复 フク 夂部
解字 甲骨文の上部は、中央の四角の上下に小さな四角が付いた形。この字形について、いろいろな解釈があり原義は不明である。私は、复の音符イメージである、「もどる」「向きを返る」「かさなる」の三つを満たすため、表玄関と広間それに奥部屋のついた邸宅と考えてみた。すると复は、「邸宅+夂チ(下向きの足)」の会意となる。夂チは、足が下を向いた形であり、もどる(復路)意味がある。复は、①訪れた人が邸宅の玄関から「もどる」。②もどるときは入った方向と「向きを返る」。③入って奧の部屋に行き、戻ると行き来が「かさなる」。この三つの意味となる。金文以降、夂を除いて形が変化し、現代字の复となった。三つの意味の、①「もどる」意は「復」が、②「向きを返る」意は「覆」が、③「かさなる」意は「複」が分担する。
意味 かえる。
イメージ
「もどる」(復)
「向きを返る」(覆)
「かさなる」(複)
「形声字」(腹・鰒・蝮・馥)
「その他」(履)
音の変化 フク:復・覆・複・腹・鰒・蝮・馥 リ:履
もどる
復 フク・かえる・また 彳部
解字 「彳(ゆく)+复(もどる)」の会意形声。向きをかえて戻ること。また、行き戻りをくりかえす意としても使われる。
意味 (1)かえる(復る)。もどる。行った道をかえる。「復路フクロ」「往復オウフク」(行きと帰り) (2)かえす。もどす。「復活フッカツ」 (3)くりかえす。ふたたび。また(復)。「復習フクシュウ」「反復ハンプク」
向きを返る
覆 フク・おおう・くつがえす・くつがえる 覀部
解字 篆文は、「襾(ふたの形)+復(向きを返る)」の会意形声。おおったふたをひっくり返すこと。ふたをおおう意と、ひっくり返す意と二つの意味になる。現代字は篆文上部の、襾(ふた)⇒ 覀に変化した。
意味 (1)くつがえす(覆す)。くつがえる(覆る)。ひっくり返す。「覆水フクスイ」(入れ物からひっくり返した水)「覆水盆に返らず」(盆[容器]をひっくり返してこぼれた水は元に戻らない)「転覆テンプク」(船などがひっくりかえること) (2)おおう(覆う)。かぶせる。「覆面フクメン」「覆土フクド」
かさなる
複 フク 衣部
解字 「衤(ころも)+复(かさなる)」の会意形声。着物を重ね着すること。着物に限らず、かさなる・かさねる意となる。
意味 (1)かさねる。かさなる。二つ以上ある。「複式フクシキ」「複数フクスウ」「複写フクシャ」「複製フクセイ」 (2)込み入る。「複雑フクザツ」
形声字
腹 フク・はら 月部にく
解字 「月(からだ)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある器)に通じ、ふくらんだ身体の部分、おなかを表わす。
意味 (1)はら(腹)。おなか。「腹筋フッキン」「腹掛(はらが)け」 (2)こころ。心のなか。考え。「腹案フクアン」 (3)物の中央部分。「山腹サンプク」「船腹センプク」「中腹チュウフク」
鰒 フク・ふぐ・あわび 魚部
解字 「魚(さかな)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、身体をふくらませる魚をいう。
意味 (1)ふぐ(鰒)、河豚とも書く。フグ科の海魚。外敵に襲われると腹を著しく膨張させる。 (2)あわび(鰒)。鮑ホウとも書く。
蝮 フク・まむし 虫部
解字 「虫(へび)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、頭部がふくらんでいるまむしをいう。
意味 まむし(蝮)。くちばみ。スプーンのように膨らんだ頭部をもつ毒蛇。「蝮酒まむしざけ」(蝮を漬けた焼酎)「蝮蛇フクダ」(まむし)
馥 フク・かんばしい 香部
解字 「香(かおり)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、香りがふくらむこと。香りがたちこめてかんばしいこと。
意味 かんばしい(馥しい)。香ばしい。かおる。かおり。「馥郁フクイク」(良い香りのたちこめるさま)「馥馥フクフク」(香りがたちこめる)
その他
履 リ・はく・くつ 尸部
解字 篆文は、「尸(ひと)+彳(ゆく)+舟(舟型のくつ)+夂(あし)」の会意。人があしを舟型のくつに入れて行くこと。はきもの、及び、ふむ・ふみおこなう意となる。現代字は、「尸+復」の形に変化した。
正倉院展の履
意味 (1)ふむ(履む)。ふみおこなう。実行する。「履行リコウ」「履歴リレキ」(現在までの学業・職業などの経歴)「履歴書リレキショ」「履修リシュウ届け」「履霜リソウの戒め」(霜を履む時季になれば、やがて氷が張る季節になる。小さな前兆を見て、やがてくる大きな災難に備えて用心せよという戒め) (2)はきもの。はく(履く)。くつ(履)。「履物はきもの」「草履ゾウリ」
覚え方 この(コノ=尸)ふく(復)路に履いた履物は私の履歴書リレキショ。
<紫色は常用漢字>
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解字 甲骨文の上部は、中央の四角の上下に小さな四角が付いた形。この字形について、いろいろな解釈があり原義は不明である。私は、复の音符イメージである、「もどる」「向きを返る」「かさなる」の三つを満たすため、表玄関と広間それに奥部屋のついた邸宅と考えてみた。すると复は、「邸宅+夂チ(下向きの足)」の会意となる。夂チは、足が下を向いた形であり、もどる(復路)意味がある。复は、①訪れた人が邸宅の玄関から「もどる」。②もどるときは入った方向と「向きを返る」。③入って奧の部屋に行き、戻ると行き来が「かさなる」。この三つの意味となる。金文以降、夂を除いて形が変化し、現代字の复となった。三つの意味の、①「もどる」意は「復」が、②「向きを返る」意は「覆」が、③「かさなる」意は「複」が分担する。
意味 かえる。
イメージ
「もどる」(復)
「向きを返る」(覆)
「かさなる」(複)
「形声字」(腹・鰒・蝮・馥)
「その他」(履)
音の変化 フク:復・覆・複・腹・鰒・蝮・馥 リ:履
もどる
復 フク・かえる・また 彳部
解字 「彳(ゆく)+复(もどる)」の会意形声。向きをかえて戻ること。また、行き戻りをくりかえす意としても使われる。
意味 (1)かえる(復る)。もどる。行った道をかえる。「復路フクロ」「往復オウフク」(行きと帰り) (2)かえす。もどす。「復活フッカツ」 (3)くりかえす。ふたたび。また(復)。「復習フクシュウ」「反復ハンプク」
向きを返る
覆 フク・おおう・くつがえす・くつがえる 覀部
解字 篆文は、「襾(ふたの形)+復(向きを返る)」の会意形声。おおったふたをひっくり返すこと。ふたをおおう意と、ひっくり返す意と二つの意味になる。現代字は篆文上部の、襾(ふた)⇒ 覀に変化した。
意味 (1)くつがえす(覆す)。くつがえる(覆る)。ひっくり返す。「覆水フクスイ」(入れ物からひっくり返した水)「覆水盆に返らず」(盆[容器]をひっくり返してこぼれた水は元に戻らない)「転覆テンプク」(船などがひっくりかえること) (2)おおう(覆う)。かぶせる。「覆面フクメン」「覆土フクド」
かさなる
複 フク 衣部
解字 「衤(ころも)+复(かさなる)」の会意形声。着物を重ね着すること。着物に限らず、かさなる・かさねる意となる。
意味 (1)かさねる。かさなる。二つ以上ある。「複式フクシキ」「複数フクスウ」「複写フクシャ」「複製フクセイ」 (2)込み入る。「複雑フクザツ」
形声字
腹 フク・はら 月部にく
解字 「月(からだ)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある器)に通じ、ふくらんだ身体の部分、おなかを表わす。
意味 (1)はら(腹)。おなか。「腹筋フッキン」「腹掛(はらが)け」 (2)こころ。心のなか。考え。「腹案フクアン」 (3)物の中央部分。「山腹サンプク」「船腹センプク」「中腹チュウフク」
鰒 フク・ふぐ・あわび 魚部
解字 「魚(さかな)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、身体をふくらませる魚をいう。
意味 (1)ふぐ(鰒)、河豚とも書く。フグ科の海魚。外敵に襲われると腹を著しく膨張させる。 (2)あわび(鰒)。鮑ホウとも書く。
蝮 フク・まむし 虫部
解字 「虫(へび)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、頭部がふくらんでいるまむしをいう。
意味 まむし(蝮)。くちばみ。スプーンのように膨らんだ頭部をもつ毒蛇。「蝮酒まむしざけ」(蝮を漬けた焼酎)「蝮蛇フクダ」(まむし)
馥 フク・かんばしい 香部
解字 「香(かおり)+复(フク)」の形声。フクは畐フク(ふくらみのある)に通じ、香りがふくらむこと。香りがたちこめてかんばしいこと。
意味 かんばしい(馥しい)。香ばしい。かおる。かおり。「馥郁フクイク」(良い香りのたちこめるさま)「馥馥フクフク」(香りがたちこめる)
その他
履 リ・はく・くつ 尸部
解字 篆文は、「尸(ひと)+彳(ゆく)+舟(舟型のくつ)+夂(あし)」の会意。人があしを舟型のくつに入れて行くこと。はきもの、及び、ふむ・ふみおこなう意となる。現代字は、「尸+復」の形に変化した。
正倉院展の履
意味 (1)ふむ(履む)。ふみおこなう。実行する。「履行リコウ」「履歴リレキ」(現在までの学業・職業などの経歴)「履歴書リレキショ」「履修リシュウ届け」「履霜リソウの戒め」(霜を履む時季になれば、やがて氷が張る季節になる。小さな前兆を見て、やがてくる大きな災難に備えて用心せよという戒め) (2)はきもの。はく(履く)。くつ(履)。「履物はきもの」「草履ゾウリ」
覚え方 この(コノ=尸)ふく(復)路に履いた履物は私の履歴書リレキショ。
<紫色は常用漢字>
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