「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

登山規制一部解除の駒ケ岳に

2012-09-16 22:48:34 | 道南の山々

2012年9月15日・駒ケ岳の登山記録:

 

この連休に晴れそうなのは道南のみ。

火山活動が沈静化した駒ケ岳に行ってみようと思った。 登山規制が一部解除になって三年目になるという。

赤井川コース六合目の駐車場から、荒々しい活火山の地肌を踏みしめて、40分。

あっというまに、途中の「馬の背」(標高900m)に着く。

この先に連なる剣ケ峯(1131m)、砂原岳(1113m)、隅田盛(892m)の三つのピークは、いまも立ち入り禁止だ。

ここが当面の「仮山頂」ということか。

重く垂れる雲の切れ間から、眼下に鈍く光る大沼と小沼。

真夏並みの暑さで噴き出した汗を風がさらっていく。

頭上を数羽のタカが旋回していた。そろそろ渡りの時期なのか。

「鷹渡り」・・・秋の気配を感じながら、下山する。

湖畔に近いキャンプ場は、満天の星空に、虫しぐれ。

 

馬の背:から見た剣ケ峰は雲の中  

馬の背から見た砂原岳

馬の背から見た隅田盛   タカ(ノスリかな?)が舞う

馬の背から見た大沼・小沼

大沼湖畔・流山温泉のキャンプ場

 

■登山記録

13時10分: 六合目駐車場

13時50分: 馬の背 (仮の山頂) 

14時00分:下山開始

14時40分:下山  ※登山は15時までに制限されていて、取り付け道路が施錠されるので要注意

①ちゃっぷりん館 400円  下山直後に入浴。森町の公営日帰り温泉。広くて心地良かった。

②流山温泉 500円  キャンプ場に隣接する日帰り温泉。落ち着いた癒し感あふれた異形の施設。

※「流山」とは大噴火に伴う火砕流が運んできた岩石が小さな山をいくつも築いた地形をいうそうだ。

掘り起こした溶岩石でつくられたモニュメントの数々が大地創造を彷彿させる。

 

 

 

流山温泉

 

彫刻家・流 政之プロデュースの「クレージーストーン」

彫刻家・流 政之の野外彫刻 

大沼公園

アキアカネ

 


春の函館山に登る

2011-05-07 12:10:54 | 道南の山々

                        ロープウェイ駅から望む函館山

 

5月6日(金) 函館山(334m)の登山記録

 

連休を利用して、岩手県内の被災地でささやかな力仕事。見て、聴いて、触れて、初めて感じることがある。

帰路、途中下車して函館山に登る。

桜前線は東北から津軽海峡を渡って来たばかり。いつもの春と変わらぬ今年の桜色が心に染みる。

芽吹き前の森で、可憐に咲くスミレの花々が見たかった。色はさまざまで青紫や薄紅色、そして白いスミレ。

早朝の穏やかな光に花弁が照らされていた。

真紅のコジマエンレイソウや白いキクザキイチゲも、あちこちで咲き競う。

                  スミレサイシン

                     ヒナスミレ

                    ヒカゲスミレ

                   コジマエンレイソウ

                    キクザキイチゲ

 

花を探しながら、一時間あまりで山頂に。海と山、そして人々の暮らしが織りなす独特の景観が広がる。

火山島だった函館山と亀田半島を繋いだ砂州に街が発展した。

ロープウェイが動き出す前、早朝の静けさが旅情をかき立てる。

時おり、海から太くて低い汽笛の音が届く。

                  函館山の山頂から街を見下ろす

 

函館山は複数の峰に、それぞれ独自の名を持つ。最高点の山頂を御殿山と呼ぶ。

ここから少々下って、入江山に寄り道。旧軍の砲台跡から、函館山(御殿山)を仰ぐ。

ウグイスの仲間、センダイムシクイが群れをなして移動していた。

「ショウチュウ イッパイ グィー」と鳴く。

           入江山の砲台跡から函館山(御殿山)を仰ぐ

 

入江山から来し方を戻り、観音コースを下る。

カタクリの群落に青いキクザキイチゲが混じっていた。宝物を見つけたかのように、どきっとする瞬間。

札幌周辺では白いキクザキイチゲが一般的で、青花に出会うと道南に来たことを実感する。

 

            カタクリの群落に青いキクザキイチゲ

 

 ■2011年5月6日 函館山の登山記録

07時10分:旧登山道コースから入山

08時20分:山頂

08時45分:下山開始 (入江山に立ち寄り、観音コースを下山)

09時55分:観音コースの山上大神宮に到着

■過去の登山歴

2010年5月2日 旧登山道コース~山頂~千畳敷~汐見山コース

 

 

 

 


新緑の長万部岳

2010-06-12 21:33:34 | 道南の山々
(五合目・鉱山跡から見た長万部岳)


札幌からの視点だと、長万部は道南の入口というイメージ。新緑と残雪のコントラストを楽しみに長万部岳を目指す。

北海道南部が日本の北限となっているブナの新緑も目的だ。

施錠されたゲートが事実上の登山口で、かつてあった山小屋「うすゆき荘」跡まで林道を歩く。

雪解け水が潤す路側に、オオバミゾホオズキやエゾワサビが咲く。単調な林道歩きにプレゼントされた一服の清涼感。


(エゾワサビ)

30分余りで旧うすゆき荘跡に。ここから「七曲り」と呼ばれるカーブが続く。荒れた林道なので、あまり心地よいものでもない。

それでも木漏れ日が照らすシラネアオイの紫に癒される。

目を左右の森に振ると、ところどころに太いブナの幹が立っていた。

数は多くないが、その立ち姿の存在感が胸に迫まる。頭上の空を覆う新緑も清々しい。

期待通りのブナのチカラに、元気をもらった。


(ブナの新緑)

林道の先に空が開くと、五合目・旧鉱山跡に。整備された広場から長万部岳の展望を得る。

新緑と残雪のコントラストが眩しい。

鉱山跡?

帰宅してネットで調べたら砂鉄を掘っていたらしい。砂鉄は海浜じゃないの?

長く暮らしてきた北海道の歴史に、知らないことがあまりに多い。


(五合目・鉱山跡に構える長万部岳)

五合目を過ぎると、林道歩きから解放されて登山路となる。笹が濃いところもあるが、

フギレオオバキスミレも登場し、うきうきする。オオバキスミレと比較すると、葉に不規則な切れ目がある。

七合目の標識付近から道は雪に覆われるが、その残雪伝いに右に曲がると、夫婦が立ち往生していた。この先に足跡がないという。

試しに5分ほど登ってみると、濃い笹やぶに阻まれてしまう。引き返して、右カーブに留まっていた夫婦と合流する。

左手の長万部岳に連なる雪渓に出て偵察してみると、その先に夏道を見つけた。

残雪時期はルートミスがこわい。

夏道は2度途切れ、心地よい風が渡る雪渓を歩く。

下りで迷わないように、地形を頭の中にしっかりと刻む。


(フギレオオバキスミレ)


(雪渓を行く)

登山路左手には、黒松内岳、その向こうにニセコの山々。右手には大平山。

雪渓から夏道に入ると、シラネアオイ、エゾイチゲ、ツバメオモト、カタクリが咲き乱れ。

ツツジのムラサキヤシオの色彩も鮮烈だ。


(ムラサキヤシオと大平山)

チシマザクラが咲き始めた山頂からは、道南の山々、なかでも白く輝く狩場山がお見事。

ルートミスの苦労も報われたか。それにしても「長万部岳」のプレートが大きい。

看板の左端に見えるのが、カニカン岳だと思う。「蟹缶」を連想して微笑ましい。

アイヌ語由来の地名は面白い。調べたら「黄金」という意味で、実際に金山だったという。

最高の青空。気温も上がり、暑い。肌を刺す虫も多く、もっと居たかったが30分ほどで下山する。

道なりに下りていくと、迷った地点より20mほど下に、するりと出たのには驚いた。

錆びついた小さな道しるべに、まったく気づかなかった。迷った右カーブの手前20m付近に

左に折れる夏道があったのだ。

暑くて900ミリリットルの水も足りなかった。反省。


(長万部岳の山頂:左端がカニカン岳か?)


(山頂標識をはずして撮影すると、こんな山並み)



(狩場山)

■登山記録:
08時40分 林道ゲートから入山
09時15分 「うすゆき荘」跡
09時55分 五合目・鉱山跡
       七合目過ぎて、ルートミス
11時05分 ルート再発見
11時20分 九合目
11時40分 山頂
12時10分 下山開始
14時15分 林道ゲートに戻る

 二股ラジウム温泉 1000円

河畔に石灰華のドームが立つ効能自慢の秘湯。が、施設は新しく清潔。お年寄りが多かった。

男湯だと思って入った大浴場は女湯とつながっていて、混浴だった。おばあちゃんがひとり。

入る時、気づかなかったが大浴場の右手に入口が別な小さな男湯があった。

つまり、男湯と女湯と混浴の大浴場がある、不思議な施設。


(石灰華ドームが特徴の二股ラジウム温泉)


活火山の霊峰、恵山に登る

2010-05-05 16:00:32 | 道南の山々
(登山口から望む恵山)

函館山に登った翌朝の5月3日、恵山(えさん)に向かう。いくつかある登山口から、旧椴法華村のホテル恵風から登るルートを選ぶ。

標高618mながら、荒々しい活火山の威容を望む。

ガイドブックによると山頂までは1時間50分とある。春の歩き始めとしては、ほどよい感じだ。

歩き始めの700mほどは、森林浴コースと名付けられた平坦なミズナラの森を進む。

いったん旧登山路の林道に出てから、十三曲がりコースと名付けられた山腹ルートに取りつく。

高さを稼ぐと津軽海峡の展望を得る。

海に迫る広葉樹の森は芽吹きの前。枝ぶりがほんわかとして、ゆりかごのようだ。



(芽吹き前の森と津軽海峡)


十三曲がりというだけあって、ジグザグを切りながら進むと、イソツツジやガンコウランといった高山植物の群落が続く。

標高は低いが冷たい海風で気温が上がらない。気候は高山ということか。

花の時期はまだ先かと思っていたら、草丈の先が赤く染まっていた。秋には黒い実をつけるガンコウラン。

おなじみの高山植物だが、花は初めて見た。



(ガンコウランが咲いていた)


(ガンコウランの花をアップで)

登山口から1時間ほどで火口原に出る。恵山はいくつかの山が連なる複式火山。

標高300m一帯が、その山々に囲まれた火口原となっていて、賽の河原と呼ばれている。

江戸時代からの霊場で民間の信仰を紡いできたという。

観音像などは帰路にお参りすることにする。



(山に囲まれた火口原)

ここから山頂を目指す権現堂コースに入る。荒々しい岩塊が剣のように連なって天を突く。

ここですさまじい強風にあおられる。

ジグザクを切るたびに、強風は右から、前から、背中からと、その方向を変えて襲ってくる。

倒されないようにと、全身に力が入る。硫黄臭を漂わせる噴煙も横にたなびき、見え隠れする。


(噴煙も強風で横流しに吹き飛ぶ)

火口原から1時間弱で恵山の山頂に。火山の溶岩円頂丘だ。

強風は増すばかり、目に砂礫があたって痛い。

海を見渡す景観は最高だが、15分ほどで退散し、火口原で観音像を探すことにする。


(恵山頂上)

火口原は土着の民間信仰の霊場であることに加えて、船乗りが航海の安全を願う権現信仰の場にもなっていたという。

踏み跡をたどると風雨の筆で削られた観音像が点々と続く。時代を重ねてきた畏敬の念が伝わって来る。

江戸時代の豪商、高田屋と刻まれた観音像の台座も。建立したのは日露交渉にも登場する高田屋嘉平ということか。

台座には文化六年と記されているが、上に乗っている観音像と比較すると新しく見える。この部分は復元なのかもしない。

噴煙を上げる荒々しい恵山は、民衆の魂が宿る霊峰だった。

(古い観音像)


(高田屋の観音像)

■登山記録
07時15分:ホテル恵風の登山口
07時30分:十三曲がり登山口標識
08時10分:火口原
09時05分:山頂(上り1時間50分)
09時20分:下山開始~賽の河原
11時00分:登山口に戻る

帰路の森町濁川温泉・ふれあいの里 500円。源泉の大露天風呂が心地よい。

函館山のスプリングエフェメラル

2010-05-04 18:20:04 | 道南の山々
(千畳敷コースから見た函館山)

5月2日、函館山に登る。標高334m、周囲9キロの小さな山だが、12のハイキングコースがある。

さて、どのコースを歩こうか。最も代表的なコース、「函館山ふれあいセンター」から続く旧登山道コースを選ぶ。道幅が広く、昔は車両も通ったのだろうか。

広葉樹の森は未だ芽吹き前。足元には白いキクザキイチゲが延々と続き、ところどころに淡い赤紫色のカタクリが彩りを添える。

真っ先に咲く花々をスプリングエフェメラル、春のはかなき妖精たちと呼ぶ。木々の葉が茂る前、たっぷりと日ざしを受けて一斉に咲き乱れる。


(キクザキイチゲとカタクリ)

アオジ、ウグイス、ジョウビタキ。海峡を渡ってきた夏鳥たちの囀りもにぎやかだ。

葉が茂っていないので、観察には好都合。耳で、目で、やって来た春を愉しむ。

野鳥観察小屋に立ち寄ったら、先着の女性が「クロツグミが沢で水浴びしている」と教えてくれた。こうした思わぬ出会いも山歩きの楽しみだ。


(アオジ)


ゆっくり登って一時間ほどで山頂に。正式には御殿山と呼ぶ。

北海道を代表する一大観光地だけあって、ゴールデンウィークを過ごす大勢の行楽客でにぎわっていた。笑顔も満開だ。

お約束の写真を、一枚だけ撮影。やはり、函館といえば、この写真。


(函館山から見下ろした市街地)


下りは旧登山道コースから千畳敷コースに寄り道してみる。スミレの仲間では最も早咲きのスミレサイシンを見つけた。

函館山はスミレの種類が多いというが、時期が早いのか、この花が初見だった。


(スミレサイシン)

旧軍の千畳敷砲台跡(戦闘指令所)を覗いてみた。

函館山には明治の末に5つの砲台が作られ、函館要塞として昭和21年まで一般の立ち入りは禁じられていた。

そのおかげで、自然が保たれたという歴史の妙にも思いを巡らせてみる。


(千畳敷砲台跡)

砲台跡から千畳敷コースの来た道を戻り、汐見山コースを降りることにした。ミズナラが続く細い尾根なので、登山気分が満たされる。

足元に、スミレをもう一種類見つけた。淡い赤紫色、恥じらうようなヒナスミレが点々と咲いていた。そして、深い紅色のコジマエンレイソウも存在感をアピール。

春の妖精たちに、季節が始まった清々しい躍動感のおすそ分を頂いた。


(ヒナスミレ)


(ヒナスミレをアップで撮影)


(コジマエンレイソウ)


■登山記録
12時55分:入山
13時55分:山頂
16時05分:登山口に戻る

 市営 谷地頭温泉 420円 茶褐色の熱いお湯が良い。




(宝来町から見た夕暮れの函館山)


(翌朝、啄木小公園から函館山を望む)

長万部の写万部山(しゃまんべやま)に登る

2009-05-06 22:53:23 | 道南の山々
          (写真: 酪農地帯に構える写万部山)

連休最終日の6日、「1000円高速道路」を活用して、道南の長万部町へ。

道央道の樽前から登別東までの車窓が楽しい。

枯れ木色の小高い雑木林にコブシの白、エゾヤマザクラのピンク、そして芽吹きの萌黄色が淡く浮かぶ。

三色が朝の順光に優しく照らされ、まさに山笑う。春もみじの光景が続く。

樽前山、ホロホロ山、オロフレ山などの白い屋根も輝いている。到着する前に、すでに大満足。

目的の写万部山(498.8m)は、頂がすくっと空に突き出す端正な姿を見せていた。低山ながら一等三角点があり、四方の展望が素晴らしいという。。


笹刈りの道を登り始めてまっさきに出迎えてくれたのは、はっとするような濃い青紫色のフイリミヤマスミレ。

群落が点々と続く。


(写真: フイリミヤマスミレ)


六合目で尾根に出ると、ぐんと太平洋の視界が広がる。尾根道にはカタクリが、終盤の輝き。

そして、ちらほらとフギレオオバキスミレが咲き始めていた。


(写真: 六合目から八合目を見上げる尾根道)



(写真: 咲き始めたフギレオオバキスミレ)


頂上直下の九合目で、大平山と長万部岳の白い連なりが青空を刻み、思わずため息が出る。「来て良かった」と。

そして、右に太平洋、左端に冠雪した羊蹄山と昆布岳の展望が広がる。



(写真: 右端が大平山、左端が長万部岳)



(写真: 左端に羊蹄山と昆布岳。右端が太平洋の静狩海岸)

頂上には一等三角点と天測点。

羊蹄山に加えて、目国内山などのニセコ連峰も一望できる。


(写真: 写万部山の山頂。左端が目国内山)

下山時に先行の女性ふたりが、尾根道に散らばる枯れた笹の葉をよけていた。出てきたのは、開き始めのシラネアオイ。芽キャベツのような葉っぱが愛らしい。

その存在、登っている時には全く気づかなかった。

「生育を促すために日を当てているのですか?」と聞くと、「週末に山開きで大勢の人が登る。踏まれないように目立たせた」との返答。

心優しき仕草に、ちょっと感銘。山旅の楽しみは、ここにあり。


(写真: もうすぐ咲くよ!シラネアオイ)

■登山記録
10時25分:入山
11時00分:六合目、尾根道に出る
11時30分:山頂

12時05分:下山開始
12時40分:登山口に戻る

 長万部温泉 丸金旅館 500円
シラネアオイのつぼみを教えてくれた女性に、お勧めの日帰り温泉を尋ねたら、教えてくれた。
源泉かけ流し。熱くてぬくもる、スベスベの実にいいお湯だった。









狩場山に登る 日本海と太平洋を望む

2008-08-21 22:37:45 | 道南の山々
(写真:島牧村の海岸線から望む狩場山)

8月17日の登山記録:
島牧村の新道コースから狩場山(1519.9m)に。4合目まできれいに笹刈りされた登山道を行く。高度を上げるに連れて、木々の間から花の名山・大平山が見えてくる。その背後には羊蹄山やニセコの山々も。


(写真:大平山と、その背後に羊蹄山)

4合目を過ぎてしばらく進むと、ハイマツ帯に出る。眼下に瀬棚町と日本海、そして奥尻島。意表をつく奥尻島との出会いに、息を呑んで感嘆。その距離、手が届きそうに近い。やがて、狩場山の全容が見えてくると、6合目に達する。ここから太平洋のかなたに駒ケ岳が覗く。日本海と太平洋。ふたつの海を見渡す絶景の登山路だ。

(写真:瀬棚町と奥尻島)

7合目から8合目にかけての斜面には気持ちの良い花畑が広がる。ウメバチソウが全盛。雪解けの遅さを物語るように、初夏の花、エゾカンゾウやシナノキンバイがまだ咲いていた。一方で晩夏から秋の花、コガネギクやエゾホソバノトリカブトも。夏と秋が行き交う不思議な空間だ。


(写真:ウメバチソウ)


(写真:エゾカンゾウ)

山頂に達すると、日本海側から登ってくる茂津多コースと出合う。須筑川の渓谷も深い。先週登った雷電山を西端とするニセコ連峰、積丹半島、札幌の無意根山、苫小牧の樽前山、さらに松前の大島、小島まで見える。
道央の札幌から道南の松前まで見通すとは・・・あまりの居心地の良さに1時間ほど滞在する。道中一緒となった大阪の男女3人組や函館の男女3人組、深川の老夫婦らの皆さんとの会話も楽しかった。山の魅力が人を引き寄せる。

(写真:茂津多コース)


(写真:東狩場山の背後に羊蹄山とニセコ連峰)

登山口より下の山麓は広大なブナ林に覆われていた。秋には黄金色に輝くことだろう。
「また来たいな」と、素直になれる、すがすがしい山だった。

(写真:狩場山のブナ)

※06時40分:新道コースから入山
 07時20分:4合目
 07時35分:ハイマツ帯に出る。奥尻島を望む
 08時00分:6合目 駒ケ岳を望む
 08時15分:7合目 花畑
 09時00分:9合目
 09時35分:山頂
 10時40分:下山開始
 12時35分:登山口に戻る

 千走川温泉 500円 登山口から近い小さな一軒宿。熱くなく、鉄の匂いがする素朴なお湯が肌にやさしい。


黒松内 北限の歌才ブナ林

2008-08-18 22:56:31 | 道南の山々
16日(土)野歩きの記録:
島牧村の狩場山に登る前日、黒松内の「歌才ブナ林」を歩く。ブナ林の北限として、昭和3年に国の天然記念物に指定され、今日に至っている。片道2キロほどの遊歩道の周囲に、樹齢200年というずっしりとした太い幹が威風堂々と立ち並ぶ。200年はブナの寿命だそうで、老人が人生を語りかけてくるような、深い森。


本州のブナより葉が大きく、幹がすくっと直立して下枝が少ないのも特徴とのこと。
風が吹き抜けると、木の葉が潮騒のような音色を奏でた。
開墾が進んだ平野部に奇跡的に残ったブナの天然林。賢明な先人の遺徳も感じた。

お花畑続く大千軒岳 クマに注意

2007-06-21 21:05:15 | 道南の山々
【エゾノハクサンイチゲ】

■6月17日の登山記録:大千軒岳(1071m)

松前町の旅館を出発。近くのコンビニで食料を調達してから
長い林道に入る。登山者より山菜採りの人が多い。
6時半に「新道登山口」に。
本当は手前の「旧道登山口」から登って、「新道登山口」に下りるルートを考えていた。
しかし、旅館で働く女性の体験談で心変わり。
「前日に旧道を登ったら、クマの糞だらけだった」という。
そこで、まずはクマの気配がない「新道」から登頂し、お花畑に下りる。
状況次第で「旧道」」に向かうか、「新道」に戻るかを決めることにする。
両登山口は林道歩き、40分の距離だという。

6時45分:新道登山口から入山。
前日、当別丸山で出会った札幌のツアー登山グループ6人と、同時に入山。
ブナの新緑が気持ちよい。

【ブナ】

7時20分:森林を抜けると、
左手に函館山や当別丸山、右手に松前小島がに浮かぶ。
青森の岩木山や八甲田山も見渡せる。頂上まで最高の景観が続く。

【当別丸山や函館山】

8時00分:山頂に。あっというまのショートコース。
少々あっけない。
一等三角点は明治29年、
北海道で最初に設けられた3つのうちのひとつと、記されている。
さすがに絶好の見晴らし。
追いついてきたツアーの皆さんと談笑。菓子やサクランボまで戴いてしまう。
頂上から中千軒岳へ向かう尾根道がお花畑になっている。
     
【山頂標識と三角点】     【中千軒岳、前千軒岳】

30分ほど、景観を楽しんでから、旧道側に下りる。
心地よいお花畑の中を歩きながら、
中千軒岳とのコルとなっている千軒平を目指す。
ヘニバナイチゴ、ミヤマアズマギク、エゾグンナイフウロ・・・
残念な事にシラネアオイの群落は終盤だったが、
エゾノハクサンイチゲの群落はみごとだった。
  

9時00分:千軒平に。処刑された隠れキリシタンを弔う十字架が立つ。
旧道から登ってきた人たちに聞くと、クマの糞を8ケ所で確認。
新しいものが多いという。
クマと出会った単独行の人もいたらしい。
彼はあわてて引き返し、出会ったグループからの「一緒に登りませんか」という申し出も辞退。さっさと下山したという。
ということで、僕もここから頂上に引き返し、登ってきた新道を下りることにする。

【千軒平と大千軒岳】

9時20分、頂上に向けて再出発、9時55分頂上。
10時45分に新道登山口に下山。
長い林道走行のおかげで、楽々登山。
絶好の眺望とお花畑に心弾むも、少々の物足りなさも。
「旧道口~千軒平~頂上~新道口~林道歩き~旧道口」というコースをたどれば、
もっと充実した山行きとなったに違いない。

松前町の老舗「温泉旅館 矢野」で入浴。600円。
レストランのメニューが郷土色あふれている。
アワビカレー、アワビ飯、鯨汁ラーメン・・・迷うなあ。

上の国でちょっと観光して、八雲から高速で一気に札幌へ。午後8時、自宅に。



トラピスト修道院の「当別丸山」に登る

2007-06-18 21:58:10 | 道南の山々

【トラピスト修道院】

16日、快晴。
函館に近い上磯町当別の丸山(482m)に登った。
トラピスト修道院の敷地の中にある裏山。
広大な敷地は農場になっていて、修道士が自給自足の生活を送っている。
ありがたいことに登山は自由で、
荘厳な雰囲気を感じながら登ることができる。

【当別丸山】

11時05分、入山。
農場の車道をしばらく行くと海を見下ろすカトリック墓地がある。
さらに杉木立を行くと11時25分、宗教施設「ルルドの洞窟」に。
ツタウルシに囲まれた聖母マリア像が印象的だ。

【ルルドの洞窟】

ルルドから、山道らしくなり、11時40分に「展望台」に。
ぽつんと浮かぶ函館山、海峡を隔てて向き合う青森の山々。
手が届きそうに近い。
頂上までブナ林が続く。巨木はなく、二次林なのだろう。
季節を先取りする炎天下、木漏れ日が優しい。
   
【函館山】         【対岸の青森】

12時15分、山頂に。一等三角点に加えて「天測点」も。
星の位置を測定するもの?
僕は初めて、ご対面。登山は予期せぬ出会いが楽しい。
  
【山頂】        【天測点】

帰路、見慣れぬランの花に気づく。
サルメンエビネを白く、小さく、可憐に・・・した感じ。
暗い森の中に、ぼつんと。
「見つけ下さい」とささやく、不思議な存在感。
近づいてきたツアー登山の皆さんも初めて見たという。
帰宅して調べたら、その名はエビネ。


13時25分、登山口に戻る。
親切に登山路を教えてくれた売店で、何か買わねば!
定番のトラビスト・クッキーを買う。

松前に行く途中、道内最古・開湯800年という「知内温泉」に。
山奥の秘湯を連想していたが、国道から1キロ、改装された小奇麗な温泉。
新館と旧館の2種類のお湯を楽しむ事ができる。
露天風呂は、内湯から裸で廊下と庭を横断するという大胆な設計。
しかも混浴。
男女とも誰も入っていなかった。
390円は安い、びっくり。


松前町から大千軒岳に登る

2007-06-17 21:53:56 | 道南の山々
【大千軒岳】

16日、17日と道南に遠征。初日は当別丸山で足慣らし。
上磯町当別のトラピスト修道院の裏山(482m)だ。

きょう(17日)は松前町の新道コースから大千軒岳(1071m)へ。
隠れキリシタンが処刑された史実を今に伝える。
札幌から往復700キロほど。楽しかったが、遠かった。

テングスミレが見たくて・・・

2007-05-05 22:38:47 | 道南の山々
札幌には咲いていないナガハシスミレ(テングスミレ)が見たかった。
片道250キロ、道南の厚沢部町「レクの森・土橋自然観察林」まで出かけた。
こんもりとした深い森で、ブナの新緑に加えて、花が多い。
カタクリ、キクザキイチゲ、スミレサイシン、オオバナノエンレイソウ・・・
  
【ブナ新緑】        【スミレサイシン】

「あった、あった」
遊歩道周辺は、どこもかしこもナガハシスミレだらけ。
スミレの花弁の付け根には「距」という部分がある。
これが天狗の鼻のように発達しているのが、ナガハシスミレ。
スミレの識別は難しいが、初めて見てもすぐわかるのが嬉しい。
  

起伏のある楽しい森だったが、もう少し歩きたくて、近くの
太鼓山(170m)に登る。
頂上で足を踏むとボン、ボンと響く不思議な山だった。
登った人が必ず跳ねるのも面白い。
  
【太鼓山】          【響く頂上】

俄虫温泉で汗流す。田園地帯の一軒宿。
素朴で透明なお湯がよかった。400円。



楽しくも辛い大平山 登山録

2006-08-11 21:53:46 | 道南の山々

・8月6日(日)大平山(1190.6m)の登山記録:

 
【写真:大平山(前日 賀老の滝キャンプ場付近から)】

前日は、賀老の滝などを巡って島牧村のユースに宿泊。


5時10分に入山。車は既に5台ある。


草深く、湿った、暗い森を黙々と登る。先行の2グループ8人に追いつき、抜かされ、下山まで一緒の登山となる。


6時にブナ林に。やっと心地よい登りとなる。

【写真:ブナ】

6時30分に森を抜けて草付き斜面に。ここから花が多い。


雲ひとつない青空なのに、霞んでいて遠望が効かない。

相対する狩場山も、うっすらと確認できる程度。ちょっと失望。

    
【写真:イワオウギ】  【写真:ナンテンハギ】  【写真:ヤマルリトラノオ】

7時に第1ピーク(810m地点)に到着。険しくそそり立つ第2ピーク(1191m)が眼前に。

白い石灰質も確認できる。

そこにオオヒラウスユキソウ(エーデルワイス)が咲くと思うと、わくわくする。

              
【第1ピークから見た第2ピーク】 【モイワシャジン】      【イブキジャコウソウ】

登るに連れて、花が一段と多くなり、険しいロープ場からエーデルワイスが咲き乱れる。


白い綿毛に包まれたお星様の数々・・・


肉厚で、まるで「ぬいぐるみ」のようだ。数も多い。憧れの花に逢えたときめきが楽しい。

ここまでで、十分に達成感がある。

      
           【写真:オオヒラウスユキソウ(大平薄雪草)】

第2ピークには達することなく、草付き斜面を巻いてから、背丈を越えるヤブ漕ぎに入る。


いつのまにか第3ピークに。さらに、辛いヤブ漕ぎが続く。


9時15分に山頂!


しかし、狭い。霞んでいて展望もない。ということで、9時45分に下山。

   
【写真:寂しい山頂】       【写真:珍しいカドバリヒメマイマイ】

まっすぐで、つるつるとした坂。ストックを過信したせいで、バタバタと突進してしまう。

止まる事ができず、草つき斜面に頭から一回転して落ちる。

まるで夢のような一瞬。手足にかすり傷ひとつなく、頭も首も大丈夫だった。


なぜ突進したのか、背丈ほどある草地の中で自問し猛省。本当に運が良かったとしか言いようがない。


1年前の同じ時期に転落死亡事故があり、注意はしていたつもりなのに。

さらに事件が・・・


ロープ場の岩壁を下っているとき、シュシュワとガスが抜ける音。右腰にぶら下げていた熊スプレーに穴が空いた、と気づく。


右下半身が唐辛子漬けに。素手で処理したので、両手は火が噴くように熱くて痛い。


下山時は猛暑になり、くわえて両手の火事。Wパンチを浴びながら、13時15分に下山。

近くの宮内温泉で入浴。450円。小さくて心地よい温泉も、唐辛子を浴びた部分がヒリヒリ痛んで堪能できず。

【写真:宮内温泉】

美しい海岸線とおいしい魚介類。憧れのエーデルワイス。怪我をするコトもなかった。

幸運に深く感謝。


        

【写真:賀老食堂のウニ丼   【写真:賀老の滝】     【写真:狩場山】
        2100円】


エーデルワイス咲く大平山

2006-08-06 21:54:24 | 道南の山々
かねてから登りたかった島牧村の大平山。
日本のエーデルワイス「オオヒラウスユキソウ」が満開だった! 
ふわふわのお星様に大満足。
が、登山道から一回転して落ちたり、携帯クマスプレーに穴があいて、唐辛子漬けになったり。おまけに猛暑。とにかく、無事に帰宅できて良かった。