よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

倉敷中央病院のサービス・イノベーション

2009年03月13日 | 健康医療サービスイノベーション


昨日新幹線と在来線を乗り継いで倉敷にやってきた。倉敷中央病院で、2日間缶詰でコンサルティングと研修(実践的研究会のようなもの)を行う。副看護部長の安部小夜子さんに撮っていただいた写真を掲載させていただく。ありがとうございました!

倉敷中央病院に対してコンサルティングを始めてはや10年位。その間、幸いなことに倉敷中央病院は幾多のサービス・イノベーションを推し進め、日本を代表する急性期病院へと着実に発展してきたことはうれしい限り。

日本でも屈指の医療サービスを提供している医療機関に対して、さらにサービスを進化させるためのコンサルティング・サービスを提供するのは、本当にエキサイティング!な経験である。

サービス・イノベーションのコンサルティングは多岐にわたってきた。サービス・イノベーションのコンサルティング自体も、もちろんサービスである。コンサルタントとして提供するソリューションは、相手に受けいれられて初めて生きてくるということを、コクリエーション(service co-creation)なんて言ったりするが、ケアリングは、service co-creationの究極の姿だとつくづく思う。

service co-creationに関するコンサルティングも、service co-creation。service co-creation on service co-creationっていうこととなる。ややこしい話だが。



心臓外科バイパス術、カテーテル術など、頚椎・腰部整形外科、循環器外科など倉敷中央病院は、日本屈指の治療におけるラディカル・イノベーションを先導してきた。台湾の李登輝前総統(コーネル大学OB)がお忍びで入院するほどの、隔絶した高い技術レベルを誇る。

これらを攻めのイノベーションと言えば、いわば看護は守りのイノベーションを担当する。入院から退院、そして退院後の生活までをシームレスに地域と連携しつつインクリメンタル(漸次改善的)なイノベーションに余念がない。そして、攻守を織り交ぜた集中治療部門の強化、臓器別センター化構想などの200億円投資案件も着々と進捗している。

診療部門のラディカル・イノベーションを支えるのが看護部門やコメディカル部門のインクリメンタルなイノベーションだ。診療部門のラディカル・イノベーションは医学各科の科学知識が基盤となる。これらの医学、看護学、関連する諸学の知と実践の知が、現場で還流し、サービス価値をダイナミックに生んでいる。そして現場の実践知は、各学会やコミュニティ(日本を代表する先進的11病院など)の知識の場にも還流し、共有されている。

日本は医療を支える素材産業、半導体産業、電子産業など技術力の高い産業を擁し、日本が得意とする改良改善・すりあわせなどが適合する面も少なくない。

しかしながら、
(1)承認や健康保険への適用が遅れている。
(2)病院の利益水準が低いため先進的な機器をタイミングよく導入できない。
(3)新技術導入による便益とリスクを科学的・合理的に評価・決定できない。

・・・など皮肉にも「制度」がイノベーションを阻害しているのも事実。

このような「制度」の失敗をも勘案しながら、倉敷中央病院はヘルスサービスとヘルスサービス知が複合するイノベーションのエコシステムを形成している。医療サービスのイノベーションのエコシステムとして俯瞰する視点は、従来の医療管理学や、既存の個別のディシプリン(医学、看護学など)が見落としてきた側面でもある。

サービスサイエンスはやっと、サービスの分析の賭場口に立ったばかりだが、医療機関の現場には、制度と折り合いをつけながら、ありとあらゆるサービスが出現しているのだ。

心臓カテーテル術ならば、先進的なカテーテル・メーカーと医師がコラボレーションして、最新の治療方式を可能とする新製品開発、ソリューション開発を進めている。サービス・コクリエーションはもちろん、診療・看護と患者との間に創発されるわけだが、各種医療関連企業と倉敷中央病院との間にも創発されている。

非営利原則で運営される医療機関は医療サービスの提供エージェントであると同時に、卓越した医療機関は、医療サービスにかかわる医療産学連携の「サービスイノベーションの場」なのである。