よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

エージェントベース社会システム論がアツい

2009年03月04日 | 技術経営MOT


もう、ずいぶん前に今田高俊「自己組織性~社会理論の復活~」を神保町の東京堂書店で買い求めて読んだ。人的資源管理のヒントにでも、と読み始めた一冊だったが、のめり込むほどの面白さだった。入門書ではなく、社会学の手ほどきを受けたことのある人のための一冊だ。

ひょんなことから、2週間ほど前に今田高俊先生にお目にかかった。感銘を受けた著者に逢うというのは読書人にとって最大級の秘めた愉しみなのだ。

仮説-演繹-反証、観察-帰納-検証、意味-解釈-了解、という整理方法から説き起こす社会科学一般の認識論あたりから、どっと深い議論となる。たしかに難解な内容ではあるが、著者の展開する論理には唐突な飛躍はなく、ロジカルに論を進めている。

T・パースンズの構造機能主義批判をきちんと押さえ、1980年代下火になっていた社会システム理論に新しい基盤を与えた意義は強烈だ。5年間の思索をかけて書き上げた1冊であると伺ったことがあるが、圧巻の「第7章は、なんと一週間たらずで書いたんですよ」とはいささか驚いた。たしかに、この章のリズムは前の章とは異なっていたので、なるほど!と思った次第。

「自己組織性」は、のちに「支援」、「ケアリング」、「互恵」、「オートポイエシス」といった概念を駆使手してポストモダンの人的資源論にまで発展させることになった著者の会心の一冊だと思われる。自己組織化という概念をベースに以下が展開される。

…散逸構造論(「ゆらぎ」を通じた秩序形成)…
…シナジェティクス(協同現象論)…
…オートポイエシス(自己創成)…

形式論理上はパラドキシカルな「自己言及」や「自省作用」を組みこみつつ、システムと環境との相互作用と未来に向かって開かれたダイナミズムを「自己組織性」を核とする新しい機能主義的社会理論を展開している。

今田先生がメンバーを務めている東工大の21世紀COE「エージェントベース社会システム科学の創出」センポジウムも圧巻だった。そこでは実験社会学とでもよぶべき、Agent Based Modeling, Agent Based Simulationが披露された。

社会科学には、実験という作法の検証、反証ができないのが限界だった。社会学のシーンでは1970年代のActorからAgentへ、そしてActionからAgencyへと概念の進歩があるのだが、実験的方法論でシミュレーションに挑むというのは、いやはや、社会学のみならず、社会科学全般の限界を打破する試みだ。このような方法論は近接する経営学やMOTにぜひとも接続しておかねばなるまい。未来を正しく予測して初めてその説の正当性が立証される。

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ただしその接続方法には、ちょっとばかり、遊び心と歴史へのまなざしがいるように思える。

(1)江戸時代中期以降のソフトづくり=俳諧、狂歌、落とし咄、浮世絵、博物学、団扇や手拭いなどの「遊び」コミュニティと、(2)アニメ、漫画、フィギュア界隈の同人組織、マニアの世界には、同型ななにかと、そこはかとない連続性があるのだ。

★これらのコミュニティーはサービスの特化したサブカル的・草の根的なオープン・イノベーションの場である。

自己組織的
協同現象的
自己創成的

→センターによるコントロールが曖昧
→自己言及
→管理ではなく支援
→互恵(Co-happiness)?
→相互ケアリング
→サービス・イノベーション
→価値を参画的に創造( Co-creation)?
→ベンダー、ユーザ、パトロンによる循環的高度化(Co-elevation)?

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