漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。
中に似たような模様が入っているが、爽ソウは✕が四つ、傘サンは人が四つである。
爽 ソウ <胸の入れ墨>
爽 ソウ・さわやか 大部
解字 金文は 「大(ひと)+斜め井印二つ(入れ墨の文様)」 の会意。篆文から入れ墨の文様が、✕印四つに変化して現代字へ続く。人の胸に加える文身(いれずみ)を示す。文様の美しさから、「あきらか」「さわやか」の意となった。
意味 (1)あきらか。あかるい。 (2)さわやか(爽やか)。すがすがしい。「爽快ソウカイ」「颯爽サッソウ」(きりっとしている。かっこいい)「爽涼ソウリョウ」(気候がさわやかで涼しいこと。秋の気候を表すのに用いる)
傘 サン <かさ>
傘 サン・かさ 人部
解字 柄のあるかさを開いたかたちの象形。日光や雨をさえぎるために用いる。サンという発音は山サン(△型をした山)から来ている[学研漢和]。俗字から昇格した字のため、古代文字はない。
意味 (1)かさ(傘)。ひがさ。あまがさなど。「日傘ひがさ」「雨傘あまがさ」「洋傘ようがさ」(こうもりがさ)「傘寿サンジュ」(八十歳の祝い。傘の略字「仐」が八十と読めることから) (2)かさのように覆うもの。「傘下サンカ」(影響力のもとにあること)「落下傘ラッカサン」(パラシュート)
覚え方 おおい(𠆢)のしたに、人四(人人人人)じゅう(十)にんが傘下
<紫色は常用漢字>
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刷 サツ・はく・する 刂部
解字 篆文第一字は㕞セツで、「尸(人が腰掛ける形=尻。おしり)+巾(ぬの)+又(て)」 の会意。布を持ってお尻をふきとることを示す。第二字の刷は「刂(刀)+㕞(ふきとる)の略体」で、刀でけずり取る意、転じて、はく・ぬぐう・はけ・こする意味に用いる。
意味 (1)けずる。 (2)はく(刷く)。ぬぐう。きよめる。「刷新サッシン」(ぬぐいさって新しくする) (2)はけ(刷)。ブラシ。「刷子サッシ」(ブラシ)「刷毛はけ」(塗料や糊などを塗る道具) (3)する(刷る)。こする。「印刷インサツ」「増刷ゾウサツ」「縮刷シュクサツ」
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「ぬぐう」(刷・涮)
音の変化 サツ:刷 サン:涮
ぬぐう
涮 サン・セン 氵部
解字 「氵(水)+刷(ぬぐう)」の会意形声。水で洗いきよめること。ざっと洗うこと。また、煮汁の中で薄い肉をゆすぐようにさっと煮る料理(しゃぶしゃぶ)をいう。
意味 すすぐ。ゆすぐ。ざっと洗う。「涮手センシュ」(手をすすぐ)「涮羊肉シュアンヤンロウ」(羊肉のしゃぶしゃぶ。発音は中国語)
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奈 ナ・ナイ・ダ・ダイ・いかん 大部
解字 篆文は柰ダイで「木(き)+示ジ(祭壇)」の会意。示は神事に関する語に用いられ、篆文の木⇒大に変化した奈は神事に用いる木の実を表わす。仮借カシャ(当て字)して、疑問の「いかん」「なんぞ」の意味等に用いる。
意味 (1)からなし。木の名。べにりんご。(=柰) (2)いかん(奈・奈何)。いかんせん。なんぞ。疑問・反語の助字。「奈辺ナヘン」(どのへん=那辺) (3)梵語・外国語の音訳字。「奈落ナラク」(地獄)「加奈陀カナダ」(カナダ) (4)地名に用いる。「奈良ナラ」「奈良漬ならづけ」
柰 ダイ・ナイ・ナ 木部
解字 篆文は「木(き)+示(祭壇)」の会意。示は神事に関する語に用いられ、柰は神事に用いる木の実である「からなし」の意。のち、この字は上の木が大に変化した奈になったが、柰で「からなし」の意で用いられる。
通称「柰子ナイズ・nàizi 」また「花紅」とも呼ばれるリンゴの一種。(中国の検索サイトから。元サイトなし)
意味 (1)からなし(柰)。赤いりんご。古書で一種の花紅色の果実をいう。リンゴの一種で中国では、通称「柰子ナイズ」「花紅」「沙果」という。「菓珍李柰カチンリダイ」(くだもので珍重するのは、李(すもも)と柰(からなし)。『千字文』より)「柰脯ダイホ」(干したからなし) (2)いかん。いかんせん。いかんぞ。なんぞ。疑問・反語の意を表わす(=奈)。
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「神事にもちいる果実」(奈・柰)
「形声字」(捺)
音の変化 ナ:奈 ナツ:捺 ダイ:柰
形声字
捺 ナツ・ナ・おす 扌部
解字 「扌(手)+奈(ナ・ダ)」 の形声。ナ・ダは挼ナ・ダ(おさえる・おす)に通じる。妥ダは、女を上からの手で押さえて落ち着かせる形。それに扌(手)をつけた挼ナ・ダは、上からおさえる・おす意。捺ナツ・ナも同じく、おさえる・おす意となる。
意味 おす(捺す)。おさえつける。「捺印ナツイン」(印をおす)「押捺オウナツ」(印をおすこと=捺印)「捺染ナッセン」(布地に染料を入れたのりをおさえつけて模様を染めつける。プリント)
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得 トク・える・うる 彳部
解字 甲骨文は、「貝(かい)+又(て)」の会意で、貝を手に入れること。金文から、彳(ゆく)がついて行って貝を手にいれる意。篆文から、貝⇒見、又⇒寸に変化し、さらに現代字は、貝⇒旦に変化した「得」になった。貝は小安貝で、貨幣や財貨を意味し、得は、他所に行って財貨を手にいれること。得(え)る・得(う)る・もうける等の意となる。
意味 (1)える(得る)。うる(得る)。手にいれる。「得点トクテン」「取得シュトク」 (2)さとる。わかる。「得心トクシン」 (3)もうけ。とく。「得策トクサク」「損得ソントク」
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「手にいれる」(得・碍)
音の変化 トク:得 ガイ:碍
手にいれる
碍[礙] ガイ・ゲ・さまたげる 石部
解字 「石(いし)+得の略体(手にいれる)」の会意。大きな石を得て、行くのにさまたげになること。なお、この字は篆文の「石+疑(立ち止まる)」の礙ガイ・ゲ(石にさえぎられて立ち止まる)が本字。碍は疑⇒㝵に変わった字。
意味 (1)さまたげる(碍げる)。じゃまをする。「障碍ショウガイ」(さまたげ)「妨碍ボウガイ」(じゃまをすること) (2)さえぎる。「碍子ガイシ」(電線の電流をさえぎって(絶縁して)電柱に電線を固定する磁器製の器具) (3)[仏]「無碍ムゲ」(さまたげがないこと。とらわれがなく自由自在なこと=無礙ムゲ)「融通無碍ユウズウムゲ」(一定の考えにとらわれず、どんな事でも対応できること)
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競 キョウ・ケイ・きそう・せる 立部
解字 甲骨文は、冠をかぶった二人の人が並んでいる形。冠は高貴な存在であることの象徴であり、貴人が祭祀に参列することが原義[甲骨文字小字典]。また、二人の冠が連続し一緒にいる印の横線が上についたものもある。金文から口が加わり、参列した貴人が話しをする形。転じて、互いに口できそいあう意となった。篆文は、結果的に上部が「言」と同じ形になったので、「言二つ+儿(人)二つ」になった。二人が言い合って勝負をつけるさまなので、身体を使った競争でなく競売の意の、せる(競る)の方が原義に近い。現代字は「立+兄」二つの形に変化したので、ごろ合わせで覚えると便利。
意味 (1)きそう(競う)。あらそう。「競技キョウギ」「競馬ケイバ」「競泳キョウエイ」(2)せる(競る)。きそって値を高くつける。「競売キョウバイ」
覚え方 たつ(立)あに(兄)と、たつ(立)あに(兄)、競って競技する [漢字川柳]
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