よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

セレンディピティとMOT

2005年10月06日 | 技術経営MOT
画期的で独自性がほとばしるような技術を創出して真に新しい価値を持ったプロダクトを生み出してゆくことは先般のMOTシンポジウムでも主要なテーマだった。

面白い論文がランチタイムの雑談のなかから舞い降りてきた。「成功する先見的技術テーマ発掘のための評価モデル」早稲田大学ビジネススクール交際経営学 堀川嘉明さんが書いたものだ。

技術評価、新市場創造というキーワードに、なんとセレンディピティという言葉が並置されている。成功する技術の発想の原点に技術の軸と市場の軸をおいて論ずる論文はあまたある。おそらくは正統的な経営学、工学系の技術評価、新市場創造に関するテキストは、この2つの軸あるいは類似軸で議論してきた。

見落としがちなのが、技術者、研究者サイドの属人的なある種の能力である。ここで能力というと、伝統的な能力類型によると分析的思考能力、概念化能力、パターン認識力、専門的能力などでひとくくりにされやすいが、もっと本質的な能力特性があるのだ。

その従来伝統的な経営学、技術経営、組織・人材論の議論の俎上にさほど登らなかった有力な能力類型がセレンディピティである。前にも書いたが、セレンディピティ(serendipity) とは偶然に幸運に出会う能力のことだ。ノーベル賞の田中耕一さんも言っていた、「失敗した実験結果を捨てるのがもったいなくて偶然手にした実験結果が受賞につながった」と。

セレンディピティが強い人材は、ふとしたきっかけ、偶然の一致、めぐり合い、めぐり合わせ、組み合わせ、出会い、流れに敏感で、そうした経験に対して内在的に開かれている。セレンディピティ人材は、他者には見えないそのような特異点のなかになにかを創造するのである。そのような人たちにとって、偶然は必然であり、「運」は統計的な偶発性ではなく、人為的に運ぶことができる必然性の産物だ。

セレンディピティ研究は、従来の経営学のフレームではHuman Resources ManagementやOrganizational Behaviorあたりで取り上げる必要がある。MOTにとっても非常に重要な課題である。もちろん、先見的技術の評価、プロダクト・マネジメントや起業といった実践領域においても最重要課題のひとつだろう。