(カザレの別荘跡の案内図)
(オレンジと古代の大きな別荘の跡)
三日目はピアッツア・アルメリーナへ約100キロ走り、
映画「グランブルー」の舞台となったシチリアを代表する別荘地
タオルミーナへ。途中、古代モザイク画が残されている
世界遺産「カザレの別荘」を観光。
シチリアはそもそもがリゾートである。この二月の時期はまだ早く、
ホテルも空いているが、三月に入るとヨーロッパの人たちが、
どっと押し寄せホテルは満室となるという。
リゾートとして混雑する前の
閑散期にあっちこっちを観たがる日本人観光客が押し寄せる。
つまり閑散期の穴埋めに日本人達がいるのだ。
(美しい丘陵地帯)
海岸線を走った昨日とは打って変わり、本日は内陸を走る。
なだらかな丘陵地帯を走って、野原の茂みの中に
その世界遺産「カザレの別荘」はあった。
車を止めて遺跡の入り口までしばらく歩く。
道の両側に背の低いオリーブの木が生えており、
熟した黒い実をつけている。
食べられそうに見えるオリーブの実を取って、
口に入れようかどうしようか迷っていると、
いかにも農夫らしい男性がミカン様の実を手に持って、
歩いている人全員に試食を勧めている。
例によって物売りである。無視して遺跡の方向に進む。
前回の乞食の婆さんの件(南イタリア紀行2参照)もあるので、
ツアー客はみんな素知らぬ顔で通り過ぎる。
「カザレの別荘」は優に500坪はあるかと思われるほど広い。
お風呂、居間、室内競技場など見て回ったが、
全ての床はモザイクで描かれている。
どれもモザイクとしては良く残っている。
オデッセイの物語を描いたもの、
水上の生活を描いたもの、水中の様子(魚など)を描いたもの、
どれもこれも感心する。
日本では見ることが出来ない。
(モザイク床)
モザイク画はトルコのモスクの壁に描かれたものを観たのが始めてであったが、
今回は床に描かれたもので、当時は床の上を何人もの人が歩いて、
モザイクが磨り減ってはいるが、良く残ったものと感心する。
古いモザイク画の床を持つ別荘を一巡して外に出る。
待っている観光バスまでの道のりを、
オリーブ並木に囲まれて歩きながら、
(出来るときにやらなければ悔いが残る)とばかりに、
脇の木から黒いオリーブの実を一つ取って口に入れた。
いつも食べるオリーブのピクルスを想像していたら、
似ても似つかぬ味であった。
回りの仲間達が興味深そうにボクの顔を覗き込んでいたが、
ボクが「渋いっ!」と吐き出すのを見てげらげら笑った。
ボクは思う。
(なまこや、その腸のこのわた)を始めて食べた人の勇気を。
果物ではドリアン、発酵食品では納豆をはじめて食べた人の、
その勇気を感じたものだが、ボク自身そんな冒険者の気分である。
その日の翌朝、浅い夢を見た。
《オリーブの実を(ああ 美味しい!)と言って、
にこやかに飲み込んで見せた夢だ。
周りの仲間達が競って黒オリーブの実を手にとって、口に入れる。
次の瞬間、みんなが渋そうな顔をして、
(べっべっ)口からオリーブを吐き出している夢だ。
(わっはっはあ!!!)
お腹を抱えて笑ったところで目が覚めた。》
意地悪な夢だ。
話を戻す。
口の中にオリーヴの渋さが残っており、弱っていると、
往路にいた農夫がしきりにみかんの試食を進めている。
お口直しにともらって食べたら、これがすこぶる美味しい。
カミさんに「すごく美味しいよ!」と勧めると、
周りのみんなが競って試食した。
カミさんも食べてみて、(おいしい)と言う。
すかさずボクが、
(いくら?)と聞くと(1ユーロ)と言う。一個かと思い、
(えっ?)と聞きなおすと、
ビニール袋を持ち上げて、(1ユーロ)と言う。
袋を持ち上げてみると、6個は入っている。
6個147円は安い!
東京ではスーパーマーケットで買っても一個200円だ。
1ユーロ出して早速買った。
さて、これがシチリアで食べたオレンジである。
オレンジは普通切ると中身はオレンジ色である。
当たり前のことだ。
ところがシチリアのオレンジは中が赤い。
赤い身のグレープフルーツに似ているが
色はもっと透明で鮮やかである。
グレープフルーツより酸味が少なく甘くておいしい。
翌朝、ホテルの食堂を見渡すとフレッシュ・オレンジジュースと書いた機械が置いてある。
横に昨日と同じオレンジが山と積んであり、
機械の下には絞りかすのオレンジが
これまたタップリバケツの中にある。
機械をどのように使うのか解らないので、あれこれ眺め回していると、
イタリア人らしき客が来て、
オレンジを機械の上部から一個づつ入れていくと、
下のほうからジュースが出てくる。
三個入れるとコップ一杯分のフレッシュジュースが出来上がる。
何のことはない、コーヒーメーカーみたいなものだ。
右へ習えで、ボクが試し、カミサンの分と二杯ジュースを作ると、
ボクの後ろに日本人旅行客が並んでいる。
カミサンにジュースを渡すと、
あのオレンジの機械はどのように
ジュースを造るのかとご質問である。
そこまで観察していなかったので、
もう一杯ジュースを作りに行く。
一個オレンジを入れて機械を見ていると、
機械の中に入ったオレンジは、
すぐに二つに切られ、奥まで進むと両側から切られたオレンジが押し潰されて
ジュースが出来る仕組みになっている。
三個分で200CCのジュースが出来る。
しかし、あのオレンジの味は忘れられない。あのオレンジのために、
また来年の二月にシチリアに行きたいものである。
(昼食はコトレッタ・アッラ・シチリアーナ【シチリア風カツレツ】カミさん写す)
(順序が逆であるがスープ)