「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

静かな積丹岳

2008-06-28 22:08:53 | 積丹半島の山々
(写真:右端が積丹岳、左が余別岳)

夏の光で輝く日本海が見たくて、積丹岳(1255m)を目指す。前浜では昔ながらの磯舟で獲るウニ漁が最盛期だった。山に登って海を眺め、下りた後のウニ丼もきょうの楽しみだ。

(写真:早朝、積丹町のウニ漁)

3合目から始まる登山口には立派な山小屋があった。中も綺麗に整理されていて、地元の人たちのこの山に寄せる愛着が伝わる。平成13年と19年に登山者と山菜採りの人が行方不明のままとの張り紙があった。情報提供を呼びかけると共に、捜索費用も多額になるので注意を呼びかけていた。

ルートはシラカバやナナカマドの単調な植生が続く。背丈を越える笹薮の勢いも強く、展望が全くない。かつての造材で、お金になる木は無くなったようで、5合目に原始の時をしのばせるミズナラの巨木がぽつんと残っていた。

(写真:五合目のミズナラ巨木)

6合目で追いついた3人の先行者はリュックいっぱいのタケノコを獲っていた。もう登山はやめて、ウニ丼を食べに行くという。僕も登山モードから、10分ほどタケノコ採りにスィッチを切り替えた。


(写真:ネマガリダケのタケノコ)

7合目から8合目にかけては、シラカバが縦ではなく、横向きに生えている。日本海から吹く強い風に逆らわず、重い雪にも耐えて、そのカタチを変えたのだ。冬の厳しい風雪を物語っていた。疲れて目測を怠けていると、幹のトンネルに頭をゴツンとぶつける。だから、帽子は大事だと実感。衝撃を吸収してくれる。

(写真:登山路のシラカバ)

7合目を少し過ぎた「ピリカ台」で少々だが、視界が開ける。真紅に輝くベニバナイチゴが咲いていた。北海道では西南部の花なので、札幌近郊ではお目にかかれない。少々、特をしたような気分に。

(写真:ピリカ台のベニバナイチゴ)

9合目から周囲の全容を望むことができ、一気に心弾ませて山頂へ。
稜線が連なる余別岳が青空に映えて美しい。積丹岬から神威岬にかけての日本海がきらきらと輝く。羊蹄山やニセコ連山は霞んでいるが、目を凝らすとシルエットが浮かぶ。きょう山頂一番乗りの登山者の幸せで、広くて静かな時の刻みを楽しむ。アマツバメが空を切り、カッコウがのどかなリズムを奏でていた。


(写真:積丹岳山頂と余別岳)

※ 7時35分:入山(3合目)
  8時10分:ミズナラ巨木 (5合目)
  8時25分:6合目でタケノコ採りの3人組に追いつく
  9時10分:7合目~ピリカ台
  9時30分:9合目
  9時55分:山頂
 11時   :下山開始
 12時35分:登山口に戻る。積丹岬の食堂でうに丼を。甘くて驚く。

 岬の湯しゃこたん 
600円 神威岬を望む露天風呂がすばらしい。お肌ツルツル系。


温泉で汗を流した後、神威岬まで足を伸ばす。積丹ブルーと言われる日本海に負けないくらい、エゾカンゾウの黄色が際立っていた。





昆布岳に登る

2008-06-21 22:20:13 | 羊蹄・ニセコ周辺の山々
(写真:中山峠から見た昆布岳)

このところ、週末の天気がかんばしくない。
中山峠から望む昆布岳は、その特徴的な鋭角の頭を雲からのぞかせていた。
「良かった。きょうはなんとかなりそうだ」と、ほっとする。
ニセコ連山と洞爺湖の間に、独立峰的に構える昆布岳。
来月に迫ったサミットを警備する機動隊の鋭いまなざしを、あちこちで受けながら豊浦町の登山口へ。かつての造材の作業道路が登山路で、笹薮とシラカバ、ダケカンバの単調な風景が続く。
ウグイスとエゾハルゼミの合唱に、ツツドリ(カッコウの仲間)が「ポポ、ポポ」とリズムを刻むと、退屈な気分もなごむ。

五合目に「メガネ岩」。風化した岩の空洞から、向こうの景色が見える。岩間に咲くミヤマオダマキの青色が際立った。旺盛な笹薮の中に目を凝らすと、タケノコが頭を出していた。8合目まで左右の笹薮が気になり、首が痛くなった。この山はタケノコ山だった。

(写真:メガネ岩)


(写真:ミヤマオダマキ)


(写真:ネマガリダケのタケノコ)


山頂(1045m)には一等三角点があり、ニセコ、羊蹄山、洞爺湖、内浦湾などの絶景が広がっているはずだったが、雲が多い。時おり、切れ間からニセコの山々やサミットが開催されるヒルトップの高級ホテルが見え隠れした。

(写真:山頂標識の背後に一等三角点)

帰路、麓近くになって足元の赤い果実に気づく。種類はわからないがノイチゴだ。そういえば、登る途中も白いイチゴの花が目立った。くだりは精神的に楽になるので、視野が広くなる。初夏をひとつ、見つけた。

(写真:ノウゴウイチゴ?かな)

※10時05分:入山
 11時10分:5合目・メガネ岩
 12時45分:山頂

 13時50分:下山開始
 15時35分:登山口に戻る

 豊浦温泉しおさい 500円。内浦湾に面する豊浦市街地にある公共温泉。広くて清潔だった。目の前に広がる海も気持ちよい。お湯は赤茶色で鉄の匂いがした。


御大師山 栗山町 ファーブルの森

2008-06-15 22:36:43 | 夕張山系
(写真:オオムラサキの幼虫)

栗山町の御大師山(115m)の斜面の一角に「ファーブルの森」がある。
国蝶オオムラサキが舞う、環境の再生を目的にした森だ。

(写真:飼育観察舎)

飼育観察舎に植えられた食樹のエゾエノキの葉には幼虫とサナギがぶら下がっていた。体長は想像していたより大きくて、5センチ前後もある。
サナギは葉裏の緑色と同化した見事な変身ぶりだ。

(写真:オオムラサキのサナギ)

森の遊歩道にも植樹して育てたエゾエノキが並ぶ。袋で保護された枝葉に幼虫の姿が目立った。森に放つことはせず、サナギになったら飼育舎に移すとのこと。羽化は7月10日前後がピークだという。是非、また来よう。

(写真:遊歩道のエゾエノキ)

御大師山には四国八十八ケ所霊場があり、観音地蔵が山腹に並んでいる。開拓時代から信仰を集めてきた里山なのだ。小さいながらこんもりとした森が心地よかった。頂上は園地になっていて展望台も。残念ながら老朽化していて立ち入り禁止だった。丘陵の裾野に流れる川と田植え直後の水田が織りなす田園風景がのどかだった。

ハマナス咲く石狩浜

2008-06-08 18:41:26 | 自然公園/原野/海浜

たまには平地を歩こうと、石狩浜にハマナスを見に行く。石狩灯台から石狩川河口までの広大な砂丘が「はまなすの丘公園」として、海浜植物が保護されている。今年は1~2週間、開花が早いとのこと。背丈が低いことに驚く。砂浜に張り付くかのように高さ10センチほど。強い風に耐えるためか。
写真を撮るため顔を寄せたら、なんとも甘い匂いが届き、心を揺さぶった。

(写真:石狩浜・はまなすの丘公園)

石狩灯台は明治25年(1892年)点灯、かつては海岸にあったがこの100年で砂嘴が形成されて、今は「陸地」にあるという。昭和32年の映画「喜びも悲しみも幾歳月」ロケで白黒の灯台をカラー映画にふさわしく赤白に塗り替えたという。ということが、ビジターセンターで紹介されていた。主演は高峰秀子と佐多啓二。
砂丘にはハマエンドウ、ハマニガナ、ハマハタザオ、エゾスカシユリなどが競うように咲き乱れていた。当時も花が綺麗だったことだろう。


(写真:ハマエンドウ)


(写真:ハマニガナ)


(写真:エゾスカシユリ)

石狩川では数十人の家族連れが歓声をあげていた。地引網で揚がった大小の魚を囲んで、写真を撮ったり、ビニール袋に入れたり。地元の幼児たちの体験学習らしい。巨大な鯉は記念撮影のあと、川に戻された。
こんな道草の旅も楽しい。

(写真:石狩川の鯉)

(写真:この魚の名前は?)

石狩浜からは札幌の山々や増毛山系が望めるという。楽しみにしていたが雲が多く、残念。


「えりの湯」600円。日本海を望む露天風呂、夕景がきれいだろうな。
「えり」とは、魚を獲る竹の仕掛けとのこと。


霧のシャワー 美唄山

2008-06-01 22:21:34 | 夕張山系
(写真:美唄山・奈井江林道の露頭炭)

南西部は雨で、札幌より北は曇りという天気予報で、美唄山(987m)へ。落石のため通行止めということで、登山口がある林道終点まで行けず。渓流の奈井江川沿いの林道をなんと6キロも歩く。新緑、滑滝、エゾサンショウウオの卵、さらに露頭炭が顔を出して、意外と退屈しない。
ノビネチドリが咲いていた。

(写真:ノビネチドリ)


(写真:エゾサンショウウオ)


弱い霧雨のなか、1時間半歩いて、ようやく登山口。といっても、ここも林道の枝分かれで、今まで見たこともない急勾配の林道だ。標高を稼ぐに連れ、新緑に加えて、いまだに春紅葉も綺麗だ。雨滴に包まれた山容と空気がみずみずしい。

(写真:新緑シャワー)

1時間10分ほど林道を急登し、ようやく登山路分岐に。きれいに整備された尾根沿いの道の両脇は、ギョウジャニンニクの群落が続く。まるで畑を歩いているみたい。
初夏の花ツバメオモトやハクサンチドリも咲いていた。去年、積丹半島の両古美山で、山菜採りのおじさんが、「ハクサンチドリが咲くと、タケノコも採り頃だ」と言っていたのを思い出す。笹薮に目をこらすと、確かにひとつ、ふたつと顔を出していた。山肌は春浅い彩りだが、足元の花々とタケノコは確かに6月の始まりを告げていた。

(写真:ツバメオモト)


(写真:ハクサンチドリ)

30分ほどの尾根歩きで山頂に。屈強の自衛官7~8人が先着していた。反対側の美唄コースから登ってきたという。レジ袋にはタケノコも。
山頂には1901年(明治34年)設置という「一等三角点」が。大雪山、夕張岳、芦別岳、空知の街並みが一望らしい。残念ながら雲にに包まれ、展望は得られなかった。
姿は見えなかったが、美唄側から笹刈りの音が響いていた。山開きの準備なのか。
濡れたチシマザクラが恥ずかしげに山頂を囲んでいた。一等三角点の大展望は得られなかったが、6月の思わぬ花見に恵まれた。

(写真:一等三角点)


(写真:チシマザクラ)

9時35分:林道通行止め地点から歩き始める

11時05分:林道・登山口(頂上まで4.2キロの標識)
12時15分:登山路取り付き(頂上まで1.4キロの標識)
12時45分:山頂
13時05分:下山開始
14時30分:林道・登山口

16時   :通行止め地点に戻る

「ピパの湯・ゆーりん館」 600円  露天風呂から望む樺戸連山と田園地帯が気持ちよい。茶色の湯は、お肌すへすべ系。清潔で心地よい施設だった。隣接の地場農産物直販所で、太いアスパラ一束300円を買って帰る。