「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

原始ケ原の富良野岳

2010-09-26 23:25:00 | 十勝連峰
                                                 (写真: 原始ケ原とトウヤウスベ山)

原始ケ原コースから富良野岳(1912m)を目指す。

標高700mに位置する富良野・ニングルの森から入山する。林道奥の広い駐車場には車が一台。登山名簿に記載はない。

もっと大勢の登山者がいるのかなと思っていたので、少し不安も。

標高1000m付近にひろがる原始ケ原までは滝コースと林間コースのふたつがあるが、滝コースは雨被害のため閉鎖されていた。

一時間ほど森を進み、大きな滝を越える。急登をつめて、水の音が次第に風の音にバトンタッチすると、忽然と広大な湿原が出現する。

これが、原始ケ原。枯れた秋色が日射しを受けてゆらゆらと輝き、トウヤウスベ山が青空に凛と構えている。

山頂付近は樹氷で白く染まっていた。前夜は寒冷で強い風が吹いたのだろう。

行く手の富良野岳は、いまだに白い雲に包まれたまま。


(写真:トウヤウスベ山の樹氷)


(写真:行く手の富良野岳は雲の中)

30分ほど湿原の中を進む。木道はなく、赤いテープと踏み跡だけが頼りだ。

黄金色の湿原が波のように揺れて、雲が刻々と姿を変える。

大きな空間でひとり静かに、吹き渡る風の形を眺めていた。

雲の隙間から白い雪に覆われた山肌が見え、一瞬だが端正な富良野岳が姿を現す。

台風が去り寒気が入ってきている。吹きさらしの稜線は猛烈な風で厳しいことだろう。

原始ケ原と冠雪の富良野岳。その気高さに充分満足して、きょうはここまで。

来た道を戻ることにした。


(写真: 富良野岳稜線の積雪)



(写真:原始ケ原と富良野岳)

■登山記録:2010年9月26日
07時05分:ニングルの森・登山口から入山(林間コース)
07時30分:天使の泉
07時45分:広原の滝
08時00分:原始ケ原・富良野岳分岐
08時30分:ここでストップ。
09時10分:雲が抜けて富良野岳が現れる
10時40分:登山口に戻る

吹上温泉 白銀荘 600円 上富良野町の公共温泉 熱い源泉が気持ちよい。

後藤純男美術館 1050円 人と自然の呼吸を重ね合わせる日本画家の個人美術館 十勝連峰や田園地帯を望む
喫茶テラスも素敵だ。

■これまでの登山歴
03年07月19日:十勝岳温泉登山口~富良野岳
04年07月19日:十勝岳温泉登山口~富良野岳~三峰山~上富良野岳


(写真:十勝連峰 中央付近の冠雪した三角の頂が富良野岳)

測量山の鷹渡り

2010-09-23 22:29:50 | 室蘭・登別周辺の山々
                                                             (写真: 測量山)

南に帰る鷹の渡りが見たくて、室蘭の測量山(199m)へ。山頂から2キロほど離れたマスイチ展望台で待つこと2時間。

天気予報は晴れだったが、あいにくの高曇り。

上昇気流も弱かったのか、ハチクマ1羽とチゴハヤブサ1羽が旋回しただけ。

それでも、大勢のバードウォッチャーの談義が教科書となって、あきることがない。

美しい入り江の対岸に、道南の恵山や駒ケ岳がくっきりと見えた。


(写真:マスイチ海岸)


(写真:ハチクマ)


(写真:ハチクマ)


(写真:対岸の恵山)


(写真:対岸の駒ケ岳)

鳥見を切り上げて、測量山へ。山中にある園地の駐車場から歩いて6分で山頂に。

海と山が複雑に入り組んだ室蘭のマチ並みをぐるりと見渡し、歓声をあげる。


(写真:測量山の山頂から見た白鳥大橋方向)


■登山記録 2010年9月23日
11時31分:園地駐車場
11時37分:山頂
登別温泉 夢元さぎり湯 390円
温泉街にある銭湯。青白濁の硫黄泉がすばらしい。


紅葉ウォーク 当麻乗越

2010-09-20 22:01:46 | 表大雪
(写真:紅葉のチングルマと当麻岳の山並)


日本一早い紅葉の旬を求めて、大雪山の旭岳ロープウェイ駅(1600m)から当麻乗越(1680m)までを歩く。標高差のあまりない往復4時間ほどの山歩き。

今年のウラジロナナカマドの赤は色鮮やかというよりは、すでに枯れ始めたものも。猛暑ゆえに、色づく前に枯れたのか。

とは言っても、広大な山体の斜面を駆け下る錦秋の帯は、大雪山ならでは。

どこを見ても、唸るようなスケールの大きさ。


(写真:行く道を振り返っても広大な紅葉)


(写真:稜線下手の岩コブが当麻乗越)


ロープウェイ駅から1時間ほどで裾合分岐。ここから湿地帯に入り、ピウケナイ沢に下る。

この沢は勢いが強く、水量も多いので渡るべき飛び石が見当たらない。

前の人につられて、えいやっと、靴を脱いで裸足で渡った。心地良いというよりは、さすがに冷たかった。


(写真:ピウケナイ沢を渡って振り返ると、大雪山最高峰の旭岳)


当麻乗越は頂きの当麻岳と裾野の湖沼群を結ぶ見晴らしの良い岩尾根。

目の前に、並立して構える旭岳と熊ケ岳をじっと見つめてみる。なんともぜいたくな時間。

眼下の湖沼の数々も、きらきらと輝いていた。

吹きさらしの岩尾根。大雪山を渡る風は、頬を刺す秋の肌ざわりだった。


(写真:当麻乗越から望む旭岳と熊ケ岳)


(写真:当麻乗越から望む湖沼群)

■登山記録:2010年9月20日
11時25分:ロープウエィ駅から入山
12時25分:裾合分岐
12時40分:ピウケナイ沢
13時05分:当麻乗越(上り1時間40分)

13時50分:下山開始
15時35分:ロープウェイ駅

大雪山白樺荘ユースホステル 500円
ログハウスの清新な宿。小さいが心地良い。

■「当麻乗越」の登山歴
.08年7月21日
 旭岳駅~当麻乗越~当麻岳~安足間岳~比布岳~北鎮岳~中岳~裾合平~旭岳駅
06年9月24日
 愛山渓~沼の平~当麻乗越~当麻岳~永山岳~愛山渓
・05年9月17日 
 愛山渓~永山岳~比布岳~安足間岳~当麻岳~当麻乗越~沼の平~愛山渓


ギンザンマシコと出会った 美瑛岳 

2010-09-14 19:49:52 | 十勝連峰
                                                (写真:望岳台から見た十勝岳)

9月12日(日)の登山記録:

美瑛町白金温泉の望岳台から十勝連峰の美瑛岳(2052.3m)を目指す。

逆光に浮かぶ十勝岳を真正面に見ながら、泥流跡の広大な砂礫斜面を行く。

40分ほどで、十勝岳と美瑛岳の分岐に達し、左へ折れる。

尾根を登るとハイマツが目立ってくる。登山路の脇には白く結実したシラタマノキが延々と続く。まるで真珠を撒き散らしたかのよう。


(写真:シラタマノキ)


進行方向にツインの山々。左が美瑛富士、右が目指す美瑛岳。山頂は鋭い岩塊で、登る意欲を刺激する。

9月半ばというのに、青々とした山肌。猛暑の影響なのか、期待していた紅葉は1週間ほど遅れているようだ。

登山路の周辺は雲ノ平と呼ばれていて、やがて美瑛岳の右側に爆裂火口が見えてくる。

色彩の乏しいこの時期、雲ノ平に咲くエゾノオヤマノリンドウの青紫が目に優しい。


(写真:左が美瑛富士、右が美瑛岳)


(写真:美瑛岳と爆裂火口 雲ノ平のエゾノオヤマノリンドウ)

深くえぐれた涸れ沢をロープと鎖に助けられて越えると、次のポンピ沢まで一気に下る。

せっかく登ったのに下るのは残念と思っていたら、ヒグマの大きな落し物に出会う。

一瞬どきっとしたが、内容物にナナカマドの赤い実が多い。なんだか秋だなと実感。

クマ対策は先行者に追いつくこと。数百メートル先に数人の姿が点々としているので、歩くペースを早める。


(写真:ヒグマの落し物)


(写真:ポンピ沢)

ポンピ沢を越えると、今度はかなりハードな急登。呼吸を整えたら、下の方から「おーい、おーい」という年配の女性の声が聞こえてきた。

クマ対策で大きな声を出していたのだろう。

急登をしのぐと美瑛富士小屋と美瑛岳の分岐に至る。ここで男性二人の背後に追いつく。これでクマへの恐怖心も消えてしまった。

分岐からは美瑛岳のツンと尖った山頂を望む。斜面の高山植物はポツポツと色づき始めた程度で、やはり秋の訪れは遅いようだ。



(写真:美瑛富士小屋と美瑛岳の分岐)

分岐を越えると稜線を一気に上がっていく。ハイマツの上に、ちょっと太めの赤い鳥。逆光で見づらいが確かにギンザンマシコだった。

雌雄のペアが寄り添って、僕の進むテンポに合わせて少しづづ遠ざかる。

なかなか出会うことのない高山鳥だ。「フィ、フィ」と透き通った声で鳴く。

残念ながら紅葉には出会えなかったが、予想もしなかったギンザンマシコとの一期一会に喜ぶ。



(写真:ギンザンマシコ)


稜線を登っていくと、風に乗った蝶のコヒオドシが次々に目の前を横切っていく。

1時間20分ほどで山頂に。

右手に十勝岳。左手に美瑛富士とオプタテシケ山、その背後にトムラウシ山。

抜けるような青空に、さわやかな風。無数のトンボが舞っている。

3年前は十勝岳で素晴らしい展望を得たが、2時間かけて縦走してきた美瑛岳は雲の中。

涙を飲んだが、今回はリベンジ。美瑛岳から見渡す十勝連峰の山々が至福の時を与えてくれた。

気温上昇につれて、次第に雲が湧き上がる。白いベールに包まれていく山々を記憶に刻んで下山する。

山の天気は変わりやすく、今回の展望も幸運としか言いようがなかった。


(写真:美瑛岳 山頂)


(写真:十勝岳)


(写真:美瑛富士、オプタテシケ山)

■登山記録:2010年9月12日

06時50分:望岳台から入山
07時35分:十勝岳と美瑛岳の分岐
08時45分:ポンピ沢
09時20分:美瑛富士小屋と美瑛岳の分岐
10時40分:山頂(登山口から3時間50分)
11時20分:下山開始
14時30分:望岳台に戻る

白銀温泉「森の旅亭 びえい」 800円 
オープンしてまもない旅館の日帰り入浴。きれいで賑わっていた。

■これまでの登山歴
07年8月19日 望岳台~十勝岳~美瑛岳~望岳台

ドングリとムモンアカシジミ

2010-09-04 21:07:20 | 札幌・小樽周辺の山々
台風から変わった低気圧が過ぎ去り、さわやかな青空が広がった。

久しぶりの乾いた空気がうれしい。朝寝坊で出遅れた時は、いつも八剣山(498m)が誘う。

登頂まで一時間もかからない低山ながら、ナイフのように鋭い岩峰は、ぞくっと足がすくむ高度感。

山頂で浴びる日射しは夏を誇示するが、渡る風は涼やか。頬を優しく撫でて、汗を鎮めてくれた。

近郊の山座の名を確かめたり、眼下の田園風景を楽しんだりと、時が静かに過ぎていく。

切り立った崖に、晩夏の花が咲く。エゾミセバヤが鮮やかな存在感。まさに岩尾根のミセバ。


(写真: エゾミセバヤ)

ふと目を足元のミズナラの森に落としてみたら、青いシジミチョウが盛んに飛び交っていた。

小さいのでルリシジミかな。少々大きめの個体はミドリジミ類か。

発生の季節は過ぎているのだろうに、これも猛暑の影響かしら。

すると、鮮明な橙色のチョウが空を切り、樹冠を行き来する。ムモンアカシジミだった。

シジミチョウながら実に大きい。

食樹のミズナラの葉にとまる。秋の始まりを告げる青いドングリとのツーショットだ。

翅を広げてくれれば、鮮やかな橙色が目につくはず。

予期せぬ出会い。出遅れた寝坊とこの山に感謝。


(写真: ムモンアカシジミ  翅を開けば鮮やかな橙色のはず・・・)


■登山記録 2010年9月4日

12時15分:南口コースから入山
13時05分:山頂
14時05分:下山開始
14時45分:登山口に戻る

■登山歴
02年06月09日
03年08月02日
04年10月09日
05年05月28日
06年09月02日初秋の八剣山
08年07月13日夏の八剣山
09年05月09日春紅葉から新緑へ 八剣山