(登山口から望む恵山)
函館山に登った翌朝の5月3日、恵山(えさん)に向かう。いくつかある登山口から、旧椴法華村のホテル恵風から登るルートを選ぶ。
標高618mながら、荒々しい活火山の威容を望む。
ガイドブックによると山頂までは1時間50分とある。春の歩き始めとしては、ほどよい感じだ。
歩き始めの700mほどは、森林浴コースと名付けられた平坦なミズナラの森を進む。
いったん旧登山路の林道に出てから、十三曲がりコースと名付けられた山腹ルートに取りつく。
高さを稼ぐと津軽海峡の展望を得る。
海に迫る広葉樹の森は芽吹きの前。枝ぶりがほんわかとして、ゆりかごのようだ。
(芽吹き前の森と津軽海峡)
十三曲がりというだけあって、ジグザグを切りながら進むと、イソツツジやガンコウランといった高山植物の群落が続く。
標高は低いが冷たい海風で気温が上がらない。気候は高山ということか。
花の時期はまだ先かと思っていたら、草丈の先が赤く染まっていた。秋には黒い実をつけるガンコウラン。
おなじみの高山植物だが、花は初めて見た。
(ガンコウランが咲いていた)
(ガンコウランの花をアップで)
登山口から1時間ほどで火口原に出る。恵山はいくつかの山が連なる複式火山。
標高300m一帯が、その山々に囲まれた火口原となっていて、賽の河原と呼ばれている。
江戸時代からの霊場で民間の信仰を紡いできたという。
観音像などは帰路にお参りすることにする。
(山に囲まれた火口原)
ここから山頂を目指す権現堂コースに入る。荒々しい岩塊が剣のように連なって天を突く。
ここですさまじい強風にあおられる。
ジグザクを切るたびに、強風は右から、前から、背中からと、その方向を変えて襲ってくる。
倒されないようにと、全身に力が入る。硫黄臭を漂わせる噴煙も横にたなびき、見え隠れする。
(噴煙も強風で横流しに吹き飛ぶ)
火口原から1時間弱で恵山の山頂に。火山の溶岩円頂丘だ。
強風は増すばかり、目に砂礫があたって痛い。
海を見渡す景観は最高だが、15分ほどで退散し、火口原で観音像を探すことにする。
(恵山頂上)
火口原は土着の民間信仰の霊場であることに加えて、船乗りが航海の安全を願う権現信仰の場にもなっていたという。
踏み跡をたどると風雨の筆で削られた観音像が点々と続く。時代を重ねてきた畏敬の念が伝わって来る。
江戸時代の豪商、高田屋と刻まれた観音像の台座も。建立したのは日露交渉にも登場する高田屋嘉平ということか。
台座には文化六年と記されているが、上に乗っている観音像と比較すると新しく見える。この部分は復元なのかもしない。
噴煙を上げる荒々しい恵山は、民衆の魂が宿る霊峰だった。
(古い観音像)
(高田屋の観音像)
■登山記録
07時15分:ホテル恵風の登山口
07時30分:十三曲がり登山口標識
08時10分:火口原
09時05分:山頂(上り1時間50分)
09時20分:下山開始~賽の河原
11時00分:登山口に戻る
帰路の森町濁川温泉・ふれあいの里 500円。源泉の大露天風呂が心地よい。