goo blog サービス終了のお知らせ 

熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

10月の新宿御苑

2008年10月16日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   久しぶりに、秋晴れの美しい日であったので、遅い午後、新宿御苑を訪れた。  
   紅葉や菊にはまだ早いので、御苑内は殆ど緑一色であり、特色がないので魅力に欠けるのだが、陽の光を浴びて明るく輝いている広々としたイギリス庭園には、多くの人々が三々五々、芝生の上で憩っていた。 
   平日であったので、小さな子供を伴った若い母親たちや若い二人連れなどが多く、結構、外人客の多いのにはびっくりした。
   天気の良い日の、綺麗に刈り込まれた芝生の広がる都会の真ん中のオープンエアーは、格別で、上空を舞う観光用の無粋なヘリの爆音さえなければ、最高である。

   この日は、新宿門から入って、中の池の周りを散策して、フランス式整形庭園に向かった。
   この仰々しい名前の庭園だが、長方形のバラ花壇が真ん中にあって、左右に綺麗なプラタナスの並木道が続いているだけなのだが、落ち葉の舞い落ちた砂利道を、さくさく音を立てながら歩くのが楽しい。
   こんなにに綺麗に手入れの良く行き届いた並木道は稀なのだが、ここだけは、本当にヨーロッパの雰囲気を彷彿とさせてくれる。
   
   もう少し秋が深まると、プラタナスの葉が黄金色に色づいて美しくなる。
   日本の秋は、紅葉などの鮮やかな赤が綺麗だが、ヨーロッパの秋は、黄色基調で、林全体が黄金色に輝く豪華さには目を奪われる。
   そして、もう少し秋が深まると、風景が、赤紫を帯びたワインカラーに変わり、一気に寒くなってクリスマスに向かう。

   私は、並木道のはずれのベンチに座って、心地よい秋の冷気を楽しみながら本を読むことにした。
   イギリスの湖水地方の森では、ワーズワースなどが似つかわしいのだろうが、この時持っていた本は、キャンベルの「成長への賭け」と日経ビジネス。何とも無粋な話だが、しかし、後から来たアベックが、10数メートル離れた横のベンチで、親しくなり始めたので、気が散ってしまって幸か不幸か読書にはならなかった。

   このプラタナスの葉も少し色づき始めているが、他に、カツラやハナミズキがやや黄ばみ始めた感じで、緑のままで葉を落とし始めた落葉樹もあり、もう、秋たけなわで、11月に入ると一気に冬支度になるのかも知れない。
   花は、バラ園は盛りを過ぎてしまったが、サザンカ、キンモクセイが花をつけ、木陰でツワブキが黄色い花を開いている。
   芝庭のはずれで、風にはかなく揺れている鮮やかなコスモスの花の風情も中々良いものである。

   私は、3年間、キューガーデンの傍に住んでいて、週末など時間が取れるとカメラをぶら下げて通っていたので、懐かしくなるとこの新宿御苑を訪れる。
   キューガーデンは、観光と言うよりも、イギリスのみならず世界の植物学研究の牙城であるから、もっと自然に近く、新宿御苑のように観賞用の美しい庭園ではないが、巨木が鬱蒼と茂る森や花の咲き乱れる広大な林や熱帯植物でむんむんする温室など、訪れるたびごとに姿を変えて新しい発見を感じさせてくれた。
   この日の新宿御苑は、カラスばかりが目に付いたが、キューガーデンには、雉もいれば、極彩色の金鶏もいるし、白鳥など色々な渡り鳥も飛んで来て営巣するのだが、糞はそのまま放置されるので自然そのものである。
   少し上ると渓谷に入るのだが、公園の横をテムズ川がゆっくり蛇行していて、実にのどかである。

   ヨーロッパ大陸には、幾何学文様で公園をデザインして、力で押さえ込んだような整形庭園が多いものの、ギリシャローマに憧れの強いイギリスでは、廃墟のような古代建造物をあっちこっちに配して擬似自然を演出したイングリッシュ・ガーデンが主体である。
   中国の庭園も何となく強力な人工を加えた造形美を感じるのだが、国によってガーデンのコンセプトは違うが、私自身は、手入れの行き届いた哲学的な雰囲気を秘めた日本庭園の美しさは、格別だと思っている。
   学生の頃、京都の庭園を足しげく鑑賞し続けていたので、その影響か、何時も、日本庭園の視点から、あっちこっちのガーデンを見ているような気がしている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする