よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

資本主義・社会主義・民主主義

2010年05月29日 | No Book, No Life


大方の予想通り、ギリシャからスペインに飛び火。スペインの金融機関の経営破綻をきっかけに、25日以降の世界主要市場は再び株安、ユーロ安の連鎖に見舞われています。

一方、日本は金融不安の震源地でないにもかかわらず、株価の下落率が他国より大きいことに、国内では失望感が広まっています。これは外需依存の産業構造(マクロ的日本型MOTの姿)のためです。またぞろ、輸出主導で自律回復に向かい始めた日本でしたが、冷や水をかぶせられた形です。

以前書いたアマゾンの書評(自分の文章です)をメモ代わりに貼り付けておきます。

<以下貼り付け>

シュンペータの予言が現在進行中です。, 2009/2/20 レビュー対象商品: 資本主義・社会主義・民主主義 (単行本)

イノベーションの文脈から『新結合』のみを切り出して議論する向きもあろう。だがシュンペーターの真髄は彼が存命だった1940年代から未来へ向けて予測した未来の資本主義の変化にこそある。シュンペータ研究者は、この未来への青写真のことを桐箱に入れて「シュンペータ過程」と呼ぶ。

マルクスの労働価値説を真っ向から否定したバヴェルクを師とするシュンペータはマルクスを超えようとする言説を展開した。マルクスをはじめ予言をハズすのが経済学者の常だが、シュンペータの恐ろしさは、彼がハズした予言は今のところないからだ。

さて「資本主義はその欠点のゆえに滅びる」と書いたマルクスの逆張りでシュンペーターは「資本主義はその成功により滅びる」と意味深長なことを書いた。

資本主義の生命線であるイノベーションの担い手=企業家(起業家)が官僚化された専門家へ移行するにしたがい、資本主義の精神は萎縮し活力が削がれてゆき、やがて資本主義は減退する。なので企業家(起業家)は主要な活躍の場を産業分野からしだいに公共セクター、非営利セクターに移ってゆくとも言った。このあたりは、社会起業家の活躍を言い当てている。

シュンペータは「創造的破壊」というコンセプトを真ん中に据えた。創造的破壊を推進する資本主義のethos(行動様式)が衰弱し、資本主義の屋台骨ともいえる私有財産制と自由契約制が形骸化すれば、capitalismは衰退しやがては終焉を迎える。創造的破壊とは不断に古いものを破壊し、新しいものを創造して絶えず内部から経済構造を革命化する産業上の突然変異である。

さて、現下の大不況、恐慌は結果としての現象ではなく、「過程としての現象」と見るべきだ。溌剌たる資本主義の精神をリスペクトするならば死にかけ企業、死にかけ産業は、死にゆくままにしておき、今こそ新企業、新産業へと転換してゆく千載一遇のチャンスだ、キャピタリストの立場では。

大方の納税者やリバタリアンの主張どうりにGM,フォードを消滅に任せてゆくのであれば、おおいなる優勝劣敗の資本主義のプロセスは健全に機能しているといえるだろう。GM、フォードなどに巨額の税金を注入して救済するという行き方は、資本主義の否定なのである。もしそうなれば、アメリカ型強欲資本主義、金融資本主義は、社会主義化してゆく。税金で旧産業の余命延長をはかり、前回のクリントン民主党政権のときに議会に阻まれた国民皆保険もヒラリー・クリントンのもとで今度こそ成し遂げられるだろう。なにせ健康保険にも入っていない無保険の人々が4000万人以上いるのがアメリカだからだ。

現下のこの文脈のなかにこそ、シュンペーターを読まれなければなるまい。なぜなら現在進行形で、「シュンペータ過程」が眼前に現出しているのだから!

倒産、失業という血を流して資本主義の精神を取るか。倒産、失業という血をいっとき回避、つまり税金の投入をもって資本主義の精神を自己否定して社会主義化を取るのか。オバマ政権は実に歴史的な局面に来月立つことになる。ここがまさに「シュンペータ過程」なのだ。

元来、社会主義的資本主義だのいろいろ悪口を言われてきた日本資本主義だが、社会主義的資本主義は実は未来の先取り形態だったとも言える。おおまかに言ってしまえば、アメリカが行こうとしてしている地点に、日本はすでにいるのだ。「社会主義的日本資本主義のエスプリ」と勝手によんでいるのだが・・。皮肉といえば皮肉なことだ。

<以上貼り付け>

「社会主義的日本資本主義」ではあるが、輸出牽引型産業構造は昨今の局面では脆弱さを露呈している。したがって、ひとつの対応方法として、産業政策として、「社会主義的産業」の健康医療産業など内需市場喚起型のサービス・セクターを刺激するというやり方がある。

「新しい公共」というスタンスからは健康基盤=ソーシャル・キャピタルにコミットする社会起業家、NPO,NGOなどの活動をどんどん支援すべきだ。

健康寿命伸長は医療費増大を上回る → 医療費増大は経済にプラスになるという研究が出始めている。

ハーバード大学 ケットラー教授 とデューク大学のリチャードソン研究(1999)など。
→ 健康寿命の伸びによる健康価値の上昇は医療費増の4倍に近い。

ホール教授とジョーンズ教授の貢献:
健康寿命の伸長が経済的厚生(国民全体の経済的満足度)の大きな増加につながる事実を、経済成長リオンの標準的モデルのなかに取り入れたこと。

∴ コストセンター産業ではなく、成長産業の下支えをする成長担保産業として医療健康産業の再評価を行う必要あり。