可愛いモンだ

赤ちゃんはお母さんの声が好きなのよ、と聞いて、
生後一ヶ月にして自作絵本の読み聞かせを試みた。
むかぁし、むかしのことじゃった。
ある日おじいさんとおばあさんが、
「ちょっとッ、怖いわよ」
市原悦子さん(まんが日本昔ばなし)のようにはいかなかった…。
音痴でも良いのだろうか？
自作子守歌を聞かせてみた。
さぁやさぁや、すぅやすぅや、さぁやすや、お、や、す、み、な、さ、い♪
すると、私の歌唱力を、涙を流しながら全否定した。
「んぎゃぁーッ、え、えぇ、うぇー」
こうして、おやすみなさいから程遠いテンションにしてしまい、収拾がつかなくなった。
一体、何を、どうすれば、この愚図りを解消してくれるのか？
「きっと愚図る時間なのよ」
ほっといて寝なさいと言う、実母。
耳元でぎゃん泣きされて、ほっといて寝られるのか？
無理だ。それに、ほっといてサイレントベビーにでもなってしまったら、
いかん、私が二人…そいつは面倒だ。
かという、甘えに応じてばかりで、甘ったれ主人のようになったら、
「それこそ、面倒だわ」
お風呂上りから11時の授乳タイムまで、泣くとそう決めているのか？
泣いて泣いて泣きまくる。そんなアピールしなくても、必ず乳は貰える。
グリーンラインが出たらオムツもきれいになる。ゆらゆら抱っこもベビーマッサージも。
いつも傍に母がいるというのに…。どうやったら母の気持ちが分かって貰えるのか？
育児諸先輩の従兄に夜泣きの相談をしたところ、
「可愛いモンだ」
アパートを脱出、寝入るまで目的もなく、真っ暗闇をドライブ。
泣き止んでアパートに戻った頃、一日が始まるという。それが一年以上続いた。
「ずっと寝不足だよ」
そうか…どうやら私ノイローゼになるにはまだ早いらしい。