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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ペーパー・マネー・ソサエティの凋落・・・堺屋太一

2008年10月09日 | 政治・経済・社会
   早稲田大学の大隈講堂で、グローバルイノベーションフォーラム2008が開催されて、堺屋太一氏が、「日本と日本企業の進路」と言う演題で基調講演を行った。
   何時ものように、ジンギスカン時代に始まったペーパーマネーから説き起こして、今回のサブプライム問題に端を発したグローバル金融危機に話が及び、
   最後には、経済社会が、物財の豊かさのみを追求してきたマスプロダクションの近代工業社会から、人間の幸せを満足の豊かさに置く知価社会に移行したので、日本も日本企業も、この社会変化に対応しなければならないと説く。
   論旨は殆変わらないのだが、その時々に語るエピソードなどにバリエーションがあるので、聞いていて結構面白い。

   知価社会であるから、集団ではなく個性の時代なので、絶えず美意識を問いかけることが大切で、アンテナを張って徹底的に広く客観的な情報を収集して、何事も決断を早くすることが、勝ち抜くためには、絶対に必要だと協調する。
   日本人の情報と言えば、官僚とマスメディアの情報ばかりで、情報鎖国に等しく、世界で、日本が最も情報に遅れを取っている。ドル札で買い物が出来ないのは日本だけで、やたらと外国人を怖がる・・・等々、堺屋ボヤキ節はとうとうと続くが、日本を知恵の値打ちを作り出す国にしようと話を締めくくった。

   ところで、今回のアメリカ発の世界金融危機については、小渕時代の経済企画庁長官の経験を語り、不良債権の買取だけでは駄目で、資本の毀損した金融機関への資金注入を行わない限り収束しないと説く。
   今回の世界的な金融危機を理解するためには、4つのキーワード、すなわち、①証券化、②大数による補完、③格付け、④グローバル化 が重要な役割を果たしていることを理解しなければならないと言う。

   この4点の指摘については、非常に明白だが、やはり、問題は、大数の法則に立脚した証券化であり、その保証であったのだが、堺屋が指摘するように、土地とか住宅とか不動産の価格は、安くなるか高くなるか一方向に振れるもので、一方向に極端に振れると、今回のように暴落に突っ走り、収拾がつかなくなる。
   本来、ある事柄を何回も繰り返すと、一定事象の起こる割合は、回数を増す毎に一定値に近づくと言う経験則が大数の法則であるから、この不動産の証券化には全く馴染まない法則であり、この法則に基づいて全てのシステムが補完関係にあったのだから、起こるべくして起こった危機だったのである。
   先日、竹森俊平教授の「資本主義は嫌いですか」でコメントしたロンドンのミレニアム・ブリッジ大揺れ事件と同じケースなのである。
   それと同時に、先日、時価会計の問題についてふれた時に、現在の経済学なり経営学が、平常状態を前提に成り立っていて、異常時には、役に立たなかったり適用出来ないと論じたが、正に、このことである。

   しかし、結局は、住宅価格が永遠に上昇し続けると言う一点に賭けて世界中が狂騒した結果、何時か崩れざるを得ない筈の「砂上の楼閣」を築いてしまったと言うことであって、同じバブル状態でも、今回のアメリカの住宅バブルは、日本の単純なバブルと違って、ICT革命をフルに活用して発展した精緻を極めたファイナンシャル・エンジニアリングによって更に磨き上げられた魔法のような手法によって行き着く所まで行ってしまった。

   この間、BRIC’sの目覚しい発展があって、中国やインドが経済大国へのスターダムを駆け上がって来た。
   しかし、これも総て、アメリカの住宅バブルに源を発した金融市場の爆発による旺盛な需要の拡大があったからで、中国は工業製品をアメリカに輸出し、インドはアメリカによってアウトソーシングされたITソフトを供給して眠っていた経済に火がつき、未曾有の経済発展を遂げ、これが、グローバルベースで増幅波及して、世界同時好況を現出した。

   極論すれば、サブプライムは引き金を引いただけで、ブームがブームを呼び、バブルがバブルを呼び、今日の破局を迎えたのであって、天然資源の限界まで消費生活を引き上げて、地球環境を破壊するまで暴発したこれまでの経済成長とは一体何だったのか。
   ICT革命とグローバリゼーションの恩恵を受けて真っ先に突っ走って膨張した金融システムが、真っ先に危機に突入したけれど、本当は、我々が寄って立つ今日の経済社会構造そのものが危機的状況にあるのではないかと言う気がしている。
   
   
   
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