日本では新緑が萌えて緑の一番美しい季節だが、確かイギリスでは、ばらが咲き乱れるトビっきり素晴らしいシーズンである筈。
June Brideという言葉が、それを最も象徴しているように思う。
この口絵写真は、最も親しかったイギリス人夫妻ジム&マーゴ・アブラハムのロンドン郊外のギルフォードの邸宅というか自宅である。
テラスから庭越しにヒースロー空港を展望したのが次の写真だが、とにかく、広大な田園地帯の中の自然に囲まれた素晴らしい邸宅である。
バックヤードの広さは、日本なら、ゆうに、大型マンションが5~6棟は建つ広さで、季節には花々が咲き乱れ色々な果物がたわわに実るなど時々刻々と姿を変える。
びっくりしたのは、多少、プロの手助けを借りるにしても、大手エンジニアリング会社の会長ジムがメカを担当して、会長夫人マーゴが庭仕事の一切を行って素晴らしい庭を維持していることであった。王立協会のセミナーにせっせと通って勉強していたという。
晩餐会やオペラなどの鑑賞会には綺麗に正装して現れる英国紳士淑女が、カントリーライフに生きるときには、素足で庭を駆け巡る、私たち家族も仲間に加わって、時にはそれを楽しんだ。
ところで、イギリス人のカントリーライフ志向は、いわば、イギリス人気質の象徴というべきもので、私の住んでいたキューガーデンの家でも、広大な裏庭があって温室も併設されていた。わが家がそうだと言うのではなく、そんな家が、並んで住宅街が形成されているのである。
イギリスの家は、前庭はそれほど広くはないが、裏庭がその数倍もあって広いのが特徴である。
私は、今日はマドリード、明日はパリと多忙を極めていたので、庭仕事の余裕はなく、東欧からの庭仕事の女性に世話を頼んでいた。近所の英国人家庭では、ナショナル・トラスト会員も多くて、それなりに、ガーデニングを思い思いに楽しんでいたようであった。
ところで、私が付き合っていた要人などは、ロンドンから遠く離れた田舎に、故郷というか本拠を持っていて、ロンドンにアパートなり仮の宿舎を持って二重生活をしている人がかなりいた。
重要な仕事は、ロンドンベースでないと仕事にならないので、週日はロンドンで仕事をして、週末に故郷に帰ってカントリーライフに勤しむという生活リズムである。
ジムのケースは、いわば、カントリームードたっぷりの邸宅で日常生活を送りながら、都会へ鉄道で通うという田舎と都会綯交ぜの格好のトカイナカの選択だが、やはり、オールドエイジの名残というか、カントリーとロンドンでの住居併設が、英国人の好みのような気がしている。