かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

良い医療と良い経営は両立しないのか?

2010年04月02日 | 気になる本
日本でいちばん大切にしたい会社2
坂本 光司
あさ出版

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社会問題として指摘され続けている救急患者の受け入れ拒否の現実がありますが、
ほとんどの町では、いまだに改善の方向へは向かっていません。

病院側からすれば、現実に対応できる医師がいないのだから責任ある受け入れは不可能ということになるのでしょう。
どこも経営難のなかで、医師を簡単に増やすことはできない。
増やしたくても、なかなか来てくれる医師がいないのも確かに多くの病院の現実です。

そんなことから、まことしやかに「良い医療と良い経営は両立しない」
といったことがしばしば言われることがあるのを耳にします。

こうした話は、良い医療に限ったことでもなく、
長引く不況で市場が縮小し続ける時代に、様々な分野で似たようなことを聞きます。

「それは経営にゆとりがあれば出来るかもしれないが、今の実情で無理だ」
どの経営者から聞く言葉も実情からすれば、ごもっともなことのように聞こえてきます。

財務状況を表す数字をみれば、改善を要求すること自体が無茶な要求であるかのような実態もあります。


ところが、こうした問題のうちにこそ、
そもそも「経営」とは何か、
「良い経営」とはどのようなことなのかを
根本的に問いなおす大事な鍵がひそんでいることを、
わたしは改めて知りました。

これまで何度か紹介させていただいた、坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社 』(あさ出版)は、こうした様々な「出来ない理由」が、経営の本来の姿からいかにかけ離れているかを私たちに教えてくれるものですが、この度の第2弾『日本でいちばん大切にしたい会社2』では、さらにそうした実例を紹介してくれています。


最近、テレビなどでもよく紹介されるようになった千葉の亀田総合病院。
救急医療患者受け入れを絶対に拒否しない病院としてかなり有名になりました。

私はこの病院のことを、もっぱら救急患者の受け入れ体制のことでのみすぐれた病院であるかのように思っていました。

もちろん、そのことだけでも十分すばらしいことなのですが、それにとどまらない医療の在り方そのものを問い直す、しっかりとした病院経営思想のもとにここの医療が成り立っていることを本書で知りました。

具体的なことは、是非、本書を読んでみていただきたいのですが、
なにごとも経営が苦しいから、良いサービスや医療は提供できないのではなく、
良い医療やサービスを提供する考えがあれば、
患者は集まり、すぐれた医者がたくさん集まるようになることで経営が良くなるのだということです。

これは財務諸表を固定的に分析している人には、なかなか理解できないことでです。

いかなる分野の事業でも、衰退していく経営体は、何なにがないから不可能だ、それは出来ない、と言います。
ところが、すぐれた経営を成しているところは、ほとんどが同じ条件のなかで突破口を切り開いているのです。

おそらくどこの病院でもあることですが、
「隣りの人のいびきがうるさくて眠れない」
「軽症なので入院中に酒が飲みたい」
「入院している家族が心配なので泊りたい」
これらの個々の患者や家族の要望に応えられるのか応えられないのか、
それこそが、「経営の核心」部分なのです。

でも、それが出来るところと出来ないところの差はどこに生まれるのでしょうか。
決してマニュアルで解決できる問題ではありません。
「Always say yes」「絶対にNOと言わない」サービスは、どのようにして可能になるのでしょうか。

かつて『真実の瞬間』といった本がありましたが、顧客に接している最先端の従業員にこそ、会社の真の姿はあらわれるといったようなことを書いていた本ですが、それを見事に実現した経営がここにありました。

坂本先生が亀田病院長に、最も重視している仕事、役割はなにかと尋ねると、
「私がいちばん多くの時間を割いている仕事、いちばん大切と思っている仕事は、医師と看護師をはじめとした、病院スタッフの命と生命を守ることです」と迷うことなく答える。

この精神が生みだすシステムこそが、給料だけが高いわけでもなく、働くがいと生きがいを感じて創造的仕事に従事するスタッフの職場環境を育てている。

人に能力の問題を問う前に、
誰もが、人の役に立てること、必要とされること
人の喜んでくれた顔が見れること、人にほめられることを
どれだけ働くことの動機としていることかをもっと多くの人が知るべきです。

そして、この話は次に書く予定の「モチベーション3.0」の話に続きます。

実は、あとがきでふれられた内容についても、ひとこと付言しておきたいことがありますが、
それは別の場にします。

本書で亀田病院の話は8つ取りあげられた企業のなかのひとつにすぎません。
是非、書店店頭で手にとって見てみてください。
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