熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日経:新春景気討論会

2008年01月17日 | 政治・経済・社会
   日経ホールで、恒例の日経:新春景気討論会が開かれた。
   年初から大変な株式の暴落が続き、経済は波乱含みであるが、全体の雰囲気としては、非常に心配な経済情勢ではあるが、異常な経済の失速や、中国のバブル崩壊はないであろうと言う、そして、来年には経済は回復基調に戻るであろうと言ったところであった。
   従って、4人のパネリストの予測をまとめると、2008年の日本経済の成長は、厳しくて実質GNP成長1.5%で、大方は1.8~2.0%。日本株も、13,000円から17,000円と言ったところで、為替レートは、100円から110円。
   今回は、中長期の展望には一切触れずに、現状と今年度の見通しとに終始していたので、全体としての経済像は示されなかった。

   日本経済の現状については、吉川東大教授が、小島明氏の指摘を受けて、異常な輸出頼みの状態にあることを説いた。
   2007年度の成長率1.3%の内、外需の貢献度は0.9%で、成長の70%であり、4番バッターの設備投資の落ち込みと個人消費の低迷の為に目立ったが、これまで、いくら高くても50%程度の寄与率だったと言う。

   しからば、日本経済を支える輸出であるが、対アメリカでは、既に昨年秋からマイナスになっており、中国等アジアその他の新興国市場への輸出がどうなるかにかかっている。
   中国市場へは原材料が主で、これが中国で完成品としてアメリカに輸出されており、今後アメリカ経済の更なる低迷によりマイナスの影響が懸念されるが、中国等の内需が拡大しているので大きな落ち込みはないであろうと言う意見が大勢を占めて、オリンピック後の中国経済もそれほど心配ないであろうと言う。
   道路などインフラ投資についても、日本のように景気浮揚策ではなく、中国では実際に必要とされている公共投資であり、オリンピック関連で遅れた分は、その後に廻されるので、需要は堅調だろうと言う。

   日本経済の成長要因については、今回、特に建築基準法の改正による建設需要の40%ものダウンで、実質0.5%も経済成長の足を引っ張った政策不況が大いに問題になった。
   ところが、この遅れの分については、実施がずれただけで、この分は、今年度に復活するので、2008年度の成長率はアップすると考えて、成長率を2%程度と見ているようだが、建設需給については、そんなに上手く行くのか、先の中国の場合にもそうだが、エコノミストの考え方は甘くて解せない。

   アメリカのサブプライム問題であるが、金融業や低所得層の住宅ローン問題が引き金となって、これが金融業全体の貸し渋りとなり、実体経済に波及するのかどうかと言う段階にあるが、バーナンキFRB議長の先日の異常とも言うべき緊迫した演説を考えれば予断を許さないであろう。
   これについて、大和総研の原田泰氏は、日本のバブル後の不良債権は100兆円規模でGDPの20%もあったが、アメリカのサブプライムはGDPの2%で多くても4%と言われており、日本の5~10分の1の規模で非常に低く、精々アメリカの経済成長率を3%から2%にダウンさせる程度で壊滅的な影響を与えることはないと言う。
   原田氏は、他の論点でもそうだが、他のパネリストよりも比較的に明るい経済に関する見方を示していた。

   私は、アメリカの場合には、先日TVでスティグリッツ教授も語っていたが、アメリカ人は、貯蓄を殆どせずに、消費増は、住宅価格や株等の資産価値の増加による借りれで賄って来ており、今回、サブプライム関連で住宅価格や株の暴落によって逆資産効果が発生して消費を削減せざるを得なくなって来ているので、GDPの70%を占めている個人消費が大幅に落ち込む心配が濃厚であると思っている。
   これが実体経済を直撃するので、まだまだ、サブプライム問題の暗雲はアメリカ経済を直撃する。
   それに、今回のサブプライム問題が、大きくヨーロッパの経済にダメッジを与えており、グローバルベースでの悪影響の展開にも注視すべきである。

   ついでながら、日本株価のダウンについては、企業の将来の収益力や日本の力について不信感が強いので暗雲が垂れ込めているのだとコメントしていた。

   J.フロントRの奥田務社長が百貨店・小売業の立場から個人消費の落ち込みについて語っていた。
   国民生活を圧迫ないし直撃するような事態の連続で、国民の消費マインドが落ち込み、生活防衛指向になり、高額高級商品の売上の落ち込みがひどいと言う。
   他のパネリストから、企業の利益率がアップしたが、この大半は利潤分配率のアップにまわって労働分配率が低いままに抑えられ、これが消費の足を引っ張っている、出来れば、給与所得を上げる方向に持って行くべきであると言う指摘があった。

   消費については、吉川教授から、団塊の世代の退職によってライフスタイルが大きく変わるのであるから、企業もこれに対応した魅力的な商品を開発するべきで、経済社会全体の団塊の世代シフトをしくべきだと言う意見が出た。
   案外、このあたりにイノベーションと成長要因が潜在しているのかも知れない。

   また、吉川教授が、経済成長について、国民に生産性の向上と言う意識が少なく、労働人口が減少するのに何故経済成長かと言われると言う。
   経済学では、設備投資やイノベーションによって生産性を上げ、この生産性のアップと労働人口のアップによって経済成長が行われると言うのが常識だが、この観念がなくて、経済成長を悲観的に見すぎており、生産性のアップは、何故か、ガンバリズムのように考えられていると言うのである。

   福田内閣の経済政策に関しては、全く、何を考えているのか読めなくて、無為無策と言うか、このままでは先が暗いと言う見解が大勢を占めていた。
   小島明氏は、成長を持続し生産性をアップ出来るような環境を作り出すべきで、改革による痛みや格差、グローバル化による痛みや格差などは当然起こるのであって、不作為の痛みや格差の方がはるかに恐ろしいと言う。
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