の忖ソンは寸の発音であるスン・ソンに由来しています。では寸とはどのような漢字なのでしょうか。
寸 スン・ソン <①ひじ。②親指の幅>
寸 スン・ソン 寸部
親指の第一関節の幅が1寸
解字 甲骨文字は、三本ゆびで表した手の下方の湾曲する部分に短い曲線をつけ、ひじを表わした指示文字で、肘(ひじ)の原字です。寸は、もと肘を意味していました[甲骨文字小字典]。篆文テンブンは 「三本指の手+-印」 の形になり、手の親指一本分の幅の意味に変化しました。指の幅は人によってまちまちです。測ってみたら私の親指の幅は2.5㎝でした。中国の周代で1寸は2.25㎝だったそうです。のち、時の政権によって公定尺が決められました。日本では1寸は約3㎝で、その10倍が1尺です。
寸は長さの意味のほか、親指一本の幅から、すこし・わずかの意ともなります。また、親指を当てて寸法をはかる意味があります。なお、甲骨文字の「ひじ」の意味は月(にく・からだ)をつけた肘ひじ・チュウの字になっています。
意味 (1)長さの単位。尺の十分の一。日本で1寸は約3㎝。周代では、2.25㎝。「五寸ゴスン」(日本で約15㎝) (2)長さ。「寸法スンポウ」(各部分の長さ。また、基準) (3)すこし。わずか。「寸暇スンカ」(わずかのひま)「一寸ちょっと」 (4)漢方で脈をみる部位のひとつ。手首から指1本分の脈所。「寸口スンコウ」(手首から親指1本下の脈拍をみる所) (5)(親指を当てて)はかる。寸法をはかる。
では忖度の忖はどんな字なのでしょうか?
忖 ソン・はかる 忄部
解字 「忄(こころ)+寸(はかる)」の会意形声。寸は、親指1本分の幅ですから、親指を当てて(長さなどを)はかる意味にもなります。忖の字では、はかるのが 忄(こころ)ですから、相手の心をはかる・おしはかる意となります。この字で忄(こころ)と寸(はかる)の両方の意味が合わさっていますので会意です。また、発音は寸スン・ソンのソンを受け継いでいますので形声文字となります。
意味 はかる(忖る)。おしはかる。思いはかる。「忖度ソンタク」(他人の心をおしはかる)「忖量ソンリョウ」(他人の心をおもいはかる=忖度)(忖測ソンソク」 (他人の心をおもいはかる=忖度)
このように忖の次にくる字は、すべて「はかる」意味の漢字が付いています。
次に度です。
度は、タクという発音より、温度・湿度など目盛りの単位や、ものさしの意味でよく使われますので、みなさんにも馴染みの深い字です。ところが、この字のなりたちを字典で調べると、ほとんどが、「庶の省略形+又(て)」となっていて、その説明を読んでも、なぜ物差しや目盛りの意味になるのか、さっぱり分かりません。
多くの字典に目を通すうち、「字統」(白川静著)が、「席(しきもの)の省略形+又(て)」としているのを見て、これぞ度の本質を言い当てていると思いました。
その説を紹介します。
度 ド <敷物を広げて大きさを測る>
度 ド・ト・タク・たび 广部
解字 度は「席の略体+又(手)」の会意。今では席というとイス席を思い浮かべますが、本来、席は敷物を表していました。席巻セッケンというのは、敷き物を巻き上げるように土地を攻めとることを言います。その席の略体に又(て)のついた度は手で敷物をひろげること。敷物は一枚の長さ・幅が決まっており、敷物を何枚も敷くことによって、長さや広さが分かるため「はかる」「ものさし」「めもり」の意となります。のち、きまり・のりの意味ともなりました。
意味 Ⅰ.ド・トの発音。 (1)ものさし。めもり。「尺度シャクド」「緯度イド」 (2)ほどあい。ていど。「速度ソクド」「程度テイド」 (3)たび(度)。回数。「毎度マイド」「都度ツド」 (4)きまり。のり。「制度セイド」「法度ハット」(おきて。禁令)
Ⅱ.タクの発音。 (1)はかる。おしはかる。「忖度ソンタク」
このように度は、ここでタクと読みますので「はかる」意となります。忖度は両方の字とも「はかる」であり、二つ合わせて相手の心をおしはかる意となります。しかし、忄(こころ)のついた忖が「相手の心をおしはかる」意で、メインの字であることはいうまでもありません。
今年の流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」
ことし話題になった言葉に贈られる「2017ユーキャン新語・流行語大賞」が2017年12月1日、発表され、年間大賞にはスマートフォンなどで写真を見栄えよく撮影する「インスタ映え」と、国有地の払い下げなどをきっかけにさまざまな場面で使われた「忖度(そんたく)」が選ばれました。(12月2日追記)
忖度の忖ソンは「忄(こころ)+寸」からできており、発音の忖ソンは寸の発音であるスン・ソンに由来しています。では寸とはどのような漢字なのでしょうか。
寸 スン・ソン <①ひじ。②親指の幅>
寸 スン・ソン 寸部
親指の第一関節の幅が1寸
解字 甲骨文字は、三本ゆびで表した手の下方の湾曲する部分に短い曲線をつけ、ひじを表わした指示文字で、肘(ひじ)の原字です。寸は、もと肘を意味していました[甲骨文字小字典]。篆文テンブンは 「三本指の手+-印」 の形になり、手の親指一本分の幅の意味に変化しました。指の幅は人によってまちまちです。測ってみたら私の親指の幅は2.5㎝でした。中国の周代で1寸は2.25㎝だったそうです。のち、時の政権によって公定尺が決められました。日本では1寸は約3㎝で、その10倍が1尺です。
寸は長さの意味のほか、親指一本の幅から、すこし・わずかの意ともなります。また、親指を当てて寸法をはかる意味があります。なお、甲骨文字の「ひじ」の意味は月(にく・からだ)をつけた肘ひじ・チュウの字になっています。
意味 (1)長さの単位。尺の十分の一。日本で1寸は約3㎝。周代では、2.25㎝。「五寸ゴスン」(日本で約15㎝) (2)長さ。「寸法スンポウ」(各部分の長さ。また、基準) (3)すこし。わずか。「寸暇スンカ」(わずかのひま)「一寸ちょっと」 (4)漢方で脈をみる部位のひとつ。手首から指1本分の脈所。「寸口スンコウ」(手首から親指1本下の脈拍をみる所) (5)(親指を当てて)はかる。寸法をはかる。
では忖度の忖はどんな字なのでしょうか?
忖 ソン・はかる 忄部
解字 「忄(こころ)+寸(はかる)」の会意形声。寸は、親指1本分の幅ですから、親指を当てて(長さなどを)はかる意味にもなります。忖の字では、はかるのが 忄(こころ)ですから、相手の心をはかる・おしはかる意となります。この字で忄(こころ)と寸(はかる)の両方の意味が合わさっていますので会意です。また、発音は寸スン・ソンのソンを受け継いでいますので形声文字となります。
意味 はかる(忖る)。おしはかる。思いはかる。「忖度ソンタク」(他人の心をおしはかる)「忖量ソンリョウ」(他人の心をおもいはかる=忖度)(忖測ソンソク」 (他人の心をおもいはかる=忖度)
このように忖の次にくる字は、すべて「はかる」意味の漢字が付いています。
次に度です。
度は、タクという発音より、温度・湿度など目盛りの単位や、ものさしの意味でよく使われますので、みなさんにも馴染みの深い字です。ところが、この字のなりたちを字典で調べると、ほとんどが、「庶の省略形+又(て)」となっていて、その説明を読んでも、なぜ物差しや目盛りの意味になるのか、さっぱり分かりません。
多くの字典に目を通すうち、「字統」(白川静著)が、「席(しきもの)の省略形+又(て)」としているのを見て、これぞ度の本質を言い当てていると思いました。
その説を紹介します。
度 ド <敷物を広げて大きさを測る>
度 ド・ト・タク・たび 广部
解字 度は「席の略体+又(手)」の会意。今では席というとイス席を思い浮かべますが、本来、席は敷物を表していました。席巻セッケンというのは、敷き物を巻き上げるように土地を攻めとることを言います。その席の略体に又(て)のついた度は手で敷物をひろげること。敷物は一枚の長さ・幅が決まっており、敷物を何枚も敷くことによって、長さや広さが分かるため「はかる」「ものさし」「めもり」の意となります。のち、きまり・のりの意味ともなりました。
意味 Ⅰ.ド・トの発音。 (1)ものさし。めもり。「尺度シャクド」「緯度イド」 (2)ほどあい。ていど。「速度ソクド」「程度テイド」 (3)たび(度)。回数。「毎度マイド」「都度ツド」 (4)きまり。のり。「制度セイド」「法度ハット」(おきて。禁令)
Ⅱ.タクの発音。 (1)はかる。おしはかる。「忖度ソンタク」
このように度は、ここでタクと読みますので「はかる」意となります。忖度は両方の字とも「はかる」であり、二つ合わせて相手の心をおしはかる意となります。しかし、忄(こころ)のついた忖が「相手の心をおしはかる」意で、メインの字であることはいうまでもありません。
今年の流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」
ことし話題になった言葉に贈られる「2017ユーキャン新語・流行語大賞」が2017年12月1日、発表され、年間大賞にはスマートフォンなどで写真を見栄えよく撮影する「インスタ映え」と、国有地の払い下げなどをきっかけにさまざまな場面で使われた「忖度(そんたく)」が選ばれました。(12月2日追記)