漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「朋ホウ」 <とも> 「棚ホウ」「鵬ホウ」「崩ホウ」「硼ホウ」

2023年10月30日 | 漢字の音符
 ホウ・とも  月部

解字 甲骨文字は子安貝の貝殻に紐を通して束にした状態を二つ繋(つな)いで表している。殷代や西周代には子安貝が貴重品とされており、貝朋(貝の束)が貴重品とされ祭祀の供物や賜与物(身分の高い者が下の者に与える品)として用いられた[甲骨文字辞典]。金文も同じ形で貝の貨幣の単位として用いられ、一朋は十貝(つまり五貝が二つ)とされ「賜五朋(五朋を賜(たま)う)などの記載がある。また金文には人と朋が結びついた倗ホウという字があり、この字が同門や同道者の間柄や、相互の尊称で用いられたので、朋の字も金文で「朋友ホウユウ」(ともだち。友人)として使われた。字形は篆文で「弓のような形+三つの束」となり、さらに隷書(漢代)で大きく変化し、現代字は「月+月」の朋となった。
意味 (1)たから。貨幣に用いた一組の貝。「貝朋カイホウ」(一組の貝貨) (2)とも(朋)。ともだち。なかま。「朋友ホウユウ」「同朋ドウホウ」「朋輩ホウハイ」 
覚え方 「からだ()と、からだ()を寄せ合えば、(とも)だち。

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 貝の束が「ならぶ」(朋・棚)  
 「形声字」(鵬・崩・硼)  
音の変化  ホウ:朋・棚・鵬・崩・硼

ならぶ
 ホウ・たな  木部
解字 「木(き)+朋(ならぶ)」の会意形声。木の棒や角材をタテ・ヨコにならべて立体形にしたもの。古くは木や竹を組んだ簡単な小屋組みを言い、上に蓆(むしろ)やゴザなどで覆って日除けにした。葡萄棚(ぶどうだな)などは日除けを省いたかたちである。のち、物をのせるため横木を板にしたものが主流となり、現在はスチール製の棚も多い。

「夕顔棚納涼図」(東京国立博物館蔵) ②「棚機」(「武蔵屋・着物豆知識」より)
意味 (1)木の棒や角材をタテ・ヨコにならべて立体形にしたもの。「葡萄棚ぶどうだな」(葡萄の枝を這わせるための棚)「夕顔棚ゆうがおだな」(夕顔を這わせた棚)「涼棚リョウホウ」(暑さを避け涼むために覆いをのせた棚)「棚機たなばた」(木を組み合わせた機織り機) (2)たな(棚)。物をのせるため板を並べてかけ渡したもの。「棚卸たなおろし」(在庫の商品を棚から卸して点検し評価すること。年の決まった時期に行う)「棚上げ」(①商品を棚に上げたままにする、②解決を先にのばす)「本棚ほんだな」「戸棚とだな」(前に戸がある収容棚)「食器戸棚ショッキとだな

形声字
 ホウ・おおとり  鳥部
解字 「鳥(とり)+朋(ホウ)」の形声。ホウは鳳ホウに通じる。鳳は風の神である瑞鳥で、これに鳥のついた鵬も、鳳ホウ(おおとり)のこと。
意味 おおとり(鵬)。古代中国の想像上の巨大な鳥。大きさは三千里、一度に九万里を飛ぶ。「鵬程ホウテイ」(鵬が飛ぶ遠くはるかな道のり)「鵬翼ホウヨク」(鵬のつばさ。転じて、飛行機)
 ホウ・くずれる・くずす  山部
解字 「山(やま)+朋(ホウ)」の形声。ホウは鳳ホウに通じる。鳳は風の神である瑞鳥で、この鳥の羽ばたきで大風が起きる。崩は、大風によって山がくずれる意。[説文解字]は「山壊(こわ)れる也(なり)。山に従い朋の聲(声)」とする。
意味 (1)くずれる(崩れる)。くずす(崩す)。「崩壊ホウカイ」「崩落ホウラク」 (2)ほうずる(崩ずる)。天子・天皇が死ぬ。「崩御ホウギョ
 ホウ  石部
解字 「石(鉱物)+朋(ホウ)」の形声。ホウという名の鉱物。ホウ素を表す。
意味 ほうそ(硼素)。原子番号5の非金属元素。元素記号B。高融点かつ高沸点な硬くて脆い固体。「硼砂ホウサ」(硼素を含む鉱石。釉薬やガラスの原料となる)「硼酸ホウサン」(無色・無臭の硼素化合物。結晶で温水に溶解する。うがい薬などに用い、ガラス・顔料などの原料となる)
<紫色は常用漢字>

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音符「喬キョウ」<高くまがる>と「橋キョウ」「僑キョウ」「矯キョウ」「蕎キョウ」「驕キョウ」「轎キョウ」「矯キョウ」

2023年10月28日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 キョウ・たかい  口部         

解字 金文は、高い建物の屋根に曲がったポール状の飾りがついたかたち。上部が曲線をなして高いこと。篆文は、「夭(しなやかに曲がる)+高の略体」の会意に変化し、現代字に続いている。たかい意のほか、同音の驕キョウに通じ、おごる意がある。なお、音符として用いられるとき、「高くまがる」「高い」「まがる」イメージがある。
意味 (1)たかい(喬い)。そびえる。「喬木キョウボク」 (2)おごる。たかぶる。(=驕)

イメージ 
 「高く曲がる」
(橋・僑・嬌・蕎) 
 「高い」(喬・驕・轎・蹻) 
 「曲がる」(矯)
音の変化  キョウ:喬・橋・僑・嬌・蕎・驕・轎・矯

高く曲がる
 キョウ・はし  木部
 
かめゐど天神たいこはし(「浮世絵のアダチ版画」より)
解字 「木(き)+喬(高く曲がる)」の会意形声。川にかかる木製のアーチ型の橋。水路に架かる橋は、船の通行に支障がないよう中央が高く曲がるアーチ型をしていた。
意味 はし(橋)。「橋梁キョウリョウ」(大きな橋。架け橋)「橋桁はしげた」(橋の杭の上に渡して架ける柱)「舟橋ふなはし」「浮橋うきはし
 キョウ  イ部
解字「イ(人)+喬(=橋。はし)」の会意形声。橋を渡って諸国を巡ったり、旅先にある人をいう。
意味 (1)かりずまい。たびずまい。「僑居キョウキョ」(旅ずまい)「僑商キョウショウ」(旅あきんど) (2)故郷を離れて外国に住む人。「華僑カキョウ」(中国本土から海外に移住した中国人)「日僑ニッキョウ」(海外に移住した日本人)
 キョウ・なまめかしい  女部
解字 「女(おんな)+喬(高くしなやか)」の会意形声。背が高くなよなよとした女性。
意味 (1)なまめかしい(嬌かしい)。あでやかで美しい。「嬌艶キョウエン」(嬌も艶も、なまめかしい意)「嬌声キョウセイ」(女のなまめかしい声) (2)かわいらしい。「愛嬌アイキョウ
 キョウ・そば  艸部
解字 「艸(くさ)+喬(高くしなやか)」の会意形声。丈が高くしなやかな草。

蕎麦(ソバ)(「庭木図鑑・植木ペディア」ソバより)
意味 「蕎麦キョウバク・そば」に使われる字。 (1)蕎麦とはタデ科の一年生作物。草丈は60〜130cmで茎はほそくしなやか、荒れ地にもよく育つ。実からそば粉をつくる。 (2)「そばきり(蕎麦切り)」の略。蕎麦粉に小麦粉をつなぎに入れて水でこねて細かく線状に切った食品。ゆでて食べる。「蕎麦屋そばや」「生蕎麦きそば」(蕎麦粉だけで他に混ぜ物のないそば)

高い
 キョウ・おごる  馬部
解字 「馬(うま)+喬(高い)」の会意形声。馬に乗り高い所から下を見下ろすこと。
意味 (1)おごる(驕る)。いばる。「驕慢キョウマン」「驕児キョウジ」(わがままな子) (2)つよい・さかん。「悍驕カンキョウ
 キョウ・かご  車部

轎(かご)(維基百科「轎」より)
解字 「車(のりもの)+喬(高い)」の会意形声。高く担ぎあげて人を運ぶ乗り物。
意味 かご(轎)。こし。肩に担いで行くかご。「轎子キョウシ」(轎を中国では轎子ともいう)「轎夫キョウフ」(かごをかつぐ人)「轎帷キョウイ」(かごにかける垂れ布。布の色で乗っている人の身分を表した)
 キョウ・キャク・あげる  足部
解字 「足(あし)+喬(高い)」の会意形声。足を高くあげてあるくこと。このさまから、すばやい・たくましい意となる。また、足を高くあげて雪道をあるくことから、わらぐつ。かんじき。そりの意がある
意味 (1)あげる(蹻る)。足を高くあげる。足を高くあげてあるく。「蹻足キョウソク」(足をあげる) (2)すばやい。かろやか。「蹻捷キョウソウ」(身軽ですばやい) (3)たくましい。武勇のさま。おごる。「蹻勇キョウユウ」「蹻蹻キョウキョウ」(①おごりたかぶる、②元気のさま、③武勇のさま) (4)雪中の履物。わらぐつ。かんじき。そり。「履蹻リキャク」(わらぐつをはく。わらぐつ)「屮蹻ソウキャク」(わらでつくったくつ)「蹻車キャクシャ」(そり・そりぐるま)

まがる
 キョウ・ためる  矢部
解字 「矢(や)+喬(まがる)」の会意形声。竹の矢柄をいろんな方向から曲げて、まっすぐにすること。また、まっすぐなものをわざと曲げていつわる意もある。
意味 (1)ためる(矯める)。ただす。まがっているものをまっすぐにする。「矯正キョウセイ」(欠点をなおし正しくする)「矯正歯科キョウセイシカ」(歯ならび、嚙み合わせをなおして正しくする)「角を矯めて牛を殺す」(少しの欠点を直そうとして、却って全体をだめにする)(2)ためる(矯める)。まっすぐなものをまげる。いつわる(矯る)。だます。おかしな。「矯命キョウメイ」(君の命令だといつわる)「矯飾キョウショク」(いつわり飾ること)「奇矯キキョウ」(言動が普通と違うこと) (3)いさましい。はげしい。蹻キョウ(3)に通じる。「矯激キョウゲキ」(言動が普通でなく激しいさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「老ロウ」<おいる>「姥ボ」「蛯えび」と「孝コウ」「酵コウ」「哮コウ」 

2023年10月26日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ロウ・おいる・ふける  耂部おいかんむり

解字 甲骨文字でわかるように長髪の人が杖をついている形の象形。長髪と杖は年長者の象徴であり老人を表わしている[甲骨文字小字典]。現代字は「耂+ヒ」の形だが、ヒは杖と手の一部が変化したもの。
意味 (1)おいる(老いる)。ふける(老ける)。「老人ロウジン」「老化ロウカ」 (2)経験をつむ。「老練ロウレン」「老獪ロウカイ」 (3)年輩で徳の高い人。「長老チョウロウ」「老師ロウシ」(年とった僧。また、先生)
参考 ロウは、部首「老(耂)ろう・おいかんむり」になる。上部に老または略体の耂が付き、年をとる意を表す。老(耂)部の主なものは以下のとおり。
常用漢字 3字 
 ロウ・おいる(耂を含む会意)
 コウ(耂+音符「丂コウ」)
 シャ・もの(耂を含む会意)
常用漢字以外
 モウ・ほうける(老+音符「毛モウ」)
 キ・シ・おいる・たしなむ(耂+音符「旨」)
  このうち、老ロウ・耆・考コウ・者シャ、は音符となる。

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 「おいる」
(老・姥・鮱) 
  老いて「腰がまがる」(蛯)
音の変化  ロウ:老  ボ:姥  えび:蛯  おおぼら:鮱

おいる
 ボ・モ・うば  女部
解字 「女(おんな)+老(おいる)」の会意。年をとった女性。
意味 うば(姥)。(1)年をとった女性。老婆。おうな。「姥桜うばざくら」(年をとっても、なまめかしさの残っている女性)「姥捨山おばすてやま・うばすてやま」(長野県北部にある月見の名所で知られる山。姥捨伝説が由来になっている) (2)老女の顔をかたどった能面。「尉じょうと姥うば」(能の衣装をつけた老夫婦が、熊手とほうきで松の落ち葉をかき寄せる姿。謡曲の「高砂」に基づく)
<国字> おおぼら  魚部
解字 「魚(さかな)+老(おいる⇒十分に成長する)」の会意。ボラ(ボラ科の海水魚)の十分に成長したもの。
意味 おおぼら(鮱)。ボラ科の海水魚「鯔ぼら」が成長するにつれて名前が変わってゆくが、その最後の段階の名称。オオボラは高知県で使われるという。高知県では、「こぼら(子鯔)」「いな(鯔)」「ぼら(鯔)」「おおぼら(鮱)」と変化する。

腰がまがる
<国字> えび  虫部
解字 「虫(小動物)+老(腰のまがった)」の会意。老人の腰のまがったかたちに見えるエビ。
意味 (1)えび(蛯)。海老・蝦とも書く。水中にすみ、足が十本ある甲殻類の動物。 (2)姓。「蛯原えびはら」「蛯名えびな


     コウ <子が親を大切にする>
 コウ  子部            

解字 「老の略体(老人)+子(子ども)」の会意。老は甲骨文字で老人が杖をついている形。孝は老人の杖の代わりに子を描いており、杖に代わって老人をたすける形。子どもが老人(親)を大切にすること。
意味 (1)子が心から親を大切にする。親につかえる。「孝行コウコウ」「孝心コウシン」「孝養コウヨウ」(孝行して親を養う) (2)祖先を大切にする。「孝孫コウソン」(先祖の祭りをする直系の子孫)

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 子どもが親を「たすける」(孝・酵) 
 「コウの音」(哮)
音の変化  コウ:孝・酵・哮

たすける
 コウ  酉部さけのとり
解字 「酉(酒つぼ=酒)+孝(たすける)」の会意形声。酒が醸(かも)される(発酵)のをたすけるもの。こうじ(麹)。こうじかび。
意味 (1)酒を造るときのもとになるもの。こうじかび。「酵母菌コウボキン」(糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する発酵作用をもつ菌類)「酵素コウソ」(体内で起こる化学反応の触媒となるたんぱく質) (2)酒がかもされてゆくこと。「発酵ハッコウ

コウの音
 コウ・ほえる・たける  口部
解字 「口(くち)+孝(コウ)」の形声。コウは、吽コウ・吼コウなどと同じく、けもののほえる声をいう。
意味 (1)ほえる(哮える)。たける(哮る)。「咆哮ホウコウ」(獣などが、たけりさけぶ) (2)「哮喘コウゼン」とは、ほえるように咳(せ)き上げる喘息(ぜんそく)のこと。
<紫色は常用漢字>

<関連音符> 
 コウ・かんがえる  耂部おいかんむり          

解字 「老の略体+丂(コウ)」の形声で、コウという発音の老人の意。老人は腰が曲がるので、体がまがる意で音符イメージとして用いられる。しかし、コウの発音から攷コウ・かんがえる。校コウ・かんがえる(校比=考え比べる)、くらべて調べる(校書・校訂)意味を持ち、むしろ、こちらの意味が主流となっている。
意味 (1)おいる(老)。亡父。「先考センコウ」(亡くなった父) (2)かんがえる(考える)。「思考シコウ」「長考チョウコウ」 (3)調べる。「考究コウキュウ」「論考ロンコウ」「考古学コウコガク」 (4)比較検討する。試験。「考査コウサ
イメージ   
 腰のまがった老人の意から「体がまがる」(考・拷・烤・栲)
音の変化  コウ:考・烤・栲  ゴウ:拷
音符「考コウ」

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音符「嗇ショク」<穀物倉>と「穡ショク」「牆ショウ」「薔ショウ」「檣ショウ」

2023年10月24日 | 漢字の音符
 ショク・おしむ・やぶさか  口部

解字 甲骨文・金文は「來(むぎ)の上部+倉庫の象形」。來(むぎ)は麦の古字(現在は仮借して来(來)る意)で、収穫した麦を倉庫に保管しているかたち。篆文は「來(むぎ)+㐭リン(屋根付きの回(壁をめぐらした)倉(くら)」になり、これがもとになり現代字の嗇ができた。原義は穀物をとりいれて収蔵する穀物倉。倉のなかに保存することから、転じて、ものおしみする意となった。
意味 (1)こくもつぐら。つむ。おさめる。 (2)おしむ(嗇む)。ものおしみする。「吝嗇リンショク」(吝も嗇も、ものおしみする意。過度にものおしみすること。けち)「吝嗇家リンショクカ」(けちな人)「慳嗇ケンショク」(慳も嗇も、おしむ意。けち) (3)やぶさか(嗇か)。けちなこと。未練なさま。「嗇かでない」(惜しまない) (4)穀物蔵の役人。「嗇夫ショクフ」(地位の低い役人)「嗇夫利口ショクフリコウ」(喋りは達者だが、身分の低い人のこと。利口は喋りが上手い人)
覚え方 十()のうち、人々(人人)に一()を回()して(おし)む吝リンショクカ

イメ-ジ 
  「穀物倉」(嗇・穡・牆・嬙・薔)
  「形声字」(檣・艢)
音の変化  ショク:嗇・穡  ショウ:牆・嬙・薔・檣・艢
  
穀物倉
 ショク  禾部
解字 「禾(穀物)+嗇(穀物倉)」の会意形声。穀物を収穫し倉にいれること。転じて、取り入れる。収穫する意味で使う。
意味 (1)とりいれる。穀物を収穫する。「稼穡カショク」(穀物の植え付けと取り入れ)「耕穡コウショク」(耕作して収穫する) (2)農業。「穡夫ショクフ」(農夫)「穡事ショクジ」(農事、農業)
牆[墻] ショウ・かき  爿部
解字 「爿(背のたかい)+嗇(穀物倉)」の会意形声。爿ショウは、細長い台をタテに描いた形で、ここでは背の高い意。穀物倉の背の高い垣をいう。墻は土の垣の意の俗字。
意味 かき(牆)。土や石で築いた囲い。へい。「牆垣ショウエン」(牆も垣も、かきねの意)「宮牆キュウショウ」(宮殿のへい)「牆壁ショウヘキ」(①かきねとかべ。また、囲いの壁。②へだてるもの)
 ショウ  女部
解字 「女(おんな)+嗇(=牆。かきね)」の形声。宮殿の牆(かき)の内側の女の意で、天子につかえる女官の官職名をいう。
意味 (1)天子に仕える女官の官職名。周代で妃(きさき)に次ぐ身分。「妃嬙嬪キショウヒン」(妃とそれに次ぐ身分の嬙と嬪「春秋左氏伝」) (2)「王嬙オウショウ」とは、匈奴王の閼氏エンシ(后妃)となった前漢の王昭君。
 ショウ・ソウ・ショク  艸部
解字 「艸(くさ)+嗇(=牆。かきね)」の形声。かきねを這い上がる、つる性植物の意。「薔薇ばら・ショウビ」に使われる字。なお、薇は古書でカラスノエンドウのこと。茎に巻きひげがあり春になると高さ60 - 150cmに達する二年草。エンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。この二字をあわせた薔薇がバラの意で使われる。また、薔で「みずたで」の意味もある。
薔薇(ウィキペディア「薔薇」より)
意味 (1)「薔薇ショウビ・ソウビ・ばら」に使われる字。「薔薇ばら」とは、①ばら(薔薇)。「いばら」の転訛した語。のいばら。バラ科の落葉低木。多くがつる性でトゲがある。夏に開花し、花は香りが高く、紅・白・黄色など多彩。多くの園芸品種が発達した。「野薔薇のばら・のいばら」(山野に普通に生えるバラ科のつる性低木。園芸品種のバラの接ぎ木の台木に使用される)②ばらの花。「百万本の薔薇ばら」 (2)みずたで(薔)。タデ科の一年生草本。

形声字
 ショウ・ほばしら  木部
解字 「木(き)+嗇(ショウ)」の形声。ショウという名の木。比較的新しい字で、543年の字書[玉篇]は「船の檣ショウ。帆柱也」とし船の帆柱の意。
意味 ほばしら(檣)。帆船の帆をかける柱。「帆檣ハンショウ」(ほばしら)「檣頭ショウトウ」(帆柱の先端部分)「檣楼ショウロウ」(帆柱の上部につけられた物見やぐら)「風檣陣馬フウショウジンバ」(風檣は風をはらんだ帆柱、陣馬は戦陣の馬。勇ましく力強いこと。また、文章などがすぐれて力強いこと)
 ショウ・ほばしら  舟部
解字 「舟(ふね)+嗇ショウ(=檣。ほばしら)」の形声。船の帆柱をいう。
意味 (1)ほばしら(艢)。「帆艢ハンショウ」(ほばしら)「艢楼ショウロウ」(帆柱上部の物見やぐら) (2)帆船。

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音符「奏ソウ」「湊ソウ」「輳ソウ」と「奉ホウ」「捧ホウ」「俸ホウ」「棒ボウ」

2023年10月22日 | 漢字の音符
 ソウ・かなでる  大部           

解字 甲骨文は、祭祀用具の植物(根のついた植物など)を両手でささげもつかたちで、祭祀儀礼の様子を表しており、神に供物や犠牲などを捧げる意味で用いられている。また既に楽器を演奏する用法も存在している[甲骨文字字典]。祭祀(神を祭る)で根付きの植物をささげるのは、大地に植物を植えてその豊かな実りを祈願する意味があるのではないか(私見)。金文は、上の葉に当たる部分が分離し、篆文は下の根の部分に横の一を加えた形になり、隷書(漢代)で、上部が龶になった形が出現し、現代字は「𡗗+天」の奏ソウになった。字形の変化が大きいので語呂合わせで覚えると便利。
 意味は、供物をさしあげる意だが、同源字(奉)との関係から、引伸義(文字のもとの意味を引き伸ばし別の意味に用いる)で、申し上げる(奏上)・すすめる(奏める)意味で使われる。また、祭祀儀礼で楽器を演奏したことから、かなでる(奏でる)意味がある。
覚え方 さんにん(三人)と、ふたり(二人)で、あわせて(かな)で合す。「漢字川柳」
意味 (1)すすめる(奏める)。申し上げる。「奏上ソウジョウ」 (2)かなでる(奏でる)。「奏楽ソウガク」「演奏エンソウ」「合奏ガッソウ」(2個以上の楽器で同時に演奏すること) (3)なす。なしとげる。「奏効ソウコウ」(効き目が現れる)
覚え方 さんにん(三人)と、ふたり(二人)で、あわせて(かな)で合す。 「漢字川柳」

イメージ 
 「引伸した義(申し上げる)」(奏)
 合奏する時に「一か所にあつまる」(湊・輳・腠)
音の変化  ソウ:奏・湊・輳・腠

あつまる
 ソウ・みなと・あつまる  氵部
解字 「氵(みず)+奏(一か所にあつまる)」の会意形声。水上で人や物資を載せた船が一か所にあつまる場所をいい、みなと・あつまる意となる。[説文解字]は「水上で人の会う所也(なり)。水に従い奏の聲(声)」とする。
意味 (1)みなと(湊)。ふなつきば。「湊泊ソウハク」(①船が港に泊まる。②あつまる) (2)あつまる(湊まる)。あつめる。「輻湊フクソウ」(輻は車のスポークで集まる意、湊も集まる意、方々から一か所にあつまること)
 ソウ・あつまる  車部
解字 「車(車輪)+奏(一か所にあつまる)」の形声。車輪の輻(スポーク)が軸にあつまること。
意味 あつまる(輳まる)。一か所にあつまる。「輻輳フクソウ」(スポークが軸にあつまるように、四方からあつまる。=輻湊)
 ソウ・きめ  月部にく
解字 「月(からだ)+奏(あつまる)」の形声。月(身体)の皮膚表面の細かい肌理(肌のきめ)をいう。
意味 (1)きめ(腠)。はだのきめ。はだえ。肌理キリ。「腠細(きめこま)やかな肌」「腠理ソウリ」(肌のきめ)「膚腠フソウ」(皮膚の肌のきめ) (2)あつまる。「腠会ソウカイ」(あつまる)


   ホウ <ささげ持つ>
 ホウ・ブ・たてまつる  大部

解字 金文は「根のついた植物の省略形+廾(両手で持つ)」で、植物の上部を両手で捧げもつ形。奏ソウの成り立ちと同じであり、ささげもつ意。篆文で枝葉の部分が丰ホウに変化し発音も表す。また下部の両手の間にさらに手が入った形になり、多くの手で捧(ささげ)ること。現代の字は「丰+廾(両手)」⇒「三+人」の合わさった形(𡗗)になり、下部の手⇒キに変化した奉ホウになった。意味は神(目上の人)に「たてまつる・ささげる」意の他、目上の人から「おしいただく」意ともなる。
覚え方 さんにん(三人)で、木()を(たてまつ)り納す [漢字川柳]
意味 (1)たてまつる(奉る)。両手でささげ持つ。「奉納ホウノウ」「奉献ホウケン」(物を奉り献ずること) (2)うける。目上の人から謹んで受ける。「奉命ホウメイ」(命令を承る)「奉行ホウコウ」(主君の命を受けて事を行なう)「奉行ブギョウ」(武家の職名。行政の各面における最高責任者) (3)仕える。サービス。「奉仕ホウシ」「供奉グブ」(奉を供する。奉仕する)

イメージ 多くの手で神聖な枝を「たてまつる」、逆の意である目上の人から「おしいただく」、多くの手で持つことから「手に持つ」イメージがある。
 「たてまつる」(奉・捧)
 「おしいただく」(俸) 
 「手に持つ」(棒)
音の変化  ホウ:奉・捧・俸  ボウ:棒

たてまつる  
 ホウ・ささげる  扌部 
解字 「扌(手)+奉(たてまつる)」の会意形声。たてまつる意にさらに扌(手)がついた形。両手で物をたてまつるように目のあたりまでさしあげること。また、両手で物をかかえる意ともなる。
意味 (1)ささげる(捧げる)。さしあげる。「捧持ホウジ」(高くささげ持つ) (2)真心・愛情などを差し出す。「愛を捧げる」 (3)かかえる。いだく。「捧腹絶倒ホウフウゼットウ」(腹をかかえてひっくり返るほど大笑いする)

おしいただく
 ホウ・ふち  イ部
解字 「イ(ひと)+奉(おしいただく)」の会意形声。仕事に対して目上の人からおしいただくもの。
意味 ふち(俸)。給料。養いぶち。「俸給ホウキュウ」「俸禄ホウロク」(職務にたいする報酬の米や銭)「俸米ホウマイ」(俸禄として与えられる米)「減俸ゲンポウ」(俸禄を減らされる)

手に持つ
 ボウ  木部
解字 「木(き)+奉(手にもつ)」の会意形声。手に持った木の棒。発音字典の[廣韻]は「杖(つえ)也(なり)、打つ也(なり)」とする。
意味 (1)ぼう(棒)。つえ。「相棒アイボウ」(相手方のつえ。かごや荷物を一緒にかつぐ相手)「片棒カタボウ」「棍棒コンボウ」(まるい棒。先の太くなった棒) (2)まっすぐな。まっすぐな線。「棒暗記ボウアンキ」(意味を考えないでそのまま覚える)「棒引き」(線を引くこと。お金の貸し借りを帳消しにする)

<紫色は常用漢字>

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音符「午ゴ」<うま> と 「杵ショ」「許キョ」「滸コ」

2023年10月20日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ゴ・うま  十部 

解字 甲骨文字と金文は臼に入れた穀物をつく棒状のきねの象形。杵(きね)の原字。甲骨文字で3種類、金文で大きく2種類に分かれる。字形の出典は、ネットの「漢典」と「漢字古今字資料庫」である。秦シン・舂ショウは穀物をつく形の字であるが、この甲骨文・金文も「きね」に同じ字形を用いている。字形は篆文(説文解字)で統一形になり、隷書(漢代)での変化をへて午になった。また、きね形の木器は願い事を祈る対象物としても用いられた。しかし、午は甲骨文字の段階から十二支の7番目の午(うま)に仮借カシャ(当て字)された。「きね」の意味は音符に残る。また、きね形は下の関連音符・御ギョの甲骨・金文でわかるように信仰対象物になっているので、「きね形の信仰対象物」のイメージもある。

十二支(「暮らし歳時記 十二支と方位」より)
意味 うま(午)。十二支の第7番目。 動物では馬。方位は南、時刻は昼の12時前後。「丙午ひのえうま」(五行説で丙は火の兄、午は南なので、この年には火災が多いとする。またこの年生れの女を嫌う迷信がある)「午前ゴゼン」「正午ショウゴ」「午後ゴゴ」「午睡ゴスイ」(昼寝)

イメージ 
 「仮借(当て字)」
(午) 
 「きね」(杵)
 「きね形の信仰対象物」(許・滸・忤)
音の変化  ゴ:午・忤  コ:滸   キョ:許  ショ:杵

きね
 ショ・きね  木部
 ②
①石臼で杵をつく(中国農村)http://dz.cppfoto.com/news/detail.aspx?id=1240 ②小さい杵(平取町二風谷アイヌ文化資料館所蔵)
解字 「木+午(きね)」の会意形声。午はもともとキネの意味であったが、干支のうま(午)に仮借カシャ(当て字)されたので、木をつけて本来の意味を表した。
意味 (1)きね(杵)。臼にいれた穀物などを搗く道具。「杵柄きねづか」(きねの柄)「杵臼ショキュウ」(きねとうす) (2)つち(槌)。物を打つ道具。きぬた(布を打つのに用いる台)のつち。「砧杵チンショ」(きぬたとそれを打つ槌) (3)「金剛杵コンゴウショ」(密教の金属製法具。中程がくびれ手で握り修法に用いる。手杵に似ることから杵がつく)

きね形の信仰対象物
 キョ・コ・ゆるす・もと  言部
解字 「言(言葉)+午ゴ⇒キョ(きね形の信仰対象物)」 の会意形声。きね形へ願いの言葉をいう形。それによって神が聞きいれる意となる。のちに広く「ゆるす・みとめる」意となった。
意味 (1)ゆるす(許す)。聞き入れる。認める。「許可キョカ」「許容キョヨウ」 (2)(居キョ:いる、に通じ)いるところ。もと(許)。「何許いずこ」「何所許どこもと」(いずこ)(3)ほど。ばかり(許り)。~くらい。「許多あまた」(多いこと:引く手許多) 
 コ・ほとり  氵部
解字 「氵(水)+許(許の意味②もと・ところ)」の会意形声。水に近いところ。
意味 ほとり(滸)。みぎわ。きし。「水滸スイコ」(水のほとり)「水滸伝スイコデン」(明代の中国で書かれた伝奇歴史小説。水のほとりの物語の意) 
 ゴ・さからう  忄部
解字 「忄(こころ)+午(きね形の信仰対象物)」の会意形成。御ギョ(下記)の甲骨文と金文第一字は午形の信仰対象物に祈っている形。人に降りかかる災厄をふせぐ祈りで禦ギョ(ふせぐ)の原字とされる。忤は災厄をふせぐために、災厄にさからう意味で用いる。
意味 (1)さからう(忤う)。=迕ゴ。=牾ゴ。「忤逆ゴギャク」(さからう)「忤視ゴシ」(にらみかえす)「乖忤カイゴ」(そむきさからう。食い違う)「忤耳ゴジ」(耳に忤(さから)う。聞きづらい。耳にすなおに入らない) (2)みだれる。くいちがう。「散忤サンゴ
<紫色は常用漢字>

関連音符
 ギョ・ゴ・おん  彳部

解字 甲骨文字はひざまずいた人が杵形の信仰対象物に祈っているかたち。人に降りかかる災厄をふせぐ祈りで禦ギョ(ふせぐ)の原字とされる。金文第1字は杵形の中央がへこんだタイプ。第二字は杵形の上部ふくらみが横斜めの「𠆢」に変化し、彳(ゆく)と止(あし:あるく)が付いた。「彳+止(あし)」は足で進む意であり、杵形の信仰対象物は貴人の動きを示す形に変化し、天子と諸侯の行為や所有物に添える敬語の意味になった。字形は金文の止が、篆文で杵形の下につき、現代字の御へと変化した。
 なお、御の発音ギョは馬をあやつる馭ギョに通じ、金文の時代から馬や馬車をあやつる意や、その仕事をする官名などの意になっている。
意味 (1)天子と諸侯の行為や所有物にたいする敬語。「御幸ギョコウ・みゆき」(天子の外出。行幸)「御衣ギョイ」(天子の衣服)「御璽ギョジ」(天子の印)「御物ギョブツ」 (2)[国]おん(御)。お(御)。ご(御)。尊敬または丁寧の意を表す語。「御意向ごイコウ」「御菓子おカシ」「御社おんシャ」 (3)馬や馬車をあやつる。あやつり使いこなす。「御者ギョシャ」(①馬や馬車をあやつる人。②従者)「制御セイギョ」「統御トウギョ」 (4)官吏。「御史ギョシ」(中国の官名。時代により役割が異なる)「女御ニョウゴ」(女官) (5)ふせぐ。まもる。「防御ボウギョ」(=防禦)
イメージ
 「ひざまずいて祈る」
(御・禦)
 「その他」(卸)
音符「御へ」

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音符「長チョウ」 <長髪の人> 「帳チョウ」「張チョウ」「套トウ」「肆シ」

2023年10月18日 | 漢字の音符
 チョウ・ながい  長部

解字 甲骨文第一字は長髪の人の象形。第二字は老と同じく杖をついた長髪の人を象り、いずれも老人を象っている。金文は下部に杖を持つ形が受け継がれ、篆文を経て現代字は長となったが、上部は長髪、下部は杖をもった人が変化した形。本来の意味は年長者(年上)を表し、また髪が長いことから、距離や時間が長い意となった。
意味 (1)ながい(長い)。距離や時間がながい。「長距離チョウキョリ」「長期チョウキ」「長編チョウヘン」 (2)そだつ。「成長セイチョウ」 (3)のびる。のばす。「延長エンチョウ」 (4)年をとっている。「長幼チョウヨウ」「長男チョウナン」 (5)おさ。かしら。「長官チョウカン
参考 長は部首「長ながい」となるが、この部首の漢字は長の1字のみ。また、長は変形して镸の形になり、套トウや髟ヒョウ(かみがしら)に含まれている。

イメージ 
 「ながい」
(長・帳・張・漲・脹・套・肆)
音の変化  チョウ:長・帳・張・漲・脹  トウ:套  シ:肆

ながい
 チョウ・とばり  巾部
解字 「巾(ぬの)+長(ながい)」 の会意形声。長いたれ布。のち、紙の帳面(ノート)の意味でも使われる。

几帳の裏面(「コトバンク・几帳とは」より)
意味 (1)とばり(帳)。たれぎぬ。たれ幕。「開帳カイチョウ」(とばりを開いて中を見せること)「几帳キチョウ」(とばりを掛けた台。几は机の原字、ここでは台の意。室内で隣と隔てるために使う)「蚊帳カチョウ・かや」 (2)ものを書くために紙を綴じたもの。「台帳ダイチョウ」「帳簿チョウボ」「手帳テチョウ」(手帖とも書く)
 チョウ・はる  弓部
解字 「弓(ゆみ)+長(ながい)」 の会意形声。弓の弦をひいて元の位置より距離を長くする。弓をひきしぼること。
意味 (1)はる(張る)。ひっぱる。はりわたす。「張力チョウリョク」「緊張キンチョウ」 (2)広げる。大きくする。「拡張カクチョウ」「膨張ボウチョウ」 (3)言いはる。「主張シュチョウ
 チョウ・みなぎる  氵部
解字 「氵(水)+張(はる・ひろがる)」 の会意形声。水が満ち溢れること。
意味 みなぎる(漲る)。満ち溢れる。「漲天チョウテン」(天いっぱいに、みなぎる)
 チョウ・ふくれる・はれる  月部にく
解字 「月(からだ)+長(=張。ひろがる)」の会意形声。身体がふくらむこと。
意味 ふくれる(脹れる)。はれる(脹れる)。「脹満チョウマン」(お腹にガスがたまり、ふくれる症状)「脹脛ふくらはぎ」(すねの後ろのふくれた部分)
 トウ・かさねる  大部
解字 「大(大きい)+長の変形(長い)」 の会意。大きくて長いもので、ものをおおうこと。上からかさねる・かぶせる意が原義。のち、套印トウイン(印刷をかさねる=多色刷)という語でくりかえす意となり、さらに同じことをくりかえす意から、ありふれた・おきまり、の意となった。
意味 (1)かさねる(套ねる)。かぶせる。おおい(被い)。「外套ガイトウ」(オーバー)「手套シュトウ」(てぶくろ) (2)くりかえす。「套印トウイン」(印刷をかさねる=多色刷) (3)ありきたり。おきまりの。「套言トウゲン」(きまり文句。ありふれた言葉。=套語)「常套ジョウトウ」(変化なくありふれた)「常套句ジョウトウク」(決まり文句)「常套手段ジョウトウシュダン」(いつも決まってつかう手段)
 シ・みせ・ほしいまま  聿部  
解字 (古代文字と字形が大きく変わっているので現代字に即して解字こじつけする)「聿(ふで)+镸(=長ながい)」 の会意。聿イツは筆の原字。筆を何本も長く並べておく店の意。みせ・ならべる意となる。また、恣(ほしいまま)に通じ、ほしいままの意がある。
意味 (1)ならべる。「肆陳シチン」(肆も陳も、ならべる意) (2)みせ(肆)。「書肆ショシ」(書店)「酒肆シュシ」(酒屋) (3)ほしいまま(肆)。「肆意シイ」(自分勝手な考え=恣意)「放肆ホウシ」(わがままでしまりのない。=放恣) (4)数の「四」の代用字。「僧圓珍 年肆拾参 行者」(僧の円珍。年は四十三。行者(仏道修行者)。年齢の43を肆拾参と表記している。「越州エツシュウ都督府トトクフ過所カショ」より)「越州都督府過所」は僧円珍が855年に唐に入国したとき越州(浙江省紹興市一帯に設置された州)の役所が発行した過所カショ(通行許可証)で現存する「最古のパスポート」とも言われる。
<紫色は常用漢字>

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音符「義ギ」<よい・ただしい>と「儀ギ」「犠ギ」「議ギ」「蟻ギ」「艤ギ」「羲ギ」「礒ギ」「嶬ギ」

2023年10月16日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ギ・よい  羊部          

解字 「羊の略体+我(のこぎり状の道具)」の会意形声字。義は羊にノコギリ状の道具を加えた形で、犠牲として神に供えるいけにえの羊を表す。この字でノコギリ(我)は、発音(ガ⇒ギに変化)も表している。
最初は、いけにえの羊の容態(ありさま)を言う
 意味は甲骨文は地名である[甲骨文字辞典]が、金文で「宜」(よろしい)「儀容ギヨウ」(礼儀にかなった姿)や「威儀イギ」(作法にかなった振る舞い)などになった[簡明金文詞典]。
 これは、神に供える「いけにえ」とする羊が立派で大きく(大きい羊=美)、さらに羊の背に飾りの布などを掛け、立派な装いにしたからではないかと思われる。([史記・老子韓非列伝]に「あの天神の祭礼の牛のいけにえ(犠牲)は、きれいな刺繍をほどこした錦を着せられて先祖のお社(おやしろ)に引きだされる」という記述があり、牛と羊の違いはあるものの犠牲となる動物の扱いとして参考になる。
 のちの春秋戦国時代になると、義は儒教の五徳のひとつである「道徳にかなった正しい」「道理にしたがう」意となり、さらにこの意味から転じた「血縁のない者が義でむすぶ親族関係(義父)」や「実物の代わりとみなす(義足)」などの意味が生れた。
 このように意味が展開したため、金文の意味であった「儀容ギヨウ」(礼儀にかなった姿)や「威儀イギ」(作法にかなった振る舞い)などの意味はイ(人)をつけた儀で表されるようになった。
意味 (1)よい(義い)。よろしい。正しい。「正義セイギ」「仁義ジンギ」 (2)のり。みち。人として行なうべき正しい道。道理にしたがう。「信義シンギ」「義挙ギキョ」「義士ギシ」 (3)わけ。意味。「字義ジギ」「意義イギ」 (4)血縁のない者が「義」で結ぶ親族関係。「義父ギフ」 (5)実物の代わり。実物とみなす。「義足ギソク

イメージ 
 展開した意味である「正しい道理・のり」(義・議・蟻)
 金文の意味である「作法やかたちがととのう」(儀・艤)
 神にそなえる「いけにえにする」(犠・羲)
 義の中の我の意味である「ギザギザした」(礒・嶬)
音の変化  ギ:義・議・蟻・儀・艤・犠・羲・礒・嶬

正しい道理・のり
 ギ・はかる  言部
解字 「言(ことば)+義(正しい道理)」の会意形声。話し合いをして正しい道理を見い出すこと。
意味 (1)はかる(議る)。論じ合う。「議論ギロン」「合議ゴウギ」「議会ギカイ」 (2)意見。「建議ケンギ」「私議シギ」 (3)話す。説く。「抗議コウギ
 ギ・あり  虫部
解字 「虫(むし)+義(道理に従う・のり)」の会意形声。道理に従って、のりを守り団体行動で生活をする虫の蟻(あり)。
意味 (1)あり(蟻)。アリ科の昆虫の総称。女王蟻を中心に集団で規律を持って生活する。「蟻集ギシュウ」(蟻が群がるように集まる)「職蟻ショクギ」(働きあり)「蟻塚ありづか」「蟻地獄ありジゴク

作法やかたちがととのう
 ギ・のり  イ部
解字 「イ(ひと)+義(作法やかたちがととのう)」の会意形声。人の行動が作法にかなっていること。
意味 (1)形よくととのった作法。礼法。作法に則った行動。「儀礼ギレイ」「儀式ギシキ」「行儀ギョウギ」 (2)のり(儀)。基準となるもの。手本。「儀典ギテン」「儀法ギホウ」 (3)(天体がのりに従って動くことから)天体観測の器械。「天球儀テンキュウギ」「地球儀チキュウギ
 ギ  舟部
解字 「舟(ふね)+義(かたちが整う)」の会意形声。船の出航の形が整うこと。
意味 ふなよそおい。ふなじたく。船を整備し出航の準備をすること。「艤装ギソウ」(船の完成後、航海に必要な装備を取り付けること)「艤舟ギシュウ」(船での準備をする)

いけにえにする
[犧] ギ・いけにえ  牜部
解字 「牜(牛)+義(いけにえにする)」の会意形声。いけにえにする牛で犠牲を表し、人にも移して使う。旧字はであるが、羲は人が「ぎせい」になる意味の字。
意味 いけにえ(犠)。神前に生きたまま供える羊や牛などの動物。転じて、他人のために身を捨てること。「犠牲ギセイ」「犠打ギダ」(野球で、自分が犠牲になって走者を進める打撃) (2)祭器のひとつ。「犠尊ギソン」(牛や獣の姿の酒だる)
 ギ・キ・(ぎせい)  羊部

解字 金文は「義(羊をいけにえにする)+万(=人。頭を一で強調した人)」で人をいけにえにすること。万は現在、萬マンの略字として数字の「万」を表すが、甲骨・金文では「頭を一で強調した人」の意味で用いられた。字形は篆文から万⇒丂になり他の部分も変形した。現代字は上が羊の略体、下部は「禾戈(禾と戈は連続する)+丂」の羲となった。
 この字について金文を見ていない[説文解字]は、「气(き)也(なり)」とするが、この意味での用法はない。意味は犠牲であり、犠の旧字がとなっているのは牛が犠牲となる意味である。しかし、この字は仮借カシャ(当て字)され伝説上の人物の名などに用いられた。
意味 (1)ぎせい。「羲牲ギセイ」(=犠牲)(2)古代中国の伝説上の人物。「伏羲フクギ」(=羲皇ギコウ。古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王。夫婦と目される女媧ジョカと共に蛇身人首の姿で描かれるものがある)「羲和ギカ・ギワ」(伝説上の太陽の使者)「羲陽ギヨウ」(太陽)  
伏羲 フクギと女媧ジョカ(ウィキペディア「伏羲」より)
(3)人名。「王羲之オウギシ」(4世紀前半、東晋の六朝文化を代表する貴族文化人。とくに書に優れ書聖といわれている)

ギザギザした(=我)
 ギ・いそ  石部
解字 「石(いし)+義(義の中の我の意。ギザギザした)」の会意形声。石が角張ったさま。日本では「磯いそ」の意味で使う。
意味 (1)いわお。石が角張ったさま。岩石がつき出るさま。「碕礒キギ」(石の角張って突き出たさま) (2)[国]いそ(礒)。石の多い波打ちぎわ。 (3)姓。「礒崎いそざき」「礒川いそかわ
 ギ・けわしい  山部
解字 「山(やま)+義(義の中の我の意。ギザギザした)」の会意形声。山が角張って高くけわしいさま。
意味 (1)けわしい(嶬しい)。高くけわしいさま。「崎嶬キギ」(高くそびえけわしい)
<紫色は常用漢字>


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音符「燕エン」<つばめ>と「嚥エン」「讌エン」「臙エン」

2023年10月14日 | 漢字の音符
  増補しました。
 エン・つばめ  灬部


ツバメの飛翔(野鳥写真図鑑「ツバメ」より)
解字 甲骨文字は、つばめの飛ぶ姿の象形。尾が二本に分かれているのが描かれている。篆文は「廿(あたま)+北(両翼)+口(胴体)+火(尾の形)」に変化した。現代字は篆文の火⇒灬に変化した「燕」になった。また、宴エンに通じて、酒盛り(宴会)、偃エン(いこう・やすむ)に通じて、くつろぐ意がある。
意味 (1)つばめ(燕)。ツバメ科の渡り鳥。つばくろ。ツバメのような。「燕雀エンジャク」(ツバメやスズメのような小鳥。度量の小さい人物)「燕窩エンカ」(アナツバメが海藻を唾液で固めて作ったまるい巣。中華料理の高級材料となる=燕巣エンソウ)「燕尾服エンビフク」(男性の洋装礼服の一種。上着の後ろが燕の尾に似ているから)(2)さかもり。「燕楽エンラク」(酒宴を開いて遊興する)(3)やすんじる。くつろぐ。「燕居エンキョ」(くつろいで家ですごす)(4)国名。地名。「燕エン」(紀元前1100年頃 - 紀元前222年に中国の周代・春秋時代・戦国時代にわたって存在した国)「燕支山エンシザン」(甘粛省にある山脈) (5)「燕子花かきつばた」とは、アヤメ科の多年草。 (6)「燕麦エンバク」とは、イネ科カラスムギ(烏麦)属の1年草。食用になるが、主に馬の飼料として用いられる。名前の由来は、カラスムギ(烏麦)が雑草で、その実は食べられないのに対し、燕麦は食用となるので、烏より上等という意味で燕麦と名付けたとされる。 

イメージ
 「つばめ」
(燕)  
 「形声字」(嚥・讌・醼)
 「地名」(臙)
音の変化 エン:燕・嚥・讌・醼・臙 
 
形声字
 エン・のむ・のど  口部
解字 「口(くち)+燕(エン)」の形声。エンは咽エン・イン(のど)に通じ、嚥は、口からのどを通ってのむこと。
意味 (1)のむ(嚥む)。のみこむ。「嚥下エンカ」(のみこむ。エンゲとも。=咽下エンカ)「誤嚥ゴエン」(食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと)「嚥下障害エンゲショウガイ」(食べ物や水分を飲み込むのが正常に機能しなくなること) (2)のど(嚥)。「嚥喉エンコウ」(=咽喉インコウ
 エン  言部
解字 「言(ことば)+燕(エン)」の形声。エンは宴エン(くつろぐ。たのしむ)に通じ、くつろいで話すこと。また、さかもり・宴会をいう。
意味 (1)くつろいで語り合う。くつろぐ。「讌語エンゴ」(くつろいで語る) (2)さかもり。宴会。「讌楽エンラク」(酒盛りして楽しむ)「讌飲エンイン」(さかもり。宴会。飲は酒を飲む意)
 エン  酉部
解字 「酉(さけ)+燕(エン)」の形声。エンは宴エン(くつろぐ。たのしむ)に通じ、酒を飲みながらくつろぎ楽しむこと。
意味 酒盛りをする。うたげ。「醼飲エンイン」(酒盛りで飲む)「游醼ユウエン」(社交の酒盛り)

地名
 エン・べに  月部にく
解字 「月(脂肪)+燕(地名)」の形声。燕は甘粛省にある山脈の燕支山エンシザンを表す。この山のふもとで採れるベニバナの花を用いて、その汁を脂あぶらに練りこんだ化粧用の赤色系の「べに」が作られたからといわれる。のちラックカイガラムシの体表から分泌される暗紫色の物質を用いたものなども含めて言う。また、嚥エン(のど)に通じて、のどの意がある。
意味 (1)べに(臙)。古代中国のベニバナから製したべに。「臙脂虎エンジコ」(臙脂べにで化粧した虎。嫉妬深い女をいう)「臙脂虫エンジむし」(カイガラムシ科の昆虫。体に多量の紅色色素を含み、臙脂色染料の原料になる) (2)紫と赤を混ぜた絵具。「臙脂エンジ=燕脂」(ベニバナを原料とした赤色系顔料)「臙脂色エンジいろ」(濃い紅色)「臙脂墨えんじずみ」(臙脂に墨を交えた赤黒色の絵具)(2)のど。「臙喉エンコウ」(のど)

臙脂色(「伝統色のいろは」より)


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音符「間カン」<門の扉のすきま>と「簡カン」「澗カン」「癇カン」「嫺カン」「燗ラン」

2023年10月12日 | 漢字の音符
  増補しました。
[閒] カン・ケン・あいだ・ま  門部       

解字 金文は門のとびらの隙間から月の光がさしこんでいる形の象形。ほそい隙間を表わす。篆文以後は月が門の中に入り込んだ。ほそい隙間・あいだ(間)の意を表わす。新字体で門の内側が日に変化した。
意味 (1)あいだ(間)。ま(間)。物と物とのあいだ。すきま。短い時間。「間隔カンカク」「間隙カンゲキ」「瞬間シュンカン」 (2)すきをねらう。うかがう。ひそかに。「間者カンジャ」「間諜カンチョウ」(スパイ) (3)へだてる。「間日カンジツ」(一日をへだてる。隔日)「間歳カンサイ」(一年をへだてる。隔年) (4)部屋。「居間いま」 (5)[国]ケン(間)。長さの単位。6尺(1.8メートル)

イメージ 
 「すきま・あいだ」
(間・簡・澗)
 「あいだ(時間)」(癇)
 「形声字」(嫺・燗)
音の変化  カン:間・簡・澗・癇・嫺  ラン:燗

すきま
 カン・ふだ  竹部

竹簡(「手作りの世界史実物教材・竹簡」より)
解字 「竹(たけ)+間(すきま)」の会意形声。文字を書いた竹の札を一枚一枚紐で綴じたもの。竹と竹の間に隙間があるので簡と書く。また、竹簡の一枚を簡単といい、手軽な意となる。
意味 (1)ふだ(簡)。文字をしるした木や竹のふだ。「木簡モッカン」「竹簡チッカン」 (2)書物・手紙・文書。「書簡ショカン」 (2)手軽な。おおまかな。「簡単カンタン」「簡易カンイ」「簡素カンソ」 (3)えらぶ。よりわける。「簡閲カンエツ」(えらび調べる)
 カン・ケン・たに   氵部
解字 「氵(みず)+間(すきま・あいだ)」の会意形声。山と山の間に流れる川の意で、たにやたにがわを表す。
意味 たに(澗)。たにみず。たにがわ。「澗水カンスイ」(谷川の流れ)「澗谷カンコク」(澗も谷も、たにの意)

あいだ(時間) 
 カン・ひきつけ  疒部
解字 「疒(やまい)+閒(あいだをあける)」の会意形声。筋肉のひきつけが反復して起きる間欠性ケイレンの症状。
意味 (1)ひきつけ(癇)。発作的に筋肉がひきつる病気。「癇病カンビョウ」(小児のひきつけ)「癇痙カンケイ」(ひきつけ) (2)感情がはげしく、すぐかっとなる気質。「癇癪カンシャク」(怒りやすい性質。また、その発作)「癇癪玉カンシャクダマ」(火薬を砂にまぜて紙に包んだおもちゃ。地面に投げると大きな音をたてる)

形声字
嫺[嫻] カン・ゲン・みやびやか  女部  
解字 「女(おんな)+閒(カン)」の形声。カンは閑カン(しずか)に通じ、女がついた嫺カンは、ものしずかでしとやかな女性の意。「女+閑カン」の嫻カンは別体の字になっている。閑カンには、ゆとりがある意もあり、ゆとりを利用して物事を、ならう・なれる意ともなる。
意味 (1)みやびやか(嫺やか)。しとやか。優雅。「嫺雅カンガ」(嫺も雅も、みやびやかの意。=嫻雅) (2)ならう。なれる。熟達。「嫺習カンシュウ」(熟練する=嫻習)「嫺熟カンシュウ」(熟達する=嫻熟)
 ラン・かん  火部
解字 「火(ひ)+閒(ラン)」の形声。ランは爛ラン(煮る)に通じ、火で煮ること。閒カンにはランの発音はなく、爛ランを書き誤った異体字とされる。日本ではカンと発音し、お酒をあたためる意で使われる。
意味 (1)煮る。くずれるほど煮込む。 (2)[国]かん(燗)。酒をほどよくあたためること。「燗酒かんざけ」(温めた日本酒)「熱燗あつかん
覚え方 ひ()で、すこしのあいだ()、酒をあたため燗酒にする。
<紫色は常用漢字>


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