よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

伊勢原協同病院にて

2005年10月16日 | 講演放浪記
講演のため伊勢原協同病院に呼ばれる。西に進む小田急線とともに大きくなる丹沢の山々の稜線が目に沁みた。

伊勢原協同病院は1968年に神奈川県厚生農業協同組合連合会が伊勢原町から町立病院の移管を受けて発展してきた病院である。以降、さまざまな経営改善と設備改善の途上にある病院だ。

さて、日本的人事なるものの中核を占めるという年功主義人事は長年、医療看護の世界では当たり前のもの、デファクト・スタンダードを占めてきた。講演で訪れた農業と公的病院という二つの背景を持つ、伊勢原協同病院には顕著に年功価値観が強い。

なぜか?いくつかの理由、説がある。

(1)職務習熟度向上説
就業年数や勤務経験とともに強い相関性をもって職務習熟度が向上し、それにともない仕事の成果も向上してきた。ゆえに、年功を機軸に人事管理を行うことが、間接的に能力、成果管理ともなりえた。だから、年功主義人事は、間接的な能力主義、成果主義ともいえる。

(2)診療報酬制度の員数中心説
看護者の賃金の源泉は診療報酬制度のなかの看護料金である。法定の看護料金はケアユニット内の看護者(看護補助者も含む)の員数と患者数の比率で定められている。看護料金には看護者の能力、成果、看護介入の質的側面は反映されていない。看護師の人件費の源泉を占める看護料金が、能力や成果を無視して設定されているがゆえに、看護師の人事管理においても能力、成果は除外されてきた。

(3)消極的人事マネジメント説
そもそも非営利性原則が中心を占め、さまざまな規制や保護ルールが混在し、競争原理が希薄な病院という業態そして看護部門には、マネジメントが発達してこなかった。ゆえに、マネジメントの一部門を占めるヒューマン・リソース・メネジメントも未発達の状態で推移してきた。だから年功主義人事が長年用いられることとなった。

いずれにせよ、協同病院がクリニカルラダーを導入しようとする意図は、人事管理の機軸を、上記諸説を説明してきた諸要因によってもたらされてきた年功から個別の役割、能力、成果に置き換えようという動きから生じてきたのは明らかである。