猫たちの一生をみてみると、彼らの運命が人間ドラマと重なって見えませんか?
「終わりよければ全て良し」編
三女が高台の新興住宅地に引っ越しました。
引っ越してまもなく、例のごとく、捨て猫を拾ってきて飼い始めました。
名前は「スモモ」です。これはよくいる黒トラのメス。
さっそく、ブランド首輪をつけてもらい、家の中で愛情たっぷりに育てられ始めました。
それから暫くして…三女のところを訪ねた折り、話のついでに彼女がぼやき始めました。
「怖いのよね~。ゴミ捨て場にヘンな猫が居座って、
うちのスモモちゃんが通りかかると、シャァ~って威嚇するの。
それが、汚いのなんのって。まるで歩くゴミタメみたいな猫。
耳はちぎれ、目やにだらけ、あちこちの毛に血がにじんでいる。
しかもカラスとゴミをめぐって大乱闘で、怖くっておちおち、ゴミ出しもできやしない。」
帰りがけふと見ると、なるほど、住宅地の真ん中をのそのそ歩く、小汚い毛糸の塊をみかけました。
ぺルシャの雑種らしくみごとな白い長い毛をしているのですが、なんせ、野良猫。
手入れされていないので、毛が絡まり放題のところに、泥だの血だの埃だのがくっついて、それはそれはひどい有様です。
まさしく、歩くボロ雑巾状態。
しかも、じろりと私を振り返る顔の怖いこと、怖いこと!
人間を脅しにかかるふてぶてしさは、まさしく野生の動物そのものです。
つりあがった大きな目の周りは目やにで汚らしくくまどられ、大きな口の周りの毛も、汚れて真っ黒。
三女は「カブキ」と呼んでいましたが、なるほどネ~。まさしくカブキの隈取り顔でしたよ。
それから1年ぐらい経って、再び三女のところを訪問したときのこと。
あらら?庭に見慣れない猫の影がちらほらと…。
「また猫を拾ったの?」
「違うのよ~。困ってるのよ~。カブキが居座っちゃってるの?」
「?!」
「この頃スモモちゃんが贅沢になっちゃって、スーパーで安売りしていたキャットフードを出すと残すもんだから、
カブキが食べに来るようになっちゃったの。
スモモのごはんは台所でやるようにしたんだけど、それでも日に何度も家に来るのよ。」
「ダメねぇ。二度と来ないように根気よく追い払いなさいよ。」
「うん。頑張る。」
それからまた、1年後。
訪問した三女宅の玄関先に、長々と寝そべっているのは、カブキ?!
「なぁに、あれ、まだ居座っているの?」
「そうなのよ~。この頃、新興勢力の若い野良が出てきて、カブキはボスの座を奪われたみたい。
ひどい怪我して死にそうだったから、つい、面倒みてやったらね~。」
「呆れた!あんなヤサグレ年寄り猫、抱え込んでどうする気~」
若いボスにコテンパンにのされ、テリトリーのゴミ捨て場を追い出されたカブキは、年も年だったんでしょうね。
プライドを捨てて、人間のお世話を受ける気になったらしいです。
始めは餌を置いてやると姿が見えなくなってから食べにきていました。
そのうち、三女が餌皿を持って来てくれるのを待つようになり。
やがて、餌を食べる側にいても平気になり。
最後は三女の姿を見ると足元に飛んでくるようになり…。
三女はある日、古手袋をしてそっと撫でてやったそうな。
カブキにしてみれば、人間に「撫でてもらう」という事は初めてだったのでしょう。
一旦は逃げ出しかけたものの…この快感はナニ?!
気持ちより体の方が正直で、ゴロゴロゴロ音が、盛大に出たそうな。
へっぴり腰ながら、しばらくじっとしていたそうです。
そして、一旦経験していまうと、「あの快感よ、再び」というわけで。
今度はお腹丸出しで、「撫でて撫でて!」と催促するように。
でも三女にしてみれば、このぼろ雑巾のような猫に触るのはどうもねぇ…。
それで、毎日、少しずつ、こんがらがった毛をカットし、梳いてやったりし出したそうな…。
私が三女のところに行った時、縁側の端にカブキがいました。
私をみると、逃げるどころか、口をニカッと開けて挨拶。
「へへぇ、姐さんにはお世話になっとりやす。」みたいな表情。
笑っちゃいました。
以前のカブキとは別猫のような、のんびり穏やかな表情。
ずっと飼い猫だったみたいな落ち着き方をしています。
首輪もしてもらって、長い毛もそよ風にふさふさ。とっても綺麗。
「はぁ~、この猫、美男子だったんだぁ~。」かなりびっくりでした。
聞けばスモモちゃんのかかりつけの獣医さんのところには「清原カブキ君」というカルテがあるんだとか。
長い事、野良猫をしていたせいでしょうか。
キャリーバッグにはどうしても入らないので、仕方なくケイタイで写真を撮って、獣医さんに見せているそうです。
やれ、目やにがでたの、皮膚病がでたの、お腹が悪いのと、スモモちゃんと同じように手をかけてもらっています。
家の中には入れてもらえませんが(スモモの領分)、
日曜大工の得意なご主人が、犬小屋ならぬ猫小屋を作ってくれていました。
なるほどね~。いい根性してるわね~。
若い頃、さんざ極道して、世間様にご迷惑かけ放題。
体力が衰えて行き場所がなくなったら、お人よしの人間見つけて、ちゃっかり飼い猫してる。
しかもこんな上等の老後生活させてもらって、すましこんでいて、いいのかいいのかぁ~。
お天道様のばちがあたらないんでしょうかねぇ。
絵は「メデューサの娘」 07-07作成
写真なしで描き始めました。
元写真がないせいでしょうか。途中からどんどん変ってきて、最初の意図とは全く違った絵になってしまいました。
でも、気に入っています。
「終わりよければ全て良し」編
三女が高台の新興住宅地に引っ越しました。
引っ越してまもなく、例のごとく、捨て猫を拾ってきて飼い始めました。
名前は「スモモ」です。これはよくいる黒トラのメス。
さっそく、ブランド首輪をつけてもらい、家の中で愛情たっぷりに育てられ始めました。
それから暫くして…三女のところを訪ねた折り、話のついでに彼女がぼやき始めました。
「怖いのよね~。ゴミ捨て場にヘンな猫が居座って、
うちのスモモちゃんが通りかかると、シャァ~って威嚇するの。
それが、汚いのなんのって。まるで歩くゴミタメみたいな猫。
耳はちぎれ、目やにだらけ、あちこちの毛に血がにじんでいる。
しかもカラスとゴミをめぐって大乱闘で、怖くっておちおち、ゴミ出しもできやしない。」
帰りがけふと見ると、なるほど、住宅地の真ん中をのそのそ歩く、小汚い毛糸の塊をみかけました。
ぺルシャの雑種らしくみごとな白い長い毛をしているのですが、なんせ、野良猫。
手入れされていないので、毛が絡まり放題のところに、泥だの血だの埃だのがくっついて、それはそれはひどい有様です。
まさしく、歩くボロ雑巾状態。
しかも、じろりと私を振り返る顔の怖いこと、怖いこと!
人間を脅しにかかるふてぶてしさは、まさしく野生の動物そのものです。
つりあがった大きな目の周りは目やにで汚らしくくまどられ、大きな口の周りの毛も、汚れて真っ黒。
三女は「カブキ」と呼んでいましたが、なるほどネ~。まさしくカブキの隈取り顔でしたよ。
それから1年ぐらい経って、再び三女のところを訪問したときのこと。
あらら?庭に見慣れない猫の影がちらほらと…。
「また猫を拾ったの?」
「違うのよ~。困ってるのよ~。カブキが居座っちゃってるの?」
「?!」
「この頃スモモちゃんが贅沢になっちゃって、スーパーで安売りしていたキャットフードを出すと残すもんだから、
カブキが食べに来るようになっちゃったの。
スモモのごはんは台所でやるようにしたんだけど、それでも日に何度も家に来るのよ。」
「ダメねぇ。二度と来ないように根気よく追い払いなさいよ。」
「うん。頑張る。」
それからまた、1年後。
訪問した三女宅の玄関先に、長々と寝そべっているのは、カブキ?!
「なぁに、あれ、まだ居座っているの?」
「そうなのよ~。この頃、新興勢力の若い野良が出てきて、カブキはボスの座を奪われたみたい。
ひどい怪我して死にそうだったから、つい、面倒みてやったらね~。」
「呆れた!あんなヤサグレ年寄り猫、抱え込んでどうする気~」
若いボスにコテンパンにのされ、テリトリーのゴミ捨て場を追い出されたカブキは、年も年だったんでしょうね。
プライドを捨てて、人間のお世話を受ける気になったらしいです。
始めは餌を置いてやると姿が見えなくなってから食べにきていました。
そのうち、三女が餌皿を持って来てくれるのを待つようになり。
やがて、餌を食べる側にいても平気になり。
最後は三女の姿を見ると足元に飛んでくるようになり…。
三女はある日、古手袋をしてそっと撫でてやったそうな。
カブキにしてみれば、人間に「撫でてもらう」という事は初めてだったのでしょう。
一旦は逃げ出しかけたものの…この快感はナニ?!
気持ちより体の方が正直で、ゴロゴロゴロ音が、盛大に出たそうな。
へっぴり腰ながら、しばらくじっとしていたそうです。
そして、一旦経験していまうと、「あの快感よ、再び」というわけで。
今度はお腹丸出しで、「撫でて撫でて!」と催促するように。
でも三女にしてみれば、このぼろ雑巾のような猫に触るのはどうもねぇ…。
それで、毎日、少しずつ、こんがらがった毛をカットし、梳いてやったりし出したそうな…。
私が三女のところに行った時、縁側の端にカブキがいました。
私をみると、逃げるどころか、口をニカッと開けて挨拶。
「へへぇ、姐さんにはお世話になっとりやす。」みたいな表情。
笑っちゃいました。
以前のカブキとは別猫のような、のんびり穏やかな表情。
ずっと飼い猫だったみたいな落ち着き方をしています。
首輪もしてもらって、長い毛もそよ風にふさふさ。とっても綺麗。
「はぁ~、この猫、美男子だったんだぁ~。」かなりびっくりでした。
聞けばスモモちゃんのかかりつけの獣医さんのところには「清原カブキ君」というカルテがあるんだとか。
長い事、野良猫をしていたせいでしょうか。
キャリーバッグにはどうしても入らないので、仕方なくケイタイで写真を撮って、獣医さんに見せているそうです。
やれ、目やにがでたの、皮膚病がでたの、お腹が悪いのと、スモモちゃんと同じように手をかけてもらっています。
家の中には入れてもらえませんが(スモモの領分)、
日曜大工の得意なご主人が、犬小屋ならぬ猫小屋を作ってくれていました。
なるほどね~。いい根性してるわね~。
若い頃、さんざ極道して、世間様にご迷惑かけ放題。
体力が衰えて行き場所がなくなったら、お人よしの人間見つけて、ちゃっかり飼い猫してる。
しかもこんな上等の老後生活させてもらって、すましこんでいて、いいのかいいのかぁ~。
お天道様のばちがあたらないんでしょうかねぇ。
絵は「メデューサの娘」 07-07作成
写真なしで描き始めました。
元写真がないせいでしょうか。途中からどんどん変ってきて、最初の意図とは全く違った絵になってしまいました。
でも、気に入っています。