「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

雲流れるオプタテシケ山②天空回廊の先にトムラウシ山

2008-08-27 20:57:18 | 十勝連峰
(写真:オプタテシケ山 2012.7mの山頂)

8月23日の登山記録②:
美瑛富士避難小屋をから、最初のピークとなる石垣山を目指す。その名の通り、噴火で生じた岩々がごつごつと積み重なっている。ナキウサギが甲高く「ピィー」と鳴く。明確な登山路はなく、岩に記されたペンキの印に沿って登っていく。ガスって視界の悪いときは
迷うのかなと、思いつつ、40分ほどでピークの直下を通り過ぎる。
少し進んでから来た道を振り返ると、石垣山の背景に美瑛富士と美瑛岳がツインで大きく存在感を示していた。

(写真:石垣山)


(写真:左から石垣山、美瑛富士、美瑛岳)

石垣山から稜線を30分ほど歩くと、第2のピークであるベベツ岳の山頂に達する。右側の斜面から強い風に乗って雲が駆け上がり、左側の斜面に舞い降りていく。すさまじい勢いだ。雲が生まれる天空の回廊の先に、目指すオプヌテシケ山がそびえる。その威容は激しい雲の往来で、見えたり消えたり。

(写真:ベベツ岳から見たオプタテシケ山)

「急がなければ!」・・・頂上からの展望に不安がよぎり、歩みが速くなる。いったん200メートル近く下って、つらい登り返しを克服すると、そこが山頂だった。前方は旭岳からトムラウシ山の連なりが雲の上に浮かんでいた。来た道を振り返ると、そこはすでに雲海。美瑛岳や美瑛富士の山並みは姿を消していた。すさまじい強風に耐えながら雲流が行くトムラウシに出会えた喜びに浸る。「間に合った!!!」
頂上に着くまで、20人ほどの登山者とすれ違った。山小屋泊の人、旭岳やトムラウシ山から縦走してきた人などなど。山頂を20分ほど独占していたら、1人登ってきた。十勝岳経由で7時間かけてやってきたと言う。「ユメでした」と、しきりシャッターを切っていた。その笑顔はもおそらく僕の顔を鏡のように映していたに違いない。

(写真:右端に雲流に浮かぶトムラウシ山)

(写真:旭岳からトムラウシ山の連なり・・・次第に雲が増えていく)

帰路は雲の中をもくもくと戻る。岩に塗られたペンキの道標を見失わないように、少々緊張しながら下山する。往路5時間、帰路4時間のちょっとハードで楽しい登山だった。

※06時30分:入山
 07時00分:アカエゾマツの森
 07時50分:天然庭園
 08時10分:オプタテシケ山や旭岳が見える
 09時15分:美瑛富士避難小屋
 09時50分:石垣山の直下を巻く
 10時15分:ベベツ岳
 11時25分:山頂

 11時55分:下山開始
 13時30分:避難小屋
 14時55分:日本庭園
 16時10分:登山口に戻る

白金温泉 温泉ペンションほしの灯家 500円
源泉かけ流しの小さな宿。飾り気はないが、1日2回掃除する宿主の愛情が伝わってきた。

(写真:美瑛の田園地帯から・・・右端が美瑛富士、左端がオプタテシケ山)



雲流れるオプタテシケ山①草紅葉と秋の空

2008-08-25 21:53:49 | 十勝連峰
(写真:左からオプタテシケ山、ベベツ岳、石垣山)

8月23日の登山記録:
十勝岳連峰の北端、美瑛から見て左端の鋭鋒がオプタテシケ山(2012.7m)だ。
三角形を頂く異形に憧れ、石垣山とベベツ岳という二つのピークを縦走するロングランコースに魅力を感じていた。

午前6時30分、美瑛富士避難小屋コースの登山口から入山。急な取り付きを登ると、やがて苔むした岩とアカエゾマツの巨木が立ち並ぶ。幽玄の世界だ。ゴゼンタチバナの葉と実が色づき始めていた。草紅葉が小さな秋が告げている。

(写真:アカエゾマツの森)


(写真:ゴゼンタチバナ 草紅葉で秋を知る)

1時間ほどでハイマツ帯に入ると、巨木だったアカエゾマツの背も極端に低くなり、広大な天然の日本庭園が広がる。その名も「天然庭園」。行く手の美瑛富士も見えてくる。

(写真:天然庭園)

天然庭園を抜けると、笹やハイマツの斜面となり、お花畑も。花を散らしたチングルマの
風車が白く輝いていた。タカネトウチソウが風に揺れ、花の向こうには大雪山の主峰・旭岳を遠望する。目指すオプタテシケ山の基部には雲の衣が流れていく。
美瑛富士も目の前に構え、青空に刷毛で散らしたような雲が秋を告げていた。
斜面を登りつめると、草原が広がり、小さな避難小屋に到着。ここまで2時間45分。僕に追いついた青年は7時30分に入山したというから、1時間も早い。その健脚に唖然とする。

(写真:チングルマの風車)


(写真:タカネトウウチソウ)


(写真:目指すオプタテシケ山に雲が流れる)


(写真:美瑛富士も近くに迫る)



狩場山に登る 日本海と太平洋を望む

2008-08-21 22:37:45 | 道南の山々
(写真:島牧村の海岸線から望む狩場山)

8月17日の登山記録:
島牧村の新道コースから狩場山(1519.9m)に。4合目まできれいに笹刈りされた登山道を行く。高度を上げるに連れて、木々の間から花の名山・大平山が見えてくる。その背後には羊蹄山やニセコの山々も。


(写真:大平山と、その背後に羊蹄山)

4合目を過ぎてしばらく進むと、ハイマツ帯に出る。眼下に瀬棚町と日本海、そして奥尻島。意表をつく奥尻島との出会いに、息を呑んで感嘆。その距離、手が届きそうに近い。やがて、狩場山の全容が見えてくると、6合目に達する。ここから太平洋のかなたに駒ケ岳が覗く。日本海と太平洋。ふたつの海を見渡す絶景の登山路だ。

(写真:瀬棚町と奥尻島)

7合目から8合目にかけての斜面には気持ちの良い花畑が広がる。ウメバチソウが全盛。雪解けの遅さを物語るように、初夏の花、エゾカンゾウやシナノキンバイがまだ咲いていた。一方で晩夏から秋の花、コガネギクやエゾホソバノトリカブトも。夏と秋が行き交う不思議な空間だ。


(写真:ウメバチソウ)


(写真:エゾカンゾウ)

山頂に達すると、日本海側から登ってくる茂津多コースと出合う。須筑川の渓谷も深い。先週登った雷電山を西端とするニセコ連峰、積丹半島、札幌の無意根山、苫小牧の樽前山、さらに松前の大島、小島まで見える。
道央の札幌から道南の松前まで見通すとは・・・あまりの居心地の良さに1時間ほど滞在する。道中一緒となった大阪の男女3人組や函館の男女3人組、深川の老夫婦らの皆さんとの会話も楽しかった。山の魅力が人を引き寄せる。

(写真:茂津多コース)


(写真:東狩場山の背後に羊蹄山とニセコ連峰)

登山口より下の山麓は広大なブナ林に覆われていた。秋には黄金色に輝くことだろう。
「また来たいな」と、素直になれる、すがすがしい山だった。

(写真:狩場山のブナ)

※06時40分:新道コースから入山
 07時20分:4合目
 07時35分:ハイマツ帯に出る。奥尻島を望む
 08時00分:6合目 駒ケ岳を望む
 08時15分:7合目 花畑
 09時00分:9合目
 09時35分:山頂
 10時40分:下山開始
 12時35分:登山口に戻る

 千走川温泉 500円 登山口から近い小さな一軒宿。熱くなく、鉄の匂いがする素朴なお湯が肌にやさしい。


黒松内 北限の歌才ブナ林

2008-08-18 22:56:31 | 道南の山々
16日(土)野歩きの記録:
島牧村の狩場山に登る前日、黒松内の「歌才ブナ林」を歩く。ブナ林の北限として、昭和3年に国の天然記念物に指定され、今日に至っている。片道2キロほどの遊歩道の周囲に、樹齢200年というずっしりとした太い幹が威風堂々と立ち並ぶ。200年はブナの寿命だそうで、老人が人生を語りかけてくるような、深い森。


本州のブナより葉が大きく、幹がすくっと直立して下枝が少ないのも特徴とのこと。
風が吹き抜けると、木の葉が潮騒のような音色を奏でた。
開墾が進んだ平野部に奇跡的に残ったブナの天然林。賢明な先人の遺徳も感じた。

ニセコ連峰の西端 雷電山に登る

2008-08-11 20:13:47 | 羊蹄・ニセコ周辺の山々
(写真:雷電山・天狗岩から望む寿都湾と狩場山)

8月10日の登山記録:
ニセコ連峰の西端、山々が日本海に落ちていく。雷電山の登山口は国道から3キロ入った一軒宿の朝日温泉。ノウサギとイタチが車の前に飛び出した。野趣漂う山奥だ。
宿には「登山者の駐車はご遠慮ください」との張り紙があった。ロマンスグレーの主人に「日帰り入浴しますので」と駐車の許可を得てから、暗い森に入る。広葉樹にトドマツ、アカエゾマツが混ざる道を40分ほど登ると、稜線の天狗岩に出る。右手に寿都湾と道南の名峰・狩場山。左手に岩内湾と積丹半島の山々。日本海に切り込む断崖の妙。早朝の独り占めの絶景に息を呑む。

(写真:断崖の向こうに積丹半島)

ゆったりと高度を上げていくと、山麓にぽっかりと浮かぶコックリ湖が。行く手には、目指す雷電山も姿を見せる。まだまだ、かなり高度差がある。841m地点のポコに「中山」という標識。ここから1203.6mの「前雷電」まで、幾つかのピークを下ったり上ったりと、なかなかの登り応え。しかも、背丈を越えるハイマツと笹の勢いが強く、見通しがよくない。クマと出会い頭の衝突だけはご勘弁と思ったら、かすかな獣臭が漂う。ホイッスルを吹きながら進むと色づいたナナカマド。秋を先取りする山の気配にほっと癒される。

(写真:森に浮かぶコックリ湖)


(写真:コックリ湖にズームイン)


(写真:雷電山)


(写真:ウラジロナナカマド)

すっかり、獣臭を忘れたころ、足元にクマの糞。握り拳より小さめの塊が数個。「ありゃー」と、がっくりする。よく見ると、ひとつに登山者の踏み跡。きょうの先行者はいないと思うので、あまり新しくはないな。
気を取り直し、念のためホイッスルを吹きながら進む。その存在を忘れた頃、またまたクマの落し物。ここはクマさんの通り道なのか。

(写真:クマの落し物。左の塊に登山靴の跡

前雷電で先行の夫婦に追いつく。「良かった。ほかに登っている人がいて」と感謝される。いないと思っていた先行者に、こちらも感謝。クマの落し物がふたつあって、心地がよくなかったとのこと。彼らは踏んでないそうで、やはり、今日のものではないと安心する。少し進むとエゾオヤマリンドウがまとまって咲いていた。晩夏の花に出会い、ここでも季節が進む足音を感じる。

(写真:エゾオヤマリンドウ)

平坦な稜線をたどり、30分で山頂に。一等三角点の展望を期待したが、ハイマツの丈が高く、高度感と見晴らしは、いまひとつ。ここから先は、目国内山や岩内岳への縦走路が続く。岩内岳から来た男性が合流する。5時間かかったという。リュックを置いて5分ほど進むと、ニセコの山並みの展望を得る。湿地の花、タチギボウシも。笹の勢いが強いが、かつては山頂付近に広がる湿原地帯だったのだろう。
斜面は、コガネギク、ウメバチソウ、ナガバキタアザミのお花畑。たくさんのベニヒカゲが飛び交う。夏の終わりに小さな命が輝いていた。

(写真:雷電山の山頂1211.7m)


(写真:タチギボウシ)


(写真:ナガバキタアザミとベニヒカゲ)


(写真:目国内山とニセコアンヌプリ。羊蹄山は雲の中)

山頂に20分ほど滞在して、下山。正午すぎに4人の団体と出会う。岩内岳まで縦走するという。きょうの登山者は合計8人ということになる。ニセコの奥に控える静かな山だ。
クマの落し物を数えながら降りていくと、ひとつ増えていた。
温泉の主人に報告すると、クマ情報はずいぶんと久しぶりのこと。野趣あふれる秘湯につかりながら、クマの楽園にお邪魔した緊張感を癒しに換えた。


(写真:登山口の朝日温泉)

※07時20分:入山
 08時05分:天狗岩
 08時45分:中山
 10時15分:前雷電
 10時50分:山頂
 11時15分:下山開始
 14時20分:登山口に戻る

朝日温泉:600円。野趣満点。脱サラの主人が数年前に再建した秘湯。宿の裏手が登山口。露天風呂に視線の注意が必要。







雨の藻岩山 カタツムリ

2008-08-04 22:22:46 | 藻岩山
きのう(3日)、藻岩山に登る。最近は雨の日に登る山。小雨ちらつく空模様なのに、大勢の人が登っていた。夏山シーズン、雨で遠出をあきらめた人たち。
雨滴に誘われて、カタツムリが登山路を横断していた。ずいぶん、大きな貝を背負っている。カタツムリにはどんな種類があるのだろう。キミの名は?

ところどころで木苺が目についた。藻岩山の登山歴は長いが、初めて見る。
夏真っ盛りのこの時期に登ることがなく、今まで出会うことがなかった。
魚の「ハタハタ」の卵みたい。
帰宅して調べたら、クロイチゴ。熟すと赤から黒に色が転じる。魚卵のようなイチゴ。つまんで口にすると、どんな味がしたのだろう。


帰路、小雨は勢いを増す。森の傘に包まれた雨の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。