「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

雨の藻岩山 ジャノメチョウ飛ぶ

2009-07-26 20:52:12 | 藻岩山
(写真: 山頂から見たスキー場コース)

二週続いた雨の週末。大雪山に行きたいのに・・・

午後から薄日が差したので、藻岩山へ。いつもと気分を変えようと、初めてスキー場コースから登る。

広葉樹の森を急登すると、やがて空が開いて笹が混じる。ヤマブドウの葉や、笹の葉にジャノメチョウの類がとまっている。クロヒカゲかな。


(写真: クロヒカゲ?)


山の奥からは「アオー、アオー」とアオバトの鳴き声が響く。「ヒー、ヒー」と笛のように鳴くのは、トラツグミだろうか。夏も深い。

森を抜けると、草深いスキー場のゲレンデに沿って登る。

頂上近くで、上下に跳ねるように舞うジャノメチョウの類と出会う。

目と足で追うと、白く咲くホザキナナカマドの花で吸蜜を始めた。

食事に夢中になっているので、まったく逃げない。では、じっくりと観察しよう。

蛇の目を縁取る金色のリングが魅力的。

翅裏の淡い波模様が楚々としているなあ。



(写真: ホザキナナカマドで吸蜜するヒメウラナミジャノメ)



山頂の眼下は、ほとんどが雲に覆われていた。

登ってきたスキー場コースの方角だけが雲が切れていて、マチを望む。

細かい雨が煙立つ。


(写真: 山頂に咲くヨツバヒヨドリに吸蜜するトンボエダシャク?)


帰路は森に入らず、スキー場ゲレンデの踏み跡を下ってみる。

開けた草原で、ホオジロがさえずっていた。

濡れた夏草でズボンがびしょぬれ。




(写真: 開けた林縁で囀るホオジロ)

オオムラサキ・ハンター

2009-07-22 22:18:54 | 札幌・小樽周辺の山々
藻岩山でオオムラサキを見たら欲が出た。別の場所へ移動。

すでにオオムラサキ・ハンターが5人。カメラが僕含めて2人。

捕る人と撮る人。なかなか両立難しく、案の定に捕る人が早い。

やっとの思いで、パチリ。



どんどん、オオムラサキがやって来る。僕より若くて親切そうな男性に聞いたら、黄色の網に引き寄せられるとのこと。

だから全員が黄色の捕虫網を持っていた。



さらに、匂い袋を樹にふら下げていた。この匂いにも寄せられてくる。

何の匂いですか?

「エビとかの腐った・・・」との返答。

匂いじゃなくて、臭いだった。

僕より年配の男性に、「何頭、捕りましたか」と聞いてみた。蝶マニアの人は、蝶を一頭、二頭と数える。

「いやいや、まだ七頭です」

みんながそんなに捕るのかと思うと、種の行く末が少々心配になる。

若い男性が一頭、捕まえた。

「ボロ・オス」ですと言って、網から逃がす。

長生きして翅が傷んだ個体は標本にならないのだ。この人は産卵するメスも大概は逃がすとのこと。

暗黙のルールがあると、知る。

僕の帰路、カメラ1人、ハンター2人がやってきた。



(写真: サカハチチョウ)

オオムラサキ見つけた

2009-07-21 22:58:35 | 藻岩山
ゼフィルスを眺めた後、藻岩山の一角で国蝶のオオムラサキに出会った。

突然、わさわさと大きく飛んで、我が視界に入ってきた。「あっ」と、心の中で叫ぶ。

近距離で野に舞う姿を見たのは初めて。実に大きい。

食草のエゾエノキにしばらくとまっていたが、翅裏は薄い黄緑で木の葉と見事に同化している。



やがて翅表を広げたが、その見事な青紫色に見とれてしまった。

都会に残された藻岩山の懐の深さを実感した一日だった。



藻岩山のゼフィルス

2009-07-20 19:22:53 | 藻岩山
二日前、円山に舞うゼフィルスが撮影できなかったのが残念で。

雨上がりの今朝も行ってみた。

気温が上がってくると、やはり同じ場所で、木々の高みを素早く飛ぶ。その数も多い。しかし、高いし、早いし。撮影はできなかった。


円山にいるのなら、藻岩山はどうだろう?

なんと、森の縁で出会うことができた。しかも、高みから降りていて、地面近くの草の葉にとまる。数も多い。

高みが好きなのか、地面が好きなのか。習性がよくわからない。

夢中になって眺めていると、気づいたことが。

見る角度によって翅の鱗粉は青から緑、そして緑から青へと。

鮮やかな輝きを複雑に変化させる。やっぱり、「秘められた森の宝石だ」と、思いを新たにする。


(写真: 翅表は青く輝く)


(写真: 翅表は緑に輝く)

さて、君の名は?

ジョウザンミドリシジミだろうか。


(写真: 緑かな、青かな? 何色に見えますか?)


30分ほどで、ゼフィルスは嘘のように姿を消した。入れ替わるかのように、ふたまわりほど小さくて青い、シジミが飛びまわる。

ルリシジミだ。ゼフィルスの仲間ではない、一般的なシジミチョウ。

子供のころ、野原や花畑でよく見かけたことを思い出した。

なつかしいなあ。


(写真: ルリジミ 翅裏は白い)


(写真: ルリシジミ ♂)


(写真: ルリシジミ ♀)

ほかに二種類のチョウを見た。

コキマダラセセリとフタスジチョウ。


(写真: フタスジチョウ)


(写真: コキマダラセセリ)

夏の円山

2009-07-18 14:03:10 | 円山
シマリスを見ようと、久しぶりに円山に登った。登山口に降りてきた男性二人は折り畳み式の捕虫網を持っていた。ゼフィルスが飛んでいるんだなと思う。

少し登ると、やはり青いシジミチョウが高い樹冠を、めまぐるしく飛んでいた。ときに2羽が交差しながら、上昇する。

葉にとまらないので撮影はできなかった。先週、長官山で撮影できたのは本当に幸運だったのだろう。(長官山のゼフィルス)

都心の森で宝石のように輝くゼフィルスが舞うなんて・・・その飛翔と色彩を心に刻む。札幌はなんと贅沢なマチなことか。

夏の森にはオオウバユリがあちこちで咲いていた。高さ1mを超える大型のユリ。花が咲く時期に葉(歯)がないので、大姥百合という。


(写真:オオウバユリ)

シマリスは四匹もいて、ギャラリーの高齢者も四人。話題は16~17日のトムラウシ山での遭難事故。痛ましいことだ。
そういえば、3年前に僕が登ったのも7月16日で、ひょうが降ったことを思い出した。

シマリスが出る尾根筋の木にエルタテハがとまっていた。少々、風が強かったせいか、じっとして動かない。

灰色の樹肌を飾る紅茶色のブローチのよう。


(写真: エルタテハ)


残雪の大雪山を行く 高原温泉~緑岳~白雲小屋~高根ケ原(3)

2009-07-15 20:30:14 | 表大雪
(写真: 高根ケ原は広大な溶岩台地)

白雲小屋から、いよいよ高根ケ原に下る。忠別岳までおよそ10キロに渡る広大な熔岩台地だ。大雪山の広さを物語る。

風衝地と呼ばれる吹きさらしの砂礫地で、積もることなく飛ばされた雪が断崖絶壁の斜面に堆積している。

スレート平を経て、一時間ほどで「高根ケ原分岐」に着く。左側の三笠新道を降りると高原沼だが、ヒグマの密度が濃くて、通行禁止となっている。

雪の斜面を凝視するも、動く黒い点はなく、なんかがっかり。ヒグマも見たい!


(写真: 白雲小屋から2.5キロ、高根ケ原分岐。行く手のピークは忠別岳)



(写真: 高根ケ原と雪壁斜面。ヒグマは見当たらず、裾野は高原沼)


(写真: 高原沼群のうち、最大の空沼。カラヌマだけに秋には干上がっている)


高根ケ原分岐の周辺はお花畑となっていて、大雪山固有種のキバナシオガマやホソバウルップソウの大群落が広がっていた。

初めて見る新鮮な光景が胸をつく。だから、わくわくする山歩きがやめられない。


(写真: 高根ケ原分岐のキバナシオガマ群落)



(写真: 高根ケ原分岐のホソバウルップソウ群落。正面は東大雪の石狩連峰)


30分ほど進むと、コマクサの群落が続く。ちょっとした出会いの期待が高まり、胸躍る。

コマクサはウスバキチョウの幼虫が唯一食べることができる「食草」だ。

やがて黄色のチョウがせわしく飛び交う。蜜を吸い、ハイマツにとまり、砂礫で休み、2羽で交差したりと、忙しい。

この周辺を平ケ岳というらしいが、平坦なのでどこがピークかわからない。標高は1700mほどだ。

ウスバキチョウは氷河期からの生き残りで、大雪山固有のチョウ。小型のアゲハチョウ類で、モンシロチョウほどの体長だ。

6月28日、赤岳のコマクサ平で撮影できなかっただけに、今回はなんとかフレームに収まってくれて、楽しいと喜ぶ。


(写真: コマクサの群落)


(写真: 蜜を吸うウスバキチョウ)



(写真: 砂礫地で休むウスバキチョウ)


コマクサの群落が途切れたところで、来た道を振り返る。

雪渓断崖の向こうに、2時間半ほど前に立った緑岳がそびえていた。

5時40分に入山して、4時間半あまり。忠別岳への未練を残して、ここで戻ることにする。


(写真: 高根ケ原の雪壁と緑岳)

■登山記録
05時40分: 高原温泉から入山
06時20分: 第一花園
06時45分: 雪渓抜けてハイマツ帯に
07時50分: 緑岳の山頂(10分休憩)
08時15分: 板垣新道分岐
08時40分: 白雲小屋(10分休憩)
09時45分: 高根ケ原分岐
10時15分: コマクサ群落(平ケ岳周辺)
14時20分: 登山口に戻る

大雪山高原温荘 700円 
登山口、標高1260mの一軒宿。源泉かけ流しで「日本秘湯の会」会員。青みがかった白濁の湯が気持よい。露天風呂から見える忠別岳の雪壁が美しい。

■緑岳の登山歴
04年09月26日: 高原沼周遊~高原温泉~緑岳
05年08月14日: 高原温泉~緑岳~白雲小屋
09年07月12日: 高原温泉~緑岳~白雲小屋~高根ケ原


(写真: 05年8月14日の第一花園)


(写真: 04年9月26日、高原沼から見た緑岳)



(写真: 06年9月30日、空沼・・・カラヌマから見た高根ケ原)


















残雪の大雪山を行く 高原温泉~緑岳~白雲小屋~高根ケ原(2)

2009-07-14 22:35:38 | 表大雪
(写真: 緑岳山頂からズームインした白雲小屋)

緑岳山頂から砂礫地を下って、板垣新道を左に折れて白雲小屋を目指すことにする。

ミヤマキンバイなどの高山植物が咲き競う砂礫地には、大雪山固有種のキバナシオガマが、ぽつぽつと咲いていた。

初めて見るので、ちょっと感動する。


(写真: 板垣新道に向かう砂礫地。花はミヤマキンバイ)



(写真: 大雪山の固有種・キバナシオガマ)

天然記念物の高山蝶、ダイセツタカネヒカゲやアサヒヒョウモンがごく普通に飛び交う。

その数、意外なほど多いが、実に地味。気に留める登山者もいない。


(写真: ダイセツタカネヒカゲ)

0.7キロで板垣新道分岐。6月28日に赤岳・小泉岳方向から来た時には咲いていなかったチョウノスケソウが、早や終盤で残花のみ。

その時、咲き始めていた大雪山の固有種ホソバウルップソウもすでにピークを過ぎていた。

一方で、咲いていなかったタカネスミレが最盛期。砂礫を黄色く染めていた。

大雪山に咲く花々の花期の短さに、出会いの一期一会をかみしめる。


(写真: 早や残花のチョウノスケソウ)


(写真: 板垣新道分岐に咲くホソバウルップソウ。目を凝らすと雪渓にポツンと白雲小屋)


(写真: タカネスミレの群落)


(写真: タカネスミレのアップ)

板垣新道の大半は残雪に覆われている。カッコウが鳴いたので探したら、先日来た時とまったく同じ梢にとまっていた。テリトリーが決まっているのだろう。

遠くて撮影できなかったのが心残り。その代り、雪渓に響くビンズイの高い歌声に疲れが吹き飛ぶ。緑岳山頂から50分ほどで、白雲小屋に。

目指す溶岩台地の高根ケ原の広がりが、さらに歩く意欲をかきたてた。雲も切れて、うっすらだが縦走路も確認できる。

厳冬の強風で吹き飛ばされた雪が、向って左側の断崖斜面に積もって万年雪を形成していた。


(写真: 夏を歌うビンズイ)


(写真: 白雲小屋から望む溶岩台地・高根ケ原)



(写真: 高根ケ原にズームイン)



残雪の大雪山を行く 高原温泉~緑岳~白雲小屋~高根ケ原(1)

2009-07-12 22:25:50 | 表大雪
(写真: 雪渓を抱える緑岳)

緑岳(2020m)から白雲小屋を経て、広大な高根ケ原を歩こう。

深夜に札幌を出発し、午前5時40分、大雪山高原温泉の登山口から入山する。

急登を経て、40分ほどで台地に出ると第一花畑、第二花畑と続くが、未だに大雪渓に覆われていている。雪解けに咲く花々の季節は1ケ月後か。

凛とした早朝の空気、目指す緑岳は流れる雲の切れ間から、そっと見え隠れ。


(写真: 最後の雪渓を抜けるとハイマツ帯に。緑岳も間近に迫る)


雪渓を抜けると、ハイマツ帯に入いる。雨に濡れたピンク色のコケモモと白いエゾイソツツジのコントラストが鮮やかだ。

自然の妙に感嘆していると、やがて緑岳南斜面の岩場の急登が始まる。


(写真: コケモモとエゾイソツツジ)


(写真: コケモモ)


(写真: エゾイソツツジ)

ごつごつとした岩と格闘しながら高度を上げると、雲に包まれた対岸の高根ケ原の全容が迫ってくる。

あまりに広い、大雪山の大きさ。

高根ケ原に着くには、さらに2時間以上かかるだろう。

それまでに、「どうか雲が切れてくれますように」と念じた。


(写真: 緑岳斜面から望む高根ケ原)

登山口から2時間ほどで、緑岳の山頂に達する。

さっーと、ベールをひく雲間から高根ケ原、旭岳、白雲岳が気高い朝の光に照らされる。

自らの足で天空の頂に立った者だけが、目の当たりにする神々しさ。

至福の時間に、行き交う登山者の顔も輝いていた。


(写真: 緑岳山頂。左が旭岳、右が白雲岳)


(写真: 旭岳、熊ケ岳、白雲岳)


(写真: 雲に包まれている高根ケ原)





ゼフィルスが舞う森

2009-07-11 13:31:02 | 夕張山系
自宅から40キロほど、長沼町の長官山に。昼までに戻る用事あるので、きょうはこの低山と決めた。

出会いを期待していたのはゼフィルス。サフィアのように輝くミドリシシジミ類のことで、語源はギリシャ神話の「西風の神」だという。

長官山(254m)は、田園地帯に浮かぶなだらかな丘陵。

馬追温泉の登山口から入るが、茂った下草が前日の雨で濡れていて、長靴にすればよかったと悔やむ。靴が沁み、ズボンも濡れた。


(写真: 長官山の連なり)

落葉広葉樹の天然林にトドマツが整然と植林されていた。

少々、暗い森に夏の訪れを告げるイチヤクソウやクルマユリが涼しげに咲いていた。

日差しがないためか、蝶との出会いもなく、あっというまに山頂に着く。

展望台と小さな看板があった。明治24年、第3代北海道長官が眼下を展望したのが山名の由来だという。


(写真: クルマユリ)


(写真: 山頂から望む田園風景)

20分ほどすると雲間から光が差し、気温も上がって、樹冠に蝶が舞い始めた。

思っていたより大きなシジミ蝶だ。翅を揺らす合間に、青い色も肉眼で確認できる。

残念ながら、僕には種の識別が難しく、おそらくオオミドリシジミか?

それともジョウザンミドリシジミ?

木の葉の高い位置にとまってテリトリーを誇示している。

実に鮮やかなエメラルド色。森に秘められた宝石のようだ。

そっと近づいて、下から見上げたら翅の裏は茶色だった。彼は20分ほど舞って、視界から消えた。


(写真: オオミドリシジミ?)


(写真: 翅の裏側は茶色)

■登山記録
08時30分:入山
08時55分:山頂
09時35分:下山開始
10時00分:登山口に戻る

右腕がかゆくて視線を向けると、小さな虫。ダニかも。3匹見つけて振り落とした。夏草が茂っているところは注意が必要だった。



ジョウザンシジミ

2009-07-04 23:11:15 | 札幌・小樽周辺の山々
5月のジョウザンシジミの翅は青く、7月に羽化した個体は黒いという。比較してみようと、八剣山へ。

結果は、その通り。広げた翅は真っ黒だった。

ここの個体は5月でもマリンブルーというより黒味が濃いと、(コメントを寄せて頂いたエルモさんから)教えられたが、今回は一段と黒かった。



(写真: ジョウザンシジミ)

(5月のジョウザンシジミ)

コトコトと音がして振り返ったら、ヘビ。近くに鳥の羽根も散乱していた。

マムシ!?  蝶の観察にも命を守る注意が必要だ。

帰宅して調べたら、幼いアオダイショウらしく、であれば安心か。


(写真: 青くないけれど・・・若いアオダイショウかな?)
→(訂正: やはりマムシのようです)

空中で毛虫が泳いでいた。初めて見る光景。樹から落ちてゆらゆらと飛んでいるのかなと思ったら、糸がついていた。

こうやって移動するのだなあ、と感心する。


(写真: 初めて見たぞ 空中遊泳する毛虫)



すいすいと飛ぶ横長の黒い蝶が多かった。近づくとすぐ逃げる。高い所にとまって周囲を見張っているかのようだ。

コミスジというらしい。横長の翅に白い筋。「小三筋」という意味なのかしら。


(写真: コミスジ)

コミスジを目で追っていたら、エゾノキリンソウにヒョウモンチョウの類がとまっていた。僕には具体的な種名の識別は無理。

エゾノキリンソウはジョウザンシジミの幼虫の食草だが、蜜は皆さん、ご自由に。



(写真: ヒョウモンチョウの類)




残雪の大雪山を行く コマクサ平~赤岳~小泉岳~白雲小屋(3)

2009-07-04 04:39:29 | 表大雪
                          (写真: 尻滑りが楽しい第四雪渓)

6月28日の登山記録(3)

赤岳山頂から一つ目の雪渓(第四雪渓)を下る。登った時は、ぜいぜいと息を切らして夢中だったので、意外とその急勾配を意識せず。

しかし下りは違う。膝に力を込めて、滑り落ちないようにと意識を集中させた。最初の雪渓をクリアしたら、欲が出た。尻滑りの遊び心が。

ザックからマットを出して、二つ目の雪渓(第三雪渓)を滑降。最初は足で制御しながら、次は体をまかせて、一気に。

口が開いて、笑みが裂けて顔全体に広がった。

すっきり、楽しく。

登ってきた山スキーヤーが、僕の眼を見て笑っていた。

あっというまにコマクサ平に着く。大雪山固有の高山蝶が舞うまで、1時間と決めて待つ。

やがて雲が切れて日が差す。と、どこからともなくウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲが舞い始めた。

いずれも天然記念物で採取は禁止されている。

はるか氷河期に大陸の北方から渡ってきて、寒冷なこの地を終の住処とした。


(写真: 大雪山の固有種 アサヒヒョウモン)


ギャラリーのカメラマンは4人。なぜか僕だけがウスバキチョウを撮れなかった。人気の高い原始的なアゲハチョウの仲間だ。

去年7月に大雪山の別の場所でも出会ったが、このときも撮影はできず。(080721氷河期を伝える高山蝶)

出会いに喜び、また、来年と誓う。


(写真: 大雪山と日高山脈の固有種 ダイセツタカネヒカゲ)

■登山記録
06時10分:銀泉台から入山
07時10分:コマクサ平
08時35分:赤岳山頂
09時00分:小泉岳分岐 緑岳方向に進む
09時40分:白雲岳避難小屋に向かう分岐
10時05分:白雲小屋
10時45分:白雲岳分岐 小泉岳方向に進む
11時20分:赤岳山頂
11時50分:コマクサ平
13時00分:コマクサ平 出発
13時50分:銀泉台・登山口に到着

黒岳の湯
層雲峡温泉唯一の日帰り温泉。いつもお世話になっています。
銀泉台登山口にあった割引券で100円引きの500円。柱状節理の岩峰を望む露天風呂が良し。
ひと束150円のアスパラをふたつ買って帰宅。

■赤岳 登山歴

03年9月15日:銀泉台~赤岳~白雲岳
05年7月03日:銀泉台~赤岳~小泉岳
05年9月24日:黒岳~北海岳~白雲岳~小泉岳~赤岳~銀泉台
07年9月17日:銀泉台~赤岳~小泉岳~白雲岳~北海岳~黒岳
          記録(プロローグ)  記録① 記録② 記録③

09年6月28日: 銀泉台~赤岳~小泉岳~白雲小屋



残雪の大雪山を行く コマクサ平~赤岳~小泉岳~白雲小屋(2)

2009-07-02 21:11:33 | 表大雪
(写真: 吹きさらしの稜線。背景は北鎮岳)

6月28日の登山記録(2)

赤岳山頂は、予想外の強風。体の軸に力をこめながら、ふきさらしの稜線を行く。30分ほどで小泉岳に。

標識がなければ、どこがピークかわからない平坦な砂礫地だ。周辺は大雪山固有の高山植物が咲き乱れる有名なポイント。

残念ながら花期には少々早かった。それでも、ホソバウルップソウのつぼみがずらりと並び、そのうちの数株がぽつぽつと花をつけていた。




(写真: 大雪山固有種のホソバウルップソウ)


エゾオヤマノエンドウは、それなりに咲いていて、砂礫地を紫色に染めていた。

花を探しながら緑岳に向かう綾線を進む。

固有種ではないが、楽しみしていたチョウノスケソウがまったく咲いていなかったのには、少々がっかり。

しかし、残雪模様のトムラウシ山から十勝岳連峰の連なりが鮮やかだ。

この世にあらざる光景に見とれるばかり。


(写真: 大雪山の固有種 エゾオヤマノエンドウ)


(写真: エゾオヤマノエンドウとトムラウシ山)



(写真: ズームインしたトムラウシ山)


40分ほど進み、白雲岳避難小屋に向かう分岐を右に下る。小屋の周辺は広大な残雪に覆われていた。

ここから白雲分岐、小泉岳分岐と、ぐるりと進んで赤岳に戻る。

振り返ると、ぽつんと小さな小屋の背景に再びトムラウシ山が、でーんと雄大な様で構えていた。



(写真: 目を凝らすと白雲小屋が見えます)



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■05年7月3日のチョウノスケソウ(白い花) ↓