「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

氷河期伝える高山蝶

2008-07-24 21:36:23 | 表大雪
           (写真:当麻乗越から見下ろす沼ノ平)

21日の登山記録②:
裾合平分岐を過ぎると、やがてピウケナイ沢に。雪解け水を集めた勢いが強く、踏み石の見当がつかない。浅瀬を探してバシャバシャと足を濡らして渡る。ここから尾根を登ると当麻乗越(とうまのっこし)に着く。見下ろすと沼ノ平の池塘群が広がる。たおやかな溶岩台地が、大雪山の大きさを物語る。

一気に斜面を登ると、雲が行き交う当麻岳(1967m)だ。ここから安足間岳(2200m)、比布岳(2297m)、北鎮岳(2244m)、中岳(2113m)と一気に縦走する。残念ながら雲が多く展望は、今ひとつさえない。しかし、稜線に群落を作る花々が美しい。
うきうきして歩いていると、コヒオドシがたくさん舞っていた。北海道では平地の蝶だが、夏になると蜜に引き寄せられて高山に集まってくる。
   
   (写真:コヒオドシ)

コヒオドシの群に加えて、豹柄の蝶も、せわしく動く。あとで調べたら天然記念物のアサヒヒョウモンだった。その名は「旭岳の豹紋蝶」という意なのだろう。日本では大雪山にだけ生息する高山蝶。北海道が大陸と地続きだった氷河期に北方からやって来た。予期せぬ出会いが楽しい。

   
   (写真:砂礫で休むアサヒヒョウモン)
   
   
   (写真:横から見ると、荒々しい豹紋)

風が吹き抜ける砂礫地では、低く飛ぶ薄黄色の蝶も。天然記念物のウスバキチョウだ。これも思わぬ出会いで、「あっ」と声をあげてしまった。しばらく待つと数羽が飛び交う。原始的なアゲハで、この蝶も大雪山だけに棲む氷河期の遺存種だ。せわしく、ひらひらと舞い続け、残念ながら撮影はかなわなかった。周囲を見渡すと幼虫の食草「コマクサ」が砂礫地を赤く染めていた。
大雪山の、遥か氷河期に連なる時空を歩く。

   
    (写真:風衝地に咲くコマクサ)