ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.3.26 ブロークンで十分な女ですか?

2013-03-26 21:17:48 | 日記
 先日、ホワイトデーのお返しに夫からもらった洋菓子が曰くつきのものだ、ということを書いた。そのことについては後日とお約束していたので、ではどういう話だったか、である。
 
 私は栗を使ったお菓子が好きだ。そのまんまの甘栗も好きだし、和菓子の栗かのこも栗の落雁も。ケーキではモンブラン、パフェならマロンパフェやマロンシャンテリー等に目がなかった。歳を重ねるにつれて、甘いものがいくらでもOKというわけにはいかなくなったが、これはまだ独身だった頃のこと。

 曰くつきの洋菓子とはマロングラッセである。
 私が「マロングラッセが好き!」と言ったところ、夫は(当時はまだ夫ではなかったけれど)とても得意そうに、「いいものを買ってきてあげたよ。」と差し出した。
 
 開けてみるとなんとブロークンのマロングラッセである。1個ずつ綺麗に包んであるのではなく、壊れ煎餅のようにご家庭用のお買い得袋入り(一応袋には赤いリボンがついていた。)である。
 釣った魚に餌はやらないというのかどうか、まだお付き合いしていた頃のことである。うーん、それはないんじゃないの、と20代の私は深く傷ついた。

 夫は単純に、リーズナブルな値段で好きなものが沢山食べられるのだから一挙両得、どうせお腹に入ってしまえば同じなのだし、包装なんて不必要。ノープロブレム、実質的に沢山入ったこちらの方が絶対喜ばれる!と思ったようだ。「だって、倍の量が入っているんだよ!単純に多いか少ないかの問題であって、女の価値とは全く関係ないじゃない!」とはその時の夫の弁である。

 けれど、私にとってマロングラッセたるもの1つずつ丁寧に包まれたまるまる1個のもの。そんなマロングラッセを頂くから、もったいなくも美味しくて優雅な気持ちになれるのであって、包装もされていない欠けたマロングラッセをいくつ食べてみてもそんなに幸せにならない、と言ったら贅沢だろうか。
 今思えば全くエコではないのだけれど・・・。「そうですか、私はブロークンで十分な安い女ですよね!」とイジケてしまったのだ。

 そんなわけで、以来マロングラッセを見る度にその時のことを思い出す。
 夫の名誉のために、今回のホワイトデーに手にしたのは、まるまる1個のマロングラッセが綺麗に包まれた贈答用のものであったことを明記しておきたい。

 昨日に続き、今朝もまだ気温が低かった。それでも日中は少しずつお天気が良くなって青空が見えてきた。7割方花開いて今が見頃な桜の花は、青空をバックにすると、何より映えて美しい。 

 職場では引継の準備やら年度末・年度始めの事務処理等で落ち着かない日々が続いている。何十回も繰り返してきた季節―お世話になった沢山の方たちとの別れと、これからお世話になるだろう方たちとの新しい出逢いが待っているちょっと高揚する季節―である。
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2013.3.25 長生きするには長い息を?

2013-03-25 21:58:49 | 日記
 今日は勤務する大学の卒業証書・学位記授与式、つまりは卒業式。
 都心にあるホールで、全学部・研究科合同の全体式が午前中に開催され、午後からは各学部・研究科ごとの式典と、2段階方式である。午後からは各々が学んだキャンパスに散るため、例年この日は学生教職員一同、それこそ都内を民族大移動である。
 都心では既に桜が満開になったものの、あいにく雨が降ったりやんだり、傘もコートも手離せない花冷えの1日になった。

 出勤後、納品された新年度の印刷物類を大車輪で仕分け、配布等で大汗をかく。ここのところ痛みも出ないし調子がいいかなと思っても、こうしてちょっと重い物を持つだけで、すぐに胸痛が出るので困りものだ。
 2時間ほどで自席での仕事を済ませ、午後からの式典に向かった。例年のように、ターミナル駅にあるフラワーショップで予め予約しておいた小さな花束を人数分引き取り、乗換駅でお昼を済ませてからキャンパスへ到着した。

 若い人たちの喜びに満ち溢れた門出の姿を見るのは例年のことながらとても清々しく、こちらもエネルギーをチャージされる気がする。特に彼らはこれから医療関係者として白衣を身に着ける若人だ。彼らを送り出す一職員として、また、もしかしたら将来、彼らにお世話になることがあるかもしれない一人のがん患者としても、彼らが信頼される医療者として頑張っていってほしい、とエールを送りたい。

 式典の来賓の言葉で印象的だったこと。「ありがとう」の言葉は自らのストレスを軽減する、相手と気持ちを通じ合うようにするには相手の言葉に合わせること、相手を褒めると自分も元気になる、の3点。
 これは本当にそうだな、と思う。「ありがとう」と言われて嫌な気分になる人はいないだろう。言う方はちょっぴり照れ臭いかもしれないけれど、間違いなく暖かい気持ちになれる筈だ。
 そして、自分の言葉だけを話すことなく、相手の言葉を聞きながら相手の言葉に合わせて話すことが出来れば、相手は自分が受け容れられているということを感じて、より気持ちが寄り添うだろう。
 何より、相手を素直に褒めることが出来るならば、必ずや良い循環が自分に巡ってくる。これは、相手を励ますと自分もより元気になれる、ということと同じではないだろうか。今までブログにコメントを頂いて、相手を受け容れ、力づけたいと思って言葉を返すと、実は自分も元気になっているということは経験済みである。

 その後、専攻ごとに分かれての式典(つまり第3部!)で長い一日が終了。このセレモニーで、呼吸を専門に研究する教員からのはなむけの言葉が本日の表題である。
 「“息”という字は自らの心と書く。当初から仲間とのコミュニケーションを大切にしてほしいと言ってきたが、仲間と息が合う、呼吸を合わせるためには自らの心を合わせることが必要である。
 長生きするためには語呂合わせのようだが、長い息をすると良いと思う。緊張するとどうしても呼吸が短く浅くなる。ゆっくり長い息をすることで体はリラックスしてより良い状態になる。」というもの。
 長年呼吸を専門に研究してこられた教員からの言葉にはとても説得力がある。深呼吸は大事なのだな、と感じ入る。
 今からどのくらい長生きが出来るかわからないけれど、息も細く長く続けていければいいな、と一人頷いたお話が聴けて、今日もいい日だった。
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2013.3.24 家事に勤しむ一日

2013-03-24 20:52:04 | 日記
 今日は気温が低く雨降りの予想だったが、実際には雨は降らずじまい。花曇りの一日になった。
 この辺りの桜の開花状況は、陽の当たり具合にもよるが、概ね6分咲きといったところか。このまま雨が降らなければ、来週末もまだまだお花見が楽しめそうだ。木曜日に雨という予報がちょっと心配ではあるけれど。気付けば桂の並木も、小さな芽がいきなり緑色に染まってきた。

 今朝も寝坊を決め込んで、遅めの朝食を摂った。洗濯物を干し終えると、次は昼食の支度と夕食の仕込みで殆どキッチンから出られなかった。
 土日の昼は外で軽く済ませる(要は休日に昼食は作らないという手抜きである。)ということが多いけれど、今日は珍しく朝昼夜と3食分全て家で摂った。
 こんなことはわざわざ話題にするまでもなく、主婦にとって普通のことといえば普通のことなのだけれど、お休みの日に遅い朝食を摂ってから昼食・夕食と支度をすると、本当に一日中キッチンに立っている羽目になる。

 昼食後、もう一度洗濯機を回す。そして、サボっていた掃除と片付けものをしているうちにあっという間に夕方になる。夫と駅前まで買い出しに行きながら、私はそのまま「ほぐしヨガ」のレッスンに参加してさっぱり汗を流してきた。

 そんなわけで、珍しく何の予定もなく、家事に勤しんだ日曜日が終わろうとしている。家の中がなかなか片付かないというのなら、休みの日にあれこれ予定を入れずにこうして地味に家事に勤しむ日を増やせばよい、と頭では分かっているのだけれど・・・。

 明日からの1週間は年度末最後の週だ。
 既に人事異動の内示も出て、ますます職場は落ち着かなくなるだろう。週の初め、明日は卒業式・学位授与式。桜の花に包まれて迎える卒業式、お天気は残念ながらイマイチのようだが、新しい門出の日。きっと忘れられない日になるだろう。
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2013.3.23 とりあえずもう1年・・・

2013-03-23 22:42:31 | 日記
 昨日は更新出来ずに失礼しました。

 昨日の夕方、4月1日人事異動の内示がオープンになった。
 例年のスケジュールでは週明けだと思っていたので、今年は早い。異動までに土日が2回挟まれば、心の準備も仕事の準備も余裕をもって出来るでしょう、ということか。
 今のポストは休職明け以来だから、3年11か月となった。これまで28年間の勤務で、概ね2年、短ければ1年、長くて3年、合計13回の異動を繰り返してきた。同じ席に3年以上いたのは今回初めてのこと。もちろんエンドレスの再発治療中という事情があるから、異動希望は出していなかった。とはいえ人事は水物、やはり心配ではあった。確かに今のように4週間に1度の通院で、治療後の副作用も殆どなく、体調が良ければ全く問題はないのだけれど、いつまたきつい治療になって入院したり、病欠が増えたり、ということがあるかわからない。それを思うと、ついつい新しい職場への異動は尻込みしてしまう。

 とにもかくにも職住近接の今の職場にいられるからこそ、こうして再発治療を続けながらフルタイムの仕事を諦めずに済んでいるのだと思う。
 とりあえずもう1年、今の慣れた状況で働ける、ということである。また来年3月にはドキドキハラハラするのだろうけれど、あまり先のことを憂えても仕方ない。1年ずつ大切に過ごしていくのが一番だろう。

 さて、息子の学年末の保護者会も無事終わり、高2のスケジュールは全て終了。成績表等も頂き、とりあえず来月からは高3に進級だ。来年度のスケジュールを見ると、卒業式は3月1日。高校生活はもう1年を割っている。学校に行く日を数えてみれば・・・怖くなってやめてしまった。
 昨夜は息子と2人で塾の面談にも行った。成績表等を見せて喝を入れてもらったが、すっかり憔悴した。来年の春、「残念だったね。」と言われないように、という塾長の言葉をどういう思いで聞いたのだろう。

 そんなわけで帰宅が遅かったので、今日は少し寝坊をしてから洗濯を干し、予約していたマッサージに出かけた。担当のTさんに、「今日は頭も顔も凝っていますね。」と言われてしまった。施術中、1か月間の近況報告等をして、後半はうとうとさせて頂くといういつものパターンだ。
 終わる時間に息子と待ち合わせをして、いつもの写真館で学生証用の写真を撮ってもらった。今年は受験生なので、(誕生日前に)受験用の写真をまた撮りに来ます、と挨拶して写真館を後にした。息子のリクエストでイタリアンのランチを済ませ、最寄駅で息子は塾へ、私はヨガスタジオへ向かった。

 一方、夫は義母の見舞いに出かけた。肺炎と脱水症で2週間の予定で入院したが、昨日でその2週間が過ぎた。貧血もあるようで、まだ退院は叶わないという。いつものように往復6時間、ぐったりして帰宅した夫は夕食を済ませて、転寝をしている。
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2013.3.21 新しいブラの季節に思うこと

2013-03-21 19:07:07 | 日記
 8年前の春、ちょうど今頃のこと。
 初発の手術後の傷がまだ癒えず、加えて25回、5週間毎日通った放射線治療中だった。傷口に限らず、放射線を当てている部分の肌はすっかり敏感になって火傷状に赤く腫れており、それまで使っていた普通のブラが触れると痛そうで、怖くて出来なくなった。
 そのため、入院中に身に付けていた胸帯をブラ代わりにつけていた。
 当時は外出すると言っても、自宅から2つ先の駅にあった病院に通院するだけ。寒さが厳しい時期だったし、厚着をしていたからブラなしでもそれほど目立つわけでもなく、それで我慢するしかなかった。
 けれど、やっぱりブラなしでは何となく心もとないし、傷口を庇うせいか背筋も伸びず、気付けば猫背で下を向いて歩いており、気持ちもどんどん下向きになっていた。

 ネットで検索して、乳がん術後用の下着等を個室で試着出来るというランジェリー会社の存在を知った。都内とはいえ、都心を超えて結構東の方。雛人形のお店で有名な駅が最寄だった。
 すっかり体力が落ちていて、1人でそこまで遠出をする自信がなかったので、春休みに夫と息子が国立博物館を見学しにいく日に合わせて予約をした。
 受付を済ませるとマンツーマンで専門のアドバイザーが付いてくれ、淡いピンクとベージュの色調の広い個室のフィッティングルームに案内された。お茶もサービスされてリラックスした雰囲気。アドバイス、採寸、試着・・・と1時間ほどだったろうか。綺麗なレースのパステルカラーのブラを沢山買いこんだ。2カ月近くぶりにつけたブラは傷口に当たることもなくとても優しく包み込んでくれて、それでも不思議なくらい気持ちも姿勢もしゃきんとした。凝り固まっていた気持ちがほぐれていくのを感じた。嬉しかった。部屋から出た時には買ったばかりの一番お気に入りのものを付け、微笑みながらビルを後にした。
 春の日、コートを脱いで少し胸を張って歩くことが出来たあの日の喜びは今でも忘れられない。
 遠いからそう何度も来られないだろうし、と何年分も買いこんだ。何より次回元気に来ることが出来るのだろうか、と一抹の不安は残っていた。

 以後、2月半ばくらいに毎年、新しい商品のパンフレットが送られてくる。それをめくるのも楽しかった。
 が、3年を経たずに再発し、2回目に訪れたのが4年前の春のこと。タキソテール6クールの治療が終了してまもなくだった。既に最初の中心静脈ポートが鎖骨下に設置されており、これまでのブラの肩ひもがポートや傷口に当たって痛いのも気になっていた。けれど、家から片道1時間半はたっぷりかかるので、体力がめっきり落ちた当時は1人で出かける自信がなかった。浮腫みが酷く(最後の1か月で8キロ近く増えた。)、履ける靴も1足しかなかった。
 けれど、とにかく治療が終わったということで、息子がスキースクールで留守なのに合わせて、夫と2人でお祝いにお花見を兼ねて都心のホテルに宿泊して、その日に合わせて予約した。
 この時はかつらを被って試着。初回から4年経っているのにその時のデータがちゃんと残っていた。採寸をすると、浮腫んでいたせいかサイズがちょっと大きくなっていた。肩ひもがポートに当たらないものを選んで、また何年分もまとめ買いした。
 今度こそ、次回は(生きて)来られないかもしれない、と思いつつ。

 そして、今回。何はともあれ再び4年が経った。そして4年前と同じかつらを被っている。
 今年のカタログで目星をつけておいた数量限定やら新製品やらを沢山試着させて頂いた。アンダーバストは前回より2センチ減(あとで夫に「痩せたよ〜」と言ったら「トップだって(減なん)でしょ」と言われた。あんまりだ。)。ピンクやラベンダーの大好きなパステルカラーを中心にベーシックなものも併せて、これまた沢山買いこんだ。
 一つ違うことは「また、次回も元気に生き伸びて来ます!」と言ってエレベーターまで送ってくれるアドバイザーさんに挨拶したこと。
 今年の新作、桜をモチーフにしたピンクの可愛いレースのブラをしながら、自分のお気に入りの下着をつけるだけでこうも前向きになれるのか、とその力を実感している。

 今日は陽差しは明るかったが、風は冷たかった。それでもいろいろな花がどんどん咲いている。雪柳の白も青空に眩しく映える。サクラは3,4分咲きといったところか。
 週末にはお花見が楽しめそうだけれど、日曜日は無情にも雨の予報。花散らしの冷たい雨になるようだ。なんとも意地の悪いお天気であることだ。
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