ユーラシアグループの今年の10大リスク「TOP RISKS 2021」の第3は、気候問題:ネットゼロとGゼロの交差 そして、第4は、米中の緊張は拡大する
バイデン政権に移行すると、即時に、パリ協定に復帰すると報道されているので、地球環境問題がどのように進展するのか、そして、最大の温暖化ガス排出国であり環境保護に影響の大きい米中の協力が必須であることから、この問題で、イアン・ブレマーが、どう考えているのか、興味を持って、この項を読んでみた。
ユーラシアグループの、これらに関する記述を纏めると、ほぼ次のとおりである。
バイデン政権のアプローチは、気候に関する長期的なコミットメントや目標を次々と生むことになり、その多くは、今世紀半ばまでに排出量を実質ゼロにすることを目指す。2021年の気候変動に関するコミットメントは、未だかつてないほど重要となる。
しかし、報道を彩る見出しの先では、エネルギー転換は各国間の競争の場と化し、協調を欠く。
要は、気候変動は、世界各国が協力して取り組む友好的な場から、世界的な競争の舞台へと変化するのだ。クリーンテクノロジー全体で、特に電池や電力制御システムなどの21世紀型エネルギー経済の「管制高地(競争優位)」において、中国が掲げる長期的な産業政策に対抗し、米国も太 平 洋の向こう側で同 様の政 策を打ち出す。クリーンエネルギーのサプライチェーンの一部は、変換機器など、これまで以上に複雑なグリッドのセキュリティに関わる場合、5Gのサプライチェーンと同様の二分化への圧力にさらされる恐れがある。
ネットゼロの推進が、民間資本、特に蓄積するドル建て・ユ ーロ建ての E S G( E n v i r o n m e n t / 環 境 、S o c i e t y /社会、Governance/ガバナンス)資金にとって、莫大な機会となることは間いない。しかし、政治が決定的な役割を果たすことが予想され、純粋な市場原理以外の要素が勝者と敗者を決するようになる。
その結果、すでに分断されている世界は、一層細分化されていくのだ。もちろん、新たなネットゼロ宣言が続く中で、協力に向けての勝ち誇った握手は交わされ、気候変動対策の進展があるように見えるだろう。皮肉なことに、2021年ほど温度上昇を産業革命前のレベルの摂氏2度未満に抑える力が強まることはない。しかし、Gゼロを無視してネットゼロだけに注目すると、企業は大きな損失を被る恐れがある。
また、緊張している米中関係だが、
トランプの退陣により、米中間の対立は今までほどあからさまではなくなり、双方が一息つこうとする。しかし、事態の沈静化につながるこうした要因も、米国の対中関係の緊張がもたらす同盟諸国への波及、世界を回復させようとするなかでの競争、そして世界をよりグリーン化するための競争という、新しくこれまであまり注目されてこなかった三つの要因によって相殺されるだろう。全体としては、今年も昨年同様、緊張に満ちたライバルとしての米中関係は続くのであって、それは危険をはらんでいる。
その新たな緊張要因となるグリーンテクノロジーをめぐる競争だが、中国は、2030年までに炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと表明し、バイデンの就任前にパブリック・ディプロマシーで点数を稼ぎ、米国を劣勢に立たせようとしている。中国はまた、バッテリーから電気自動車、太陽光や風力発電を含め、21世紀の主要なクリーンエネルギーのサプライチェーンの多くで、すでに米国を大きくリードしている。ここでも米国は、第二次世界大戦後に続いてきた新自由主義からの脱却となる産業政策ツールを活用して、ひたすら中国に追いつこうと躍起になるだろう。また米国は、クリーンエネルギーのサプライチェーンを自国に取り戻すために大規模な投資を行い、海外で石炭に投資する中国の面目を潰し、気候変動とクリーンエネルギーの問題について中国にさらに圧力をかけるために、同盟国を結集させる。中国も、トランプ時代に気候変動対策におけるソフトパワーの活用になじんでいるため、こうした米国の動きを容易に看過することはしない。
このユーラシアグループの見解では、米中協調して、地球環境の保全のために協力するというニュアンスではなくて、グリーンテクノロジーの熾烈な開発競争によって、両陣営の分断化が、さらに進展するという予測だと言えよう。
アメリカが、パリ協定に復帰しても、あまり期待できないということであろうか。
さて、問題のパリ協定だが、
パリ協定では、次のような世界共通の長期目標を掲げている。
★ 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
★ そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
この国際的な枠組みの下、主要排出国が排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指す。ということで、トランプが、脱退したが、バイデン・アメリカは、この世界的なイニシアティブに復帰してもとの鞘に収まるということである。
世界政府が成立していない以上、また、確固たる国際機関が機能していない以上、幾ら高邁な理想を歌った協定でも、各構成メンバー国の善意ある協調協力がないと絵に描いた餅に終わる。
哀しいかな、地球温暖化の悲劇は、学者が騒ぐだけで、時折、襲ってくる大自然の脅威的な破壊行為たる地球を揺るがす大災害に遭遇して恐れおののくくらいで、目に見えて地球環境を破壊するのではなくて、少しずつ徐々に、宇宙船地球号を蝕んで破壊に追い込むので、まさに、人類は、茹でガエル。自分が生きている間は、問題が起こりそうにないので、子孫の未来などサラサラ考えない。
話を元に戻すと、パリ協定を前進させて、地球環境を保全するためには、高邁な哲人政治のような理想に燃えた高潔なリーダーあってこその協定だと思っているので、グリーンテクノロジーの開発競争に目の色を変えるようなグローバリゼーションの展開が予測されるという不幸を、どう考えたらよいのか。
バイデン政権に移行すると、即時に、パリ協定に復帰すると報道されているので、地球環境問題がどのように進展するのか、そして、最大の温暖化ガス排出国であり環境保護に影響の大きい米中の協力が必須であることから、この問題で、イアン・ブレマーが、どう考えているのか、興味を持って、この項を読んでみた。
ユーラシアグループの、これらに関する記述を纏めると、ほぼ次のとおりである。
バイデン政権のアプローチは、気候に関する長期的なコミットメントや目標を次々と生むことになり、その多くは、今世紀半ばまでに排出量を実質ゼロにすることを目指す。2021年の気候変動に関するコミットメントは、未だかつてないほど重要となる。
しかし、報道を彩る見出しの先では、エネルギー転換は各国間の競争の場と化し、協調を欠く。
要は、気候変動は、世界各国が協力して取り組む友好的な場から、世界的な競争の舞台へと変化するのだ。クリーンテクノロジー全体で、特に電池や電力制御システムなどの21世紀型エネルギー経済の「管制高地(競争優位)」において、中国が掲げる長期的な産業政策に対抗し、米国も太 平 洋の向こう側で同 様の政 策を打ち出す。クリーンエネルギーのサプライチェーンの一部は、変換機器など、これまで以上に複雑なグリッドのセキュリティに関わる場合、5Gのサプライチェーンと同様の二分化への圧力にさらされる恐れがある。
ネットゼロの推進が、民間資本、特に蓄積するドル建て・ユ ーロ建ての E S G( E n v i r o n m e n t / 環 境 、S o c i e t y /社会、Governance/ガバナンス)資金にとって、莫大な機会となることは間いない。しかし、政治が決定的な役割を果たすことが予想され、純粋な市場原理以外の要素が勝者と敗者を決するようになる。
その結果、すでに分断されている世界は、一層細分化されていくのだ。もちろん、新たなネットゼロ宣言が続く中で、協力に向けての勝ち誇った握手は交わされ、気候変動対策の進展があるように見えるだろう。皮肉なことに、2021年ほど温度上昇を産業革命前のレベルの摂氏2度未満に抑える力が強まることはない。しかし、Gゼロを無視してネットゼロだけに注目すると、企業は大きな損失を被る恐れがある。
また、緊張している米中関係だが、
トランプの退陣により、米中間の対立は今までほどあからさまではなくなり、双方が一息つこうとする。しかし、事態の沈静化につながるこうした要因も、米国の対中関係の緊張がもたらす同盟諸国への波及、世界を回復させようとするなかでの競争、そして世界をよりグリーン化するための競争という、新しくこれまであまり注目されてこなかった三つの要因によって相殺されるだろう。全体としては、今年も昨年同様、緊張に満ちたライバルとしての米中関係は続くのであって、それは危険をはらんでいる。
その新たな緊張要因となるグリーンテクノロジーをめぐる競争だが、中国は、2030年までに炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと表明し、バイデンの就任前にパブリック・ディプロマシーで点数を稼ぎ、米国を劣勢に立たせようとしている。中国はまた、バッテリーから電気自動車、太陽光や風力発電を含め、21世紀の主要なクリーンエネルギーのサプライチェーンの多くで、すでに米国を大きくリードしている。ここでも米国は、第二次世界大戦後に続いてきた新自由主義からの脱却となる産業政策ツールを活用して、ひたすら中国に追いつこうと躍起になるだろう。また米国は、クリーンエネルギーのサプライチェーンを自国に取り戻すために大規模な投資を行い、海外で石炭に投資する中国の面目を潰し、気候変動とクリーンエネルギーの問題について中国にさらに圧力をかけるために、同盟国を結集させる。中国も、トランプ時代に気候変動対策におけるソフトパワーの活用になじんでいるため、こうした米国の動きを容易に看過することはしない。
このユーラシアグループの見解では、米中協調して、地球環境の保全のために協力するというニュアンスではなくて、グリーンテクノロジーの熾烈な開発競争によって、両陣営の分断化が、さらに進展するという予測だと言えよう。
アメリカが、パリ協定に復帰しても、あまり期待できないということであろうか。
さて、問題のパリ協定だが、
パリ協定では、次のような世界共通の長期目標を掲げている。
★ 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
★ そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
この国際的な枠組みの下、主要排出国が排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指す。ということで、トランプが、脱退したが、バイデン・アメリカは、この世界的なイニシアティブに復帰してもとの鞘に収まるということである。
世界政府が成立していない以上、また、確固たる国際機関が機能していない以上、幾ら高邁な理想を歌った協定でも、各構成メンバー国の善意ある協調協力がないと絵に描いた餅に終わる。
哀しいかな、地球温暖化の悲劇は、学者が騒ぐだけで、時折、襲ってくる大自然の脅威的な破壊行為たる地球を揺るがす大災害に遭遇して恐れおののくくらいで、目に見えて地球環境を破壊するのではなくて、少しずつ徐々に、宇宙船地球号を蝕んで破壊に追い込むので、まさに、人類は、茹でガエル。自分が生きている間は、問題が起こりそうにないので、子孫の未来などサラサラ考えない。
話を元に戻すと、パリ協定を前進させて、地球環境を保全するためには、高邁な哲人政治のような理想に燃えた高潔なリーダーあってこその協定だと思っているので、グリーンテクノロジーの開発競争に目の色を変えるようなグローバリゼーションの展開が予測されるという不幸を、どう考えたらよいのか。