熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

バンカメ、デビットカード手数料を断念

2011年11月05日 | 経営・ビジネス
   バンク・オブ・アメリカが、業績悪化に悩み収益源を確保するために、「デビットカード」の利用者から手数料を取ろうとしたが、一人の女性が反対ののろしを上げたのが切っ掛けで、利用者らから激しい反発を受け、断念に追い込まれた。
   金融機関はこれまでデビットカードの利用について、店舗側からだけ手数料をとってきたのだが、この手数料の上限を引き下げる規制が先月始まったので、金融機関は収益が目減りするため、消費者側に負担を求めようとしたのである。
   今日のアメリカのABC TVでは、バンカメの預金者たちが、ATMの手数料にもけしからんと、雪崩を打って口座を解約して、手数料のない信用銀行などに、資金を移動し始めたと報道していた。

   あれだけ世間を騒がせて、世界的な金融危機を引き起こして、政府の援助を受けて倒産を免れた銀行が、更に、納税者である消費者に負担をかけるなどは絶対に許せないと言うことであろうが、経済不況と格差拡大に喘ぐ庶民にとっては、たとえ、月5ドルの手数料でも、絶対に許せないと言う心境でもあろうか。
   「ウォール街を占拠しよう」をスローガンにあっちこっちで起こっている民衆デモや、国民に救済されて立ち直った銀行であることなど諸般の事情を考えれば、このデビッドカードへの手数料政策が如何に国民感情を逆なでするのか、そして、今回の北アフリカや中近東で勃発したアラブの春でのツイッターやフェイスブック等のインターネット革命の威力が燎原の火のように伝播すれば、如何に巨大な権威でも崩壊させる威力を持っているかが分かる筈なのだが、メガバンクの能天気ぶりと言うか、時代錯誤振りは、ここに至れりであろう。

   私は、この銀行の、特に、ATMの手数料については、トフラーの「生産消費者 Prosumer」論を引用して、これまでに何度も反対を唱えて来た。
   今日ではATMで、本来、銀行員がやっていた送金や出納業務などを、預金者が代わって行っている、自分自身で生産業務を実施して消費すると言う業務を行っているのであるから、むしろ、銀行側が、代行手数料を支払うべき性格のものである。
   尤も、銀行側は、膨大な投資をして手間暇かけてATMシステムを構築して、預金者の利便を図っているのであるから、手数料を頂くのは当然だと言う論理なのであろうが、二度のシステム・トラブルを起して大パニックに陥ったみずほなどは、確かに、情けなくも、同情の余地はあろう。
   しかし、インドからIT関係のシステムエンジニアを呼んで外注した新生銀行などは、5分の1か10分の1か忘れたが、格安価格で銀行システムを確立してトラブルなしであったし、今なら、専門家に任せてクラウド・コンピューティングのシステムを上手く活用すれば、はるかに、安くATMシステムを稼働できるのではないかと思うと、近い将来、嫌でも応でも、ATM無料化に走らざるを得ないのではないかと思う。

   大切なのは、デジタル革命でICT化が大変な速度で進展し、あらゆる産業のビジネス・モデルを大変革して来ているのであるが、その一つであるこの「生産消費者」化への大変革をどのように事業に取り込んで行くのかが、非常に重要になってくる。
   例えば、ネットショッピングなどは、価格破壊と言う形で消費者に報いている。
   写真などは、イーストマン・コダックが、フィルム・カメラ・システムを確立してから個人で写真を写せはしたが、すべて、DPE任せであったのが、今では、プリント作成まで一切自分自身でやれるようになったし、カメラも電器会社が手掛けるパソコン周辺機器に成り下がってしまったのだが、関連業界の大変革には驚かざるを得ない。これも、会社によっては、機器はバーゲン価格で売って、インクや用紙などの消耗品で利益を確保しようと、銀行のATM手数料と同じような姑息な手段を取っているが、早晩、ペーパーレス、プリントレスの潮流に駆逐されるであろう。

   私の言いたいのは、顧客を「生産消費者」化した場合には、その代行業務で手数料を取ったり、それを逆手にとって儲けようとするのではなく、その利便性はすべて顧客に還元して、その合理化余力を、更なる業務改善へのイノベーション開発に振り向けて、事業展開を図るべしと言うことである。
   銀行のATM業務のような自動化による顧客の生産消費者化は、一種のゼネラル・パーパス・テクノロジーであって、その認識が、銀行にあるのかどうかと言うこともあろうと思う。
   
   
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