「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

晩夏の藻岩山

2009-08-29 21:35:34 | 藻岩山
                     (写真: エゾトリカブトの残花)

久しぶりに藻岩山に。時間がなかったので、登山口から1.8キロほどの中腹に位置する「馬の背」までを往復した。

山は深く青々としているが、晩夏の花は寂しく、エゾトリカブトは残花が少々。夏草の中にツルニンジンが垂れていた。


(写真: ツルニンジン)

白いサラシナショウマが目立ち、スジグロシロチョウが吸蜜していた。

夏の終わりに小さなクワガタのメスを見つけて、少々うれしく。得した気分になる。

名前がわからないが、ヒョウモンチョウの類がヨツバヒヨドリを吸蜜していた。同じ花に白い蛾の姿も。この白い蛾は大量発生していて、あちこちで見かけた。

短い時間だったが、晩夏を満喫。下り道から望むサッポロの街からは、「最後のお願い」の連呼が風に乗ってきた。

明日から大きく変わるであろう世の移ろいと、変わらぬ時を刻む原生の森。人間は小さいぞと、知る。


(写真: サラシナショウマを吸蜜するスジグロシロチョウ)


(写真:小さなクワガタの♀)


(写真: ヒョウモンチョウの類と白い蛾)

ヒョウモンチョウの識別は僕には難しい。が、いろいろと見比べてみたらミドリヒョウモンのメスだ! と確信。

とにかく見比べ続けると、突然わかることがある。

さて、この真っ白な蛾の名は?

ウトナイ湖 晩夏の草原

2009-08-23 19:59:42 | 自然公園/原野/海浜
午後、苫小牧のウトナイ湖畔を歩く。環境庁野生鳥獣保護センターから日本野鳥の会ネイチャーセンターまでの遊歩道は、片道20分ほどか。

湖畔の林を数十羽の野鳥が忙しく移動していく。カラ類やウグイスの仲間の混群だ。

羽の雰囲気、なんなとなく容姿が成熟してない。今年生まれた幼鳥の集団だろう。

草原に目を転じると、紅色のホザキシモツケ、白いナガバノシロワレモコウ、紫のサワギキョウ。夏から秋に移ろう色彩豊かな草原だ。


(写真:ホザキシモツケ)


(写真:ナガバノシロワレモコウ)


(写真:サワギキョウ)

時折、ジャノメチョウとミドリシジミが遊歩道脇の草原を舞う。

ナガバノシロワレモコウを食草とするゴマシジミを期待していたが、出会うことはなかった。

時期、それとも歩いた時間が遅かったのか。少々、残念。


(写真:ジャノメチョウ)


(写真: ミドリシジミ)

野鳥の会ネイチャーセンターで一休み。屋内の展望窓から悠々と飛ぶオジロワシの姿がを見ることができた。

数年前から、番が繁殖しているとのこと。

「ジョッピン カケタカ」・・・ 
「ジョッピン カケタカ」と、エゾセンニュウの澄んだ歌声。

開いている小窓から飛びこんできた生演奏だった。草原の中に潜んでいて、その姿を見せることはなかった。

(ジョッピンとは、北海道弁で「鍵」のこと。)

森と湿地と草原と 平岡公園

2009-08-16 18:26:33 | 自然公園/原野/海浜
清田区の平岡公園を歩く。札幌市内では春の梅林として有名だが、訪れたのは初めて。

丘陵地帯が残されていて、森、湿地、草原が適度に保全、もしくは復元されていた。

森の際に広がる湿地には木道が敷設されていて、湿地周辺の林に棲む蝶が次々と姿を現す。


(写真: オオヒカゲ)

淡い褐色のオオヒカゲは、その名にふさわしく大きく、ゆらゆらと登場する。

アゲハチョウくらいの大きさだ。

藪の低くて、暗いところを好んで舞う。食草は湿原のスゲの仲間。


(写真: コムラサキ?)

おそらくコムラサキ。オオムラサキを小さくした文様で、初めて見たが、これはコムラサキかなあと直感。

あまり紫色をしていないので、メスだろうか。幼虫の食草はヤナギということで、こちらも水辺に縁があるチョウだ。


(写真:わずかに青い翅表を見せるミドリシジミ)

小さなゼフィルスも盛んに飛んでいた。

湿地のハンノキを食草とするミドリシジミだろう。飛んでいるときに、ちらちらっと青い翅表を輝かせていた。


(写真: ミドリシジミの翅裏)


次々と蝶と出会うが、水辺の主役といえば大型のトンボだ。

ぶん、ぶんと音を鳴らしてオニヤンマが行き交う。捕虫網を持った男の子たちも、木道をぐるぐると廻っていた。

ぎらきらと照りつける夏の太陽に、童心が甦る。


(写真: オニヤンマ)

大雪山を行く 天人峡~化雲岳(3)

2009-08-12 22:45:06 | 表大雪
(写真: 1947峰で出会ったシマリス)

ポン沼から少々行くと、1947峰に。岩に登ると、右手に構えるトムラウシ山と、それに連なる十勝岳連峰の迫力にわくわくする。

ふと、左手の岩に生き物の気配。シマリスがぽつんと、遠くを見ていた。

背景は表大雪の残雪。絵になるなあと、感嘆。

岩峰を降りると、1933峰から化雲岳まで続くゆるやかな草原を行く。

すでに花の季節は過ぎ去り斜面は寂しいものの、大きく迫るトムラウシ山の気高さに見とれる。

心中でそっと手を合わせた。先日、大勢の登山者の生命を奪ったばかりの、その山に。

百名山、憧れのトムラウシ。大きなその立ち姿が、自然と向き合うことの厳しさも教えてくれる。


(写真: トムラウシ山。右手の連なりは十勝岳連峰)


(写真: 行く手の化雲岳)

1947峰と1933峰の間で、化雲岳から降りてきた単独登山者と会う。僕より1時間早い午前4時半に天人峡から上がった、先行者だ。

1933峰を過ぎると、化雲岳は手に取るほど近い。

が、登山路に予想外のクマの糞。今まで何度も見てきたクマの落とし物は、茶系で大きくて、馬糞に似ていた。

しかし、これは黒くてカタチも少々細くてまとまっている。クマかどうか? 

少々疑問だったが、その後にふたつも見たので、これはクマに違いないと思う。

差異は食べ物の違いなのだろうと納得する。

化雲岳の頂上に近づく最終の登り。嬉しさのあまりに、歩みのピッチが早くなる。まるで、初登校する小学一年生の気分だ。

と、心臓がバクンと胸骨から飛び出しそうになる。クマよりこちらのほうがはるかに危険だ。年齢にふさわしく慎重に歩むことの大切さを思い知る。



(写真: 予想外のクマの落し物?)


(写真: 化雲岳の山頂。大きな岩が特徴)

山頂(1954.3m)には大学生のパーティーが休んでいた。様子からすると、ここからヒサゴ沼、そしてトムラウシ山に向かうのだろう。先日の遭難者と同じコースだ。

頂上からは2年前にクチャンベツコースから登った五色岳が、すぐそこに。1時間ほどの距離だろう。忠別岳の向こうには先月歩いた高根ケ原も望む。

大雪山を巡る幾筋もの登山路が全身の感覚で、つながり始めた。

自宅に戻って、五色岳から撮影した写真と化雲岳から見た光景を比較しようと、過去の写真を探す。が、07年7月14日のフォルダーだけがない。

バソコンを買い替えた時に、このフォルダーの移動をミスったのだろう。大ショック!

でも、記憶に刻まれている。ブログも残っている。(07年7月の五色岳)

と、自分を励ましてみると少し気持ちが落ち着いた。

今度はクチャンベツコースから五色岳、そして化雲岳まで歩くという目標がひとつ増えた。


(写真: 化雲岳山頂から望むトムラウシ山)


(写真: 手前は1954峰。その奥のなだらかなピークが五色岳。背景は石狩連峰)


(写真: 山頂から見た表大雪)

■登山記録
05時30分: 天人峡の登山口から入山
06時15分: 滝見台
07時40分: 第一公園
08時20分: ハイマツ帯
09時ごろ: 第二公園付近
09時30分: 礫地
10時10分: ポン沼
10時30分: 1947峰
11時15分: 化雲岳山頂
11時45分: 下山開始
16時15分: 登山口に戻る  (上り6時間15分、下り4時間30分)

天人閣 1000円 明治33年開湯の源泉温泉。古ーい感じの岩風呂がよい。

大雪山を行く 天人峡~化雲岳(2)

2009-08-11 22:43:18 | 表大雪
(写真: 第二公園付近から望む表大雪の山並)

第一公園の木道が途切れると、斜面に茂る笹やハイマツがの勢い増す。時にはトンネル状になり見通しが悪くなる。

こんな場所でクマと出合い頭の衝突は嫌なので、クマ避けのホイッスルを時々鳴らす。

高度を上げながら後ろを振り返ると、旭岳から白雲岳の連なりに、小泉岳、赤岳、緑岳の連なりも加わり、山の大きさを知る。

この周辺を第二公園というらしいが、とにかく距離が長く、特に標識があるわけでもない。

やっとの思いで礫地に出ると、コマクサやコメバツガザクラの残花が短い夏の終わりを告げていた。7月中下旬は美しいお花畑が拡がっていることだろう。

行く手には小化雲岳が見えるが、この山へ続く登山道はない。なぜか数人の登山者が降りてきたが、沢登りの装備を身に着けていた。

天人峡の沢から上がってきて、この登山路を下るのだろう。


(写真: 小化雲岳の礫地。左は1947峰)

礫地を抜けると、すでに花を落としたチングルマの大群落。咲いていたらきれいだろうなあと思って進むと、まだまだ遅咲きの花が群落を作っていた。

雪解けのスピードの違いが見ごろの時期をずらしてくれる。行く手の右側にすでに視界から消えそうな小化雲岳、左手に忠別岳が構える。



(写真: チングルマの群落と小化雲岳)


(写真: チングルマの群落と忠別岳)

やがて岩山の1947m峰を背景に小さなポン沼が見えてくる。

大型のトンボ、オニヤンマの仲間が盛んに飛び交う。周囲の草原はウサギギクが黄色に染めていた。

そこに無数の蝶が舞い、吸蜜する。

コヒオドシ、その数は数百の単位だろう。


(写真: 1947峰とポン沼)


(写真: ウサギギクとコヒオドシ)


(写真: ポン沼を過ぎて振り返ると、表大雪の山並)





大雪山を行く 天人峡~化雲岳(1)

2009-08-09 23:08:41 | 表大雪
(写真:午前4時45分ごろ。旭岳の連なり)

濃霧に覆われた深夜の高速道を北へ北へとひた走る。

しらじらと夜が明ける。

東川町の田園に浮かぶ旭岳連峰の朱色のシルエットに快晴の予感が。きょうは、どんな出会いがあるのかしらと、どきどきする。

夜と朝の際に繰り広げられる神々しい光景。日常生活では体感できない感動が眠気を吹き飛ばす。


天人峡温泉(標高600m)の登山口から化雲岳(1954m)までの11.5キロを往復するというロングコースが、この日のプラン。

花々のピークは過ぎているだろうが、大雪山の大きさを体感しよう。

登山口から急斜面をジクザクに進む。涙壁・33曲がりというらしいが、かなりキツイ。

見たことのないランやイチヤクソウの類が咲いているが、薄暗いので撮影の意欲もわかない。45分ほどで、滝見台(標高919m)に。

落差250mの「羽衣の滝」の全容が目に迫り、来てよかっなあと、一息つく。

ここからは、忠別川が流れる深い渓谷、そして大雪山の主峰・旭岳を望む。


(写真: 滝見台から見た羽衣の滝)


(写真: 忠別川の渓谷と旭岳)


滝見台からはアカエゾマツやトドマツの針葉樹林帯をひたすら進む。

羽衣の滝が落ちる渓流・忠別川の迫力溢れるゴッーという響きが心地よい。

亜寒帯らしい山の奥深さを感じるが、延々と続くその距離、あまりに長い。


(写真: 針葉樹の森が延々と続く)

まだか、まだかと1時間余りで、ようやく「第一公園」と呼ばれる湿原台地に出る。標高1300m。

白いワタスゲ、黄色のエゾカンゾウ、晩夏を告げる紫のタチギボウシ。背後には旭岳、後旭岳、白雲岳の連なりが鎮座する。

天空の楽園。ここを終点にしたいくらいの絶景。

誰もいない、僕だけの庭。秋を先どりする無数のトンボが舞っていた。


(写真: ワタスゲ揺れる第一公園。アカエゾマツ越しに旭岳の連なり)


(写真: 早や晩夏告げるタチギボウシ)



雨の手稲山

2009-08-02 20:10:54 | 札幌・小樽周辺の山々
(写真: エゾアジサイ)

曇りの予報だったが、手稲山(1023.1m)は終日の雨だった。驟雨が小雨になり、やがて細かい霧雨に。

札幌市内で1000メートルを超えていて、片道5キロ。近いが、それなりに登りがいもある。久しぶりの「高山」だ。

予想外の雨だったが、エゾアジサイが清涼な空気にみずみずしく映えていた。

2時間ほどで、広いガレ場に。大雪山なら、ナキウサギがピッィーと鳴きそうな本格的なガレ場だ。

雨に煙っていて周囲の景観は望めないが、次々と点在するエゾノキリンソウの群落が疲れを癒してくれた。


(写真: ガレ場のエゾノキリンソウ)

雨に濡れた岩は滑りやすく、足元に注意して急登する。息を切らしながら、30分ほどでガレ場を抜けた。実に長く感じた。

その僕を、白くて可憐なイチヤクソウが小さな群落を作って迎えてくれた。疲れた心身へのご褒美かな。


(写真: イチヤクソウ)


(写真: イチヤクソウの花を下から覗く)

ガレ場を抜けると、空も近くなり、少し光も差してきた。樹々の高みにたくさんのチョウが舞うが、霧状のベールに包まれて、シルエットだけが目に焼きつく。

ふと足元をみると、青いシジミチョウがふわふわと飛んでいる。

写真を撮っていると、ひとまわり小さなシジミチョウも。こちらの翅表は暗い朱色だ。おそらく雌雄だろう。

帰宅して調べたらヒメシジミ。


(写真: ヒメシジミの翅裏)


(写真: ヒメシジミ♂)


(写真: ヒメシジミ♀)

山頂は、乳白色の霧に包まれて展望はなく。ここからの眺めは何度か見ているので、いくつかのシーンを思い出しながら昼食をとる。

終日の雨でも小さな出会いがいくつか重なり、十分に楽しかった。

午後4時半ごろ下山したら、警察のパトカーが「近くの霊園で親子グマが出ました。登山者は下山してください」とスピーカーを大きく響かせていた。

■登山記録
10時35分: 平和の滝から入山
11時35分: 布敷の滝
12時25分: ガレ場
13時00分: ガレ場を抜ける
13時30分: ケルン山頂
13時40分: 山頂

14時05分: 下山開始
16時30分: 登山口に戻る

※登山歴:
04年11月14日
05年06月18日
07年03月04日手稲山に登る
08年01月27日厳冬の手稲山
08年10月12日錦秋駆け降りる手稲山