よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

米国債暴落という悪夢は取り繕えず

2009年07月11日 | 恐慌実況中継


4月あたりにかまびすしかった景気底入れ宣言、不況回復への淡い期待もどこ吹く風。

この特集のなかで「ムーディーズ格付けの疑問~日本国債格上げと米国債格据え置きの深層~」という記事があるが、深層をえぐった批判にはなっていない。及び腰の論評。

ムーディーズはFRB,連邦政府に影響をおよぼす金融寡頭勢力の利害によって誘導される私的な格付け機関。その利益誘導の集団と化している私的な格付け機関=ムーディーズが債権の格付けを行っているということは、利益誘導のダブルループのただなかでその特殊な共同体的機能を発揮しているということ。

特殊な共同体的機能をムーディーズが発揮すればするほど、ダブルスタンダードがあらわになる。ムーディーズのダブルスタンダードについては以前書いた通りだ。

この見方は金融業界では常識なのだが、なぜかマスコミはことムーディーズの格付け姿勢になると批判の矛先が鈍くなる。

強烈に痛みつつある米国経済の実態に即して、米国債の格付けを下げれば、米株安、米ドル安、米国債安のがそろってしまい、不況・恐慌シナリオがさらに現実味を増すから、最後の砦=米国債は、なんとしても格下げはできない、という逼迫した事情。

そこを、ムリを承知で取り繕い、米国債を据え置いたというのだからムーディーズの格付けは、またもや馬脚をあらわしたこととなる。ムーディーズは公正妥当な格付け機関ではなく、ハロー効果発信企業。公然たる格付け操作によって金融を諜報諜略することを目的とする私的な集団なのである。

さて、大手マスコミが「米国債暴落」の特集を組むまでになると米株安、米ドル安、米国債安の3点セットのセンメントの刷り込みが進む。つまり米国投げ売りが本格的に始まるということ。

このブログでは2008年9月の第1週から恐慌を予見してきたが、米国債暴落をもっていよいよ恐慌シナリオが現実味を増してきたと言わざるを得ない。


カリフォルニア州の財政破綻は悪性連鎖する

2009年07月10日 | 恐慌実況中継


このニュースは日本では大きく扱われない。イラン動乱、東トルキスタン(新彊ウイグル自治区)、北朝鮮ミサイルのほうにマスコミの視線が誘導されいる模様。

<以下貼り付け>

【ロサンゼルス2日共同】

財政難に陥っている米カリフォルニア州は2日、州の財政赤字の見通しが243億ドル(約2兆3千億円)に達したとして、州民への所得税還付や業者への支払いに「借用書」の発行を始めた。同州がこうした措置を取るのは1992年以来という。ロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)などが報じた。

 7月1日からの新会計年度までに、州議会で赤字削減策がまとまらなかったためで、州は7月中に33億ドル分の借用書を発行する予定という。

 シュワルツェネッガー州知事は1日、財政危機を宣言。州職員23万5千人を対象に一時帰休を課すなど一層の支出削減を行う方針を明らかにしている。

 カリフォルニア州では2月、巨額の財政赤字の削減策を盛り込んだ州予算が成立したが、5月の住民投票で財源確保を目指す州の主要な提案が否決され、再び財政赤字に直面していた。

<以上貼り付け>

日本では、地方自治体の財政赤字が総予算の20%を上回った時点で破産宣告される。夕張市がこの基準をもとに破綻宣言したのは周知の通り。これと同じ基準をアメリカの州に適応すると、最低でも上の図の上位4つの州はすでに破綻している。

これらを含め46州が財政赤字状態に陥っている。不動産の債券化ビジネスが先進していた州でかつそれらの債権化ビジネスの業績悪化のあおりをまともに受けている州が金融危機による税収減の打撃が大きい。

キャッシュフローの点では、ニューヨーク州、カリフォルニア州がキャッシュインとキャッシュアウトが大きく資金ショートリスクが限界点にまで来ている。で先日は、カリフォルニア州がデフォルト宣言。

州が発行する「借用書」というのはいささかことの本質を覆い隠すような表現。本当は、棒引き、徳政令一歩手前の借金帳消し残高確認書。

このことろ急落しているドル円の(92円~91円)は、まさにアメリカを構成する州が棒引き、徳政令一歩手前のところまで破たんしていることを含んでいる。FRBが基軸通貨をよいことに、ドル紙幣を刷りまくってキャッシュを供給しても州がデフォルトを宣言してしまったのでは、刷ったドルの価値は下がるのが必定。だから米国債も、ナーバスな動きとなっているが、やがて落ちる運命にあると見たてるのがリーズナブル。

              ***

東トルキスタンの一件について、アメリカは「真相を究明せよ、人権を尊重せよ、圧政を改めて民主制を尊重せよ」と中国に圧力をかければ、「米国債買いません。これから売ります」と脅される。だから、アメリカは今回の東トルキスタンの一件については強いコメントしたがらない。


GM連邦破産法11条でGovernment Motors誕生は必至

2009年05月30日 | 恐慌実況中継

<GM中興の祖アルフレッド・P・スローン>

ゼネラル・モーターズ(GM)の債務帳消し交渉で、債権者の9割(債権額ベース)から同意を得る同社の目標達成が27日、困難な情勢になった。6月初めには大騒ぎになるだろう。

債権者のなかでも大口投資家は当然、債務削減には大反対。GMを破綻させてから再生の過程で、経営陣を法廷に引っ張り出して、ちょっとでも悪くない条件での債権回収を目指すほうがいいと判断したからだ。大口債権者は、政府資金という名前のキャッシュを当てにして回収を図るのである。

アルフレッド・P・スローンの卓越した経営手腕にリードされていたころのGMは規格大量生産型技術経営の鏡であった。

高い「擦り合わせ」度が必要な製品の自動車は、特別に最適設計された部品を微妙に相互調整しないとトータルシステムとしての機能が発揮されない製品。企業買収を繰り返してGMグループを垂直的に統合してきたのだ。

しかし、短期的にマネーメークするためには、次世代自動車へ至るイノベーションの追究よりは、ファイナンスで儲けた方がよいとGMは判断した。非常に手厚い、雇用者用の企業健康保険、企業年金制度を維持するためにも。

そしてGMはサブを含めるプライムローンをフル活用してガソリンをガブ飲みする自動車を売って、それを証券化してウォール街で転売してきた。つまり、自動車メーカーとしての、イノベーティブな車作りよりもファイナンスの世界で儲ける会社にかわってしまったのだ。

今回、多くの大口債権者がチャプター11の方を選好した理由は、皮肉なものだ。貸し倒れに対する保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に多くの債権者が加入しており、GMが正式に債務不履行に陥った場合には、債権者に保険金が支払われて儲けることができるからだ。

そもそもサブプライム・ローンを実質的に裏書きしたパンドラの箱=クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を野放しにしてきた金融系貪欲キャピタリズムが今回の不況・恐慌の背後にある。

この悪性の循環構造には、大口債権者は十分自覚しているはずだが、結局は自分の損切りをCDSを使って確定させることに走っているのだ。ここにCDSという仕組みのタチの悪さがある。

再建策の要である過剰債務の帳消ができなくなったことで、GMは連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に踏み切る可能性しかオプションがなくなった。

不況のさなか、アメリカを代表するGMを破産させるのは、オバマ政権としてもどうしても避けたかった。来週あたり、なんらかのコメントがオバマ大統領から出るだろう。しかし、GMのステークホルダである債権者がNoと言ったのだから、もう手のつけようはない。

そして、米政府は500億ドル以上をGMにつぎ込み、新GMの普通株式の約70%を取得することとなる。実現すればGMは事実上の国有メーカーとなり、名実ともにGovernment Motorsとなる。

米国政府、寡頭勢力にしてみれば、米国自動車はすでに覇権産業でもなんでもない。しかし、短期的にはGMの破産はよくない話だ。雇用への影響も同様に大きい。GM、フォード、クライスラーは3社で25万人近く雇用。部品メーカーでは約10万人が雇用されている。米国の失業率は現在6.7%で、1993年以降の最悪。これを機に、失業率は上がってくる。

米国債格づけのダブルスタンダード

2009年05月22日 | 恐慌実況中継


一時的にダウは反発しているが、いずれは落ちる。またドルの為替レートも落ちてくる。そして米国債が下落すれば、株、為替、国債の3点セットが暴落し、不況を通り越えて恐慌となる。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは21日、米国の「AAA」格付けについて、現時点では満足、と表明した。なるほど、国策機関による米国救済のための捏造的格付けである。

ここでしっかりと思いだすべきは日本が金融危機に陥った1998年11月のことだ。日本の長期債務が増加していたことを受けて、ムーディーズは日本国債の格付けをトリプルAからワンランク下のAa1に格下げした。その後、2002年5月にはA2に落ちた。そしてほどなく日本の金融業界は米国投資銀行などの草刈り場となった。

その後、日本国債は一時、世界最貧国のひとつであるボツワナ並みに格下げされて騒ぎにもなった。しかし、米国債が現下の状況で「AAA」を維持しているのは、ダブルスタンダード(二重規範)であるとしかいいようがない。

二重規範は共同体の常。米国政府と格付け会社は共同体である、ということが再確認された。客観的な評価?中立的な評価?すべて虚偽である。

このことに対する日本の市場関係者の共通の見方は、「米国債は、いったん下げると歯止めが利かなくなり暴落リスクが顕在化する。米国政府が格付け会社に必死に協力をあおいでいる、あるいは政治的な圧力をかけている」というもの。

ただし表だって公式に批判することを意図的に避けているようだ。オモテのマスコミは、ブタフル騒ぎにばかり加担していて、米国債格付け捏造を伝えない。



実態は、米国債の格付けは粉飾されたうえに捏造されている。

しかし、限度というものがある。中国が日本を抜いて米国債保有残高は世界一。中国が米国債の売りに転じるときがターニング・ポイントになるだろう。

「米国債の売り」が現下経済情勢の真のキーワード。過去、その素振りを見せた日本の政治家は失脚の憂き目になっているので、なかなか言い出せない。

次の選挙では、「国益とはいったい何なのか」、「日本人の資産を米国から取り戻す方策」をそろそろ争点にしなければいけない。


GM帝国衰亡史、進行中

2009年04月15日 | 恐慌実況中継


つるべ落としとはGMの株価のことだ。そしてGMの再建計画が難航しているというより、膠着している。

債権計画のメドがつかなければ、連邦倒産法第11章(Chapter 11)あるいは、もっと厳しい倒産法を適用することも辞さないとオバマは腹を固めたようだ。

オバマ米大統領は、「すでにつらい譲歩をした労働組合や従業員に、さらなる譲歩が求められるだろう。債権者は、いつまでも政府による救済を期待して粘ることはできないとの認識が求められる」と明瞭なサインを送っている。

つまりGMを一度倒産させてから再建するというシナリオに突き進んでいる。倒産させてからのほうが、組合も無理難題をガタガタ言わなくなるだろうし、もうこれ以上税金をドブに捨てるようなことはできない、というわけだ。

ただし、経営陣がChapter 11を口にしたとたん、労働組合側は労働者保護の権利を行使し、大規模なストライキを敢行すだろう。しかし、倒産しかけた会社でストライキをしてもさらに首を絞めるだけ。いったいなんのためのストライキか、組合幹部は重い自問自答をしなければなるまい。

会社の出口には2種類ある。幸福な出口とそうでない出口だ。幸福な出口は、株式公開、M&Aによる売却。あまり幸福でない出口は、倒産、破産、清算。いずれにせよ、これらのコースには、資本主義の法則が貫徹される。法則が貫徹されるところに疎外が生じる。畢竟、これがマルクスの疎外論の要諦。

GMのような大企業の経営者も、中小やベンチャー企業の経営者も経営者であることに変わりはない。そう名著「GMとともに」をリーディング・アサインメントとしてGMのアルフレッド・P・スローンが寄贈してできたビジネススクールで習った。

経営者は資本主義の体現者なのだ。自らが行動して資本主義の法則を貫徹させ、みずからにもその法則を貫徹させる。そして自らを疎外させるのである。この過酷さ、修羅場を皮膚感覚で知るものはたぶん経験者だけか。


     <GMヘンダーソン社長>


   <エドワード・ギボン>

ワゴナー氏の後任のヘンダーソン社長は、強烈なストレスに苛まれ、苦渋の決断をせねばなるまい。よりよい状態を目指す、良い決断は簡単だ。より悪くない状態を目指す、より悪くない決断は難しい。

敗戦処理屋=ヘンダーソン社長は、「GMとともに」、「より悪くない決断」をリアリスティックに行うことになろう。世のマスコミはいろいろ書き立てるだろうが、嵐が去ったらヘンダーソン氏は静かに本を書けばよい。

その本の題名は、「GMとともに~パートII~」、あるいは「GM帝国衰亡史」(The History of the Decline and Fall of the GM Empire)か。ひげをそれば、ヘンダーソン氏なんとなくギボンにも似ている。

米国の運命は『GMとともに』なのか!?

2009年02月19日 | 恐慌実況中継

この本の背表紙を見ると複雑な思いがよぎる。米国の運命は『GMとともに』にあるのだろうか。

ビルゲイツをして「ビジネス本で一冊だけ読むとしたら、この本だ」と言わしめた一冊。総ページ数が500ページを超える大作だ。アルフレッド・P・スローン財団が寄付した大学院プログラムに在学しているときは、もちろんこの本が必読の一冊とされていた。

そのGMがいまや虫の息になっている。20世紀初頭,T型フォードに経営資源を集中させていたフォードに対抗して、いろいろな車体メーカー、部品メーカーをM&Aで集約してゼネラルモーターは多品種戦略を打ち立て成功をおさめた。自動車史、米国産業史上に燦然と輝く米国企業なのである。その米国の象徴のGMが倒産しつつある。

GM社とクライスラー社は今月17日、米財務省に再建計画を提出し、GM社が166億米ドル(約1兆5514億円)、クライスラー社が50億米ドル(約4672億円)の追加支援を要請した。GM社では、昨年12月に受けた「つなぎ融資」の134億米ドル(約1兆2523億円)を合わせると、融資総額は300億米ドル(約2兆8037億円)に達する。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙はインターネット上で「政府はGM社、クライスラー社に資金援助を行うべきか」とのアンケート調査を行った。その結果84.7%が「援助するべきでない」と答え、「援助すべき」と答えた15.3%を大きく上回った。

85パーセントの救済反対論は:

・GMは環境対策、エコカーの開発では大きく出遅れ、とるべきイノベーションを創発できなかった。経営の不作為だ。
・GMは車をローンで買う消費者とローン会社に大きく依存しクレジットエコノミーの主役でしかなかった。
・なによりも一私企業に税金を投入するのは間違いだ。

かたや、15パーセントの救済賛成論は:

・実際にGMやフォードが倒産すれば失業者の急増を招き、米国経済への深刻な影響は避けられない。
・経済の回復の兆しが見られなければ、国民の政治不信につながる。

シュンペーターは、経済活動における新陳代謝を創造的破壊と呼んだ。また、資本主義は、成功ゆえに巨大企業を生み出し、それが官僚的になって活力を失い、社会主義へ移行していくと予言した。現下アメリカには、紛れもなく「シュンペーター過程」=法則が顕れて疎外が発生している。

米国政府はGMとクライスラーの再建計画を精査した上で、3月末までに計画を承認するかどうか判断する。承認しなければ融資の即時返済を求め、経営破綻となるだろう。アメリカを象徴するGMとクライスラーの破綻の火砕流は一気に裾野の産業を巻き込み、製造業=実物経済の連鎖倒産となるはずだ。こうなると、市況を悪化させ、市場センチメントも一気に悪くなる。

そうなれば半年前に予測した恐慌のシナリオがまた一歩進む。


国家統制に走らざるを得ないオバマ氏の絶対矛盾

2008年12月29日 | 恐慌実況中継


カール・ポランニーは今だからこそ、読み継がれるべきだろう。

ポランニーが没した1964年以降、石油ショックが起こり、ベルリンの壁が崩壊し、旧ソ連が瓦解し、社会主義制度は瓦解し、あるいは中国では社会主義市場主義というような修正的な変質をきたしてきた。

バブル経済は何度となく繰り返しているが、失われた20年と一般にいわれる停滞の時代を日本のバブル経済はもたらし、そして今日、米国ニューヨーク発の世界恐慌が着々と進行中である。

20世紀後半の資本主義は、ケインズ主義、高度経済成長、大衆社会化、ソ連崩壊という経過を経て、新しい進化を続けていている。市場経済は、新自由主義という追い風を受けて、インターネットによる情報・知識革命、全てのモノゴトを債権化するセキュリタイゼーションと連動してグローバライゼーションとさえ命名されるにいたっている。

ポランニーが、もし今の時代に生きていたら、現代の「悪魔の碾き臼」が金融工学の精華を凝らして労働、土地、貨幣、すべてにまたがる手の込んだ複合的擬制商品を作ったことを見て腰をぬかしただろう。

フォン・ノイマンが基礎を作ったゲーム理論の上に乗って「悪魔の碾き臼」によって細かに粉状にされたサブプライムローンのような虚構の金融派生商品が、世界中の投資家、金融機関にばら撒かれ、それら遍満した金融商品が一気に不良債権化してバランスシートを痛めつける。

そして悪性の信用収縮がまたたくまに連鎖する。こうして現下、金融機関のみならず、実物経済セクターにまで極悪性のインパクトを及ぼしつつある。したがって現下の不況、恐慌は1929年の世界大恐慌とはまったく異質である。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とは、企業への貸付金の返済リスクを補償する金融派生商品で、CDSを購入すれば、ある企業が破綻して蒙る損失を全額補償する金融派生商品。アメリカン・インシュランス・グループ(AIG)は、リーマン・ブラザースに巨額のCDSを発行していた。

リーマン・ブラザースが抱えていたCDSの残高は40兆円。そしてリーマンは破綻し、そのあおりをもろに受けたAIGの株価も暴落。AIGが破綻すれば、6000兆円ものCDSが消えてなくなる。そして金融機関は巨額な引当金を積まなければならなくなる。そして金融恐慌が一気に連鎖してしまう。パニック。だから米国政府は税金を使ってAIGを救済したのだ。

市場は自己調整能力を持っているなんて言えたものじゃない。今後、金融機関のみならず、製造業までもが恐慌に飲み込まれていくのは必至である。そして、救済のために政府が国民から徴収した税金=公的資金を大量に投入していく。

中央銀行が輪転機を回して大量の紙幣を刷りまくる。そして財政当局が国債を大量に発行して紙幣を買い取る。ドル紙幣が世界中にばら撒かれ、極度の過剰流動性を引き起こしている。だから現下、ドルの価値は暴落しているし、暴落は続いてゆく。

ますます国家統制が陰湿に厳しく行われることになる。オバマが個人的にはもっとも忌み嫌う国家権力による過剰統制を、ほかならぬオバマ自身がやらなければならないのだ。皮肉なことである。

米国発金融恐慌はいよいよ連鎖フェーズへ。で資産はどうする?

2008年09月16日 | 恐慌実況中継
恐慌リスクが高まっているが、恐慌とはいったいなんなのか?

恐慌とは、マルクスが『資本論』で論述した近代社会の経済的運動法則、つまり、「資本の絶対的過剰生産」と景気循環の避けられない必然性のことである。軽工業を中心にした19世紀型の産業構造が、重化学工業を中心にした20世紀型の産業構造に転換する中で、19世紀型の恐慌は消滅した・・・というようによく経済学の教科書では説明されている。

しかし昔の教科書は、今回の米国発恐慌が現実のものとなれば大幅にかきかえられなければなるまい。21世紀の今日でも資本の過剰と景気循環は繰り返しやってくる。しかも国際金融資本の強欲資本主義と仮想マネーのオーバーフロー、そしてグローバルな規模のクレジットクランチによって起こされる遥かに悪性の循環が。

帝国主義戦争や冷戦=機軸通貨国家アメリカの産軍複合体制によるドルの垂れ流しとケインズ政策=有効需要理論などによって、資本の過剰と景気循環は定期的に発生している。

実体経済の経済成長以上に資産価格が上昇した状態がバブル経済だ。投機によってもたらされるアンバランスな状態は維持できるものではない。だからITバブルではIT企業の株価が調整されたし、今回のアメリカ住宅、不動産価格も調整されている。

実体経済の成長にキャッチアップできない資産価格の「中身がない」資産上昇分(バブル)はいずれ実体経済との乖離を解消することとなる。それまで投機を支えていた何らかの期待、前提、ストーリー、神話の崩壊や政策対応による資産価格の減額などをきっかけにして、投機が終息し資産価格が下落することとなる。いわゆるバブル崩壊だ。

ここでポイントとなるのは「調整」。いったい誰が調整するのか。神の見えざる手とかなんとか言っているのは、古いテキストだけで、実際は調整することによって利益を誘導したい寡頭勢力がちゃんとシナリオを書いている。調整が計画されれば、それは計画された恐慌、意図された恐慌となる。ITバブルの崩壊につづき、またもや、計画された調整としての住宅バブル崩壊、そして深刻な金融不安、金融恐慌が迫っている。

住宅バブル崩壊に起因するサブプライムローンの焦げ付きで始まった米国の金融危機は、第1フェーズの貸し渋り、貸しはがし、資産売却を通過した。リーマン・ブラザースの破綻によって第2フェーズの金融機関の破綻に移行した。これが今日の出来事だ。

これから米国金融機関の破綻は続出する。そして破綻が連鎖してくると、倒産が倒産を呼ぶという恐慌スパイラルとなる第3フェーズを迎えることとなる。どの会社にババを引かせるのか?今後はババぬきのターゲットが陰湿に決められてゆく。保険会社大手ののAIGあたりがヤバい。

金融機関が金繰りに窮して世界中の不動産・株・企業などあらゆる保有資産を売却するだろう。こうして、世界中の株式、債券、電子化されたマネーの価値が崩壊し奈落のドン底に堕ちる。この現象が第4フェーズの米国発の世界恐慌。

では、自らの資産を防御するにはどうしたらいいか。あらゆるセキュリタイゼーションによって非物化された債権、仮想マネーの対極にある「実物への回帰」だろう。金、銀、プラチナ、銅は今後手堅い実物運用対象となるだろう。来週あたりからいずれこんなことを言う評論家も出てくるだろう。

でも本当はその先の実物がある。もっとも身近な実物、つまり自分自身のヒューマン・キャピタルへの投資が最も有効かつ長期的なリスクヘッジになる。大学、大学院、通信教育、eラーニング、読書、習い事、語学、なんでもいいので自分への教育投資が有効だ。ただし、学資ローンを組むのはマズい。あくまで手元のキャッシュフローの範囲でやるべきだ。




強欲カジノ資本主義総本山総崩れ、米国発恐慌が近い

2008年09月06日 | 恐慌実況中継
フレディマックとファニーメイの2大住宅貸付抵当「会社」が瀕死状態である。2社の累積損失は5.2兆ドル(630兆円)。日本では、よく公社というように訳されているが、正確にはGovernment Sopported Enterpriseであり、米国政府により安全性が保障されている組織ではまったくない。だから、住宅貸付抵当会社とすべきである。米国政府は税金投入でこれら2社の救済はできないだろう。

アメリカの株価と国債市場の崩落が鮮明になってきている。いずれドルも下落し、原油と金、鉱物資源の激しい値上がりが向こう3年間くらいは続きそうだ。

サブプライムローンという八百長のような金融資本主義ゲームに端を発して、アメリカ国内の金融危機がじわじわと進行している。その証拠に住宅価格が下げ止まらない。そのあおりを受けて、大銀行、証券、保険会社までが、倒産・破綻の危機を深めている。シティバンク、メリルリンチ、リーマンブラザーズ、モルガン・スタンレーなどは深刻だ。アメリカの国債・公債を大量に買い込んでいるヨーロッパの大銀行群の経営危機にもなっているからだ。とくにイギリスが悪い。

チャイナの株価も威勢のいいオリンピックが始まったことにはっきりした下げ基調を強めている。中国は金融破たんの悪影響をなるべくかぶらないようにするために、保有する大量の米ドルと米国債、米公社債などの投売りで、本音では損を減らしたい。しかし、そうなるとアメリカでの債券市場の暴落が起きて、中国も一緒に危なくなるので困っている。ブッシュが北京オリンピックの開会式に急遽参加したのは、そんな背後関係もある。

日本国民は、厚生年金も、国民年金も、共済年金も、それらの資金の運用先をアメリカにしてあるので、アメリカで恐慌が発生すれば「元本吹き飛ばし」にハマってしまう。ぜいぜい、貰えても3分の1ずつに削らされてしまうだろう。

副島隆彦教授によると、米国政府系住宅抵当金融会社の関連債権の残高は:
農林中央金庫 5兆5000億円
三菱UFJフィナンシャルグループ 3兆3000億円
日本生命保険 2兆6300億円
みずほFグループ 1兆2000億円
以下、省略

となっている。「恐慌前夜」p7より。
すでにこれらの金融機関は強烈に痛打されている。そしてこれらの金融機関に口座を持っている人の金融資産も大きなリスクにさらされていることとなる。

それにしても米国金融寡頭勢力の横暴、専横ぶりは空前絶後のものだ。日本に押し付けた時価会計基準をあっさり捨てて、不良債権を時価で計上しなくてもよいようにしたのである。みずからの国益のためにルールを作り、都合が悪くなるとそのルールを取りやめる。覇権国の覇権国たるゆえんだ。

計画的にドルは安くなってゆく。ダウも安くなってゆく。日本が保有する米国債などの債権600兆円も消しこまれ、チャラパーになってしまう。国富がチャラパーになってしまうのである。