「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

トンボの森

2010-08-28 17:28:38 | 野幌森林公園
先週に続いて、きょうも野幌森林公園。北海道開拓記念館で開催中の特別展示「どんぐりコロコロ」を見る。

どんぐりをつける広葉樹林が養う生命の連鎖を、わかりやすく企画展示したもの。

ミズナラを食樹とするミドリシジミ類の標本に釘づけになる。

童心に回帰してから、大沢口から森に入る。衰えを知らない夏の光が木漏れ日となって森を照らす。

行く先々で、無数のとんぼが舞っていた。トチバニンジンが赤熟し、秋を先取り。


(写真: トチバニンジンにとまるトンボ)

ツチアケビ

2010-08-23 21:50:20 | 野幌森林公園
21日の土曜日、久しぶりに野幌森林公園に。大都会に残された奇跡の森というのが、僕の印象。

平坦な大地によくぞこれだけの森が残されたもの。

さて、この日は初めて瑞穂コースを歩いてみた。青々とした濃い森だけが続く、季節としては力点のない寂しさ。

が、異形の花と出会う。初めて見たツチアケビ。

葉緑素を持たない茶褐色のランで、背が高く、何よりも果実がバナナというかソーセジみたい。

株が多いせいか、落ちる前の花と果実を同時に見られたのが幸運だった。


(写真:ツチアケビの丈は高い)


(写真:ツチアケビの花と特徴的な果実)


(写真:光が足りないのでフラッシュ撮影)

にぎやかな勇払原野

2010-08-17 21:59:17 | 自然公園/原野/海浜
「ジョッピン カケタカ。ジョッピン カケタカ」と、透き通る美声でエゾセンニュウが啼く。

ゴマシジミが舞う勇払原野は、とにかく賑やかだった。オニユリの群落ではミヤマカラスアゲハが吸蜜。色彩が豊かで目がくらむ。

ヒョウモンチョウやジャノメチョウの仲間が飛び交い、ツバメシジミの産卵も見た。

原野の夏は、生命の躍動感に溢れて実に楽しかった。


(写真: ジャノメチョウ)



(写真: ツバメシジミ♀)


(写真: ツバメシシジミの産卵)


(写真:ツリガネニンジン)


勇払原野のゴマシジミ

2010-08-14 23:15:08 | 自然公園/原野/海浜
(写真: 勇払原野)


苫小牧東部工業基地の大部分は、工場が立つことなく勇払原野としてその自然をとどめている。

昨年、ウトナイ湖でゴマシジミと出会うことができずにがっかり。

僕のブログを読んで頂いているエルモさんのアドバイスで、今年は広い原野に出かけてみる。

うろうろとドライブしていたら、青い表翅を揺らすシジミショウが目に。

ミドリシジミかな、と思ったら、ゴマだった。ホザキシモツケの蜜を吸ったり、草にとまったりと、せわしく動き回る。



(写真: ゴマシジミの青い表翅)



(写真: 裏は灰白色でゴマふり文様)




(写真: ホザキシモツケの蜜を吸う)


食草は湿地に咲くナガボノシロワレモコウ。じめじめしたところを探していたら、沼に戦国時代の巨大な砦がそびえていた。

映画の大規模なセットが作られ、炎天下でロケが行われていた。

帰宅して調べたら「のぼうの城」という時代劇で野村萬斎が主演とのこと。これは水城だ。

で、食草のまわりには、たくさんのゴマシジミが集まっていた。


(写真: 映画「のぼうの城」のセット)


(写真: 食草ナガボノシロワレモコウとゴマシジミ)

孵化した幼虫は、この花を食べた後、地上に下りて甘い蜜を出す。

誘われたアリが巣に運んだら、しめたもの。

幼虫は蜜を出しながら、アリを食べて、食べて、大きくなるという。

自然の営みは、人知を超えた小宇宙だ。そういうことを、研究してつきとめた人間も素晴らしい。

知床の最高峰、羅臼岳に登る

2010-08-12 19:40:22 | 道東の山々
                                    (写真:知床連山 右端が羅臼岳 登山前日の夕方撮影)

斜里岳に登った翌日の8月10日(火)、知床・最高峰の羅臼岳(1660m)に。

夜明けの空は高曇りで、知床連山がくっきりとその姿を刻んでいた。天気予報は曇りながらも、これなら青空になるぞと確信。

午前5時、薄暗い森に入る。トラツグミやクマゲラの啼く声に励まされて、テンポ良く登る。

湿度が高いのか、汗が滝のように流れて、長袖シャツと帽子を脱ぐ。

小さな標識に目を凝らすと、「ヒグマ出没地帯。餌となるアリの巣が多いので注意」とのこと。

クマのレストラン街は40分ほど続く。前後に登山者が多く、仲良く談笑しながら進むと不安感はなく。


(写真:この先はクマのえさ場)

水場の弥三吉水で喉を潤すと、そのおいしさに生気が蘇る。

登山口から1時間50分ほどで、極楽平。真正面に目指す羅臼岳が凛々しくそびえ立つ。


(写真:極楽平と羅臼岳)

平坦な極楽平は短く、仙人坂で喘ぎ、銀冷水にて熱りを鎮める。極楽平から1時間ほどで大沢入口に着く。

斜度のきつい涸れ沢だが、両端は可憐なお花畑。チングルマはすでに花を散らしていたが、チシマクモマグサやエゾヒメクワガタが咲いていた。

「千島雲間草」という北方の天空をイメージする語感がなんとも素敵だ。

エゾヒメクワガタは普通は青紫色。ここではピンクや白花が多いというのも興味津々だ。

心地良く吹き抜ける風が、汗をさらっていった。


(写真:チシマクモマグサ)


(写真:白いエゾヒメクワガタ)

大沢を登りつめたら、一気に視界が広がる、羅臼平。

向かって左を登れば三ツ峰から硫黄山への縦走路。右を登れば羅臼岳へ。

めまぐるしく往来する雲は三ツ峰を避けるが、羅臼岳を隠す。残念そうな登山者の顔と顔。

しかし、15分ほど登ると…

羅臼岳を覆っていた雲が消え、剥き出しの岩塊が青空に拳を突き上げた。


(写真:羅臼平 背景は三ツ峰)


(写真:雲が去り岩塊の山頂が顔を出す)

ごつごつとした岩塊を両手両足を使って、慎重に登る。小さな花々が多く、集まる蝶にほっとする。

その中に、天然記念物の高山蝶・カラフトルリシジミを見つけた。

雄だと瑠璃色が際立つが、これは雌。地味なせいか、誰も関心を示さない。

来し方を振り返ると、雲海の遠くに国後島が小さく頭を出していた。ズームするとピントが合わず、しっかりと心に刻む。

高度を稼ぐにつれて、向かいの三ツ峰の大きさを知る。さらに奥に連なるサシルイ岳から硫黄山までの展望を得た。

憧れの知床連山が今、目の前に。


(写真:羅臼平と三ツ峰、奥にサシルイ岳や硫黄山も見える)


(写真:高山蝶カラフトルリシジミ ♀ )


(写真:高度を上げてズームイン 左奥の鋭鋒が硫黄山)


頂上直下で進行方向右側の海別岳、斜里岳方向を望むが、雲が多くすっきりとしない。

それだけに、登る道筋で知床連山先端の硫黄山までの眺望を得られたのは、なんとも幸運なこと。

仰ぎ見る狭い山頂では、10人ほどが盛んに写真を撮っていた。山々を隠そうとする雲流との時を巡る競争だ。


(写真:直下から仰ぎ見る山頂)


(写真:海別岳、斜里岳方向は雲が多く眺望を得ず)

登山口から4時間半ほどで山頂に立つ。自分の唇から、「着いた!」という声が素直に飛び出した。

前日、斜里岳で出会った人たちの姿を見つけあって、この感動を分かち合う。

激しい雲流に嫌な予感も。写真を何枚か撮っているうちに、不安が的中して山頂は真っ白になってしまった。

穏やかだった風も強く荒れて、狭い頂きでは立ち上がるだけでヨロヨロとする。

強風を避けるために岩場を一段下がって待機するも、45分ほどの滞在で下山した。

一瞬のチャンスに恵まれた幸運に感謝し、次の目標は三ツ峰からサシルイ岳までと、意欲を確かにした。


(写真:羅臼岳山頂)

■登山記録:2010年8月10日(火)
05時00分:岩尾別登山口から入山
05時35分:「650岩峰まで熊注意」の標識
05時40分:オホーツク展望台
06時15分:650岩峰
06時35分:弥三吉水
06時50分:極楽平
07時10分:仙人坂
07時30分:銀冷水
07時55分:大沢入口
08時25分:羅臼平
09時35分:山頂  上り4時間35分

10時20分:下山開始
13時30分:登山口に戻る 下り3時間10分

ホテル地の涯 
山奥の一軒宿で登山口に位置する。朝4時40分に着いたら登山者用の駐車スペースは満車。ホテルの人が違法駐車に目を光らしていたが、日帰り入浴をお願いしたら気持ちよく駐車OK。親切心溢れる地の涯で熱いお湯が疲れを吹き飛ばしてくれた。800円。

清流の斜里岳に登る

2010-08-11 12:24:24 | 道東の山々
                               (写真: 斜里町内から見た斜里岳)

8月9日(月)、知床に近い斜里岳(1547m)へ。

前日の夕方に仰ぎ見た山容は、雲を纏った威厳のある身構え。天気予報は曇りだったが、一夜明けた清里コースの登山口は見事に晴れた。

一の沢川沿いを歩くが、石を伝って右へ左へと渡渉を繰り返す。ふだん使わないリズム感とか敏捷性、バランス感覚が試される。

飛び石は面白いが、転ばないよう、登山靴を沈めないようにと気をつかう。

谷川が放つ清涼な気と、線香花火のように涼やかに咲くダイモンジソウ。心地よい緊張感とほっとする癒しのバランスが愉しい。


(写真:清流沿いに渡渉を繰り返す)


(写真:線香花火のようなダイモンジソウ)

45分ほどで、新道と旧道の分岐点、六合目の下二股に。沢歩きにも慣れてきたので、沢沿いに小滝が連続する旧道を選ぶ。

名前があるだけでも水蓮、羽衣、方丈、見晴、七重、竜神、霊華と七つの滝が連続していた。

急崖の巨岩や沢の岩盤を慎重に伝ったが、ロープや鎖もあるので恐怖心はなく、本当に面白かった。

水に入ることはないので、「沢登り」とは言えないが、水しぶきを皮膚に感じる沢の魅力の一端に触れることができた。



(写真: 羽衣の滝)


(写真: 慎重に岩を伝う)


(写真:左が霊華の滝、右が竜神の滝)


(写真: 霊華の滝 水しぶきを浴びて岩盤を歩く)

一時間半ほどで滝巡りが終り、新道との合流点の上二股に。

ここから、ぐんぐんと高度を上げて見晴らしが効くと、やがて稜線上の「馬の背」に出る。

隣の南斜里岳や遠くは阿寒の山々もくっきりと望む。

チシマワレモコソウが咲いていた。千島という名に北方に連なる響き。

馬の背から祠のある前峰を経て山頂へ。上二股からは一時間ほど。


(写真: チシマワレモコソウ)


(写真: 前峰から望む山頂 空の下はオホーツク海)



(写真: 山頂標識の背後に雌阿寒岳を望む)

山頂付近は雲がわき立っていた。阿寒方向は雲が切れて見晴らしを得たが、来た道の背景に構える周辺の山々が墨絵のよう。

山座の名がわからないのが残念。

楽しみにしていた知床半島の山々はガスに覆われいた。

山頂で仲良くなった人たちと談笑していると、知床半島の玄関口、海別岳が顔を出す。

最高峰の羅臼岳はベールの中。翌日に登る予定という人が5組もいたのには驚いた。

いずれも本州から来た岳人。北海道・知床の山々の人気の高さを知る。


(写真: 来た道と南斜里岳。背景に周辺の山々)


(写真: 知床の海別岳)

帰路は樹林帯を抜ける新道を降りる。

このコースで斜里岳のどっしりとした面構えが得ることができた。

青々とした夏山を満喫。


(写真: 新道の熊見峠から望む斜里岳)

■登山記録:2010年8月9日(月)
05時30分:清里コースから入山
06時15分:下二股 六合目 標高845m
06時40分:羽衣の滝
07時05分:方丈の滝 七合目 標高1020m
07時20分:見晴の滝
07時30分:霊華の滝、竜神の滝 八合目 標高1195m
07時50分:上二股
08時10分:九合目 標高1340m
08時20分:馬の背
08時45分:山頂 標高1547m  上り3時間15分

10時00分:下山開始~熊見峠
12時10分:下二股
13時00分:登山口に戻る    下り3時間

 きよさと温泉 清華荘 清里町の中心部にある清潔な公共温泉 380円

クサギ咲く藻岩山

2010-08-07 22:56:18 | 藻岩山

(写真:登山口で出会ったルリタテハ)


先週に続いて、本日も藻岩山。登山口入口の駐車スペースにルリタテハがとまっていた。

翅を閉じたままの姿勢だが、時々数秒間、デイスプレイする。デジカメをスポーツモードにして撮影チャンスをうかがう。

甘い香りが漂う先には、クサギの花。樹木に咲くピンクの花で、臭木というが臭くない。

ミヤマカラスアゲハがホバリングしながら、せわしく蜜を吸う。

そういえば、中腹の馬の背を越えたあたりにもクサギがあったと、記憶が蘇る。

高温多湿の本日は、そこを終点としよう。

森に入ったら、外界の熱気とは別世界の清涼な気が発していた。

薄暗い木々の底辺に薄い黄色のジャノメチョウの仲間。先回りをするかのように行く先々で、ゆらゆらと漂う。


(写真: うっそうとした夏の森)



(写真: ヒメキマダラヒカゲ)



清涼な気も多湿に追い払われ、目標のクサギの木に到達したときは全身が汗まみれ。

予想通り、ミヤマカラスアゲハ、そしてキアゲハが無心に蜜と戯れていた。



(写真:クサギに寄せられたミヤマカラスアゲハ)



(写真: クサギとキアゲハ)



オオミドリシジミ

2010-08-04 21:37:45 | 藻岩山
(写真: スキー場コースの森を下る)


7月31日(土)の藻岩山。ゲレンデから登ったが、下りは直射日光を避けて森の登山路を使う。

茶色の羽を揺らすシジミチョウが多い。木の葉にとまると、表翅をひろげて存在を誇示する。

あっ、これはミドリシジミ類のシルエットと直感。しかし名前がわからない。


(写真: 君の名は?)

しばらく進と、また出てきた。ミズナラの幼木の葉にとまったかと思うと、葉の裏側に廻って逆さまのまま枝を進む。

お尻をくねって産卵した。これは、メスだったのだ。

オオミドリシジミの産卵場所は同族のなかで最も低位置とあるので、君はオオミドリシジミのメスなのか。

それにしても5個体ほど出会ったが、すべて雌。雄を見かけなかった。

雌雄の発生時期になんらかの仕掛けがあるのかしらと、頭が刺激された。

1年前に撮影したミドリシジミ類の雄の写真も掲載してみた。


(写真: 産卵するオオミドリシジミ)


(写真: ミドリシジミ類の雄 09年7月20日撮影)


にぎやかな藻岩山

2010-08-01 10:19:43 | 藻岩山
昨日(7月31日)、藻岩山スキー場のゲレンデを登る。腰から背丈まで茂る夏草の間に踏み跡が続く。

白雲が眩しい空。蝶がひらひら。ぎらぎらした夏の匂いに童心が蘇る。

モンシロチョウ、モンキチョウ、キアゲハが舞い、蝉しぐれにキリギリスの歌が加わる。


(写真: キアゲハ)


(写真: ヒメアカタテハ)

ゲレンデのトップに立つと、渡る風が全身の汗を冷やしてくれた。

ここから頂上までは森の木陰を伝って登っていく。木々や笹の影間をゆらゆらと舞う蝶が姿を見せ・・・

やがてリフト跡の草地に達すると、黒地に紅が鮮やかなベニヒカゲも登場し、どきっ。

童心を刺激する、にぎやかな夏。


(写真:クロヒカゲ)


(写真:ジャノメチョウ)


(写真:ベニヒカゲ)

(写真:ベニヒカゲ)


山頂は大勢の登山者でにぎわっていた。ロープウェイ駅は新駅建設のために閉鎖されていたが、屋上の立ち入りは可能だった。

キアゲハが大発生していて、盛んに飛び交う。食草は何かと調べてみたらセリの仲間だという。