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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ソニー定時株主総会

2007年06月21日 | 経営・ビジネス
   ソニーの定時株主総会だが、これだけ業績が悪いにも拘わらず、何の波乱もなく2時間半で質問を打ち切って議案の採決に入って無事(?)終了した。
   今年は、例年実施している株主懇親会をやめて、決算等の報告事項の時に、商品のPRを兼ねた派手な説明を行い、また、株主からの質問を可なり丹念に受けて丁寧に説明をしていたので、時間がかかったのだが、半分お祭り気分の総会であった。
   第3会場にいたので、実際の本会場の雰囲気は分からないが、主婦や年配の男女の株主が多く、半数くらいは途中で退場して行き、会社の経営などあまり関心がない、云わば、一般のソニーファンと言った感じであった。

   多少、総会らしい緊張感があったのは、株主オンブズマン提案の「取締役の報酬の株主への個別開示に関する定款変更の件」議案の説明くらいで、しかし、これも毎年のことなので、株主は殆ど反応なしである。
   しかし、今回も、議決を要する3分の2には程遠いが、昨年同様に半数近い44%の賛同を得ており、無視は出来ない。
   私自身は、開示するしないに対する両者の言い分はどっちもどっちだと思うが、定款に入れるべき事項かどうか疑問だと思っているので、いっそのこと、来年あたり開示すれば、定款を触らずに済むのにと思っている。
   どうせ、日本基準から云えば異常に高いが、国際基準から云えば非常に低い数字が示されるに決まっているが、業績相応ならそれで良かろう。

   ところで、今回はPS3が業績の足を引っ張ったようであるが、何しろ、8兆円以上を売り上げていて、純利益は1263億円で、一株当たり、たったの120円一寸。
   株主から、配当が少なすぎると苦情が出ていたが、利益がダントツに悪いにも拘らず、配当性向が20%ほどで、1株の時価が70万円弱に対して年間2500円の配当と言うのであるから、何が世界のソニーか、恥を知るべきかも知れない。
   それに、今年度の目標営業利益率は、総合で5%、エレクトロニクスで、4%と発表されていたが、世界最先端の技術を駆使しても、その程度の業績しか揚げられない経営体質なりシステムの欠陥をもっと真剣に考えるべきである。

   ところで、やはり、若い株主から、「何故、ウォークマンがiPodに負けたのか」と云う質問があった。
   担当者は、音楽著作権との問題などと脳天気な回答をしていたが、ストリンガー会長は、明確に、アップルにソフトウエアで負けたことをはっきりと明言した。
   製造技術優先で、最先端を行く素晴らしい製品を製造販売しながらも、その製品を豊かなソフトウエアで大きく展開するノウハウや経営姿勢がなかったことを認めたのである。
   昨年末に、出井伸之氏が「迷いと決断」と言う新書を出したので、書評を書いて、そのコンバージョン理論が根本的な間違いだったとこのブログで書いた。「ハードウエアとコンテンツを両端に持つシンプルな戦略で、ハードとコンテンツのパイプの両端を押さえておけば、真ん中の部分であるメディアの配信方法がどんなに変化しても対応出来ると考えたのである」と言うこの戦略そのものがソニーの経営を誤り、アップルに裏を掻かれて、iPodに敗北を喫したのである。

   その後、ソニーは、USAを中心に、全ソニーの総力を結集してソフトウエア重視の経営戦略に切り替えて体勢の建て直しを図っているようだが、ビデオ・ウォークマンやウォークマン付き携帯電話など趣向を変えた製品を開発して失地回復に努力しているのだと説明していた。
   今ごろになって、ソフトで統合などと暢気なことを云っているが、出井氏が指摘するように、ソニーはデジタル時代の到来にも出遅れてしまったし、とに角、経営環境が、クリエイティブ・エイジになり、ウイキノミクスの時代に大きく転換してしまっていることさえ感じない天然記念物のような会社なのかも知れないと思うことがある。

   中鉢社長は、このウォークマン問題について、デザインを改革し、音質を向上させ、PCを通さずに音楽と繋ぎ合わせるられるシステムの開発などで対応して占拠率30%まで回復したと言っていたが、何処までも、製品作りの技術屋の発想である。
   立花氏が、PS3についてコメントし、途轍もない能力を持つこのゲーム機を東大先端技術研究所に持ち込んでどのように活用展開できるのか指南を仰げばよいと云っていたが、正に、然りである。
   素晴らしい製品を開発すれば、インターネット経由で、「どのように貴方なら使うのか」キャンペーンを展開して、世界中のユーザーの衆知を集めて、オープンソース・イノベーションを追求するくらいのことをしなければソニーの未来は暗い。
   世界中のソニーファンなりユーザーの知が、ソニーのエンジニアや開発技術者の頭を遥かに超えてしまっている、そんな時代になってしまったことをソニーの経営者は知っているのであろうか。

   ところで、商品展示会場では、有機ELテレビが展示されていた。27インチが最大だったが、とに角、格段に美しくて素晴らしい映像である。
   ところが、薄暗い会場で特別に映写された極彩色の映像を映せば美しく映るのは当たり前で、こんな場合は、実際のNHKのテレビ番組を取り込むとかの一工夫が必要である。
   オーディオ機器のブースで、係員に簡単な質問をしたら答えられなくて右往左往して走り回っていたが、株主総会の展示場はコーポレート・レピュテーションをアップする為の最前線なのに、何を考えているのか。
   智恵が総身にまわりかね、そんなところが現在のソニーかも知れない。
   ソニーファンのため息である。
コメント
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