かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

働き方が変わる、学び方が変わる、暮らしが変わる。
 「Hoshino Parsons Project」のブログ

100人を敵にまわしてでも立証したい「明るい未来」の話

2017年01月08日 | 書店業界(薄利多売は悪くない)

持続する仕事 (1/3)
100人を敵にまわしてでも立証してみせたい20~30年後の「明るい未来」 

(「どうして絶望的未来しか想像できないのか」シリーズ No.12)

 

そもそも、100人も敵をつくってしまうようでは、明るい未来などつくりうるはずがありません。

先にことわっておかなければなりませんが、この趣旨は、新たに敵をつってしまう以前に、100人くらいを敵にまわしてでも説得し続ける強い意志がいるといった覚悟の意味を込めたものなので、その旨ご了承ください。

とにかく新年は、明るい話をしなきゃダメでしょう。

 

確かに出版業界、書店業界どこも明るい話題などないと言われて久しい時代です。
新年にかわした挨拶のなかでも、
「これほど売れない時代がくるとは思わなかった」
「事業の縮小準備をすすめてます」
などの言葉が枕詞のように入るようになってしまいました。


繰り返しになるかもしれませんが、この厳しい現実をあまり紙の文化を守るための出版業界独自の問題とばかり考えてしまうと正しい解決の糸口は見失ってしまうと私は思っています。

ただ単に活字文化を守るビジネスが厳しいのではなく、「モノ売り」の世界全体が、小売業界であれ製造業であれ第一次産業であれ、日本国にとどまらず、先進国共通の問題として直面している課題だと思うのです。

そのなかでひとり「活字文化」だけが、もっと守られるべき存在であるというのではなく、今私たちが取り戻さなければならないのは、それらをひっくるめた現代社会全体のパラダイム転換にどう立ち向かうかということではないでしょうか。

いきなりそんな大風呂敷を広げても、目前の問題が解決できなければどうしようもないではないかとも言われそうですが、まさに「活字文化」を標榜する私たちこそが、そうした時代の大きな流れには逆らえないと嘆くことなく、根本から問い続ける勇気と責任を持たなければならないはずです。

これまで何度か、そうしたことを書き、また語る機会をいただいてきましたが、ここ10年ほどの間におどろくほど世界も変わってしまっているので、表面的な話は瞬く間に陳腐化してしまいます。

そこでどうしても仕切り直しを迫られることを感じたので、新たな切り込み口を考えていたところ、キーワードは
「持続する仕事」
といったような言葉になるのではないかと思えてきました。

 

その背景はまず第一に、これまでの世界のビジネスモデルが、その成長要因の大半が、その実態をみれば歴史上経験したことのない人口爆発によって支えられたものであり、それは長い人類の歴史からみればほんの半世紀ほどの極めて特殊なものであったということに気づき始めたことです。 

第二には、日常のあらゆるものが商品化されて、買ったものに支えられる生活になってから、地域の崩壊=暮らしの崩壊へと突き進む(これは今も彼らが願っている方向)流れは、この間に繰り返されるような延命策では絶対に解決しえない域に達してるということです。

第三は、これもブラック企業の問題が騒がれているなかで話すことが難しいのですが、「働く」ということが、「賃労働」の側面ばかりで見られるようになってしまい、人の本来の暮らしの営みとしての労働が見失われてしまったことです。
 不当な労働を廃することは当然ですが、大事なのは安易な労働基準数値の問題ではなく、わたしたちにとっての「幸せな労働」「豊かな労働」を取り戻すことこそが中心課題のはずです。

 

このような意味で私たちに今求められていることは、既存のレールの修復作業ではありません。

私自身、確かに10年前までは右肩上がりの時代の余韻があったので、「これをやれば」「あれをやれば」まだ売上を伸ばせる、といったような口調になっていましたが、ベースが完全に右肩下がりの時代になると、もうそうした各論では話が通じません。(もちろんまだ出来ることはあります)

これらの前提に立てば、求められる景気の回復策は、デフレ脱却のための消費刺激策ではないことは明らかです。

企画やイベントは大事でこれからも必要ですが、すでにそうした消費の刺激だけでなんとかなる時代でないのです。

だから政治家になんとかしてほしいとばかりに、専門家や権限のある政治家などに、1票の力だけで丸投げしてしまうこれまでの未熟な民主主義の実態が表面化してきたというのが今の社会のすがたなので、どうするかを考え実行するために必要なボールは、完全に私たちの側に預けられているということに気づくべきです。

専門知識の有無よりも、私たちがそれらの実像を調べ、聞き、学び、教わる主体であることが、従来の学校教育型の「お勉強」から「本を力」にした私たちの生きる力を磨くことを通じてこそ、可能になりはじめた社会が目の前に開けているのです。

このような意味で「働き方」「学び方」「暮らし方」の改革こそが中心課題の時代になったといえるのではないでしょうか。

だからこそ、「本屋の出番」だと私は確信できるのです。

もちろん、私たちの業界がさらに衰退し縮小していくことは間違いありません。
でも、これまでの貸本業界、CD・レコード業界、レンタルビデオ業界のように、完全に消え去ってしまうような絶望的危機をかかえた産業基盤でないことは、ものすごいアドバンテージです。

 

これからどのような時代がはじまるのか、

わたしたちの幸せな未来を築くにはどうしたらよいのか 

 

ネットなど断片情報で安直に得られる答えに依存せず、本の本領を本格的に発揮する時代がはじまったわけですから、私たちにとっては決して絶望するような困ったことがおきているわけではありません。

 

 

「悲観主義は感情で、楽観主義は意思の力による」  アラン『幸福論』

 

 

「不況」にあえぐ他の業界に比べたら、はるかに大きな使命をもち、社会に求められ続ける魅力的な業界にわたしたちは今もいるのだということをまず新年に強調させていただきたいとあらためて思うのです。

 

 

毎度、長くなってしまうので、次回にこの「働き方」についてのひとつの視点を続けて書かせていただきます。

「千回の法則」 要点メモ  「持続する仕事(2/3)http://blog.goo.ne.jp/hosinoue/e/ad40dc5b16af2ccc0c8642d56dcf7c91

 

 

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