よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

SugarCRM; CECはOSSムーブメントを見誤る!

2006年01月05日 | オープンソース物語
年の初めだから、多少2006年度の展望的なことを考えてみる。

ソフトウェアのコモディティ化とオープンソース化が急速に進行しているソフトウェア業界ではコマーシャル・オープンソースというビジネスモデルが台風の目になりつつある。このビジネスモデルでは、ともにオープンソースを扱うが、厳密に言うとオープンソース・ソフトウェア(OSS)版とライセンス方式の有償版によって成り立つデュアル・ライセンスである。OSS版はGPL(General Public Lisence)で公開、配布、改変が自由にできる。有償版は、各ベンダーがGPLに手を加えた独自色を持つライセンスを発行して、ソースコードまるごと有償で提供する。

さて、日経ソリューションビジネスにケアブレインズが提供しているSugarCRMの紹介記事が載っていたが、ちょっと補完させていたく。

コマーシャル・オープンソース・ソフトウェア(長たらしいので最近はCOSSと略させてもらっているが)とは、販売代理店や顧客にはソースコードをすべて与える。そして、コミュニティがそのソースコードを改善、拡張して改版することによってイノベーションを共有しながら進化させてゆくというビジネスモデルだ。

プロダクトの機能や品質に注目して、プロパラエタリなソフトウェア商品とオープンソース・ソフトウェアを比べるのはそもそも表面的な比較でしかない。もっと奥のプロセスを見るべきだ。

プロプラエタリなソフトウェア商品は、閉じられた企業組織のなかで雇用された人材によって中央集権的な体制の中で開発されてきた。いっぽうOSSは、企業組織の枠にとらわれずに、世界中に散らばる自律分散的な個人の同時並行的な開発体制の中で創られる。このあたり、エリック・レイモンドは「伽藍とバザール」と比喩を用いて説いたわけだが。優れたOSSは、実はコミュニティによる開発プロセスのイノベーションが、開発成果としてのOSSプロダクト・イノベーションを生み出す。

そして円環的に、OSSプロダクト・イノベーションがさらなる開発プロセスのイノベーションを巻き起こすという構造を持つ。その円環の橋渡し、ないしは触媒のような機能を受け持つのがコミュニティである。そしてCOSSはデュアル・ライセンスによってOSS版から双方のイノベーションを吸収、活用できる構造を創りあげるのである。

ソフトウェア開発における技術経営(Technology Management in Software Development)の先端的なテーマが実はここにあるのだ。もっとも、このテーマは日本のソフトウェア業界が見過ごしてきた、あるいは見ようとしてこなかったものでもある。いずれにせよ、OSSそしてCOSSに関与する際にはソフトウェア開発における技術経営の視点と「今までのやり方」から決別する行動の転換が必要不可欠だ。

このようなことがわかっていないと、コミュニティ活動に参加することなく、その成果だけをすくいとって、COSSにプロプラな製品をアドオンで載せて独自ブランドで売りましょう、というような的はずれの挙にでてしまう。このような愚挙はオープンソースの世界では、Cheap Economic Cheating(ケチくさい根性でコミュニティに貢献することなく、短期的収益追求のみを重視した不公正な行為)、略してCECと呼ばれている。CEC的なマインドセットではOSSムーブメントの本質を見誤るので要注意だ。

さて、GNU/LINUXの壮大な進化は、どうやらバザール側に軍配を上げつつある。Apache、MySQL、phpも現在の普及曲線は圧倒的に右肩あがりを続けている。LAMP普及曲線はこのようなメッセージを雄弁に語っている。

それで、どっちがオモシロイ?バザールです。
どっちが、いいモノができる?バザールです。
どっちが、効率的か?バザールです。

2006年度は、各国の政府関係者、関連団体も堰を切ったように、バザール方式で開発されるOSSを担ぎはじめることだろう。基盤、ミドルウェア領域からエンタープライズ、そして業務アプリの領域にまでOSSムーブメントは達しているからだ。

OSSとプロパラエトリなソフトウェア商品、どっちが安心?OSSです。
OSSとプロパラエトリなソフトウェア商品、どっちがイノベーション向き?OSSです。
OSSとプロパラエトリなソフトウェア商品、どっちを政府としては支援すべき?OSSです。

ときあたかも、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)がOSSセンターの発足を発表したのは象徴的だ。

さて、業務アプリのOSSやいかに?そしてCOSSやいかに?OSS、COSSムーブメントの本質を見極めながら取り組んで行きたい。