熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

METライブビューイング・・・プーランク「カルメル会修道女の対話」

2019年06月14日 | クラシック音楽・オペラ
   「カルメル会修道女の対話 Dialogues des carmélites」は、フランス革命前後のコンピエーニュのカルメル会修道女の処刑を題材としたフランシス・プーランク作曲の全3幕のオペラ。
   1957年1月26日に、ミラノ・スカラ座での初演であるから、現代オペラで、特に美しいアリアや感動的な音楽があるわけではなく、フランスの劇を観ているような舞台である。

   フランス革命のパリで、ド・ラ・フォルス侯爵家の娘ブランシュは、神経質なために俗世間では生きてゆけず、コンピエーニュのカルメル会の修道院に入る。しかし、革命政府は、修道院の解散と建物の売却を命令し司祭も追放し、修道女たちは殉教を決意するが、怯えたブランシュは修道院から逃げ出す。潜伏しながら信仰を守っていた修道女たちは捕らえられて死刑の宣告を受け、ひとりひとり断頭台の露と消えて行く。修道女たちの処刑を聞いて、その刑場へ、俗世間で下女として働いていたブランシュが現れて処刑の列に加わり消えて行く。
   次の写真が、処刑前の修道女たちの姿で、修道女たちは、「サルヴェ・レジーナ」を歌いながら処刑台へ向かい、一人ずつギロチンにかけられるのだが、兵たちの隊列の間を縫って舞台中央の奥へ消えて行くと、ギロチンの落ちる無気味なサウンドが響く。
   

   さて、私が、今回、楽しみにしていたのは、フィンランドの至宝ディーヴァ・カリタ・マッティラである。
   ロンドンのロイヤル・オペラで、20代の初々しいモーツアルトの「魔笛」のパミーナやワーグナー「ローエングリン」のエルザなどを観て非常に印象に残っており、2008年夏にニューヨークに行ったときに、プッチーニの「マノン・レスコー」のタイトル・ロールを聴いて圧倒されてしまった。
   長い間前のMETの総支配人であったジョセフ・ヴォルピーが、「史上最強のオペラ」の中で、最も魅惑的な舞台人間だったソプラノ歌手が二人居るのだがと言って、テラサ・ストラタスと、マッティラの名前をあげている。
   決して美人ではなくて大柄で損をしているが、演技力は抜群で、モーツアルトも歌いプッチーニも、そして、ワーグナーも歌え、これほど天性のオペラ歌手としての素質を備えた歌手は稀有だと思っており、今回の舞台では、クロワシー夫人/修道院長を演じており、死期の迫った老女を鬼気迫る圧倒的な演技で観客を釘付けにして、カーテンコールでは、主役ブランシュ・ド・ラ・フォルスのイザベル・レナードを圧倒するほど熱狂的な拍手喝采を受けていた。
   ついでながら、 ヴォルピーは、「サロメ」での全裸スタイルの一こまでのマッティラを語っている。リハーサル途中でのニューヨークタイムズ・カメラマンのワン・ショットに逆上したが、TVでは、かたいフィンランドの家族を押し切って、無修正で放映させたと言う。のである。
   サロメは、ロイヤルオペラで何回か観ているが、ギネス・ジョーンズは肉襦袢だったが、マリヤ・ユーイングのサロメは全裸でびっくりしたのを覚えている。

   今回の指揮者は、新MET音楽監督のヤニック・ネゼ=セガン。
   今秋、私が留学時代2年間メンバーチケットを持って通っていたフィラデルフィア管弦楽団と来日する。

   演出は、ジョン・デクスター。
   舞台の中央に太い真っ白な十字を染め抜いて、必要に応じて上部から柱や壁など室内装飾のセットを上下して舞台展開を図っていて、シンプルながら、非常に美しい。

   ブランシュ・ド・ラ・フォルスのイザベル・レナードは、素晴らしく上手い美人のメゾソプラノ。
   同窓で親友だと言う修道女コンスタンスのエリン・モーリーとの息の合った舞台が好感度抜群である。
   リドワーヌ夫人/新修道院長のエイドリアン・ピエチョンカ、マリー修道女長のカレン・カーギルなど魅力的な女性陣が舞台を圧倒。
   
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウォルター アイザックソン ... | トップ | エドワード・ギボン:古代ロ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

クラシック音楽・オペラ」カテゴリの最新記事