「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

黒岳~桂月岳 ブロッケンの妖怪、エゾオコジョ、日の出

2011-08-28 23:27:03 | 表大雪

国道39号から望む黒岳(左端)

 

2011年8月27日~28日 黒岳~桂月岳の登山記録:

黒岳(1984m)山頂直下のキャンプ指定地でテント泊し、満天の星空と燃えるような日の出を見よう。

晩夏の日差しがきつい昼下がり。ロープウェイ、リフトと乗り継ぎ山頂を目指す。

快晴の夏空が、次第にミルク色のベールに包まれていく。

ウラジロナナカマドの向こうのマネキ岩がおぼろげに霞む。

ウラジロナナカマドとマネキ岩

 

一時間少々で山頂に着く。待つこと10分ほどで、雲が一瞬のうちに散って、山々が姿を現した。

太陽を背に、東側の斜面を見下ろしていた男性が、「虹や、おいで」と幼い子供たちを呼ぶ。

雨上がりでもないのに変だな、と思う。

恥ずかしながら一緒について行ったら、「ブロッケンの妖怪」だった。

雲のスクリーンに自分の影が映る。手を振ると、行動が一致するので確かに自分だとわかる。

自分の目がとらえた光現象なので、ひとりひとりの目に映るのは、自分の影だけ。

7人いたが、それぞれ自分の影に向かって手を振り歓声をあげていた。

 

 太陽が位置する西側の凌雲岳、北鎮岳  雲が散っていく

太陽を背にした東側の斜面  虹色のリングの中に自分の影

 

ブロッケンの妖怪

 

山頂から黒岳石室に続く緩やかな登山路を下りていくと、見晴らしの良い小さなピークがある。

赤く染まり始めたウラシマツツジと、ごつごつとした岩場。

ピィー、ピッと金属質の甲高い鳴き声が連鎖する。

複数のナキウサギが鳴き交わしている。

振り向いたら、どきっ。

・・・華奢な小動物の瞳が僕をじっと見つめていた。 

初めまして、エゾオコジョ。 体長は20センチほどか。

好奇心旺盛で、あちこち走り回っては近づき、こちらを凝視する。

可愛いが肉食のハンターだ。

ナキウサギの岩場   背景は白雲岳(右)と北海岳(右)

初めまして、エゾオコジョ

シマリス

ナキウサギ

 

ナキウサギの岩場から見下ろす黒岳石室

 

午後4時半。たどり着いた黒岳石室に50人、隣接するテン場も、ほぼ満杯だった。

標高差50mの桂月岳の裾に位置していて、この頂きから日の出を見るのが、今回の目的。

夏休みと紅葉の端境期なので、閑散としていると思ったが、おおはずれ。 

やっと見つけた隙間にテントを張る。

北大クマ研の学生がスコープで凌雲岳を見つめていた。

11日から観察していて、沢筋を中心に6個体を確認しているという。

桂月岳と黒岳石室 標高差は50m

テン場と凌雲岳

夕映え

 

深夜に目覚めると、テントの中は、真っ暗ではなく、目が十分に効く。

夜明けかと思ったら、まだ零時過ぎ。

標高1890m。寒いので寝袋にくるまったまま、数センチだけテントを開けてみる。

目の前に無数の星屑・・・山々の稜線や立ち並ぶテントを見事に照らす。

顔を出して、ぐるりと周囲を見渡すと、頭上に天の川が巨大な雲となって横たわっていた。

午前4時過ぎにテントを出て、桂月岳に向かう。東の空に、ほとんど新月に近い細い月を見つけた。

月明かりがほとんどなかったので、星のひとつひとつが際立っていたことを知る。

まもなく新月

 

桂月岳から望む大雪山の夜明け

 

テン場から15分ほど登ると、桂月岳(1938m)の山頂に。

つぎつぎと登山者がやってきて、声も出さずに日の出を待つ。

夜と朝の際に、柔らかな茜色の光がにじみ、川筋にひろがる低い雲海が静けさを奏でいる。

やがて、神々しい赤い太陽が頭をもたげた。

日の出(午前4時46分)

ギャラリー40人

 

日の出に飛んでいく飛行機雲(国際線?)

 

■登山記録

13時55分:ロープウェイ、リフトを乗り継いで7合目(1500m)から入山

14時30分:八合目

14時50分:九合目

15時15分:黒岳 山頂(1984m)

15時50分:山頂出発

16時30分:黒岳石室(15分ほどの距離だが、撮影に夢中) 標高1890m 

キャンプ場 500円  冷えたビールも500円

04時00分:テン場発

04時15分:桂月岳 山頂(1938m)

 黒岳の湯 600円のところ、ロープウェイ駅に100円引きの券あり

 

過去の黒岳登山記録

070917 銀泉台~赤岳~小泉岳~白雲岳~北海岳~黒岳
061001  黒岳~北海岳~間宮岳~中岳~北鎮分岐~黒岳
050924 黒岳~北海岳~白雲岳~赤岳~銀泉台
040904 旭岳~北海岳~黒岳
030713 黒岳~石室~お鉢平~北鎮分岐

020922黒岳~石室~お鉢平     020913黒岳~石室~桂月岳    020719 黒岳~石室 


森と湖を裾野に雄阿寒岳

2011-08-13 23:19:57 | 道東の山々

 国道脇から望む雄阿寒岳

 

20111年8月9日(火) 雄阿寒岳(1371m)の登山記録

屈斜路湖の藻琴山、摩周湖の摩周岳(カムイヌプリ)と登って、阿寒湖畔で一日休養する。

目指すは雄阿寒岳。阿寒湖を挟んで向き合う雌阿寒岳と合わせて深田久弥が選んだ日本百名山。

山の広い裾に針広混交の深い森と、大小いくつかの湖沼を抱える。

円錐の独立峰は、温泉街から仰ぐその立ち姿に力強い存在感がある。

阿寒湖温泉アイヌコタンから

阿寒湖畔の夕景

日の出

 

片道6.2キロ、標高差951mなので、それなりに登り応えがありそう。

しかも暑くなりそうなので水も2.3リットル用意した。

登山口は阿寒湖畔の滝口と呼ばれる深い森だ。

クマの出没が多いことから、「登らないことも選択のひとつです」という注意書きも。

ここまで来て登らないわけにもいかず、耳が痛くなるほど笛を鳴らす。

いかにもクマが出そうな太郎湖、次郎湖と小さな沼が続く。

行けども行けども、暗い森の急傾斜。ひたすら登ると、やがて、針葉樹の密度が減る・・・

森に光が差し込んだ瞬間、爽快な気が体幹を貫いた。

日々の生活で積もった毒気が見事に抜けていく。

阿寒湖畔の混交林を登る

 雌阿寒岳を望む

 

四合目を過ぎると、対岸の雌阿寒岳がよく見える。しかし、この先の五合目までがあまりに遠い。

合目の取り方がまちがっているらしい。

「八割は登りました」と五合目の標識に書かれていたので、実際は八合目だよなぁと思う。

ここから緩やかな灌木のトンネルを行くと、人の口笛のような鳥の鳴き声。

探したらウソが赤い喉を震わせていた。つがいのホシガラスもギャー、ギャーと鳴き交わす。

足元にはイチヤクソウがスボットライトを浴びていた。

ウソが鳴く

イチヤクソウ

 

七合目を過ぎて振り返ると、阿寒湖の全景が目に飛び込んでくる。辛かった登りを忘れる瞬間だ。

ハイマツ帯には矮小化したアカエゾマツがぽつり、ぽりと浮かぶ。

その向こうに丸い山頂が見える。

戦中に建てられた気象観測所の土台が八合目に残っていた。

刻まれた人の歴史も垣間見ながら、山頂に。

 

七合目を過ぎて振り返ると阿寒湖の全景

ハイマツ帯に矮小化したアカエゾマツ  右端のポコが山頂

 

八合目 気象観測施設の跡地

 

山頂の地形は複雑で、すり鉢状の噴火口の向こうに雌阿寒岳とフップシ岳が立つ。

阿寒湖は見えない。

そのかわりに、山頂標識の背後を見下ろすとパンケトーとペンケトーが森をくり抜いている。

この沼は特別な許可がないと立ち入れないという。

絶景を独占するも、暑くて風もないせいか、飛ぶ虫があまりに多い。

誰かに記念写真を撮ってほしかったが、待ち人現れず。

うるさい虫に追われるように下山を決めた。

帰路、七合目で川崎から来たという女性ふたりと出会う。

阿寒湖全景をバックにした記念写真が土産となった。

山頂から見た噴火口と雌阿寒岳、フップシ岳(右)

連なる阿寒富士と雌阿寒岳(右)にズームイン

山頂標識の背後にふたつの沼

パンケトーとペンケトー(右)

 

■登山記録

06時00分:滝口から入山

06時20分:次郎湖

06時30分:一合目

06時55分:二合目

07時25分:三合目

07時45分:四合目 「ここから我慢のしどころ」の表示

08時15分:雌阿寒岳の全容が見えて、ほっとする

08時35分:五合目(1194m)…実際は八合目か?

08時50分:六合目

09時05分:七合目 阿寒湖畔の全景を見下ろす 

09時15分:八合目 気象観測所跡

09時25分:九合目 噴火口を横目に・・・

09時35分:山頂(上り3時間35分)

10時05分:下山開始

13時10分:登山口に戻る(下り3時間5分)

 

下山時に立ち寄った次郎湖  湧水なので見事な透明度

 

まりも湯 500円 (8日の前泊時に入浴)

温泉街にある石鹸・シャンプー完備の公衆浴場。源泉かけ流しの熱いお湯が刺激的。

エンジュの樹で作った球をマリモに見立てて浮かべるユーモアも。

 鶴雅 1400円 (9日の下山後に入浴) 

温泉街の老舗大型ホテルの日帰り入浴。ワンドリンクつきなのでラウンジでくつろげる。

贅を尽くした内風呂も快適だが、雄阿寒岳を仰ぐ湖畔の露天風呂がいい。

中国で大ヒットした映画にも登場した。

 阿寒湖畔野営場 630円×2泊

森の中だが、すぐ横に国道が走る。深夜に走るトラックの音が気になった。

が、疲れが良薬なのか、よく眠れた。

明治大学のワンゲルの青年たちがテントを張っていた。

去年は羅臼岳で慶応ワンゲルと出会ったが、今年も若者の清々し笑顔に癒された。

キャンプ場の駐車場からも雄阿寒岳が


晴れの摩周岳(カムイヌプリ)

2011-08-12 07:25:14 | 道東の山々

雲海の屈斜路湖の向こうに摩周岳(小清水峠から)

 

2011年8月7日(日) 摩周岳(857m)の登山記録:

 

雲海に覆われた屈斜路湖の向こうに、摩周岳の切り立った頭が浮かんでいた。

たどり着いた登山口は摩周湖第一展望台の駐車場。車中泊している旅行者が大勢いた。

(残念ながら・・・) 霧の摩周湖というわけにはいかず、紺碧の湖が朝の斜光に照らされていた。

摩周カルデラの長い外輪を歩くことになる。

登山路は標高差300mながら、その距離は7キロに及ぶ。大半はなだらかな草原の中。

蜜を求めて何種類ものチョウが盛夏を飛び交う。

今、季節の真ん中を歩いている。

登山口近くから見た摩周湖の外輪 左端が摩周岳

西別岳を見ながら長い草原を歩く

摩周岳を背にトウゲブキを吸蜜するセセリ  

摩周湖を背にノリウツギを吸蜜するサカハチチョウ

西別岳を背にヨツバヒヨドリを吸蜜するヒョウモンチョウ

 

どこまで続くのかと思った高原歩きも、1時間40分ほどで西別岳と摩周岳の分岐に着く。

倉敷から来たという夫婦が下山してきた。蒸し暑さで、笑みの中にも少々疲れがにじんでいた。

ここから次第に傾斜が増す。樹木の切れ間から覗き込んだ足元は身震いするような断崖だった。

頂上に連なる火口壁の上を歩いていることを知る。

高度感に満ちた山頂は、切り立った岩稜が屏風のように湖に立ち向かう。

空は霞んで遠望が効かないものの、摩周湖の上に立つという高揚感がある。

1時間、ひとりで至福の時を過ごす。

山頂標識

屏風のような火口壁が湖を隠す

雲が流れると、火口壁の右側にも摩周湖が見えた

 

■登山記録

06時40分:第一展望台から入山

07時10分:山頂まで5.4キロ表示

07時45分:頂上まで3.3ロ表示

08時20分:頂上まで1.6キロ表示 西別岳との分岐

08時40分:頂上まで0.3キロ表示 

09時05分:山頂に(上り2時間25分)

10時00分:下山開始

12時00分:登山口に戻る (下り2時間) (駐車料金410円を支払う)

帰路の摩周湖第三展望台から

 

三香温泉 400円 (屈斜路湖・和琴半島)

野趣あふれる大きな露天風呂(男女別)が楽しい。

源泉かけ流しで高温。疲れが一瞬のうちに吹き飛ぶ。

三香温泉

屈斜路湖と摩周湖の位置関係(川湯温泉駅前の看板)

 

 和琴湖畔キャンプ場 450円

屈斜路湖・和琴半島には、ふたつのキャンプ場が隣接している。

湖畔を望むこちらにテントを張る。空が静かに赤く染まり、水鏡がそれを映す。

刻々と進む夕映えに、誰もが見とれていた。

暗くなってから、和琴半島付け根の無料露天風呂(混浴)で半月を眺めた。

ファミリーゾーンから離れたソロ用の敷地にテントを張る

夕映え

翌朝の和琴半島 付け根に無料の露天風呂

和琴半島一周二キロの遊歩道を歩く ミンミンゼミが鳴く

 


屈斜路湖を眼下に藻琴山

2011-08-11 09:47:42 | 道東の山々

 美幌峠から見た屈斜路湖

 

2011年8月6日(土)の藻琴山(1000m)登山記録:

日本最大級のカルデラ湖・屈斜湖へ。その外輪山はなだらかな高原となって湖を囲む。

美幌峠から望む、カルデラ最高峰の藻琴山(1000m)も優しげな表情を浮かべていた。

湖を廻り込んで快適なスカイラインを行くと、「ハイランド小清水725」という小清水峠の展望台に。

725とは標高725mという意味で、ここがすでに8合目。標高差275mの登山口となっている。

美幌峠から望む藻琴山

スカイラインから望む藻琴山

 

札幌からロングドライブで着いた、その日に登る山としては手ごろと思った。

が、すでに日が高く、ギラギラとした炎天下。

それなりの傾斜も続く。

疲れていたこともあり、意外と頑張る登りとなった。

ハイマツ帯に突き出す屏風岩が道中のアクセント。あたりに咲く花に、一息ついた。

チシマセンブリとは初めて出会う。小さな花弁に染みる濃紺の斑紋が気をひく。

屏風岩と山頂

 

チシマセンブリ

モイワシャジン

 

標高差275mなので、あっというまに山頂に。

渡る風が、火照った体を包んでくれた。眼下に得た湖の展望に心が充足する。

雲が少々邪魔したが、知床の斜里岳やオホーツク海を望むこともできた。

四方の雲が勢いを増しながら近づき、空を覆う面積を広げる。

遠雷もゴロゴロと聞こえてくる。

雷は登山の天敵なので、後ろ髪を引かれる思いで下山した。

山頂

 

登山記録

13時10分:スカイライン遊歩道コースから入山

13時45分:屏風岩

13時55分:山頂(上り45分)

14時30分:下山開始

15時00分:登山口に戻る(下り30分)

登山口近くのハイランド小清水キャンプ場にテントを張る。300円

管理人さんが五右衛門風呂(無料)を沸かしてくれた。生まれて初めての体験。

激しい雷鳴の夜が明けると、漆黒から紺色に移ろう空の、雲と雲の隙間が赤く染まった。

知床の斜里岳が雲の上に頭を載せている。

クマゲラが鳴き、エゾライチョウが飛ぶ、深い森の中。

小清水峠から見えるであろう雲海が気になり、午前5時に出発する。

 

 

 針葉樹の森に包まれて・・・

翌朝、小清水峠・ハイランド展望台(登山口)から見た雲海

 屈斜路湖は雲の下

 

雲海の中へ…霧だった

 

車窓から

 


大雪旭岳源水とカワガラス

2011-08-04 22:14:41 | 自然公園/原野/海浜

大雪旭岳源水 木道

 

旭岳登山の翌朝(7月31日)、山麓の「大雪旭岳源水」に立ち寄る。

無料で銘水を汲める小公園には大勢の人が列をなしていた。

こから300mほど、心地良い清流に沿って木道が森の奥へと続いている。
心に感嘆符がいくつも並ぶような清々しい森だ。
清流の象徴、カワガラスが低く飛んでは潜水を繰り返していた。

カワガラス

ピンボケだが、この尾羽をピンと上げたスタイルがこの鳥らしさ

 

美術館  東川町文化ギャラリー  200円

緑陰の瀟洒なギャラリーでは、「写真の町東川町賞」の受賞作家展とフォーラムが開催されていた。

東川町は写真を軸にしたマチづくりを進めている。

確かに、大雪山と山麓の田園地帯は写真のモチーフに満ち溢れている。

町内では「フォトフェスタ2011」が開催中で、国内外から人が集まり、街は楽しさに満ちていた。

この時期に旭岳に登って大正解だった。

東川町文化ギャラリー 

東川町郷土館  無料の撮影サービスが人気だった


ギンザンマシコ飛ぶ 旭岳

2011-08-01 20:14:50 | 表大雪

    ワタスゲ咲く 旭岳一合目の天女ケ原

 

2011年7月30日(土) 旭岳の登山記録

ロープウェイに乗らないで、旭岳五合目の姿見の池を目指そう。

いつもはゴンドラの窓から見下ろす森の中を歩き、花園で静かな時を過ごそうと思った。

アカエゾマツの森を進むと、天女が原に出る。湿原に夏を告げるワタスゲやエゾカンゾウが咲いている。

湿原と湿原を結ぶ荒れた登山路には華奢なアカモノが見ごろを迎えていた。

 

エゾカンゾウ

ミヤマリンドウ

アカモノ

 

湿原を抜けると、山腹を縫うジグザクな登山路を行く。

今は廃止になったが、かつてロープウェイには「天女ケ原」という中間駅があった。

小学生のころ、父親とふたりで「天女ケ原」で降りて、「姿見」まで歩いた記憶がある。

その理由は覚えていない。当時は駅がここまでで、花と山の写真が好きな父が息子を友としたのかもしれない。

・・・森の中の岩道。花も空も覚えていないが、するすると出てきたアオダイショウ。

捕まえようとして、父に止められたことが瞼に焼きついている。

確かに既視感のある道を大人の目の高さで歩く。

木も岩も子どもにとっては、もっと丈があつた・・・

 

四合目に出ると、台地に続く緩やかな傾斜となる。山肌を埋めるウラジロナナカマドの柔らかい緑が心やさしい。

このウラジロナナカマドが赤く染まった錦秋を想像してみるのも楽しい。

登山路の脇にはエゾノツガザクラやアオノツガザクラが鈴なりだ。

マルハナバチがあちこちで吸蜜して、ぶんぶんと空気を震わせているのも夏らしい。

ウラジロナナカマドの柔らかな緑色

 エゾノツガザクラとマルハナバチ 背景はアオノツカザクラ

登山口から二時間で、登山者で賑わう五合目・姿見の池に到着。

池に映っているはずの巨大な山体は重い雲に覆われ、硫黄臭のある噴気と重なっていた。

 

 

姿見の池

標高1650mの周辺は、姿見駅の恩恵で軽装のハイカーや観光客でも賑わっている。

見たかったチングルマは終盤だったが、エゾイソツツジが咲き誇っていた。

クジャクチョウ、ミヤマカラスアゲハ、コヒオドシ、名前のわからないセセリの仲間が吸い寄せられている。

一瞬、雲が流れて青空を背負った頂上の一部が顔を出す。

エゾイソツツジとセセリの仲間

コヒオドシ

山頂の一部が顔を出す

 

帰路、野鳥の撮影スポットに立ち寄る。

いつも十数人が大砲のような長ダマを構えいる場所だが、本日はひとりだけ。

しかも退屈して散歩している。

出ないんだなあと安心していたら、ハイマツの海原から赤い胴体が目に飛び込んできた。

ギンザンマシコだ。

遠くに一羽。夢中になってカシャカシャしたら、近くにもっと赤い一羽が顔を出す。

大サービスと思ったら、「近くの赤」の隣にメスまで顔を出して、三羽ですいすいと飛んで行った。

長ダマの男性は東京から来たとのこと。しかも6月末に続いて二回目の来訪。

「あと4ケ月があるが、今年の運を全部使った」と満面の笑みを浮かべて喜んでいた。

雌雄と今年生まれた若鳥が一緒に行動しているのかしらと話もはずみ、楽しい時間を頂いた。

近くのオス

 

親子?スリーショットわかりますか?  

 

■登山記録

10時15分:ロープウェイ山麓駅横の登山口から入山(1100m)

10時45分:一合目 天女ケ原(1200m)

11時10分:二合目

11時25分:三合目 山腹を登る

11時40分:四合目 ハイマツ帯(1550m)

12時00分:ロープウエィ駅分岐

12時20分:五合目 姿見の池(1665m)

14時30分:ロープウェイで下山(10分 片道1500円)

 大雪山白樺荘 

500円 新しくてきれいでユースの趣あり。しかも、温泉街の最安値も嬉しい。

旭岳青少年野営場 

500円 標高1000mアカエゾマツの森の中。ログハウスのトイレも実にきれい。

今夏から少し変化を求めてテント泊を始めてみた。

夜、霧が晴れた。照明灯に集まって来る蛾を見ていたら、スッー、スッーと空を切る生きものがいる。

おそらくコウモリだと思った。虫を食べているのだろうか。

夜明けとともに野鳥のコーラスで目覚める。ヒガラが蛾を追いかけて空中で捕食するシーンを見た。

遠くでクマゲラが飛ぶときの鳴き声が聞こえる。クルッ、クルッ・・・

散歩して戻ってきたら、その雌雄が鳴き交わしてアカエゾマツの幹にとまったのには、驚いた。

 

逆光のシルエット写真  2羽映っているような気もする