ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.6.3 2か月の延命をどう考えるか

2014-06-03 20:30:27 | 日記
何度もご紹介させて頂いている、朝日新聞静岡版に連載中の渡辺先生のコラム、最新号。また、今のままで行こう!という意を強くしたので、下記に転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

がん内科医の独り言(2014.5.31)
効果と副作用、見極める
 ■体験しないとわからない
 胃がんでは、胃の壁全体が厚くなり、食物の通りが悪くなるスキルス胃がんというタイプがあります。食欲はあるけど食べるとすぐにおなかがいっぱいになる、食後すぐに嘔吐する、しだいに食欲もなくなるといった症状が現れます。
 65歳の女性がこんな症状で病院に行ったら、進行胃がんと診断され、外科医から手術不能と言われて当院を受診しました。治療希望と言うことだったので、本人、家族に抗がん剤治療を説明しました。
 進行胃がんでは、S1(エスワン)の内服とシスプラチンの点滴を併用する治療が標準治療とされています。S1だけの場合とS1とシスプラチン併用の場合との効果、副作用を臨床試験で比較したところ、寿命はS1だけの場合の中央値は11カ月、併用では13カ月でした。白血球減少、貧血、吐き気、食欲低下といった副作用はS1とシスプラチン併用の方が4~5倍高頻度に現れるという結果でした。
 2カ月といえども延命効果があることから、S1とシスプラチンの併用が標準治療と位置づけられています。
 本人は「飲み薬も点滴も説明を聞いただけではわからない」ということだったので、まずS1を1サイクル(3週間)内服して、2サイクル目から点滴を加えることにしました。
 S1の内服だけで食事量も増え体調もよくなりましたが、シスプラチンの点滴では吐き気、嘔吐が強く、体調不良の症状が現れました。回復後相談すると、「点滴は2度としたくない」とのお考えでした。
 シスプラチンの点滴でつらい副作用を体験し、S1内服だけでも効果は出ているようならば内服だけで続ける。一方、点滴による副作用は問題ないという患者には併用すればいいのではないでしょうか。
 抗がん剤治療も、受けるか受けないかの選択ではなく、体験してから決めるという方法もあると思います。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

(転載終了)※  ※  ※

 そう、体験してみないとわからないことは山ほどある。特に薬の副作用はそうだ。自分の体が感じることだから、たとえどんなに経験豊かな医師だって、本人が一体どのくらい辛いのか、うんと我慢しているのか、そうでもないのか、本当のところはわからない。薬の効き方も副作用の出方も100人の患者がいれば百人百様だ。
 このケース、今の私の状況と同じだな、とほっとした。そもそも、1月から服用している分子標的薬タイケルブは抗がん剤ゼローダとセットで内服することになっている。が、僅か10日間、2種類の薬を規定量飲んだだけで、私の体は悲鳴を上げた。けれど同時に、僅か10日間服用しただけで、マーカーは下がり、画像上の影も小さくなってくれた。
 
 結局、このままゼローダを飲み続けたら副作用で普通の生活が出来なくなるだろう(早晩手足症候の悪化で手指が使えなくなりそう、歩けなくなりそう)という判断でゼローダは止め、副作用の出方(酷い下痢)からタイケルブが十分効いているのではという予測のもと、まず休薬をして体調を戻してタイケルブだけ規定量の5分の1(1日1錠)から再開した。 
 その後、様子を見ながら副作用止めの薬でなんとかコントロール出来そうというタイミングで、4割(1日2錠)に増やした。
 2錠にしてからかれこれ3か月になるが、その間、2か月以上足指の爪囲炎と付き合っているし、相変わらずお腹の調子は快調を通り越して、良すぎるほどだ。おそらくこれ以上増やす(例えば6割、1日3錠)せば、再び副作用で休薬を余儀なくされるだろうという診断で、効いている限りこのまま増やさずに続行ということになっている。
 何とも有難いことだ。たとえうんと効いてくれても、単剤と併用の延命の差は13か月―11か月の2か月。しかもその2か月は元気に飛び回れる2か月ではなく、具合が悪くて寝たきりの2か月だとしたら・・・私はおそらく飛び回れる11か月を選択するだろうな、と思う。

 しっかり効いてくれて身体に優しい少ない量でOKならば、なんとエコなことではないか。こと進行がんの場合、2か月の延命のために、4,5倍も酷く現れる副作用を我慢して自分の体を痛めつける必要はないように思う。

 もちろん、その2か月間がどんなに辛くてもどうしても迎えたい大切なイベントがあるということなら、それはまた別の話だけれど。

 どう治療に向き合っていくか、ということは、結局のところ、その人がどう生きたいのか、という根本に関わってくることである。“絶対”に正しいことなど、決してないのだな、と思う。
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