漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

解字 「貇コン」 <イノシシが作物を掘り起こす> 「墾コン」 「懇コン」

2014年06月28日 | 漢字の音符
貇  コン  むじな            

解字 貇はもとから存在する字でなく、墾コンの音符として後にできた字。掲載した篆文は墾から土を省いて作成 した。篆文第一字は、「豕(いのしし)+艮(とどまる)」 の会意形声。艮コンは、邪眼ジャガン(悪意をもって相手をにらむ)に見つめられて動けなくなり、その場にとどまる意で「とどまる」イメージをもつ。これに豕(いのしし)がついた第一字は、イノシシが畑にでてきて、その場にとどまり作物を掘り起こして食べること。篆文第二字は、豕(いのしし)⇒豸(むじな)に変わった字で、これが現代字に続いている。貇は、土を「掘り起こす」イメージがある。
意味 いのこが地をかむ。

イメージ  「掘り起こす」 (墾・懇)
音の変化  コン:墾・懇

掘り起こす
 コン・ひらく  土部
解字 「土(土)+貇(掘り起こす)」 の会意形声。土を掘り起して新しくひらくこと。
意味 ひらく(墾く)。荒れた地を切り開く。「開墾カイコン」「墾田コンデン」「墾道はりみち」(新しく切り開かれた道)
 コン・ねんごろ  心部
解字 「心(こころ)+貇(掘り起こす)」 の会意形声。相手の心を掘り起こして、深く打ち解けること。
意味 ねんごろ(懇ろ)。うちとける。したしくする。「懇親コンシン」「懇意コンイ」「懇切コンセツ」(懇意を当てる。きわめてねんごろなこと。切は、親切の切と同じで、ここでは当てる意)「懇切丁寧コンセツテイネイ
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「舜シュン」 <すばやく動く> と 「瞬シュン」

2014年06月19日 | 漢字の音符
 シュン  舛部ます           

解字 篆文は「炎(ほのお)+匚印+舛セン」の会意。舛は両足が反対方向を向く形だが、ここでは「舞」と同じく一か所で素早く足を動かす意。舜は、カマドなどのように区切られた所で燃える炎がゆれるように素早い足のうごきを意味し、すばやく動く意となる。現代字(楷書)は舛センが継承され上部が変化した舜になった。字形の変化が激しいので語呂合わせで覚えると便利。
意味 (1)中国の伝説上の聖天子の名。五帝の一人。素早い動きで何度も危機をのがれた伝説をもつ。「舜帝シュンテイ」 (2)むくげ(=蕣)。朝に咲き夕方にしぼむすばやい動きをする花。「舜華シュンカ
覚え方 ノツワ(ワかんむり)タヰ(イ)で、シュン

イメージ 
 「すばやく動く」
(舜・瞬・蕣)
音の変化  シュン:舜・瞬・蕣

すばやく動く
 シュン・またたく  目部
解字 「目(め)+舜(すばやく動く)」 の会意形声。目のまぶたをすばやく動かす意。
意味 (1)またたく(瞬く)。まばたく(瞬く)。しばたたく。まじろぐ。 (2)瞬きをするくらいの短い間。「瞬間シュンカン」「瞬時シュンジ」「一瞬イッシュン
覚え方 ノツワ(ワかんむり)タヰ(イ)で、シュン
 シュン・むくげ  艸部
解字 「艸(草木)+舜(すばやく動く)」 の会意形声。朝にすばやく咲き、夕方にはしぼむ花をもつムクゲを指す。
意味 (1)むくげ(蕣)。槿(むくげ・キン)、木槿(むくげ・モクキン)とも書く。アオイ科の落葉低木。 庭木として広く植栽される。早朝に開花し夕方には萎んでしまう一日花である。「蕣華シュンカ」(むくげの華=舜華) (2)[国]あさがお。朝顔。
<紫色は常用漢字>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「乗ジョウ」<木の上にのった人> と「剰ジョウ」

2014年06月19日 | 漢字の音符
[乘] ジョウ・のる・のせる  ノ部

解字 甲骨文は木の上にのった人の形で乗る意。金文は木の上の人に両足を描いた形で、篆文もこれを受け継いだ。しかし、楷書(旧字体)で「禾(木の変形)+北(二人が背をむける)」に変化し、この字を略した乗が新字体となった。高い所に乗る意から、馬や車などの交通機関に乗る意となり、さらに掛け算の意ともなる。
意味 (1)のる(乗る)。のせる。「乗馬ジョウバ」「乗船ジョウセン」「搭乗トウジョウ」 (2)機会につけ込む。「便乗ビンジョウ」 (3)掛け算をする。「乗法ジョウホウ」「乗除ジョウジョ」(掛け算と割り算)

イメージ 
 「のる」
(乗) 
 「木の上にのる」⇒「上に出る」(剰)
音の変化  ジョウ:乗・剰

上に出る  
 ジョウ・あまる  刂部
解字 旧字は剩で、「刂(刀)+乘(上に出る)」 の会意形声。上に出たものを刀で切り取る意。切り取った部分が剰余(あまり)となる。新字体は剰に変化。
意味 (1)あまり。あまる(剰る)。「剰余ジョウヨ」「剰員ジョウイン」(あまって無駄な人員)「過剰カジョウ」 (2)あまつさえ(剰え)。それだけでなく。そのうえに。 ※ 剰(あま)りさえの転じた語。
<紫色は常用漢字>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「足ソク」< あ し > と「促ソク」「捉ソク」

2014年06月14日 | 漢字の音符
 ソク・あし・たりる・たる・たす  足部      

解字 甲骨文第1字は、「ひざから足までの形+ あし先)」の象形。第2字は「口(ひざの関節部分)+あし先)」の形。いずれも、ひざから足までの形を表す。現代字は「口+龰 」に変化した。あし、あるく意の他、足は本体から出ているので、本体に「たす」意となり、さらに、たすと「たりる」意となる。
意味 (1)あし(足)。人間や動物のあし。また、人の足首から下の部分。「足下あしもと」 (2)あるく。「遠足エンソク」 (3)たす(足す)。たりる(足りる)。「補足ホソク」「満足マンゾク」 (4)はきものを数えることば。
参考 ソクは、部首「足あし・あしへん」になる。漢字の左辺や下部に付き、足の意味を表す。常用漢字は11字、約14,600字を収録する『新漢語林』では166字が含まれる。主な字は以下のとおり。
 跳チョウ・はねる(足+音符「兆チョウ」)
 蹴シュウ・ける(足+音符「就シュウ」)
 踪ソウ・あと(足+音符「宗シュウ」)
 距キョ・へだてる(足+音符「巨キョ」)
 跡セキ・あと(足+音符「亦エキ」)
 踊ヨウ・おどる(足+音符「甬ヨウ」)
 路ロ・みち(足+音符「各カク」)など。

イメージ 
 「あし」(足)
 「あるく」(促・捉・齪)
音の変化  ソク:足・促・捉  セク:齪

あるく
 ソク・うながす  イ部
解字  「人(ひと)+足(あるく)」の会意形声。人のうしろから人のあるく足が迫る意。
意味 (1)うながす(促す)。せきたてる。「催促サイソク」(せっつく)「督促トクソク」(せきたてる)「促進ソクシン」(うながし進める) (2)間をつめる。せまる。「促音ソクオン」(つめて発音する音。例:もっぱら・さっき)
 ソク・とらえる  扌部  
解字 「扌(手)+足(=促。間をつめる)」の会意形声。あるいて人に追いつき手でつかむこと。
意味 (1)とらえる(捉える)。つかまえる。「捕捉ホソク」 (2)とる。つかむ。にぎる。「把捉ハソク
 サク・セク  歯部
解字 「齒(は)+足(=促。間をつめる)」の会意形声。歯ならびが詰まるさま。
意味 齷齪アクセクに使われる字。齷齪とは、本来、歯と歯の間が詰まっている意だが、歯に限らず、詰まる・切迫する意で使われる。もと、アクサクの発音であったが、転音したアクセクが広く使われる。これはセクの発音が、せく(急く)に通じることから。「齷齪アクセク」(休む間もなくせかせかと仕事などをする)「齷齪アクセクと働く」
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「処ショ」 <腰をおちつける>

2014年06月12日 | 漢字の音符
[處] ショ・ところ・おる  几部 

解字 金文は虎の皮をかぶって劇の所作をする者が几(腰掛け)に腰をかけて足をおろしている形。「そこにいる」「いる場所」を示す。篆文から「虎の略体+夂(あし)+几」となり、旧字の處に続くが、篆文で虎の上部を省いた略字「夂+几=処」も登場し、これが現代の新字体となった。
意味 (1)おる(処る)。いる。「処世ショセイ」(世間の中で生きていく) (2)ところ(処)。場所。「居処キョショ」「随処ズイショ」「処処ショショ」(あちらこちら) (3)とりはからう。しょする(処する)。「処置ショチ」(とりさばく)「処分ショブン」(いらないものを始末する。罰する)「処罰ショバツ」 (4)世間に出ないで家にいる。「処女ショジョ」「処士ショシ」(仕官しない人)「出処シュッショ」(て仕官することと退いて家にて世間にでないこと)「出処進退シュッショシンタイ」(身の処し方。出処も進退も、仕えるか退くかの意)

イメージ  腰を 「おちつける」 (処・拠)
音の変化  ショ:処  キョ:拠

[據] キョ・コ・よる  扌部
解字 「扌(手)+処(おちつける)」の会意。手などを使って、ある場所に座を占めてよりどころとすること。旧字は據で、「扌(手)+豦(キョ)」 の形声。キョは居キョ(いる・おる)に通じ、その場所に居てより所にする意。新字体の拠は、居と同じ意味をもつ処に置き換えた字。
意味 (1)よる(拠る)。たよる。たてこもる。「依拠イキョ」(依も拠も、たよる意)「占拠センキョ」「割拠カッキョ」 (2)よりどころ。あかし。「根拠コンキョ」「証拠ショウコ」「典拠テンキョ」 (3)金銭を出し合う。「拠出キョシュツ
<紫色は常用漢字>




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「路ロ」<天とつながる> と「露ロ」

2014年06月10日 | 漢字の音符
 ロ・じ・みち  足部  

解字 「足(あゆむ)+各(いたる)」の会意形声。各は「夂(下向きの足)+口(場所)」で、天からいたる、または向こうからいたること、それに足がついた路は、いたる「みち」を表す。音符で「(天と)つながる」イメージがある。
意味 (1)みち(路)。じ(路)。「道路ドウロ」「遠路エンロ」「路頭ロトウ」「家路いえじ」「旅路たびじ」「山路やまじ」 (2)方向。方面。「針路シンロ」「販路ハンロ」 (3)物事のすじみち。道理。「理路整然リロセイゼン

イメージ  
 「みち」(路)
 「(天と)つながる」(露・蕗・鷺)
音の変化  ロ:路・露・鷺・蕗

(天と)つながる
 ロ・ロウ・つゆ  雨部
解字 「雨(水滴)+路(天とつながる)」の会意形声。雨(水滴)が途中の経過なしで直接、天とつながったように物の表面から出てくる「つゆ」のこと。つゆは屋外で出ることから、おおいがない意ともなる。
意味 (1)つゆ(露)。夜半または早朝、戸外にある物の表面につく小さな水滴。「雨露あめつゆ」(雨と露)「結露ケツロ」(冷たい物の表面にふれた空気中の水蒸気が凝結して水滴がつく現象) (2)つゆのようにはかないもの。「露命ロメイ」 (3)おおいがない。「露天ロテン」「露営ロエイ」「露店ロテン」 (4)あらわす。あらわ(露)。あらわれる(露れる)。さらけだす。「露出ロシュツ」「披露宴ヒロウエン」 (5)国名。「露西亜ロシア」の略。「露文ロブン
 ロ・さぎ  鳥部
解字 「鳥(とり)+路(天とつながる)」の会意形声。天から来た鳥の意。サギという鳥は「雪客セッカク」という異称があり、雪のように白い、天から来た客(神)と考えられていた。
意味 さぎ(鷺)。サギ科の総称。形は鶴に似てやや小さい。「白鷺しらさぎ」「朱鷺シュロ」(トキの異称)
 ロ・ふき  艸部
解字 「艸(葉)+路(直接つながる)」の会意形声。葉が葉柄で地上と直接つながった形をしているフキ。茎は地上には伸びず、地中で地下茎(生姜やアヤメのような根塊)となり横に伸びる。フキは日本原産で、蕗は中国で香草や甘草の意。この字をフキに当てるのは、字の本質をふまえた見事な命名。
 秋田蕗
意味 (1)[国]ふき(蕗)。キク科の多年草。茎は地上に伸びず地中にあって、葉柄が直接地上から伸びてきて、大きな葉をつける。早春に葉に先立ちフキノトウを生じる。葉柄とフキノトウは食用。「山蕗やまぶき」(山間に生える蕗)「蕗の薹フキノトウ」(早春、葉の伸出より先に根茎から伸び出す花茎。ほろ苦さを賞味する) (2)香草の名。また、甘草。
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 カク・おのおの  口部
解字 「夂チ(下向きの足)+口サイ(神へ祈る言葉をいれる器)」の会意。音符「各カク」を参照。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする