「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

雨の藻岩山 木の葉の音楽会

2008-05-25 16:47:36 | 藻岩山
(写真:「お化けだぞ」 カツラの木の葉)


きょうは小雨なので遠出をあきらめ、2ケ月ぶりに藻岩山へ。森へ入った途端、草の匂いが立つ。まだ5月末だというのに、夏の始まりを感じた瞬間。
森が傘となっているので、あまり濡れることもない。一枚の葉が集まった大きな力に感嘆する。森林局が樹幹に名札をつけているので、これが「オヒョウ」で、これが「ハルニレ」で、これが「シナノキ」と、確認しながら登ることにする。雨の日の楽しみが増えた。
尾根の高みから谷を覗くと、カツラの枝葉を見下ろす格好となった。カツラは巨木なので、いつもは下から見上げることが多い。
初めて見下ろしたカツラの枝葉は、まるで人の手がぶらぶらと垂れているようだ。今にも「お化けだぞ」とささやきそう。

雨がカツラの木の葉を鍵盤のように押す。リズムが刻まれ、森の音楽会が始まった。通い慣れた森でも、思わぬ出会いがある。

「馬の背」で白いスミレを探す。6月に咲く初夏の花、エゾノタチツボスミレだ。
ひっそりと2輪だけ、咲いていた。


(写真:エゾノタチツボスミレ)

林道歩きで迷沢山へ

2008-05-18 20:55:54 | 札幌・小樽周辺の山々
(写真:上平沢林道から見た春紅葉)

定山渓の迷沢山へ。上平沢林道ゲートから、沢沿いの林道をひたすら歩く。今年の春紅葉は美しい。例年にない芽吹きの早さに加えての、最近の低温続き。紅葉の期間も長いような気がする。
雪解け水を集めて流れる沢の響きも気持ちよい。沢沿いにかたまって咲く黄色のエゾノリュウキンカ、青紫のシラネアオイにも、ほっと癒される。山菜採りの人はゲートの開け方を知っているようで、車が2台行き交う。この山は頂まで、車で行けるのだ!

(写真:エゾノリュウキンカ)

1時間半ほどで見晴らしの良い峠に。手が届くような手稲山の、たおやかな容姿が素敵だ。この先も林道が続くが、右側のポコが迷沢山だった。施業林ゆえに、少々荒れ気味の風情に乏しい山頂ではある。

(写真:迷沢山から見た手稲山)

山頂に標識はなく、三角点と登頂者が記念に残した杭が、ひとつ、ふたつあるだけ。この杭は、記載内容から歴代の自衛隊の冬季スキー訓練の人たちが残したように読み取れる。定山渓天狗岳や余市岳の展望もすばらしい。「北海道夏山ガイド」の最新版に、このコースが紹介されたせいか、僕のあとに次々に7人が到着し、わびしい山頂が、ぐっと賑やかになった。

(写真:余市岳・臼井岳の山並み)


(写真:無意根山・定山渓天狗岳)

帰路、クマゲラに出会ったり、エゾアカガエルの奇妙な鳴き声に驚いたり。
単調と思いがちな林道歩きだが、退屈もせず、興味津々の楽しさを満喫。

9時55分:上平沢林道ゲートから入山
10時10分:送電線(1本目)
10時50分:送電線(2本目)
11時20分:峠~山頂
11時55分:下山開始
13時30分:下山


洞爺湖の中島

2008-05-13 23:35:21 | 室蘭・登別周辺の山々
(写真:洞爺湖の中島~壮瞥公園から撮影)

洞爺湖に浮かぶ大小4つの島を中島と呼ぶ。メインの島が大島で、一番高い地点が標高454.8m。これを西山と呼ぶ。そんなことは、何も知らずに11日の日曜日、行き当たりばったりで中島へ。

(写真:大島の西山)

遊覧船は往復1300円。30分ごとに発着するので、島で数時間のハイキングが可能だった。売店で入山届をすると、ゲートの鍵NOを教えてくれる。エゾシカが岸辺に出て来るのを防ぐため、防護柵が設置されている。ゲートの中に入ると、遊歩道があるが、林床は荒れている。下草がシカに食べられて無残。フッキソウとハンゴウソウが異常に多く、これはシカが嫌うためか。樹齢数百年を彷彿させる太い樹幹を持つカツラ、イタヤカエデ、トチノキなども多く、本来は底力のある森なのだろう。春もみじと新緑が美しく、湖から森に渡る風が心地よかった。

(写真:トチノキ)

50年前に観光施設から逃げ出した3頭のシカが400頭に増えて、森が痛んだという。かつて150頭まで間引いたが、この1年で250頭まで増えたそうだ。動物と人間、そして森の関係をいろいろと考えさせられる環境だ。

(写真:雄のエゾシカ)

遊歩道は40分ほどで行き止まり。台風で倒れた樹齢400年ほどのアカエゾマツが目印だ。帰路、西山に登る登山路に気づく。朽ちかけた木の階段もあり、昔は地元の人に親しまれていたのだろう。30分で着いた頂上には無線のアンテナと二等三角点、それに小さな石碑。雲が多かったがニセコ連山と羊蹄山の見晴らしが良い。有珠山と昭和新山は木々の間から展望できた。

春耕とニセコの山々

2008-05-12 23:15:49 | 羊蹄・ニセコ周辺の山々
(写真:尻別岳と羊蹄山~喜茂別町で撮影)

11日の日曜日。サミットが開かれる洞爺湖の中島に登ろうと、思い立つ。
春うららの道中は、春耕が続く。背景にすくっと立つ山、また山。ドライブしてていても
山旅の気分に。


(写真:無意根山・中岳・喜茂別岳~中山峠で撮影)


(写真:ニセコアンヌプリを主峰とするニセコ連山~留寿都村で撮影)


(写真:昆布岳~留寿都村で撮影)

ソラチコザクラ咲くピセナイ山 新緑に名残り雪

2008-05-10 22:35:15 | 日高の山々
日高のピセナイ山へ。静内キャンプ場から、まずは5キロの林道歩き。左手に雪解け水を集めたピセナイ沢、右手に崖が続く。その岩間の一面に赤紫の花々。ソラチコザクラだ。小さな花が谷間の岸壁に寄り添って、静かに空を見上げていた。

(写真:ソラチコザクラ)

山は春もみじから新緑へ。稜線の高みは、昨夜の真新しい雪を冠って白く輝いていた。新緑と季節はずれの名残り雪。山歩きで出会う予期せぬ自然の妙に心が躍る。

(写真:新緑の山に名残り雪)

林道では、時々、獣の臭い。よく見るとエゾシカの獣道があちこちに。念のためクマ避けの笛を鳴らしながら進む。

(写真:エゾシカ・・・お尻の白が目立った)

1時間半ほどで、林道から離れて登山路に。急登の斜面は淡い雪に覆われ、オオサクラソウも白い帽子を被っていた。木の枝から次々と落ちる雪で僕の帽子も濡れる。

(写真:雪を被ったオオサクラソウ

岩にはヒダカイワザクラの姿も。ソラチコザクラの葉は「へら」状で、ヒダカは「もみじ」風かな? 被った雪が解けた水滴が涙のよう。


(写真:ヒダカイワザクラかな?)

素敵な光景に見とれながら行くと、登山路にクマの糞。大きい、新しい。萌黄色なので、
新鮮な葉をいっぱい食べているのだろう。確かに周りはギョウジャニンニクが多い。
雪に足跡がないので、新しいといっても、半日以上はたっている。それでも、今度は本気で笛を鳴らしながら、スタスタと進む。1人先行者がいるので、距離を縮めたかった。


6合目から周りの展望が効くようになる。残念な事に、天気は下り坂で、雲がずいぶんと増えた。昨夜は冷たい風も強かったのだろう。木々は凍てつき、平地とは別世界の神秘に包まれていた。
8合目を過ぎたところで、先行者が下りて来た。天候が悪く、展望がないとのこと。
ピセナイ山(1027m)の頂きからは、日高山脈の大展望が得られるはずだった。残り15分くらいで頂上だが、クマの気配も気になり、ここで先行者の下山に合わせることにした。頂上からの大展望は僕の未来への贈り物、楽しみが増えた。

(写真:樹氷の山々)

7時50分:静内キャンプ場ゲートから入山
8時20分:ピセナイ林道ゲート(登山口まで4キロの表示)
9時20分:登山口
10時20分:六合目(静内と三石の境界)
10時40分:先行者と出合い、Uターン
12時35分:静内キャンプ場に戻る



キャンプ場に戻ってきたら、オオルリの雌雄が数羽、移動していた。これから繁殖するため、見合い中なのか。旅の終わりに、幸福の青い鳥。





定山渓の朝日岳は花爛漫

2008-05-06 20:35:02 | 札幌・小樽周辺の山々
(写真:シラネアオイとカタクリ)

カタクリとシラネアオイを求めて定山渓の朝日岳(598m)に。5月中旬以降が花期だが、今年は花暦が早いので、ゴールデンウィークが見ごろと狙ってみた。

新緑に包まれた森では、ツツジのムラサキヤシオが陽射しを受けて赤く輝いていた。オオカメノキの白花も目立つ。あちこちで赤白の競演が続く。

(写真:ムラサキヤシオ)


(写真:オオカメノキ)

やがて湿気のある斜面に。カタクリとシラネアオイが入り乱れて咲く、お気に入りの場所だ。逆光で紫色が浮き立つ。

(写真:シラネアオイ)


(写真:カタクリ)

紫の競演の舞台が過ぎると、トドマツの森を一気に上り、頂上に向かうはずだったが、別コースとの合流点付近で、直進してルートミス。戻ると右折する道があった。目印の赤テープに気づかなかった。きょうも反省。直進のクセを直さねば。
山頂は木が繁っていて、展望が開けていない。木々の間から目を凝らすと、鋭鋒の定山渓天狗岳や残雪の余市岳を望むことができた。

10時25分:岩戸公園コースから入山
11時25分:豊林荘コース合流点でルートミス
11時45分:山頂
11時55分:下山開始
12時45分:登山口に戻る

※これまでの登山暦
03年5月18日  カタクリとシラネアオイが見ごろ
03年6月28日
05年5月14日  積雪多く途中で引き返す

濃昼山道を行く

2008-05-03 22:19:14 | 増毛・樺戸の山々
(写真:萌黄の新緑と桜)

濃昼(ゴキビル)山道は1858年(安政5)に開通し、100年ほど使われたという。2005年に保存会が整備して再開通させた。全長8キロのコースだが、石狩市厚田の「濃昼バス停」前から入山し、中間の濃昼峠(357m)まで歩くことにする。渓流沿いに踏み跡をたどるが、30分ほど進んで間違いを確信。治水工事などの踏み跡や赤テープに惑わされてしまった。おまけに渓流で滑ってお尻を強打。濡れてしまった。引き返すと登山口から、すぐのところに山道ルートがあった。登山口から右に曲がるのが正解。標識が倒れていて気づかなかった。

山道ではキクザキイチゲが咲き乱れ、道の脇が白く染まっていた。標高が上がるに連れて、オオサクラソウの群落が続く。赤色が目に染みる。
萌黄色の森には満開のエゾヤマザクラが淡いタッチで桜色を添えていた。春うらら。
 
(写真:キクザキイチゲ)


(写真:オオサクラソウ)

濃昼峠にさしかかると、萌黄と桜に絶景の日本海が加わり、見とれてしまった。

(写真:濃昼峠から浜益を望む)

下山中に、ひらひら舞う小型のアゲハチョウ。「春の女神」と形容されるヒメギフチョウだ。陽射しが出てきて動きが活発になったのか。「オクエゾサイシン」だけに卵を産み付けて、幼虫はその葉だけを食べる。桜に加えて春を満喫した。自然に感謝。

(写真:ヒメギフチョウ)



 9時25分:渓流から引き換えして、改めて山道入り
 10時50分:濃昼峠
 11時25分:下山開始
 12時35分:登山口に戻る