漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「易エキ」 <かわる> と 「賜シ」「錫シャク」「剔テキ」

2023年06月21日 | 漢字の音符
 セキ・鶍いすか、を追加しました。 
 エキ・イ・かえる・かわる・やさしい・やすい  日部

解字 甲骨文は雲間の太陽から光(彡)が差す形。曲線が雲、半円が太陽、彡が日光で、穏やかな天候、および、曇りの意の天候用語[甲骨文字小事典]。金文第一字もほぼ同じ形。第二字は雲のかたちがS状に湾曲し太陽に点が描かれた。篆文から日(太陽)が上に独立した易の形となり現代にいたる。意味は雲間からでる太陽の光が変化すること。かわる・かえる意となる。また、雲の状況から天気をうらなうことから、うらないの意となった。やさしい意は、仮借カシャ(当て字)の用法。
意味 (1)かえる(易える)。かわる(易わる)。あらためる。とりかえる。「改易カイエキ」(官職をやめさせて他の人に替える。)「貿易ボウエキ」(外国と品物をとりかえて通貨で決済する取引)「易姓エキセイ」(統治者の姓が易(かわ)ること。王朝の交代。)「易姓革命」(革命とは天命(天の命令)が革(あらた)まること。これに易姓がつき、天命で王朝の姓が易(かわ)ること。王朝の交代に対する中国の伝統的思想)(2)占い。筮竹ゼイチクなどによる占い。「易者エキシャ」「易占エキセン」(筮竹ゼイチクなどを使う易の占い) (3)やさしい(易しい)。やすい(易い)。「安易アンイ」「容易ヨウイ

イメージ 
 「かわる」
(易・蜴・錫・鯣・裼・剔・鶍)
 「同体異字」(賜)
音の変化  エキ:易・蜴・鯣  シ:賜  シャク:錫  セキ:裼  テキ:剔  いすか:鶍

かわる・かえる
 エキ  虫部
解字 「虫(小動物)+易(かえる)」の会意形声。体の色を変える能力を持っているトカゲ。
意味 「蜥蜴とかげ・セキエキ」を表す字。身体の色を変えたり、尻尾を切り離して「虫+析(別々にはなす)」逃げるトカゲ。
 シャク・セキ・すず  金部
解字 「金(金属)+易(かわる)」の会意形声。適当な硬さがあり、加工(かわる)も容易な金属。
意味 Ⅰ. すず(錫)。銀白色で光沢をもち、展性に富む金属。鉛に似ているがやや硬い。「錫箔すずはく」(錫を紙状に薄くのばしたもの)「鉛錫エンシャク」(鉛と錫) Ⅱ. シャク(錫)。「錫杖シャクジョウ」(僧侶・修験者の杖。名称の由来は、頭部を銅や鉄で作り数個の鐶を掛け、その音がシャク・シャクと鳴るからとされる)
 エキ・するめ  魚部
解字 「魚(さかな)+易(かわる)」の会意形声。日本では、イカを切りひろげて干したスルメをいう。イカからスルメにかわった魚(海にすむ生き物)の意。中国では古書に魚の一種とある字。
意味 [国]するめ(鯣)。イカの胴を縦に切り内臓をとり去って天日に干したもの。「鯣烏賊するめいか」(スルメや刺身・塩辛にするイカ)
 セキ・テイ・はだぬぐ  衤部
解字 「衤(ころも)+易(かえる)」の会意形声。上衣を易えるため肌(はだ)ぬぐこと。はだぬぐ・かた(肩)ぬぐ意。発音はエキ⇒セキに変化。また、テイの発音でむつき(産着)の意味になる。
意味 (1)はだぬぐ(裼ぐ)。かたぬぐ。上着をぬいで肩をだす。「袒裼タンセキ」(袒も裼も、はだぬぐ意) (2)ひとえの皮の上衣。「裼衣セキイ」(皮の上衣) (3)むつき。ねまき。夜着。「之(これ)に裼衣テイイを衣(き)せしむ(「詩経・小雅」)
 テキ・テイ・えぐる  刂部
解字 「刂(かたな)+易(かえる)」の会意形声。[説文解字]は「骨を解(わけ)る也(なり)」とする。本義は刀で骨と肉を解(わけ)て、元の骨付き肉を易(かえる)こと。意味は、骨と肉を切りわけることで、そぐ意だが、骨の形によっては「えぐりとる」作業があり、この意味が主に用いられる。
意味 (1)えぐる(剔る)。えぐりとる。くじる。「剔出テキシュツ」(えぐり出す)「剔抉テッケツ」(えぐりだす。剔も抉も、えぐる意)「刳剔コテキ」(えぐりだす。刳も剔も、えぐる意) (2)そぐ。そる。「剔去テッキョ」(そいで取り除く)
<国字> いすか  鳥部

イスカ(鶍)(ウィキペディア「イスカ」より)
解字 「鳥(とり)+易(かわる)」の会意。嘴(くちばし)が上下で方向がかわっている鳥。
意味 (1)鶍(いすか)。アトリ科の鳥。上下のくちばしが湾曲してくいちがっている。スズメよりやや大きく、両くちばしは褐色で湾曲交差し、松など針葉樹の実をついばむのに適するという。渡り鳥で、日本には秋の末、北部地方に来る。(ウィキペディアより) (2)物事がくいちがって、思いどおりにならないたとえ。「鶍いすかの嘴(はし)の食い違い」

同体異字
 シ・たまう・たまわる・たまもの  貝部            
 
解字 金文第一字は、酒器から杯に酒を注ぐ形で、それぞれの下に手が描かれている。目上の者が酒をたまう意。第二字は、酒器だけを描いたもので、たまう意。酒器の取っ手周辺と中身の酒をしめす彡が第三字で、「酒器の変化した形」になり、これに貝(財貨)がついて、目上から財貨をたまう意となった。篆文は金文第三字の酒器が変化した形⇒易となり、「貝(財貨)+易(たまう)」の賜となった。賜とは、目上より下の者に財貨等を与えること。目下の者は、あたえられる(たまわる)意となる。この字の易は、酒器の部分象形であり、交易の易とは異なる字である。
意味 (1)たまう(賜う)。目上の人が目下の者へ物を与える。「下賜カシ」(高貴の人が下の者に物を与えること)「賜杯シハイ」(臣下に杯をあたえること。天皇・皇族から競技の勝者に贈られる優勝杯) (2)たまわる(賜る)。目上の人から物をいただく。「恩賜オンシ」(恩も賜も、たまわる意。天皇や主君から物をたまわること) (3)たまもの(賜)。いただきもの。「賜物たまもの=賜」(たまわった物。他者から受けた恩恵の結果)
<紫色は常用漢字>

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