「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

羅臼平から知床連山の三ッ峰へ

2012-08-17 22:34:35 | 道東の山々

                      登山前日の知床連山 右から羅臼岳、三ッ峰、サシルイ岳・・・

■2012年8月15日の登山記録:

知床連山の最高峰・羅臼岳(1660m)の山頂は踏まずに、その雄姿を隣の三ッ峰(1509m)から望む。

できれば三ッ峰のさらに隣のサシルイ岳(1564m)まで行ってピストン下山・・・というのが今回の目標だった。

前日、ウトロの標高60mのオロンコ岩に登って、知床連山の夕景を望む。

マジックアワー。それは、登山意欲をかき立てる神々しさだった。

知床連山を照らした夕日かせオホーツク海に沈んでいく

 

クマの出没が相次いでいるという登山路を黙々と進むと、三時間で羅臼平に。

キャンプ指定地なので、カラフルなテントが目に鮮やかだ。

ここから右に折れると羅臼岳。左に折れると三ッ峰だ。

タカネトウウチソウやオトギリソウの美しさに見とれながら登る。

コケモモが赤く結実し、ウラシマツツジが、うっすらと色づき始めていた。

オホーツク海から吹きつける冷たい風が早くも秋の気配を運んできたのだろう。

三十分で三ッ峰の山頂に。

羅臼岳を正面に見据えて左手にクナシリ島、右手にウトロの街を望む。

羅臼岳山頂には人の列が続く。しかし、こちらはたった一人、孤高の山頂。

知床半島を突き抜ける風の野趣に、ちょっと身震いした。

羅臼平から望む三ッ峰(実際の山頂は映っていない右側の奥に)

三ッ峰の斜面から望む羅臼岳 タカネトウウチソウが風に揺れる

コケモモ

三ツ峰の山頂(左の岩峰)

ウラシマツツジが早くも色づき始めていた

三ッ峰山頂から望む羅臼岳 右手は斜里町ウトロ

 

三ッ峰から下りて縦走路に戻り、サシルイ岳方向に進む。

見えた道筋は、いったん下りて、長いコルを歩いて、さらに上る。片道1時間半という感じ。

往復三時間は少々荷が重く、ここを本日の折り返し地点とした。

縦走路から見たサシルイ岳

 

朝4時半から登ったので、下山は昼過ぎ。 岩尾別温泉・駐車場下に作られた無料露天風呂で汗を流す。

たっぷりと時間があるので、山から見えた知床五湖へ。

クマ出没で遊歩道は全面閉鎖。クマを避けるための高架木道だけが通行可能で「一湖」まで歩く。

三十年数年ぶり二度目の知床五湖に、歳月の早さを噛みしめた。

一湖から望む知床連山

一湖で採餌するエゾシカ

羅臼岳の大沢から見下ろした知床五湖

 

■登山記録:

04時30分:岩尾別 木下小屋から入山     

05時00分:「ここから熊の採食場」表示看板

05時05分:オホーツク展望台           

05時30分:「650岩峰」(ここまで熊の採食場)

05時45分:弥三吉水                

06時00分:極楽平

06時30分:仙人坂                 

06時45分:銀冷水

07時00分:大沢入口                       

07時40分:羅臼平  

07時50分:羅臼平 出発                    

08時15分:三ツ峰の山頂

09時00分:羅臼平に戻る                    

09時30分:下山開始

12時00分:登山口に戻る

 

  「岩尾別温泉の無料露天風呂」 (脱衣所なし、混浴)   公共日帰り温泉「夕陽台の湯」500円   「夕陽のあたる家」 500円

 キャンプ地 「国設知床野営場」 1日400円×2日  

 

過去の登山記録

2010年8月10日 羅臼岳

 

 


森と湖を裾野に雄阿寒岳

2011-08-13 23:19:57 | 道東の山々

 国道脇から望む雄阿寒岳

 

20111年8月9日(火) 雄阿寒岳(1371m)の登山記録

屈斜路湖の藻琴山、摩周湖の摩周岳(カムイヌプリ)と登って、阿寒湖畔で一日休養する。

目指すは雄阿寒岳。阿寒湖を挟んで向き合う雌阿寒岳と合わせて深田久弥が選んだ日本百名山。

山の広い裾に針広混交の深い森と、大小いくつかの湖沼を抱える。

円錐の独立峰は、温泉街から仰ぐその立ち姿に力強い存在感がある。

阿寒湖温泉アイヌコタンから

阿寒湖畔の夕景

日の出

 

片道6.2キロ、標高差951mなので、それなりに登り応えがありそう。

しかも暑くなりそうなので水も2.3リットル用意した。

登山口は阿寒湖畔の滝口と呼ばれる深い森だ。

クマの出没が多いことから、「登らないことも選択のひとつです」という注意書きも。

ここまで来て登らないわけにもいかず、耳が痛くなるほど笛を鳴らす。

いかにもクマが出そうな太郎湖、次郎湖と小さな沼が続く。

行けども行けども、暗い森の急傾斜。ひたすら登ると、やがて、針葉樹の密度が減る・・・

森に光が差し込んだ瞬間、爽快な気が体幹を貫いた。

日々の生活で積もった毒気が見事に抜けていく。

阿寒湖畔の混交林を登る

 雌阿寒岳を望む

 

四合目を過ぎると、対岸の雌阿寒岳がよく見える。しかし、この先の五合目までがあまりに遠い。

合目の取り方がまちがっているらしい。

「八割は登りました」と五合目の標識に書かれていたので、実際は八合目だよなぁと思う。

ここから緩やかな灌木のトンネルを行くと、人の口笛のような鳥の鳴き声。

探したらウソが赤い喉を震わせていた。つがいのホシガラスもギャー、ギャーと鳴き交わす。

足元にはイチヤクソウがスボットライトを浴びていた。

ウソが鳴く

イチヤクソウ

 

七合目を過ぎて振り返ると、阿寒湖の全景が目に飛び込んでくる。辛かった登りを忘れる瞬間だ。

ハイマツ帯には矮小化したアカエゾマツがぽつり、ぽりと浮かぶ。

その向こうに丸い山頂が見える。

戦中に建てられた気象観測所の土台が八合目に残っていた。

刻まれた人の歴史も垣間見ながら、山頂に。

 

七合目を過ぎて振り返ると阿寒湖の全景

ハイマツ帯に矮小化したアカエゾマツ  右端のポコが山頂

 

八合目 気象観測施設の跡地

 

山頂の地形は複雑で、すり鉢状の噴火口の向こうに雌阿寒岳とフップシ岳が立つ。

阿寒湖は見えない。

そのかわりに、山頂標識の背後を見下ろすとパンケトーとペンケトーが森をくり抜いている。

この沼は特別な許可がないと立ち入れないという。

絶景を独占するも、暑くて風もないせいか、飛ぶ虫があまりに多い。

誰かに記念写真を撮ってほしかったが、待ち人現れず。

うるさい虫に追われるように下山を決めた。

帰路、七合目で川崎から来たという女性ふたりと出会う。

阿寒湖全景をバックにした記念写真が土産となった。

山頂から見た噴火口と雌阿寒岳、フップシ岳(右)

連なる阿寒富士と雌阿寒岳(右)にズームイン

山頂標識の背後にふたつの沼

パンケトーとペンケトー(右)

 

■登山記録

06時00分:滝口から入山

06時20分:次郎湖

06時30分:一合目

06時55分:二合目

07時25分:三合目

07時45分:四合目 「ここから我慢のしどころ」の表示

08時15分:雌阿寒岳の全容が見えて、ほっとする

08時35分:五合目(1194m)…実際は八合目か?

08時50分:六合目

09時05分:七合目 阿寒湖畔の全景を見下ろす 

09時15分:八合目 気象観測所跡

09時25分:九合目 噴火口を横目に・・・

09時35分:山頂(上り3時間35分)

10時05分:下山開始

13時10分:登山口に戻る(下り3時間5分)

 

下山時に立ち寄った次郎湖  湧水なので見事な透明度

 

まりも湯 500円 (8日の前泊時に入浴)

温泉街にある石鹸・シャンプー完備の公衆浴場。源泉かけ流しの熱いお湯が刺激的。

エンジュの樹で作った球をマリモに見立てて浮かべるユーモアも。

 鶴雅 1400円 (9日の下山後に入浴) 

温泉街の老舗大型ホテルの日帰り入浴。ワンドリンクつきなのでラウンジでくつろげる。

贅を尽くした内風呂も快適だが、雄阿寒岳を仰ぐ湖畔の露天風呂がいい。

中国で大ヒットした映画にも登場した。

 阿寒湖畔野営場 630円×2泊

森の中だが、すぐ横に国道が走る。深夜に走るトラックの音が気になった。

が、疲れが良薬なのか、よく眠れた。

明治大学のワンゲルの青年たちがテントを張っていた。

去年は羅臼岳で慶応ワンゲルと出会ったが、今年も若者の清々し笑顔に癒された。

キャンプ場の駐車場からも雄阿寒岳が


晴れの摩周岳(カムイヌプリ)

2011-08-12 07:25:14 | 道東の山々

雲海の屈斜路湖の向こうに摩周岳(小清水峠から)

 

2011年8月7日(日) 摩周岳(857m)の登山記録:

 

雲海に覆われた屈斜路湖の向こうに、摩周岳の切り立った頭が浮かんでいた。

たどり着いた登山口は摩周湖第一展望台の駐車場。車中泊している旅行者が大勢いた。

(残念ながら・・・) 霧の摩周湖というわけにはいかず、紺碧の湖が朝の斜光に照らされていた。

摩周カルデラの長い外輪を歩くことになる。

登山路は標高差300mながら、その距離は7キロに及ぶ。大半はなだらかな草原の中。

蜜を求めて何種類ものチョウが盛夏を飛び交う。

今、季節の真ん中を歩いている。

登山口近くから見た摩周湖の外輪 左端が摩周岳

西別岳を見ながら長い草原を歩く

摩周岳を背にトウゲブキを吸蜜するセセリ  

摩周湖を背にノリウツギを吸蜜するサカハチチョウ

西別岳を背にヨツバヒヨドリを吸蜜するヒョウモンチョウ

 

どこまで続くのかと思った高原歩きも、1時間40分ほどで西別岳と摩周岳の分岐に着く。

倉敷から来たという夫婦が下山してきた。蒸し暑さで、笑みの中にも少々疲れがにじんでいた。

ここから次第に傾斜が増す。樹木の切れ間から覗き込んだ足元は身震いするような断崖だった。

頂上に連なる火口壁の上を歩いていることを知る。

高度感に満ちた山頂は、切り立った岩稜が屏風のように湖に立ち向かう。

空は霞んで遠望が効かないものの、摩周湖の上に立つという高揚感がある。

1時間、ひとりで至福の時を過ごす。

山頂標識

屏風のような火口壁が湖を隠す

雲が流れると、火口壁の右側にも摩周湖が見えた

 

■登山記録

06時40分:第一展望台から入山

07時10分:山頂まで5.4キロ表示

07時45分:頂上まで3.3ロ表示

08時20分:頂上まで1.6キロ表示 西別岳との分岐

08時40分:頂上まで0.3キロ表示 

09時05分:山頂に(上り2時間25分)

10時00分:下山開始

12時00分:登山口に戻る (下り2時間) (駐車料金410円を支払う)

帰路の摩周湖第三展望台から

 

三香温泉 400円 (屈斜路湖・和琴半島)

野趣あふれる大きな露天風呂(男女別)が楽しい。

源泉かけ流しで高温。疲れが一瞬のうちに吹き飛ぶ。

三香温泉

屈斜路湖と摩周湖の位置関係(川湯温泉駅前の看板)

 

 和琴湖畔キャンプ場 450円

屈斜路湖・和琴半島には、ふたつのキャンプ場が隣接している。

湖畔を望むこちらにテントを張る。空が静かに赤く染まり、水鏡がそれを映す。

刻々と進む夕映えに、誰もが見とれていた。

暗くなってから、和琴半島付け根の無料露天風呂(混浴)で半月を眺めた。

ファミリーゾーンから離れたソロ用の敷地にテントを張る

夕映え

翌朝の和琴半島 付け根に無料の露天風呂

和琴半島一周二キロの遊歩道を歩く ミンミンゼミが鳴く

 


屈斜路湖を眼下に藻琴山

2011-08-11 09:47:42 | 道東の山々

 美幌峠から見た屈斜路湖

 

2011年8月6日(土)の藻琴山(1000m)登山記録:

日本最大級のカルデラ湖・屈斜湖へ。その外輪山はなだらかな高原となって湖を囲む。

美幌峠から望む、カルデラ最高峰の藻琴山(1000m)も優しげな表情を浮かべていた。

湖を廻り込んで快適なスカイラインを行くと、「ハイランド小清水725」という小清水峠の展望台に。

725とは標高725mという意味で、ここがすでに8合目。標高差275mの登山口となっている。

美幌峠から望む藻琴山

スカイラインから望む藻琴山

 

札幌からロングドライブで着いた、その日に登る山としては手ごろと思った。

が、すでに日が高く、ギラギラとした炎天下。

それなりの傾斜も続く。

疲れていたこともあり、意外と頑張る登りとなった。

ハイマツ帯に突き出す屏風岩が道中のアクセント。あたりに咲く花に、一息ついた。

チシマセンブリとは初めて出会う。小さな花弁に染みる濃紺の斑紋が気をひく。

屏風岩と山頂

 

チシマセンブリ

モイワシャジン

 

標高差275mなので、あっというまに山頂に。

渡る風が、火照った体を包んでくれた。眼下に得た湖の展望に心が充足する。

雲が少々邪魔したが、知床の斜里岳やオホーツク海を望むこともできた。

四方の雲が勢いを増しながら近づき、空を覆う面積を広げる。

遠雷もゴロゴロと聞こえてくる。

雷は登山の天敵なので、後ろ髪を引かれる思いで下山した。

山頂

 

登山記録

13時10分:スカイライン遊歩道コースから入山

13時45分:屏風岩

13時55分:山頂(上り45分)

14時30分:下山開始

15時00分:登山口に戻る(下り30分)

登山口近くのハイランド小清水キャンプ場にテントを張る。300円

管理人さんが五右衛門風呂(無料)を沸かしてくれた。生まれて初めての体験。

激しい雷鳴の夜が明けると、漆黒から紺色に移ろう空の、雲と雲の隙間が赤く染まった。

知床の斜里岳が雲の上に頭を載せている。

クマゲラが鳴き、エゾライチョウが飛ぶ、深い森の中。

小清水峠から見えるであろう雲海が気になり、午前5時に出発する。

 

 

 針葉樹の森に包まれて・・・

翌朝、小清水峠・ハイランド展望台(登山口)から見た雲海

 屈斜路湖は雲の下

 

雲海の中へ…霧だった

 

車窓から

 


知床の最高峰、羅臼岳に登る

2010-08-12 19:40:22 | 道東の山々
                                    (写真:知床連山 右端が羅臼岳 登山前日の夕方撮影)

斜里岳に登った翌日の8月10日(火)、知床・最高峰の羅臼岳(1660m)に。

夜明けの空は高曇りで、知床連山がくっきりとその姿を刻んでいた。天気予報は曇りながらも、これなら青空になるぞと確信。

午前5時、薄暗い森に入る。トラツグミやクマゲラの啼く声に励まされて、テンポ良く登る。

湿度が高いのか、汗が滝のように流れて、長袖シャツと帽子を脱ぐ。

小さな標識に目を凝らすと、「ヒグマ出没地帯。餌となるアリの巣が多いので注意」とのこと。

クマのレストラン街は40分ほど続く。前後に登山者が多く、仲良く談笑しながら進むと不安感はなく。


(写真:この先はクマのえさ場)

水場の弥三吉水で喉を潤すと、そのおいしさに生気が蘇る。

登山口から1時間50分ほどで、極楽平。真正面に目指す羅臼岳が凛々しくそびえ立つ。


(写真:極楽平と羅臼岳)

平坦な極楽平は短く、仙人坂で喘ぎ、銀冷水にて熱りを鎮める。極楽平から1時間ほどで大沢入口に着く。

斜度のきつい涸れ沢だが、両端は可憐なお花畑。チングルマはすでに花を散らしていたが、チシマクモマグサやエゾヒメクワガタが咲いていた。

「千島雲間草」という北方の天空をイメージする語感がなんとも素敵だ。

エゾヒメクワガタは普通は青紫色。ここではピンクや白花が多いというのも興味津々だ。

心地良く吹き抜ける風が、汗をさらっていった。


(写真:チシマクモマグサ)


(写真:白いエゾヒメクワガタ)

大沢を登りつめたら、一気に視界が広がる、羅臼平。

向かって左を登れば三ツ峰から硫黄山への縦走路。右を登れば羅臼岳へ。

めまぐるしく往来する雲は三ツ峰を避けるが、羅臼岳を隠す。残念そうな登山者の顔と顔。

しかし、15分ほど登ると…

羅臼岳を覆っていた雲が消え、剥き出しの岩塊が青空に拳を突き上げた。


(写真:羅臼平 背景は三ツ峰)


(写真:雲が去り岩塊の山頂が顔を出す)

ごつごつとした岩塊を両手両足を使って、慎重に登る。小さな花々が多く、集まる蝶にほっとする。

その中に、天然記念物の高山蝶・カラフトルリシジミを見つけた。

雄だと瑠璃色が際立つが、これは雌。地味なせいか、誰も関心を示さない。

来し方を振り返ると、雲海の遠くに国後島が小さく頭を出していた。ズームするとピントが合わず、しっかりと心に刻む。

高度を稼ぐにつれて、向かいの三ツ峰の大きさを知る。さらに奥に連なるサシルイ岳から硫黄山までの展望を得た。

憧れの知床連山が今、目の前に。


(写真:羅臼平と三ツ峰、奥にサシルイ岳や硫黄山も見える)


(写真:高山蝶カラフトルリシジミ ♀ )


(写真:高度を上げてズームイン 左奥の鋭鋒が硫黄山)


頂上直下で進行方向右側の海別岳、斜里岳方向を望むが、雲が多くすっきりとしない。

それだけに、登る道筋で知床連山先端の硫黄山までの眺望を得られたのは、なんとも幸運なこと。

仰ぎ見る狭い山頂では、10人ほどが盛んに写真を撮っていた。山々を隠そうとする雲流との時を巡る競争だ。


(写真:直下から仰ぎ見る山頂)


(写真:海別岳、斜里岳方向は雲が多く眺望を得ず)

登山口から4時間半ほどで山頂に立つ。自分の唇から、「着いた!」という声が素直に飛び出した。

前日、斜里岳で出会った人たちの姿を見つけあって、この感動を分かち合う。

激しい雲流に嫌な予感も。写真を何枚か撮っているうちに、不安が的中して山頂は真っ白になってしまった。

穏やかだった風も強く荒れて、狭い頂きでは立ち上がるだけでヨロヨロとする。

強風を避けるために岩場を一段下がって待機するも、45分ほどの滞在で下山した。

一瞬のチャンスに恵まれた幸運に感謝し、次の目標は三ツ峰からサシルイ岳までと、意欲を確かにした。


(写真:羅臼岳山頂)

■登山記録:2010年8月10日(火)
05時00分:岩尾別登山口から入山
05時35分:「650岩峰まで熊注意」の標識
05時40分:オホーツク展望台
06時15分:650岩峰
06時35分:弥三吉水
06時50分:極楽平
07時10分:仙人坂
07時30分:銀冷水
07時55分:大沢入口
08時25分:羅臼平
09時35分:山頂  上り4時間35分

10時20分:下山開始
13時30分:登山口に戻る 下り3時間10分

ホテル地の涯 
山奥の一軒宿で登山口に位置する。朝4時40分に着いたら登山者用の駐車スペースは満車。ホテルの人が違法駐車に目を光らしていたが、日帰り入浴をお願いしたら気持ちよく駐車OK。親切心溢れる地の涯で熱いお湯が疲れを吹き飛ばしてくれた。800円。

清流の斜里岳に登る

2010-08-11 12:24:24 | 道東の山々
                               (写真: 斜里町内から見た斜里岳)

8月9日(月)、知床に近い斜里岳(1547m)へ。

前日の夕方に仰ぎ見た山容は、雲を纏った威厳のある身構え。天気予報は曇りだったが、一夜明けた清里コースの登山口は見事に晴れた。

一の沢川沿いを歩くが、石を伝って右へ左へと渡渉を繰り返す。ふだん使わないリズム感とか敏捷性、バランス感覚が試される。

飛び石は面白いが、転ばないよう、登山靴を沈めないようにと気をつかう。

谷川が放つ清涼な気と、線香花火のように涼やかに咲くダイモンジソウ。心地よい緊張感とほっとする癒しのバランスが愉しい。


(写真:清流沿いに渡渉を繰り返す)


(写真:線香花火のようなダイモンジソウ)

45分ほどで、新道と旧道の分岐点、六合目の下二股に。沢歩きにも慣れてきたので、沢沿いに小滝が連続する旧道を選ぶ。

名前があるだけでも水蓮、羽衣、方丈、見晴、七重、竜神、霊華と七つの滝が連続していた。

急崖の巨岩や沢の岩盤を慎重に伝ったが、ロープや鎖もあるので恐怖心はなく、本当に面白かった。

水に入ることはないので、「沢登り」とは言えないが、水しぶきを皮膚に感じる沢の魅力の一端に触れることができた。



(写真: 羽衣の滝)


(写真: 慎重に岩を伝う)


(写真:左が霊華の滝、右が竜神の滝)


(写真: 霊華の滝 水しぶきを浴びて岩盤を歩く)

一時間半ほどで滝巡りが終り、新道との合流点の上二股に。

ここから、ぐんぐんと高度を上げて見晴らしが効くと、やがて稜線上の「馬の背」に出る。

隣の南斜里岳や遠くは阿寒の山々もくっきりと望む。

チシマワレモコソウが咲いていた。千島という名に北方に連なる響き。

馬の背から祠のある前峰を経て山頂へ。上二股からは一時間ほど。


(写真: チシマワレモコソウ)


(写真: 前峰から望む山頂 空の下はオホーツク海)



(写真: 山頂標識の背後に雌阿寒岳を望む)

山頂付近は雲がわき立っていた。阿寒方向は雲が切れて見晴らしを得たが、来た道の背景に構える周辺の山々が墨絵のよう。

山座の名がわからないのが残念。

楽しみにしていた知床半島の山々はガスに覆われいた。

山頂で仲良くなった人たちと談笑していると、知床半島の玄関口、海別岳が顔を出す。

最高峰の羅臼岳はベールの中。翌日に登る予定という人が5組もいたのには驚いた。

いずれも本州から来た岳人。北海道・知床の山々の人気の高さを知る。


(写真: 来た道と南斜里岳。背景に周辺の山々)


(写真: 知床の海別岳)

帰路は樹林帯を抜ける新道を降りる。

このコースで斜里岳のどっしりとした面構えが得ることができた。

青々とした夏山を満喫。


(写真: 新道の熊見峠から望む斜里岳)

■登山記録:2010年8月9日(月)
05時30分:清里コースから入山
06時15分:下二股 六合目 標高845m
06時40分:羽衣の滝
07時05分:方丈の滝 七合目 標高1020m
07時20分:見晴の滝
07時30分:霊華の滝、竜神の滝 八合目 標高1195m
07時50分:上二股
08時10分:九合目 標高1340m
08時20分:馬の背
08時45分:山頂 標高1547m  上り3時間15分

10時00分:下山開始~熊見峠
12時10分:下二股
13時00分:登山口に戻る    下り3時間

 きよさと温泉 清華荘 清里町の中心部にある清潔な公共温泉 380円

雌阿寒岳に登る(3) オンネトーへ

2010-07-23 21:38:59 | 道東の山々
                                      (写真: 阿寒富士のコルへ下る)

7月17日(土) 雌阿寒岳の登山記録③

雌阿寒岳山頂から火口の淵を進み、阿寒富士との間に広がるコルに下っていく。

上りとは別ルートのオンネトーコースで下山することにした。

砂礫地を下るのは思わぬ苦行。ズルズルと足がとられて、何度も転びそうになる。

後続の登山者たちも足を滑らせる音が耳につく。

足の裏の感覚を最大限に研ぎ澄ましながら、膝を柔らかくして小幅に歩を進める。振り返ると、山頂は尖っ台形であることを知る。


(写真: 雌阿寒岳の山頂)


コルから仰ぎ見る阿寒富士は、急斜面ながら、直感としては30分ほどで登れそう。

しかし、登ってしまえば、次回の楽しみもなくなる。5分ほど上がって、来し方の雌阿寒岳を眺めて退却する。

阿寒富士に登る5人のパーティーはみんなで演歌を歌っていた。先日のNHKの「ためしてがってん」で演歌のテンポで登ると疲れないと放送していた。

テレビの力に感心。

コルに戻ると、その先はオンネトーを見ながらの下山。この道筋は飽きることがない。

秋になると肉厚の葉が真紅に燃えるウラシマツツジに小さな釣鐘状の花がついていた。

この花は初めて見たので、ちょっと得した気分になる。


(写真: 阿寒富士に登る途中から見た雌阿寒岳)


(写真: オンネトー登山口に向かって下山する)


(写真: ウラシマツツジの花)

砂礫地からハイマツ帯、そしてアカエゾマツの森林帯へと下山のテンポは快調に進む。

木漏れ日がさくっと差すアカエゾマツの林床にはゴゼンタチバナが多く、ランやイチヤクソウの仲間も凛と静かに咲いていた。


(写真: アカエゾマツの森)



(写真: ゴゼンタチバナ)


(写真: カラフトイチヤクソウ?)


(写真: アリドオシラン)

オンネトー登山口からは湖畔のアカエゾマツ林を縫う遊歩道を歩いて、野中温泉登山口に戻る。

オンネトーは近くで見てもコバルトブルーで、小さいが奥深い魅力を放つ独特の存在感が素敵だった。

登山口から車でビューポイントに。絶景を心に刻んでから野中温泉で疲れを癒した。


(写真: 倒木が沈むオンネトー)


(写真: オンネトーに構える雌阿寒岳と阿寒富士)

■登山記録 2010年7月17日(土) 晴れ/時々曇り
09時00分: 野中温泉(雌阿寒温泉)登山口から入山
09時40分: 三合目 ハイマツ帯に
09時55分: 四合目 砂礫地にメアカンフスマの群落 オンネトーも眺望
10時35分: 六合目
11時10分: 八合目 大勢の登山者が小休止
11時20分: 九合目 火口壁に
11時30分: 山頂
12時20分: 下山開始(オンネトー・コース)
12時40分: 阿寒富士との分岐
13時00分: 阿寒富士から中途退却して、下山ルートに戻る
14時45分: オンネトー登山口に下山 遊歩道を進む
15時40分: 野中温泉登山口に戻る
野中温泉ユース 200円 新鮮で力強いお湯 硫黄の匂いを感じる

雌阿寒岳に登る(2) 荒々しい活火山の鼓動

2010-07-22 20:34:11 | 道東の山々
        (写真: 火口と赤沼)

7月17日(土) 雌阿寒岳の登山記録②

八号目付近から左手に阿寒湖が見えてくる。空には「ぴゅー、ぴゅー」と金属音をで鳴き交わすイワツバメが乱舞する。

そういえば、十勝岳の山頂付近にも、飛んでいたなと、思い出す。活火山のごつごつとした岩場が好きなのか。

ビューと風を切る音に驚いて首をかざすと、ブーメランのような翼で滑空するハリオアマツバメ。

九合目に達すると、目の前に噴煙を上げる爆裂火口が開く。褐色の素肌に鈍く光る水たまりは赤沼。

野中温泉登山口から2時間半ほどで山頂に。

行く手の左に阿寒湖。右に阿寒富士。爆裂火口にはコバルトブルーの青沼が浮かぶ。

活火山の荒々しさが心を揺さぶる。


(写真: 山頂から見た阿寒湖)



(写真: 山頂から見た阿寒富士と青沼)



雌阿寒岳に登る(1) メアカンフスマの絨毯

2010-07-20 23:03:49 | 道東の山々
(写真: アカエゾマツの森と雌阿寒岳)

7月17日(土) 雌阿寒岳の登山記録①

思い立って、雌阿寒岳(1499m)に登ることにした。道東の山に登るのは初めて。

札幌から5時間で野中温泉登山口に。アカエゾマツの森に覆われた山裾から荒々しい活火山の体躯が空を削る。

森を抜けてハイマツ帯に出る。来た道を振り返ると、オンネトーの静かな湖面が夏の光をはじいていた。

あっと、息をのむようなコバルトブルー。


(写真: オンネトー)


砂礫地には白い絨毯が目立つ。この山の名を冠にするメアカンフスマの群落だ。

ちょっと肉厚のぷりぷりとしたグリーンのマットに星たちが浮かぶ。五枚の白い花弁が素敵だ。

いまが最盛期とにぎやかに咲く花園に、登山者ばかりでなく無数の蝶も引き寄せられていた。


(写真: メアカンフスマの群落)


(写真: メアカンフスマ)


(写真: メアカンフスマとコヒオドシ)


(写真: メアカンフスマとスジグロシロチョウ)