「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

白老・仙台藩陣屋跡のツツドリ

2010-05-24 21:10:57 | 自然公園/原野/海浜
(仙台藩陣屋跡)

22日。白老のポロト自然休養林に行くために下りたインターチェンジ近くに、仙台藩の陣屋跡があった。

花の極みを迎えたエゾヤマザクラの薄紅とキタコブシの白が輝いていた。

ポロト探索の後に、どうにも気になって立ち寄る。

すでに陽は陰り、眩しさは立ち去って寂寥感が漂う。

寒さ厳しい北方警備で大勢の藩士が倒れたであろう、夢の跡。ひと組の親子がキャッチボールに戯れていた。

そこにツツドリが2羽。カッコウそっくりで外見から見分けることは難しい。

が、天高く「ぽっ、ほ゜っ」と時を刻むように鳴くので、今年も南の国からツツドリが来たなあとわかる。

この声を聞くと春というより、初夏の扉を感じる。

この地の遅い春はテンポアップして、一気に夏へと向かう。


(ツツドリ)


ポロト湖周辺の森は萌黄色

2010-05-22 22:09:55 | 自然公園/原野/海浜
(ポロト湖)


白老のポロト自然休養林を歩く。霧の多い太平洋沿岸。この日もポロト湖に時おり霧が入ってきた。

札幌から80キロも南西に位置するが、春到来のスピードが10日ほど遅いだろうか。

萌黄色に染まり始めた森に、ようやく満開の時を迎えたエゾヤマザクラの薄紅が彩りを添える。

淡い水彩画を見るような、清々しさに出会えた。


(エゾヤマザクラ)



ビジターセンターからいくつかの遊歩道があるが、適当に右方向の自転車路から森に入る。

川が流れ、湿地も広がって、この森は多様な表情を合わせ持っていた。

朝夕に本番を迎えるはずの野鳥のコーラスが、昼だというのに実に賑やかだ。

キビタキ、クロツグミ、アオジ、ジョウビタキ、ウグイス…



(森の中の湿地)



(キビタキ)

遊歩道脇にはタチツボスミレが延々と咲き誇っていた。

ツボスミレ、オオバキスミレ、ミヤマスミレ、フイリミヤマスミレなどなど。

ほにも見たいスミレがあったが、あまりにタチツボスミレが全盛で、探す気力をなくす。


(タチツボスミレ)


(ツボスミレ)


(オオバキスミレ)

歩くコースを決めかねていた。途中で出会った「望岳台」という案内版にひかれて、分岐路を登ることにした。

平坦な森歩きから、登山モードにスイッチが入って少々愉しくなる。

望岳台(123m)は樽前山に見晴らしを開いた小高いピークだった。

汗を乾かしてから、別の尾根道を下ってビジターセンターに戻る。


(望岳台から見た樽前山)

■記録
13:00 ビジターセンターから出発
13:50 望岳台

北方野草園~嵐山~近文山

2010-05-16 23:22:32 | 道北の山々

                (キタコブシ咲く嵐山)

先週末に続いて16日も旭川の里山へ。今回は昨年行って楽しかった嵐山(253m)を再訪。

キタコブシが山体のあちこちを淡い白色で染めていた。春の穏やかな山の面構えに心身がリラックスする。

京都を擬して命名したのだろうか ? 北の嵐山は桜山ならぬ辛夷山だった。

山麓斜面は「北方野草園」として散策する市民で賑わっていた。

すでに春一番に咲くカタクリやエンゴサクは終りを告げ、第二陣のシラネアオイやオオバナノエンレイソウが群落を形成する。


(シラネアオイの群落)

ひらひらとヒメギフチョウがゆく。色も褪せて早春の女王も終盤か。

濃い群青のシジミチョウが飛ぶ。初めて見たが、その素早さからコツバメだと思う。

オオバナノエンレイソウにとまるも翅は閉じたままで、目にする裏翅は濃い茶色。

翅を開けば、きっと広がる濃い青色に、どきっとすることだろうに。


(色褪せたヒメギフチョウ)


(表翅は濃いブルーのはず…コツバメ)

中腹から望む太い石狩川。貫く旭川の街並みと、背景に構える白銀輝く大雪山の山並が美しい。

冬をひきずる雪色に、エゾヤマザクラのピンクが春到来のアクセントを添えていた。


(嵐山中腹から望む大雪山)


北方野草園に別れを告げて、山頂を目指す。巨大な長玉レンズを構える男性がいた。

元気に遊ぶ仔リスの兄弟を狙っているのかなと思ったら、枝に鎮座するエゾフクロウだった。

こういう思わぬ一期一会が、旅の楽しさ。


(エゾフクロウ)

嵐山の山頂からは、左手に天塩岳、中心に旭岳を主峰とする表大雪、そして回廊のトムラウシ山が続く。

右端に十勝岳連峰が止めを作って、白い一直線を締めくくる。大雪山の白線流し。

旭川は凄いぞ。この感動を表現できる撮影技術がないことを悔やむ。


(大雪山の白線流し)

嵐山からの俯瞰を記憶に刻んで、近文山(216m)へと縦走する。

小気味の良い雑木林の路傍には終盤のカタクリが最後の輝きを放つ。

凛と清楚なエゾイチゲが、いのちのバトンタッチを受けて、白い群落を作る。

近文山には「国見の碑」が立つ。

明治18年に初代の北海道庁長官がこの地から上川盆地を俯瞰したという。


(近文山の山頂)


開拓時代に思いを馳せながら、カシワの純林が続く国見峠を歩く。

この登路は車道を渡って半面山へと続くが、縦走の楽しみは来年に繰り越そう。

車道歩きで嵐山山頂に戻って、北方野草園に下山した。

■登山記録:

12時30分:北方野草園の入口
13時15分:嵐山の山頂
13時30分:山頂出発~チセ跡~砦跡~チセ跡に戻って・・・
14時00分:近文山(国見の碑)
14時15分:国見峠~嵐山の山頂
15時00分:北方野草園入口に戻る


近くの公衆浴場「菊水湯」 420円

■過去記録:
09年4月29日 嵐山


やっと春爛漫 藻岩山~円山

2010-05-15 22:55:10 | 藻岩山
(登山口/観音寺の桜)



久しぶりの快晴と暖かさ。日中に所用ありで、早朝に藻岩山へ。

登山口の観音寺のサクラが満開。札幌のソメイヨシノの満開は昨日14日で、

平年より6日、去年より10日も遅い。

低温続きのため、開花から満開までの時もずいぶんと長かった。ともあれ、ようやく桜の季節到来。

観音寺の桜にはヒヨドリ、そしてメジロが集まって蜜を愉しむ。

早起きは三文の得といったもので、メジロのくるりとした愛らしい目に、どきどきした。

森の萌黄もようやく始まり、キタコブシが青空に拳を突いていた。


(桜にメジロ)


(キタコブシ)

帰路、ドライブ気分で円山へ。こちらはのほうは山全体に春紅葉が進んでいた。

花見客もシートを敷いて夜を明かしての陣取り合戦。きょうは大賑わいになるだろう。

野鳥のさえずりが美しく、目の前に幸福の青い鳥!

高らかに歌っては、地面に降りてエサを捕る。その繰り返しもリズミカル。

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(円山の春もみじ)


(オオルリ)




カタクリ咲く旭山

2010-05-09 23:38:49 | 道北の山々
                         (旭山公園のカタクリ)

里山に咲くカタクリを見ようと旭川へ。

向かったのは、あの旭山動物園の旭山(標高295m)である。

数年前、JR北海道の車内誌で見かけた1枚の写真。旭山の斜面をカタクリの群落が染めていた。

「へぇ、あの旭山にねぇ」という意外性が強く、いつか歩いてみたいと思っていた。

動物園に隣接する旭山公園をうろうろすると、八十八ケ所巡りの観音さまが点在。

その公園の道筋が、舗装された観光道路を渡って、森の中へと続く。小気味の良い登山路はカタクリロードになっていた。



(観音ロードはカタクリの道)

雨上がりのどんよりとした曇り空。控えめにお辞儀するカタクリの写真を撮りながら、ゆっくりと進む。

30分ほどで頂上直下の二股に。下りに49番の観音さまが鎮座するが、ここはまず山頂へ。

テレビ局の送信アンテナが数本立っており、旭川の田園地帯を見下ろしていた。



(旭川、春の田園地帯)


頂上から二股に戻って、下りながら観音巡り。ここからは道幅が広がって整った道となる。

日が差してポカポカすると、スジグロシロチョウが盛んに飛び交う。


(スジグロスジチョウ)

春の女王・ヒメギフチョウもいないかなぁと目を凝らしたら、願いが通じたのか。

小さな黄色が、カタクリの路傍をひらひらと舞う。

食草のオクエゾサイシンが見当たらないのが、不可思議だが・・・



(ヒメギフチョウ)

ルリシジミ、ヒオドシチョウ、クジャクチョウも次々と登場。

蝶々を誘う陽光の威力を実感する。

花々は光をはじいて輝きを増す。小さな里山に自然が織りなす小宇宙。だから、てくてく歩きがやめられない。


(ルリシジミ)


(クジャクチョウ)


下りと思っていた観音ロードは登ったり、下ったりと山腹を巻いて、最終的に山麓の高野山旭山寺に。

その手前、八十七番観音周辺にカタクリの大群落が広がっていた。

あの車内誌で見た一枚の写真。ようやく眼福を得る。


(カタクリの大群落)


(旭山バス停から望む旭山)

■登山記録(2010年5月9日)
12時45分:旭山公園
13時15分:山頂
15時00分:あちこち歩きまわって山麓の旭山寺に

淡い赤色に染まる カツラの芽吹き

2010-05-07 23:54:44 | 藻岩山
5月5日の藻岩山。穏やかな花曇り、裸樹の森が淡い赤色に点々と染まっていた。

カツラの芽吹きだ。

葉が少々だけ成長すると、金色に近い萌黄色となる。

前の日に出会った北大植物園のカツラは、すでに金色の雨だれ状態。

だから、芽吹きの赤は、時を外すと、1年後まで見ることができない。

低温つづきの今年は、春遅く。

ゴールデンウーイークに今年のような赤い極みを見たのは、初めてだ。

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緑の日は無料です!北大植物園

2010-05-06 22:15:12 | 自然公園/原野/海浜
(都心の植物園、エゾリュウキンカとミズバショウが人気)


5月4日、道南遠征で疲れて寝坊する。昼のNHKニュースを見たら、「本日は緑の日。北大植物園は無料で大賑わい」とのこと。(ちなみに入園料は400円)

北大植物園には学術研究用の植物が、ずらりと植えられている。

その一方で、明治初期の植生や地形を保存している。都心にありながら、原始・サッポロの名残りも楽しい場所だ。

ということで、自転車こいで行ってみた。

キバナノアマナの大群落があちこちに。カツラの若葉が金色の雨だれだったり。


(キバナノアマナの絨毯)



(カツラの若葉は金色の雨だれ)

なかでも気に入ったのは、園内にある北海道最古の博物館。

南極犬タローのはく製、世界でここにしかない絶滅種エゾオオカミのはく製、ブラキストンが採集した野鳥の数々・・・

館は小さいけれど、北海道の動物博物史が満載で、実にわくわくした。


(明治15年開設の北海道最古の現役博物館)

活火山の霊峰、恵山に登る

2010-05-05 16:00:32 | 道南の山々
(登山口から望む恵山)

函館山に登った翌朝の5月3日、恵山(えさん)に向かう。いくつかある登山口から、旧椴法華村のホテル恵風から登るルートを選ぶ。

標高618mながら、荒々しい活火山の威容を望む。

ガイドブックによると山頂までは1時間50分とある。春の歩き始めとしては、ほどよい感じだ。

歩き始めの700mほどは、森林浴コースと名付けられた平坦なミズナラの森を進む。

いったん旧登山路の林道に出てから、十三曲がりコースと名付けられた山腹ルートに取りつく。

高さを稼ぐと津軽海峡の展望を得る。

海に迫る広葉樹の森は芽吹きの前。枝ぶりがほんわかとして、ゆりかごのようだ。



(芽吹き前の森と津軽海峡)


十三曲がりというだけあって、ジグザグを切りながら進むと、イソツツジやガンコウランといった高山植物の群落が続く。

標高は低いが冷たい海風で気温が上がらない。気候は高山ということか。

花の時期はまだ先かと思っていたら、草丈の先が赤く染まっていた。秋には黒い実をつけるガンコウラン。

おなじみの高山植物だが、花は初めて見た。



(ガンコウランが咲いていた)


(ガンコウランの花をアップで)

登山口から1時間ほどで火口原に出る。恵山はいくつかの山が連なる複式火山。

標高300m一帯が、その山々に囲まれた火口原となっていて、賽の河原と呼ばれている。

江戸時代からの霊場で民間の信仰を紡いできたという。

観音像などは帰路にお参りすることにする。



(山に囲まれた火口原)

ここから山頂を目指す権現堂コースに入る。荒々しい岩塊が剣のように連なって天を突く。

ここですさまじい強風にあおられる。

ジグザクを切るたびに、強風は右から、前から、背中からと、その方向を変えて襲ってくる。

倒されないようにと、全身に力が入る。硫黄臭を漂わせる噴煙も横にたなびき、見え隠れする。


(噴煙も強風で横流しに吹き飛ぶ)

火口原から1時間弱で恵山の山頂に。火山の溶岩円頂丘だ。

強風は増すばかり、目に砂礫があたって痛い。

海を見渡す景観は最高だが、15分ほどで退散し、火口原で観音像を探すことにする。


(恵山頂上)

火口原は土着の民間信仰の霊場であることに加えて、船乗りが航海の安全を願う権現信仰の場にもなっていたという。

踏み跡をたどると風雨の筆で削られた観音像が点々と続く。時代を重ねてきた畏敬の念が伝わって来る。

江戸時代の豪商、高田屋と刻まれた観音像の台座も。建立したのは日露交渉にも登場する高田屋嘉平ということか。

台座には文化六年と記されているが、上に乗っている観音像と比較すると新しく見える。この部分は復元なのかもしない。

噴煙を上げる荒々しい恵山は、民衆の魂が宿る霊峰だった。

(古い観音像)


(高田屋の観音像)

■登山記録
07時15分:ホテル恵風の登山口
07時30分:十三曲がり登山口標識
08時10分:火口原
09時05分:山頂(上り1時間50分)
09時20分:下山開始~賽の河原
11時00分:登山口に戻る

帰路の森町濁川温泉・ふれあいの里 500円。源泉の大露天風呂が心地よい。

函館山のスプリングエフェメラル

2010-05-04 18:20:04 | 道南の山々
(千畳敷コースから見た函館山)

5月2日、函館山に登る。標高334m、周囲9キロの小さな山だが、12のハイキングコースがある。

さて、どのコースを歩こうか。最も代表的なコース、「函館山ふれあいセンター」から続く旧登山道コースを選ぶ。道幅が広く、昔は車両も通ったのだろうか。

広葉樹の森は未だ芽吹き前。足元には白いキクザキイチゲが延々と続き、ところどころに淡い赤紫色のカタクリが彩りを添える。

真っ先に咲く花々をスプリングエフェメラル、春のはかなき妖精たちと呼ぶ。木々の葉が茂る前、たっぷりと日ざしを受けて一斉に咲き乱れる。


(キクザキイチゲとカタクリ)

アオジ、ウグイス、ジョウビタキ。海峡を渡ってきた夏鳥たちの囀りもにぎやかだ。

葉が茂っていないので、観察には好都合。耳で、目で、やって来た春を愉しむ。

野鳥観察小屋に立ち寄ったら、先着の女性が「クロツグミが沢で水浴びしている」と教えてくれた。こうした思わぬ出会いも山歩きの楽しみだ。


(アオジ)


ゆっくり登って一時間ほどで山頂に。正式には御殿山と呼ぶ。

北海道を代表する一大観光地だけあって、ゴールデンウィークを過ごす大勢の行楽客でにぎわっていた。笑顔も満開だ。

お約束の写真を、一枚だけ撮影。やはり、函館といえば、この写真。


(函館山から見下ろした市街地)


下りは旧登山道コースから千畳敷コースに寄り道してみる。スミレの仲間では最も早咲きのスミレサイシンを見つけた。

函館山はスミレの種類が多いというが、時期が早いのか、この花が初見だった。


(スミレサイシン)

旧軍の千畳敷砲台跡(戦闘指令所)を覗いてみた。

函館山には明治の末に5つの砲台が作られ、函館要塞として昭和21年まで一般の立ち入りは禁じられていた。

そのおかげで、自然が保たれたという歴史の妙にも思いを巡らせてみる。


(千畳敷砲台跡)

砲台跡から千畳敷コースの来た道を戻り、汐見山コースを降りることにした。ミズナラが続く細い尾根なので、登山気分が満たされる。

足元に、スミレをもう一種類見つけた。淡い赤紫色、恥じらうようなヒナスミレが点々と咲いていた。そして、深い紅色のコジマエンレイソウも存在感をアピール。

春の妖精たちに、季節が始まった清々しい躍動感のおすそ分を頂いた。


(ヒナスミレ)


(ヒナスミレをアップで撮影)


(コジマエンレイソウ)


■登山記録
12時55分:入山
13時55分:山頂
16時05分:登山口に戻る

 市営 谷地頭温泉 420円 茶褐色の熱いお湯が良い。




(宝来町から見た夕暮れの函館山)


(翌朝、啄木小公園から函館山を望む)