この「化」という字も
普段には化け物とか化学とか
化けて変化するような意味に
使われますが、
仏教にもよく出てくる字で
その場合は「ケ」と発音します。
仏は化生(けしょう)といわれる
というように読みます。
「化」という字は
成り立ちも面白く、
人偏かと思いきや
匕(さじ)部の字で
人とさかさまになった人から
できています。
上の人が下の人に教えをおよぼす
という説もあるようで、
こういう意味が仏教ではよく
使われています。
教化(きょうけ)ということが
熟語としてはよく使われます
教導化益キョウドウケヤク
教えを説いて衆生を導き
めぐみを与えるということです
教化する人を能化ノウケ
教化される人を所化ショケと
それで真言宗でも管長さんの事を
「能化さん」と呼ぶ宗派も
あります。
教化する人ということで
仏のことを化生ケショウといいます
また仏はその人その人に合った
教え方をして導かれたので
「適化無方」チャッケムホウ
一つの定まった方法ではなく
人に応じて適切な導き方を
されたということです
また随縁化物ズイエンケブツとも
縁に随い適宜に衆生を教化された
ということです
この場合の物ということは
衆生という意味です
物故者の時の物と同じです
(たまに仏故者と書かれる方も
いらっしゃいます
なるほど、亡くなって
仏になったのだから仏でも
いいような気もしますが
この場合は衆生を表すので物と
書くのです)
また、仏教では
四生シショウということがあって
生物の生まれる姿を
四つに分類したのです
「胎・卵・湿・化」
タイ・ラン・シッ・ケ
といって
胎生タイショウ、卵生ランショウ
湿生シッショウ、化生ケショウ
といいます
胎生は母胎から生まれるという
人や獣類です
卵生は卵から生まれる生き物で
鳥類とか爬虫類など
湿生は湿気から生まれる
今では科学的に見えますが
昔は湧いて出る虫(蚊)などを
湿生といったのです
化生(化けて出るものではなく)
他によらずに自らの業力によって
忽然と生まれ出るもの
今の頭では考えにくいのですが
諸天とありますから
四天王とか梵天帝釈天とか
龍とか鳳凰など
そういう生き物をそのように
呼んだのでしょう。
それから「遷化」センゲ
という言葉もあります
僧籍にある人がなくなった時
もっぱらこの遷化という言葉を
使います
もともとは遷移化滅センイケメツ
ということで人が移り変わり
滅していくということです。
余談ですが
喪中はがきの中にも
僧籍にある方でも
永眠しました、とありますが
仏になるのはさとりに目覚める
のですから、
永遠に眠ってしまっては
いけないのではと思うのです。
『十地経講義』のなかには
こういうありとあらゆる言葉が
出てきて
「化生の世界」とか仏は化生
という言葉も一瞬戸惑って
しまいますが、
よく読み返していくと
なるほどと思われてきます。
通り一遍に読めば何のことは
ないのですが、
知れば知るほど分からないことが
出てきて、講義の奥深さを
ひしひしと感じます。