よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

恩師がMITプレスから新著出版

2010年05月24日 | No Book, No Life


コーネル大学にいたときにお世話になったRoger Battistella先生が新著をMITプレス(米国を代表する学術出版社)から出版。草稿段階から送ってもらっていたのでことのほか、うれしいです。

この本の主張は厳しいものです。なにせ、市場に任せ放題にしてきたアメリカの医療の根幹をストレートに批判しているからです。マイケルポーターなどのようなポピュリスト的スタンスとは異なり、さすが40年に渡って米国医療政策、医療経営をクリティークしてきた知的資産がこの本のベースにあります。

日本の医療サービス改革を構想する視点から見ても大変参考になります。主要な論点は:

■Health care is a social good that should be free to all.
(医療サービスは社会的な財であり、すべての人々がアクセスできるようにすべし)

■Prevention generates big savings.
(予防は、医療全体を効率化する)

■More health spending will stimulate the economy and have a positive effect on health status and longevity.
(効率的に医療費を使えば医療は経済を活性化するし、健康指標にもポジティブな影響を与える)

■The principles of market competition aren't applicable to health care.
(競争的な市場主義は、医療には適用できない)

など。豊饒な語彙に支えられる論理構成と網羅的なレファレンスは、いかに医療健康分野の社会科学者の著者が過去の議論をカバーしているのかを示してあまりがあります。

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コーネル大学を退官してからは名誉教授。現役の教授のころから、ブドウ栽培とワインづくりにも情熱を抱き続けていて、学期の最終日には教室に先生が自分で醸造したワインを持ってきて学生に飲ませてくれました。



これが大学から車で10分くらいのところにあるSix Mile Creekで彼が営んでいるワイナリー。この2階の書斎が思索の場で、ここで多くの著作をものしてきました。葡萄畑の緑色と青い空。農作業のかわたら、夜は木の香りがする書斎で、多くの蔵書に囲まれて執筆にいそしむ。

実にバランスのとれた知的な生き方をされている先生です。